前へ

次へ

ドレスコーズが野音で鳴らした新たな季節!

ドレスコーズ | 2014.08.29

 今年の4月、レーベル移籍発表と共に〈あたらしい季節の幕開け〉を宣言したドレスコーズ。8月17日、彼らにとって初めての日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴに、次なるテーマ〈ダンスミュージックの解放〉を体感しようと多くのオーディエンスたちが真夏の太陽の下に集まった。

 開演時刻の16時30分を20分ほど遅れて(しかしまだまだ強い日差しとセミの大合唱の中)、ステージにメンバー4人が登場。志磨遼平(Vo)はイエローのサイケなシャツを着て、大きく天に手をかざしながらシンセを操り、1曲目からいきなり新曲「ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ」を投下。菅大智(D)が叩き出す野性味溢れるリズムに加え、山中治雄(B)と丸山康太(G)の4人で鳴らすカオティックかつ挑発的なサウンドに導かれ、オーディエンスは早速体を揺らし始める。早くも丸山が革ジャンをサッと脱ぐと、「誰も知らない」へ突入。続く「Automatic Punk」では力強いビートと扇動的なパフォーマンスで会場の一体感は更に増していく。「今日はもう、どうなってもいいという気持ちです。全部、夏のせいにして楽しもう。ゲロ吐くまで踊ろうー!」と志磨のMC。「でも暑いからぶっ倒れないようにね!何があっても倒れないのがロックンロールでしょ!」と続けた。やがて、美しく儚いメロディとノイジーなギター・サウンドが夏空に吸い込まれていく。「Lolita」だ。志磨が首からマイクをぶらさげて、両手を目の前に広がる空に掲げると、客席からもたくさんの手が挙がった。なんてロマンチックな光景なんだろう。「さあ、ここは東京のど真ん中の神様が住む場所だよ。何の神様かな?ロックンロールの神様です!」なんて言葉にも疑いの余地がない。

 中盤からラストまでの盛り上がりが見事だった。ステージ前方を歩き回りながら〈何があっても踊り続けろ、このまま!〉と歌う志磨の姿に、さすがのカリスマ性を感じた「シネマ・シネマ・シネマ」。ボルテージは最高潮でありながら、そこまでちょっと張り詰めていた空気が一気にピースフルなムードに変わった「We Are」では丸山のギターソロも華麗にキマり、アコギとブルースハープの音色がノスタルジックだった「フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)」など、もう一瞬一瞬がハイライトとして瞼の裏に焼き付いていく。

 ステージに照明が灯ったら「トートロジー」へ。〈1位以外は 1位じゃないんだ/最高以外は サイテーなんだ〉〈…これがロックンロール、/わかんない奴は 全員くたばれ!〉――そう歌いながら、マイクをクルクルと振り回し、縄跳びみたいにぴょんと飛んでみせたりもしながら、志磨の漲るハイテンションに会場のボルテージも最高潮!そして本編ラストの曲の前にこんなMCをした。

「僕は32歳になったんだよ。それより歳下の人いる?僕より歳上の人は?……ありがとう。なんかロックンロールってさ、今、今この瞬間の話だと思ってた。昔の話なんか死んでも振り返らねえなんて思ってた。今さ、思うと、間違ったことなんて何ひとつやってなくて。だってそうだ、だって僕だもん。僕が間違うはずなんかないの。そして、僕より歳上の人、あなたたちのことを、あまり信じていませんでした、ごめんなさい。でも僕が歳上になったとしたら、絶対歳下に悪いことしない、だって僕だもん。だって僕は絶対に間違ったりしねえ!絶対正しい!絶対正しい!それがロックンロールってやつだよ!!」

 そうして、真夏の夕暮れの中をスコンと突き抜けていくみたいに「バンド・デシネ」が演奏された。色んな紆余曲折を経て4人が見つけた正しきロックンロールは、とても真っ直ぐに、確かな熱を帯びて、ここに鳴り響いていた。

 アンコールではスペシャル・ゲストとして三浦康嗣(口□□)が登場。彼は9月24日にリリースされるドレスコーズの新作「Hippies E.P.」でアレンジや演奏で参加しており、ここで収録曲となる「メロディ」、「Ghost」、「ヒッピーズ」の3曲が披露された(ちなみに本公演1曲目に披露された新曲「ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ」も収録される)。三浦が加わることで、またこれまでのバンド・サウンドとは異なる構造になり、「メロディ」では志磨がラップを披露し、「ヒッピーズ」ではステージ後方からあらわれたミラーボールが似合う軽やかかつチャーミングなサウンドで野音が真夏のダンスホールと化した。何よりメンバーが皆、楽しそうに演奏している姿にこちらもワクワクさせられた。

 ダブル・アンコールでは再び4人で登場。ラストの「Trash」では彼らの心臓部が丸ごと放り出されるような激しいセッションが見事な美しさとなって鳴らされていた。すっかり暗くなった中で、一層強い光を浴びながら懸命に演奏する彼らに、ロックンロールの祝福が舞い降りているようだった。

 これまでのドレスコーズも、そしてこれからのドレスコーズも、全て鳴らした約2時間。ほっとしたようにステージで無邪気に抱き合う4人をオーディエンスの大きな歓声が包み込んだ。彼らが暑い夏の日に見せた〈あたらしい季節の幕開け〉は、野音を丸ごと躍らせる頼もしいもので、これからのドレスコーズに大きな期待が高まった。

【取材・文:上野三樹】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ドレスコーズ

関連記事

リリース情報

Hippies E.P.

Hippies E.P.

2014年09月24日

EVIL LINE RECORDS

1. ヒッピーズ
2. ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ
3. GHOST
4. メロディ
5. 若者たち

このアルバムを購入

お知らせ

■ライブ情報

OTODAMA’14 ~音泉魂~ おかげさまで10周年!
2014/09/06(土)大阪・泉大津フェニックス

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る