初ワンマン 超満員のLIQUIDROOMに水曜日のカンパネラ登場
水曜日のカンパネラ | 2015.04.08
提灯、竹、布などによる和テイストの飾り付け。時折流れる「稀に野生化したキジ、サル、イヌが襲いかかることがあります」という注意喚起のアナウンス。行き交うスタッフ、DJプレイをしているケンモチヒデフミとkussy(Fragment・術ノ穴)は鬼のコスプレ。鬼のお面(お面を自作できる画像データが公式サイトで配布されていた)や角を着用している観客が多数。赤や青の服を着ている人は缶バッジをプレゼントされるため(入り口でスタッフに「鬼ですか? 人ですか?」と訊かれる。「鬼です!」と申告すると缶バッジを貰えるシステム)、赤色と青色で埋め尽くされているフロアは赤鬼と青鬼だらけに見える……などなど。周りを見渡せば、どこもかしこも鬼ばかり。すっかり鬼ヶ島と化していた恵比寿リキッドルーム。『鬼ヶ島の逆襲』と題された水曜日のカンパネラのワンマンライブは、開演前から何やら只事ではないムードを漂わせていた。
スタート時間となり、ステージに現れたコムアイ。「安土桃山時代から鬼ヶ島に移り住んで。いいとこよお~。お酒も美味いし。桃太郎も来たよ」……黒いパーカーに身を包み、のんびりした口調で語るこのキャラクターのコンセプトは何なのか? 「誰だか分からないかな? これ、茶筅(ちゃせん)ですが。みなさんのレベルが分かったところで(笑)」。持っていた茶筅を投げ捨て、歌い始めた1曲目は「千利休」。鳴り響くトラックに合わせ、言葉を一気に溢れ返らせる歌声の威力がものすごい。ラップのようであり、ポエトリーリーディングのようでもある独特なボーカルスタイルに刺激され、満員のフロアはみるみる内に熱気で包まれていった。
「デーメーテール」や「二階堂マリ」といったダンサブルなナンバーを経て、ますます不敵に炸裂したオリジナリティ。「変わったバージョンでお届けします。と言うのも……私が一切歌いません」と言ってスタートした「インカ」は、事前の予告通り、本人の歌唱は一切なし。曲が流れる中、4人の黒ずくめのダンサーと共に格闘アクションを繰り広げるというユニークなパフォーマンスとなった。そして、観客と一緒にちゃぶ台をひっくり返すような振り付けを踊ったり、フロアに投入した2個のピンク色のボールがステージに向かって何度も弾き返された結果、図らずもビーチバレーの試合のような様相も呈してしまっていた「星一徹」。フロア内を巡りながら観客の真っ只中で歌い《♪ちーすーたろか》という大合唱を巻き起こしていた「ドラキュラ」……などなど。片時も目が離せない場面の連続となった。
カラフルな団扇を振りながら「人情!」「江戸前!」という明るいコールを誘った「お七」。《♪キ ヴィ ダーンッ》《♪お に たーいじっ》というインパクト抜群のフレーズが、人々のダンス衝動を果てしなく加速した「桃太郎」。《♪お菓子を食べればいいじゃない》と歌いつつ、コムアイがお菓子をばらまいた「マリー・アントワネット」……一度聴いたら記憶に深く刻まれてしまうだけでなく、一緒に歌ってみるのも気持ちよくて仕方がないのが、水曜日のカンパネラの音楽。その魅力はCDなどでも猛烈に煌めいているが、こうして生で体感すると一際強力だった。
「ミツコ」を歌い終えると、突然、姿を消したコムアイ。すると、入れ替わりに現れたのは、ゲストアーティストのオオルタイチ。4月15日にリリースされる水曜日のカンパネラの新作『トライアスロン』にサウンドプロデュースで参加している彼によるライブの後、コムアイは再びステージに戻ってきた。白色の衣装に着替えてきたのが目を引く。そして、初披露となる新曲「ユタ」がスタート。オオルタイチと一緒に歌ったこの曲は、何処かサイケデリックな風味を帯びたサウンドがとても心地よかった。そして、「「ユタ」は、宮古島の雨乞いの神歌をもとにして作りました。次の曲は北海道の歌です」というMCを経て、これも新曲「シャクシャイン」へ。トライバルなビートに合わせてクラップし、飛び跳ねて踊る観客の勢いがものすごい。「知らない曲でここまで盛り上がるっていうのも才能だよ!」と、コムアイはとても嬉しそうだった。
サウンドプロデュースを手がけたOBKR(N.O.R.K.)も加わって披露された「ナポレオン」の後、迎えたインターバル。「「ナポレオン」は、私の中で東京の歌。次にやるのも新曲。大阪の歌です。ダースを数えるところを一緒にやってください。あと……3、40回繰り返すと、一緒に言った方がいい雰囲気になるんだろうな(笑)」と言い、歌い始めたのは「カーネル」。彼女の事前の呼びかけに応え、1ダースから6ダースまでを数える歌詞に合わせて観客が指を掲げて盛り上がったのは勿論、何度もリピートされる《♪道頓堀》というフレーズも熱いコールを誘っていた。
「嫌な予感がしてるかもしれないけど、あと1曲。次が最後です(笑)。次にやるのは私が愛してやまない銭湯の曲。一緒に歌えますか?」と呼びかけ、スタートするのかと思いきや……ここで突然挿入されたオリジナルグッズの紹介。幼少期に遊んだ思い出があるのだというパズルをついに商品化したことを大喜びし、強力にオススメしていたのが印象的であった。そして、ラストの曲「ディアブロ」へ。観客は身体を火照らせながら、恍惚の表情を浮かべて踊る。丁度良い湯具合の温泉に皆で浸かっているかのような一体感が、会場全体に広がっていた。歌い終わると、「ありがとうございました!」とお辞儀をしてステージを後にしたコムアイ。彼女に向かって、大きな拍手が届けられた。
ライブ中にも発表されていたが、6月から7月にかけてワンマンツアー『トライアツロン』が行われる。全国6ヶ所を巡るこのツアーを経て、水曜日のカンパネラはさらにたくさんの人々を魅了していくのだろう。今後の活動も要注目だ。
【取材・文:田中 大】
【写真:上飯坂一】
セットリスト
初ワンマン「鬼ヶ島の逆襲」
2015.3.29@恵比寿・LIQUIDROOM
- 千利休
- デーメーテール
- 二階堂マリ
- インカ
- チャイコフスキー
- 星一徹
- ドラキュラ
- お七
- 桃太郎
- マリー・アントワネット
- ミツコ
- flower of life
- Makin a case for magic
- Futurelina
- Beshaby
- ユタ
- シャクシャイン
- ナポレオン
- カーネル
- ディアブロ
お知らせ
水曜日のカンパネラ・初ワンマンツアー ~トライアツロン~
2015/06/12(金)福岡 voodoo lounge
2015/06/13(土)沖縄 Output
2015/06/20(土)札幌 Sound lab mole
2015/07/10(金)大阪 Shangri-La
2015/07/11(土)名古屋 CLUB UPSET
2015/07/15(水)東京 キネマ倶楽部
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。