「”Oh Yeah!!!!!!! TOUR”と題してしまったんですけど、『For You』が出て。『For You』が主役になってしまいまして。タイトルを間違ったなと思ってるんですけど（笑）」と、武井優心（Vo・B）がMCで漏らしたが、昨年10月にリリースしたシングル『Oh Yeah!!!!!!!』のレコ発となる東名阪ツアー。その初日となった渋谷O-EASTのライブは、新旧Czecho No Republicの楽曲を織り交ぜた、とても濃厚なライブだった。

　真っ赤なカーテンが上がらないまま、そこに5人のシルエットを大きく映し出して、「Yeah Oh!!!!!!!」からライブはスタートした。長くSEで使っていたお馴染みのインスト曲に歌詞をつけた遊び心たっぷりのこの曲は、『Oh Yeah!!!!!!!』に収録されている。そして、バサッと一気に幕が下りて5人が姿を現した「Amazing Parade」、続く「No Way」ではめくるめく賑やかなサウンドで会場をチェコ色に染め上げると、タカハシマイ(Cho・Syn)と八木類（G・Cho・Syn）が爽やかにユニゾンする優しい応援歌「Come On」へ。人気のアッパーチューンの合間に、『Oh Yeah!!!!!!!』のカップリング曲をサラリと挟み込むセットリストが新鮮だ。八木が作曲を手がけたメリー・ポピンズ風ナンバー「Sunday Juggler」も、「Call Her」「Festival」の流れに驚くほど自然に収まっていた。

　序盤を終えて、おもむろに「雪降ってます？」と客席に問いかけた武井。「降ってなーい！」というお客さんの返事に、「知ってます（笑）」と返すと、「こんな日にピッタリの曲を練習してきた」という、「Sunshine」へ。ステージの5人を照らす暖色の照明は太陽の光を思わせて、この曲の雰囲気にもピッタリだった。さらに、「新曲を持ってきたんでやっていいですか？」と、武井がMPCを片手に繰り出したのは、山崎正太郎（Dr)が打ち鳴らす大らかで力強いリズムに、八木＆タカハシによる2台のシンセサイザーがクールな浮遊感を生み出す、チェコの新境地とも言えるナンバー。前回ツアーで初めて「Oh Yeah!!!!!!!」を聴いたときもそうだが、エレクトロ路線をフィーチャーした、最近のチェコの新曲には驚かされっぱなしだ。

　中盤ではこの日O-EASTのチケットが完売したことに「ありがとう」を伝えた武井は、「ホーン隊のみんな~」と、ゲストミュージシャンを呼び込んだ。最新シングル「For You」のレコーディングに参加している、あだち麗三郎（Sax）、三浦千明（Tp）のほか、MC.sirafu（Tp）、を加えた3人を迎えた、総勢8名による「For You」だ。ゆったりと揺れる温かなサウンドに、ラッパの音が高らかに鳴り響く。同じ編成で続けた「幽霊船」では、ぐいっと高揚感を煽る転調を経て、クライマックスでは最高にハッピーな気分に。ホーン隊が退場したあと、開口一番「どうでした？」と問いかけた、武井の表情は満足気だった。

　と、ここでオールナイトニッポンのテーマソングと共にオードリーのふたりの声が会場に流れ出した。メンバーは一様に「え？」という表情。そんななか、春日が「Oh Yeah!!!!!!!」のミュージックビデオに出演したときの裏話を若林とのトークで暴露すると、「お聴き下さい。「Oh Yeah!!!!!!!」」とラジオのパーソナリティらしく曲紹介。会場のメンバーにバトンタッチされて、「Oh Yeah!!!!!!!」が始まった。この曲で武井は本編で唯一ベースを手離して、五角形のフォルムが特徴的な真っ白なファントムギターに持ち替えると、八木がシンセベースでボトムを支えていた。そんなCDだけでは気づきにくい、チェコの楽器分担がライブでは可視化されるから面白い。曲中には、金テープも会場に舞い散り、山崎は全身を使った渾身のドラムソロ。やっぱり、この日の主役は「Oh Yeah!!!!!!!」だ。

　その後、八木がハンドマイクで前に出て歌った「JOB!」では、砂川一黄（G）もステージギリギリまで前に出る。メンバーが自由に動き回るやんちゃなプレイを見せると、「みんなの声を聴かせてください。一緒に歌おう！」と、武井の力強く呼びかけた「ダイナソー」では、会場が一体となるシンガロングが湧きこった。2年前、チェコの名前を広く知らしめるきっかけともなったこの曲は、こんな大きな会場にも似合うダイナミックな曲だったのだ。そして、ラストは「ネバーランド」。フロントの4人が後ろを振り返り、ドラムの山崎に視線を集中させてタイミングを窺うと、ジャーンッとキレイに締めくくった。

　アンコールでは、まず7月12日に5年ぶりの企画ライブ「ドリームシャワー 」を復活させ、初の日比谷野音ワンマンを開催することを発表。ワッと歓声が湧いたフロアからは「おめでとー！」の声と盛大な拍手が送られた。「想像してみよう。夏、暑いな~。今日は日曜日。出かけたいな、日比谷のほうで愉快な音楽があるらしいぞ。おそらく夕方ぐらい。だんだん夜になっていく感じ。くぅ?っ！」なんて、武井は”みんな来てね”をアピールしてたけど、チェコ×野音は言われなくても絶対に気持ちいいはずだ。

　そんなサプライズ発表の興奮のなか、アンコールの1曲目「ショートバケーション」に突入した。タカハシが顔の横で両手を叩くクラップがキュート。疾走感溢れるサウンドにのせた《ALL you need is LOVEと唄ったジョンレノンは／こんなもんじゃないって言った》というフレーズが、終わりの気配にちょっと切なく届いてくる。そして、セックス・ピストルズのカバー「ANARCHY IN THE U.K.」がラストナンバー。リズムを打ち込みに任せたこの曲では、野性児なドラマー山崎は踊りながら大暴れ。重ね着していたTシャツを脱いでは客席に投げたうえ、砂川のTシャツも脱がそうする。そんな楽しいパフォーマンスに客席の誰もが笑顔でステージを見つめるなか、ライブは幕を閉じた。

　思えば、昨年2014年の秋ツアーから、『Oh Yeah!!!!!!!』を挟んで、今月も2枚目のシングル『For You』をリリース（どちらもタイアップ付き！）したCzecho No Republic。早くも2015年1発目のツアーを終え、7月は野音だ。休む間もなく制作やライブに挑み続けるのも、それだけいまのチェコがバンドとして充実した時期にある証拠だろう。

【取材・文：秦 理絵】