5月30日の広島ナミキジャンクションを皮切りにスタートした、グッドモーニングアメリカのワンマンツアー「７つの秘宝を探す冒険2014」が、7月5日のZepp DiverCity Tokyoで最終日を迎えた。

　開演時刻になり、２階の一角にスポットライトが当たる。アニメ『北斗の拳』のオープニングテーマが鳴り響く中、現れたのは、タナシロウこと、たなしん（B/Cho）！ムキムキの肉襦袢をまとった彼が「アタタタタタタタタタ！」と叫ぶと会場全体にフラッシュライトが点滅。さすがは地上最強の拳、北斗百裂拳である……というか、こうした演出を大事なツアー最終日に当たり前のように盛り込み、そして当たり前のように盛り上がるのが、グッドモーニングアメリカというバンドであり、彼らを熱く支持するオーディエンスなのだ。しかし、そんな笑いに満ちたオープニングなどなかったかのような緊張感でステージにメンバーが揃うと、会場いっぱいに弾丸のように強く眩しいサウンドを放つロックバンドのライヴが始まる。

　１曲目の「イチ、ニ、サンでジャンプ」からハイテンションなサウンドが豪快かつキャッチーなメロディを連れてくると、オーディエンスもイチ、ニ、サンの合図で手を振り上げた。その度にフロアがどんどん元気になっていくのがわかる。次の「突破していこう」では曲を途中で止め、ステージから見えるその光景に金廣（Vo/G）が「スゲエな」と漏らす。「初めて来た人~？」の問いかけから客席とアットホームなやり取りも。しかし再びビシッと曲に戻り、序盤は「アブラカタブラ」や「キャッチアンドリリース」などボルテージがどんどん上昇していくような楽曲を次々と披露。特に「キャッチアンドリリース」は金廣のハイトーン・ヴォイスと、今の時代を生きる若い世代の気分を捉えたシリアスなメッセージがキリキリと胸ぐらを掴むような演奏で、ペギ（D/Cho）の重厚かつ鮮やかなビートを浴びながらオーディエンスは声を上げて舞い踊る。強靭なサウンドとビートで躍らせるロックバンドがシーンを賑わせる昨今だけれど、グッドモーニングアメリカのこの光景は、ただのお祭りなんかじゃない。楽曲の中にそれぞれの日常と、たくさんの憤りや虚しさや痛みを互いにぶつけ合いながら、だからこそ今を笑い合って過ごそうという共闘感こそが、この凄まじい躍動感と明るさを生んでいる。

　メンバーにとってもこの日は、「ようやくここまで来た」という特別な気持ちも大きかったのだろう。「空ばかり見ていた」では感情が決壊しているようなエモーショナルな演奏に。〈どうしようもない　運命か　夢／雑踏に揉み消されて／あてどない日々さ迷い／行き場ない思い抱えて〉――2001年にバンドを結成してから決して順風満帆とは言えなかった歩みの中で、まさに空を見上げて立ち尽くすような時期も多々あったのだろう、彼らのリアリティはサウンドの中の大事な核となり、どこまでも強く放たれていく。希望をたぐり寄せるようにして鳴らされる「未来へのスパイラル」も説得力に満ちて、曲の終盤ではフロアから〈wow who〉と大きな歌声が聴こえ、その声に４人のサウンドが重なった瞬間、銀色のテープが会場を舞った。

　終盤では渡邊（G/Cho）が「バンドが上手く行かないことを人のせいにしたり妬んだり、そんなどうしようもない頃もあったけど。目の前のことをひとつずつやっていればこんな最高の景色が見れます。だからみんなも夢を諦めないでください」と真摯なMCをした後、「メロディ」が奏でられた。聴かせるところはしっかり聴かせる。そんなメリハリのあるライヴができているのも今のグドモ。この最高の景色にふさわしい「喝采」を本編ラストに、４人は「ありがとうございました」と揃って深々とおじぎをし、ステージを去った。

　「オッス、オラ悟空！」という声優・野沢雅子さんの嬉しいアナウンスで始まったアンコールは、もちろん『ドラゴンボール改』のエンディングテーマ曲「拝啓、ツラツストラ」。フロアには７つの大きなドラゴンボールが投下され、この熱狂にふさわしいアンセムが鳴り響いた。最後の「輝く方へ」まで、確かな演奏力で攻め続けながら、オーディエンスとの絆も感じさせる２時間弱のステージ。ここは「最高の景色」だと彼らは言っていたが、その「最高」がすぐにでも塗り替えられるような、今のグッドモーニングアメリカの勢いと実力を存分に感じられる一夜だった。

【取材・文：上野三樹】
【撮影：Sachie Hamaya、Shigeru Ushizawa】