爆音でオープニングSEが流れ、猛烈な勢いでどよめいた観客。初っ端から何やら只事ではないムードが漂う中、小野武正（G/MC/Cho）、首藤義勝（Vo/B）、寺中友将（Vo/G）、八木優樹（Dr/Cho）がステージ上に登場。ますます凄まじい歓声が上がる。それに刺激されたのか、一旦、ドラムの椅子に座ったはずの八木は立ち上がり、ステージの前方へと駆け出して行って観客を激しく煽った。そして、「KEYTALKです。よろしくお願いします！」と 寺中が挨拶をして、スタートした1曲目「パラレル」。歌声を絶妙に交わし合いながら印象的なメロディを響かせる寺中と首藤。金髪を眩しく輝かせ、スリリングなフレーズを連発する小野。心地よいビートをシャープに刻み続ける八木……KEYTALKの黄金アンサンブルを浴びたフロア全体は、タテノリのダンスでグラグラと揺らいだのであった。

　「コースター」と「はじまりの扉」も披露した後、最初のインターバル。「今晩は！　ぺーい！　下北沢から来ましたKEYTALKです。今日はツアーの14本目。脂が乗りまくったライブをお送りします。みんなついてこられるの？　では、貴族（八木のこと）を紹介します」という小野からのフリを受け、「アス！」と叫んでドラムを連打した八木。唐突に1枚のシンバルを外して持ち上げ、「赤坂、かかってこいや?！」と煽ると、観客はやる気満々の歓声を上げた。そしてスタートしたのは「お祭りセンセーション」。何処か祭囃子的な和テイストのメロディと、強力なダンスビートを融合させたサウンドが、人々の興奮をますます加速させる。続いて「BEAM」「UNITY」「fiction escape」も演奏され、ステージ上の4人も観客もすっかり汗だくとなっていた。

　「楽しんでますか？　僕たちも楽しい。アルバム『OVERTONE』の曲を中心としつつ、歴代のヒット曲も織り交ぜながら最高の空間にしたいと思います。では、もっと熱い曲をやっていいですか？」と首藤が観客に問いかけ、「MURASAKI」へ。瑞々しいメロディが高鳴っていく。「シンドローム」や「YGB」も披露され、観客の盛り上がりはとどまるところを知らない。「サイクル」の曲中では《もういいかい》《まだだよ》という歌詞の一節の掛け合いも交わされ、まさしく「一体感」と表現するのがふさわしい濃密なエネルギーで会場全体が包まれていた。

　「赤坂BLITZでの公演、楽しみにしていました。『OVERTONE』の曲、好きになってくれましたか？　すごく力を入れて作って。採用されなかった曲もたくさんありました。だから収録された曲には思い入れがあります。ツアーで曲を生で披露して、みんなにとってあのアルバムがもっと大切なものになって、ツアーが終わってからも大切に聴いてもらえたら嬉しいです」、アルバムへの強い思い入れを語った後、ギターを弾きながら歌い始めた寺中。やがて、他のメンバー3人の楽器パートも合流してスタートしたのは「メロディ」。透明感溢れるメロディ、寺中の瑞々しい歌声が迫って来る。続いて「Siesta」。牧歌的なムードのメロディ、穏やかに揺らぐリズムに彩られながら首藤の温かい歌声が響き渡る。2人各々の魅力が際立つ2曲が続き、観客はじっくりと耳を傾ける。さらには「雨のち。夏、」も披露され、人々の涙腺を緩ませていく。アコースティックギターを弾きながら歌う寺中にリードされ、終盤では「♪ララララ~」という素晴らしい大合唱が起こっていた。そして、再びインターバルへ。

小野：K・E・Y・T・A・L・K。KEYTALKです！
寺中：知ってます（笑）。
小野：KEYTALK主導のツアーは約1年ぶり。いろんなことが起きました。パーキングエリアに義勝くんを置いていってしまうことは免れましたが。過去に2回くらい置いていっちゃったことがあるんです。
寺中：パーキングエリアでは3分しか止まらないルールですから！
小野：「BEAM」という曲では、ビームのポーズ（両手を組み合わせ、左右の親指と人差し指をまっすぐ伸ばして掲げる）をするんですけど、名古屋のライブの時、義勝くんは「UNITY」の時にビームのポーズをしてしまって。
寺中：「ビーム！」って叫んで（笑）。
小野：その日から義勝くん、「ビーム」と呼ばれてます（笑）。

　……小野と寺中の絶妙なテンポによる会話が展開したMCタイム。そして、小野のリードによるコール＆レスポンスを経て雪崩れ込んだ後半戦。「バミューダアンドロメダ」を皮切りに、「トラベリング」「sympathy」……強力なナンバーが惜しげもなく連発されていった。「太陽系リフレイン」の時の会場内の風景は壮観。まるで沸騰する鍋の中のように熱気が渦巻いていた。

