阿部真央、全国ツアーを無事完走!! “熱くて、温かい”、ファイナル公演を完全レポ
阿部真央 | 2015.06.15
“阿部真央 らいぶNo.6” は、最新アルバム『おっぱじめ!』のツアーでありながら、これまでのキャリアの集大成でもあり、さらには新しい試みも取り入れるという意欲的な内容。そのファイナルは東京国際フォーラムで行なわれ、“熱くて、温かい”成功を収めたのだった。
今年1月と3月、阿部は入籍と妊娠を立て続けに発表。その時点で 決まっていたツアーを敢行することも決めた。“身重”の状態でのライブを心配する声もあったが、ついにこの日ファイナルを迎えることができた。だからオーディエンスの無事を喜ぶ気持ちが加わって、いつものファイナル以上に開演前から熱気が渦巻く。
青い照明の中、登場すると、阿部はエレキギターを掻き鳴らしながら『おっぱじめ!』の1曲目「這い上がれMY WAY」を歌い出す。声のパワーが、大きな会場を一瞬にして満たす。期待以上の滑り出しだ。続く「優しい言葉」も『おっぱじめ!』からのナンバー。こんなに明るい歌だっけ?と思ってしまうほど、阿部の声がブライトだ。とどめはデビュー曲「ふりぃ」。強引なメロディを、無理なく歌う。この曲を何度もライブで聴いてきたが、これまででいちばんの出来だった。完全に阿部のペースでライブはスタートした。
ここまでの3曲で、阿部は3つの色の声を使い分ける。「這い上がれMY WAY」ではキュートな声、「優しい言葉」はストレートな声、「ふりぃ」は図太い声と、曲調によってメインの声を自在に操る。次の「春」では、悲しい声。今日のライブでは、一体いくつの“阿部の声”を聴けるのだろうか。
「ありがとう! 無事、ファイナルを迎えられました。ツアー前に心配をお掛けしましたけど、リハに入ったらかえって体調がよくなっていって、ここまで来れました。今日も身体に気を付けながら、できる限りのパフォーマンスをしたいと思います。ここからは初の試みです。私も椅子に座るので、皆さんも座ってゆったり聴いてください」。
これまで阿部はライブで、自分から座って聴いてと言うことはなかった。そんな試みの最初の曲に選ばれたのは、「深夜高速」。『おっぱじめ!』で僕がいちばん好きな曲だ。阿部は今までたくさんのラブソングを作ってきたが、この「深夜高速」は最も微妙な恋愛心理を描いている。自由と孤独、縛らないけれど、手放さない。つい曖昧な関係 を続けてしまう“恋の不思議な矛盾”を描くこの歌は、陰影のある真実を衝いている。それを阿部は、とても丁寧に歌い切った。
この歌は、キュートさや悲しみといった“単色の声”では描き切れない。聴けたのは、複雑に混じり合った色彩の、阿部の声だった。初めて見る大人のシンガー“阿部真央”が、そこにいた。これを聴けただけで、僕は危うく満足し切ってしまうところだった。
“初の試み”は、もう一つあった。それは「ポーカーフェイス」から連なる“メドレー”だった。座って聴くコーナーの正反対。“ポップな阿部”を贅沢に詰め込んだスペシャル・エディットに、オーディエンスはタオルを回して大喜び。途中に織り込まれたメンバー紹介にはメンバー間の“いい関係”が盛り込まれていて、このツアーがいかに楽しかったかが手に取るようにわかった。このメドレーも、聴けてよかった!
「メドレー、楽しかった? 少し話そうか。今回、ツアーに出るにあたって、“大丈夫?”って心配してもらったり、もちろん批判もありました。正直、やってみないとわかりませんでした。だから今、本当に何事もなく、最高なファイナルを迎えられて幸せです。私自身、並々ならぬ決意で臨みました。だって、妊娠してたから、あのツアーはよくなかったって言われたら、皆さんと生まれてくる子に胸を張れない。無理はせず、でもやれることは全部やるって思ってましたから、こんなに楽しんでいただけて感無量です。今年の秋頃、お母さんになります。少し間が空くかもしれませんが、できるだけ早く戻ってこれるように頑張りたいと思ってます」と言って、阿部は深々と一礼した。
ラストの「ロンリー」は、キュートさに力強さをミックスした声で、阿部は会場と一体になった。今の音楽シーンで最も充実している女性シンガーソングライターだという証を、阿部は大勢のオーディエンスの前で堂々と示してみせた。
アンコールの“コスプレ・コーナー”はエプロン姿の“新妻ルック”。ピンクの“どこでもドア”から登場してニューアルバムの人気曲「麹町」を踊りながら歌う。たぶんこの曲を作っている時から、この振付を頭の中で描いていたのだろう。
ダブル・アンコールは一転して、一人でアコギの弾き語り。 彼女をこのステージに連れてきてくれたアマチュア時代の代表曲「母の唄」がラスト・ナンバーだった。母になる前の最後の曲が「母の唄」とは!
終演後、僕は阿部に「母になった直後の歌も作って」とリクエストすると、阿部は「は~い」と笑顔で答えてくれたのだった。
【取材・文:平山雄一】
リリース情報
セットリスト
阿部真央らいぶ No.6
2015.5.31@国際フォーラム ホールA
- 這い上がれMY WAY
- 優しい言葉
- ふりぃ
- 春
- 走れ
- 深夜高速
- words
- じゃあ、何故
- 天使はいたんだ
- always
- いつの日も
- Hello, Jewelry Smile
- Marry me baby I love you
- メールのお尻にハートマーク
- メドレー~ポーカーフェイス、I wanna see you、プレイボーイ、世界はまだ君を知らない~
- モットー。
- Believe in yourself
- ロンリー
- 麹町
- want you DARLING
- それぞれ歩き出そう
- 相模ナンバーのグランドキャビンに乗って
- 母の唄