レビュー

グッドモーニングアメリカ | 2014.10.15

連載 第41週
グッドモーニングアメリカ
『inトーキョーシティ』


能天気な勇者グドモの“入京宣言”アルバム

 ライブシーンを素晴らしい勢いで疾走するグッドモーニングアメリカのメジャー2ndアルバム『inトーキョーシティ』は、東京郊外の街・八王子の高校出身のバンドらしい香りがプンプンしている。かく言う僕も同じエリアの立川生まれだから、この感じがよくわかるのだ。東京都でありながら “都下”と呼ばれ、電話の局番が違うから都内にかける時は市外通話料金を取られるし、都民なのに渋谷に行くとなれば緊張する。限りなく東京マナーに近いのに、しょうもないコンプレックスを抱いて育つのが、八王子や立川周辺に生まれた者の宿命なのだ。

 だから『inトー キョーシティ』というタイトルを聞いたとき、「グドモは何かを決心したのだな」とニヤリとした。アルバムタイトル曲は♪迷って生きていく刑に服している♪とトーキョーシティ住民の精神病理を描写した挙句、♪私を変えられる勇者で あれたら♪と結ぶ。

 一方で♪起きてもない事悩むより この一瞬の今を愛しましょう♪と歌う「何とかなるでしょう」の、能天気な東京エンジョイ野郎の心意気も打ち出す。この両極を描破できるのが、実は“トー キョー周辺”生まれの強味なのだ。

 そして、このアルバムのもう一つの聴きどころは、そんなバンドの心理をうまくすくいとって締めくくりの曲「スクランブル交差点」をプロデュースした寺岡呼人の手腕だ。“ゆず”のプロデュー サーとして名を上げた寺岡は、RIP SLYMEのPESのソロなど、コンセプトワークを得意としている。今回はグドモならではの“抒情” を、見事に歌にしてみせた。渋谷の交差点に♪いくつもの消えちまった過去の僕自身♪を幻視する情景は、涙が出るほど美しい。バックを彩るトレモロのかかったギターが、金廣真悟の描いた情景のはかなさをさらに増幅する。寺岡のベスト・プロデュースの一つに数えられる作品になった。破壊力のあるライブに、こうしたコンセプチャルな歌が加わって、グドモはさらに快進撃を続けそうだ。

 それゆえ僕は、グドモの決心を“上京”ではなく、 “入京”と呼びたい。それが“inトーキョーシティ”の正しい訳し方のように思う。さて、この歌をライブでやるとき、面白MCベースのたなしんが、どんな表情をするのか、楽しみ、楽しみ~。

【文:平山雄一】

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リリース情報

inトーキョーシティ(初回盤)[CD+DVD]

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inトーキョーシティ(初回盤)[CD+DVD]

発売日: 2014年10月22日

価格: ¥ 3,048(本体)+税

レーベル: 日本コロムビア

収録曲

[CD]
1.inトーキョーシティ
2.アブラカタブラ
3.何とかなるでしょう
4.STOP THE TIME
5.拝啓、ツラツストラ
6.コールアップ
7.夕暮れ
8.ワンダーフルワールド
9.2014年6月25日我思ふ
10.STAY WITH ME
11.イチ、ニッ、サンでジャンプ
12.スクランブル交差点

[DVD]
グッドモーニングアメリカ「7つの秘宝を探す冒険2014」ワンマンツアー
大阪・なんばHatch公演から数曲を収録予定

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