ケラケラが開催している全国ツアー「ケラケラ TOUR 2015 ~ケラり途中下車の旅~」の東京公演、TSUTAYA O-EAST。およそ2ヵ月をかけて全国18会場で行なう今回ツアーの中盤戦で見たのものは、自分たちらしいポップミュージックのあり方を掴みとったケラケラの楽しさいっぱいのステージだった。

　今回のツアーは乗り物がテーマということで、駅のホームで流れる発車音を合図にメンバーが登場。衣裳をストライプのシャツで揃えたふるっぺ（Dr）と森さん（B）、ビビッドな赤いワンピースを着たMEME（Vo）を会場は拍手で迎えた。オープニングを飾ったのは「ハジマリ！」。《まっさらなままの明日を／笑顔でつかまえようよ》というポジティヴな言葉がMEMEの伸びやかな歌声にのる。続く「笑ったもん勝ち」は、笑顔がモットーのケラケラらしいナンバー。「地元に帰ってきてうれしいです！アハハハッ！」と、語尾に笑い声を重ねるのが口癖のMEMEのトークも元気いっぱい。今朝、札幌から帰ってきたばかりらしいが疲れを微塵も感じさせないテンションの高いパフォーマンスを繰り広げていく。

　年明けからケラケラはツアーに向けて新曲を次々とYou Tubeで発表してきた。そんな新曲――切ない恋心を描いた「恋は桜のように」や、MEMEの実体験をもとにした「別れ話」などは、紙芝居を交えてストーリー仕立ての演出で届けた。紙芝居の語りは森さん、イラストはMEME、バックミュージックはふるっぺが担当。3人が得意分野をフル活用して作り上げた（森さんは過去の声優経験があるそうだ）温かい手作り感もケラケラらしい。

　そんな和やかなムードを引き締めたのがマイナー調のロックチューン「アンサー」だった。ふるっぺの安定感のあるベースが唸りを上げ、森さんは長身を生かしたパワフルなプレイを見せると、続く「ピッピッピ」では曲中でソロ回しも披露。振り返ると最新アルバム『ケラケランド』はメジャーデビュー以来ケラケラがライブを重ねていくなかで、自分たちに足りないものを意識しながら制作した作品だった。そこで獲得した楽曲の豊かなバライエティはいま強力な武器としてライブを彩っている。

　そして、3人がアコースティックギターで奏でた「友達のフリ」のあと、仰天のパフォーマンスを見せたのは新曲「ミックスジュース」。バナナ、ミカン、リンゴ、キウイ~♪という誰もがすぐに口ずさめるようなメロディにのせて、なんとステージにミキサーを持ち込み、ミックスジュースを作ってしまった！このコーナーは題して“KERA’S KITCHEN”。しかもジュースには各地の名産品も混ぜるのがルールで、ここ東京ではもんじゃ味のベビースターと、北海道で買ってきたロイズのポテトチップチョコレートを投入。試しに飲んだ森さんとふるっぺは「マズッ！」に身を捩らせたが、会場は大ウケだった。

　「ケラケラじゃんけん」ではライブでは定番となった賞品付きのじゃんけん大会。先ほどの「ミックスジュース」もそうだが、ケラケラが考案する“音楽を使った遊び”は、全て圧倒的なポピュラリティーを持つケラケラの音楽性があればこそ成立するものだ。もとはライブの盛り上げを重視して作ったじゃんけんソングだったが、CD化にあたり、歌詞に《誰かは誰かに負けるけど／誰かは誰かに勝てるんだ》《ミサイルよりもじゃんけん》というフレーズも加わった。いまでは普遍的な輝きも持つケラケラきっての名曲になったと思っている。

　ライブの締めくくりには「スターラブレイション」「ろーりんぐでいず」といったアップテンポのナンバーで会場を一体にするタオル回しがを巻き起こしたケラケラ。
　終演後、会場の外で配られたビラのなかに「本日のセトリ」が封入されていた。おそらくMEMEの手書きであろう、可愛いイラストとメッセージも寄せられている。
　それを見てふと気づいた。この日のライブは、紙芝居も「ミックスジュース」にしても、大がかりな演出は一切なく、メンバー自身の工夫と人柄で楽しませてくれる手作り感溢れるライブだった。まるで「ちょっと一緒に遊ぼうよ！」とでも誘うような気の置けない親密な空気感が築きあげていた。そんな客さんとの近しい関係こそ、ケラケラが目指す独自のポップミュージックのあり方なのかもしれない。

　残り半分を切った「ケラり途中下車の旅」。ファイナルの6月20日 福岡DRUM Be-1まで、ケラケラが全国に笑顔を咲かせる旅は続いていく。

【取材・文：秦理絵】