　「最高に楽しいです。ありがとうございます。このステージに立つのをすごく楽しみしていました。全国を回って東京に帰ってきて、みんなの顔を目の前にして、“おかえり！”って言ってくれてる気がして嬉しいです。みんなも日々、いろんなことがあると思います。僕たちもそうです。でも、ライブで一緒にはしゃいでる瞬間は忘れられます。みんなにとってもそういうものになってたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします！」、首藤が語り、本編を締め括ったのは「プルオーバー」。甘酸っぱいメロディと歌詞が響き渡る。観客の打ち鳴らす柔らかなトーンの手拍子、歌声も起こり、何とも言えず温かいムードが広がるひと時となった。

　アンコールを求める声に応えて最初にステージに戻ってきた寺中。アコースティックギターを奏で、歌いだしたのはサザンオールスターズの名曲「真夏の果実」。Mr. Childrenの桜井和寿そっくりな美声で歌い、観客は大喝采。桑田佳祐そっくりな歌声も飛び出し、いつの間にやら2人の偉大なシンガーによる豪華共演が、モノマネによって実現してしまった。それにしても……寺中のモノマネのクオリティの高さは半端ではない。特徴を掴んだ歌い回しに笑いつつも、感心しながら聴き入ってしまった。歌い終わると、「ありがとうございました！」と、ステージから足早に去った寺中。すると、アンコールを求める手拍子が再び起こり、メンバー全員が登場。MCタイムが始まった。

小野：お集まり頂きありがとうございます。みんながいないとライブができないんです。去年の11月にメジャーという新しい扉の中へお邪魔したら、とんでもないところに来ました。元々でかい夢はあったけど、それは漠然としていて。でも、今はハッキリしてきました。KEYTALKをこれからもよろしく。一緒に天下を獲ろうぜ！　では、狭山市のゆるキャラを紹介したいと思います。
首藤：さやまんです！（首藤は埼玉県狭山市出身。占い師に“地元を大切にしなさい”と言われ、“さやまん”という名前を薦められたのだという）
小野：では、ここでお知らせが。7月16日に僕たちのモバイルサイト（※）がオープンします！　そしてもう1つ。僕たちのレーベルのイベント（10月に東名阪で行われる『~ビクターロック祭り番外編~「Getting Better presents“MUSIC TAGS vol.2”~バンド戦国時代~」』）の開催が決定しました！
首藤：キュウソネコカミとの対決です。ぶっ飛ばしてやります（笑）。
小野：ゆるキャラらしからぬ発言（笑）。みなさん、狭山は知ってますか？（観客から元気いっぱいに“はーい！”という声が返ってくる）
首藤：さやまん嬉しい！　今は住んでないけど（笑）。
小野：俺が「仕事ですから！」と言ったら、「さやまん！」って言ってください。（交わされる「仕事ですから！／さやまん！」というコール＆レスポンス）
寺中：それって義勝さんが言うべきもんじゃないの？（笑）。
小野：ええと、ここからは貴族からのお言葉を。
八木：赤坂?！　赤坂の良い子のみんな、今晩は！　吾輩が八木三世である！　嫌いなものは革命。好きなものは乗馬とアスの伝道師。“アス”とは挨拶、感謝、謝罪にも使える非常にユーティリティーな言葉である。吾輩はこの言葉で赤坂を1つにしたい。「1・2・3！」と言ったら「アス！」と言ってください。練習はしません。なぜならライブは生モノだから。では。1・2・3！

　「アス！」という大きな声が返ってきたのを合図にアンコール1曲目「blue moon light」がスタート。ロマンティックなメロディが、観客をみるみる内に激しいダンスへと誘う。続いて「夏は好きですか？　今年はこの瞬間から夏に変えたいと思います。準備はいいか？」と寺中が呼びかけて「MABOROSHI SUMMER」。「よっしゃー！」という明るい掛け声が観客の間から上がるのを眺めながら、ステージ上の4人は笑顔を浮かべていた。そして、ラストに届けられたのは「夕映えの街、今」。「お前らが楽しめるか、俺らが楽しめるか勝負だ！」と寺中が煽ってスタートすると、観客は一層の力を振り絞って踊った。寺中は途中でギターを外し、汗まみれの観客がひしめくフロアへ突入。そんなワイルドな場面も経てエンディングを迎えたのであった。もの凄い残響音が漂う中、手を振りながらステージを後にした4人。その表情からは強い充実感と達成感が伝わってきた。

【取材・文：田中 大】
【撮影：Sotaro Goto】