THE BACK HORNが新たな試みでオーディエンスと呼応しあったスペシャル・ライヴ
THE BACK HORN | 2015.05.13
「『KYO-MEI SPECIAL LIVE』~人間楽団大幻想会~」と銘打った、THE BACK HORNの渋谷公会堂公演は、彼等らしいラウドで緊張感溢れるヴォーカルや熱気渦巻くサウンドを軸にしながら、まさに楽団というに相応しい演奏で幻想的な世界に誘った素晴らしいライヴだった。
ステージ前の紗幕越しに始まった「航海」は、たゆたう波のような照明の中で”めかるストリングス”(バイオリン:銘苅麻野・雨宮麻未子、ビオラ:須原杏、チェロ:佐藤万衣子)と共に落ち着いた演奏と歌で聴かせ、紗幕を落として力強いバンド・サウンドで引き締めた「光の結晶」で一気に会場の温度を上げた。「ようこそ渋公へ! 最高の夜にしようぜ!」と山田将司(Vo)が呼びかけるまでもなく、「涙がこぼれたら」では場内が揺れた。菅波栄純(G)はテンポよくジャンプしながらリフを弾き、岡峰光舟(B)は足を床に打ち付けビートを刻む。松田晋二(Dr)は、そんな3人を見ながら確かなリズムを叩き出していた。
松田が「今夜はスペシャルな感じで、バックホーンの曲が色々な彩りを交えながら進んで行く」と予告。そして「椅子席ですけど気持ちはライヴハウス」と笑顔を見せたが、曲が始まると瞬時に空気が変わったのは,彼等の本領発揮というところ。
ソリッドなギターで始まり柔らかな歌で終わる「罠」からタイトル通りの落ち着きと軽みがある「ひょうひょうと」、そしてマニッシュなコーラスにオーディエンスも加わった「バトルイマ」で骨っぽさ全開になったところで、山田が言った。「新曲やっていいか?本邦初公開。聴いてくれ!」。期待のこもった歓声の中、パンキッシュなリフから始まった新曲は、中盤でヘヴィなサウンドに展開する彼等らしいナンバー。その流れを受けた「舞姫」はキーボードとストリングスが加わってスケール感のある曲を立体的に聴かせ、岡峰のベースが唸った「アカイヤミ」は絶叫する山田の回りで菅波は激しく動き、かと思うと膝で歩いたり仰向けになってギターを弾いて、押さえきれない感情を表した。キーボードやストリングスが入っているからか、菅波はいつもにも増して奔放だ。
一息入れた松田が、同会場では2006年以来であり、それが初ホール・ライヴだったと振り返る。そしてここが間もなく改修されたら「この匂いがもうないということですよ」と感想をもらした。また8年前には「C.C.レモンホールだったから,渋公ワンマンは初めてかも」と岡峰。それぞれにこの会場には思い入れがあるようだ。菅波の話が脱線しそうになるのを抑えて、山田はキーボードの曽我淳一を紹介し「今日のスペシャル・ライヴ、僕らも楽しみにしてました。より特別な日にしていこうぜ」と呼びかけた。
スペシャル感が強まったのは、「冬のミルク」「白夜」「泣いている人」「美しい名前」と続いた中盤だ。インディーズ時代の代表曲「冬のミルク」はクラビネット風のキーボードが柔らかなグルーヴを生み出し、それに乗って菅波がシンプルなギター・フレーズで曲を膨らませた。また「白夜」はメロトロンを加えた上にダブ仕立てのギターとベースが新味を出して、オーディエンスのハンドクラップを呼び込んだ。驚いたのは最近殆ど演奏したことがない初期作品「泣いている人」にストリングスが入ることで、スケール感のある演奏となり、語りかけるような歌をいっそうドラマチックに聴かせたことだ。更に「美しい名前」へと違和感無く繋がるものになっていたのはストリングスが入ったアレンジの効果もあるが、彼等の曲が持つ一貫性と、曲を咀嚼し歌い継いで行く強い思いに触れた気がした。息を呑むような曲に大きな拍手が送られると、彼等は目下新作に向けて製作中で「今日のライヴを胸に曲を作り、また皆さんに聴いてもらいたいと思います」と松田。山田は「明日からの日々を乗り越えて行こうぜ!」と自分たちも含め鼓舞するように声を張り上げた。
ダイナミックなリフをストリングスが奏でた「戦う君よ」はアグレッシヴな演奏に煽られた山田が全身を絞るようにシャウトし、「シンフォニア」では起伏に富んだ演奏の中でオーディエンスのハンドクラップだけで歌うシーンも。もはやどんな形になっても演奏のテンションは変わらず、山田・菅波・岡峰が揃ってステージの前面ギリギリまで踏み出しオーディエンスと心を通わせた「ブラックホールバースデイ」は極上のカオスで会場を包み込んだ。
山田が「最高の夜になりました、どうもありがとう。また会いましょう」と告げた本編最後の曲は「世界中に花束を」。菅波のギターで山田が歌い始めると、ステージ後方が明るくなり20人ほどのコーラス隊が浮かび上がった。自然とオーディエンスも歌い出し、これぞ人間楽団だ。そんな場内を見渡しながらTHE BACK HORNの4人は演奏に熱を加え、歌を場内に満たして行った。
アンコールに応え再び4人は姿を見せ、山田が「最高の夜だ。もう1曲、新曲やっていいか?」と言うと、菅波のギターがパンキッシュなリフで斬り込んで来た。骨っぽいタッチが、いかにもTHE BACK HORNらしい。そして山田が「生きてまた会おうな!」と呼びかけたラスト・ソングは「コバルトブルー」。この4人ならではのダイナミックなバンド・サウンド全開でオーディエンスと共に歌った曲は、スペシャルな日にふさわしい熱のこもったエンディングになった。彼等が掲げる「KYO-MEI(共鳴)」という精神に新たな試みを加えてバンドはオーディエンスと呼応し、このライヴのタイトル通り”人間楽団”になっていた。
8年前にこのステージに初めて立った4人は、深い闇から現れた精霊のようにもがきながら4人だけの強固な音を奏でた。今は多くの人と共鳴しながら自分たちの楽曲を伝えている。そんな彼等の足跡もこの日は見せていたと思う。これを糧に彼等は、更に前進して行くに違いない。
【取材・文:今井智子】
【撮影:RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)】
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リリース情報
[DVD] 光の音色 -THE BACK HORN Film-(初回限定盤)[2DVD]
2015年03月04日
ビクターエンタテインメント
映画『光の音色 -THE BACK HORN Film-』(85分)
劇中挿入歌
1. 月光 (10th Album)
2. 生命線 (7th Single/3rd Album)
3. シリウス (20th Single/9th Album)
4. 罠 (16th Single/7th Album)
5. 幸福な亡骸 (3rd Album)
6. アカイヤミ (1st Album)
7. ブラックホールバースデイ (11th Single/5th Album)
8. コオロギのバイオリン (Lyric Book)
9. 何処へ行く (Indies 1st Album)
10. コバルトブルー (9th Single/4th Album)
11. シンフォニア (9th Album)
[DISC-2] 特典映像(54分)
1. 「何処へ行く」 (Indies 1st Album)
※演奏シーン本編未収録
2. 「雨」 (1st Album) ※本編未収録楽曲
3. ライブパートメイキング
4. ドラマパートメイキング
5. 効果音レコーディングメイキング
6. 先行上映会&初日舞台挨拶ドキュメント
7. 特報
8. 本予告
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2015/08/14(金)、15(土)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
※出演日は後日発表
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。