歌を介してオーディエンスと繋がったPUSHIM LIVE TOUR 2015”PEACE ALIVE”!
PUSHIM | 2015.06.23
日常の会話ではなかなか言えないことも、歌に込めれば素直に届けることができるーー特に新譜のリリースに伴うツアーではない今回の「PEACE ALIVE」は、そのタイトルが示唆する通り、今、PUSHIMがどうしても歌を介してリアルにオーディエンスと繋がりに行きたい!という気持ちが強かったのだと、ライブ序盤から実感した。なお、現時点で後半戦のツアーも進行中なので、セットリストなどの詳述は避けておく。
すっかり彼女のライブ空間おなじみの光景になった、子供から上は60、70代(!?)まで親子三世代的な客層の広さは、とても居心地がいい。好き勝手に動きまわり、歓声・奇声を上げるキッズたちを誰も怖い顔で睨んだりしない。それどころか最前列で子供を高い高いしてノッているパパもいるぐらいなのだ。それぐらい自然と誰もが寛容になれる音楽がここにあるからなのだけど。いつものようにHome Grownのイントロダクションに乗せ会場全体がいい具合に温まったところにPUSHIMが登場。曰く「30代最後のおさげ!」と茶目っ気たっぷりにファンからの「かわいい!」というエールに応えたヘアスタイル、衣装がカジュアルかつカラフルだ。そして、アルバム括りや周年括りがない中、ツアー・タイトルが示唆するようにビッグラブ、そしてワンラブを表現した普遍的なアンセムが続々、披露されていく。序盤から名曲「FOREVER」や「Light Up Your Fire」を配して、近づいてくる夏の気配をバンドのカラっと乾いた極上のサウンドとともに醸成していく。すっかりおなじみになった松田聖子「瑠璃色の地球」のカバーも、2015年の今、そして6月という季節の中で聴くと、守りたいものへの希求がさらに色鮮やかにこちらに届いてくる。もはやオリジナルもカバーもPUSHIMが歌えばPUSHIMの力強さとしなやかさに収斂される様を見ると、日本の昭和やアメリカの50、60年代のソウルシンガーやポップスシンガーが歌い手として身一つで勝負し、その力で世界を魅了していた時代を彷彿とさせる部分さえある。
温かい拍手と歓声に応えて感謝の言葉を述べ「今年、まだ1枚も出してないけど、いち早くみんなに会いたくてツアー始めました」と、今回の意図を語る。矢継ぎ早に「急速に事態は変わっていくよね。一触即発の時代になってきてるかもしれない。でも音楽ができる時間は、明日へのヒントを見つけられるかもしれない。一緒に探していこう」と、早々に最初のゲストであるキヨサク(MONGOL800)を迎え入れての「ララバイ」のデュエットの暖かさ。アコースティックセッションの趣きで丹念に言葉を紡ぐ二人のハーモニーは、サプライズとかゲストとかそんな一瞬の驚きを越え、とてつもなく普遍的でこのツアーのテーマにも直接つながる大きな物語を表現していたように思う。そのままオーガニックなヒップホップ・テイストの「Dear~I Pray(Short ver.)」に繋いだブロックは心がマッサージを受けたような気持ちに。
もちろん、オーガニックでリラックスしたレパートリー以外にもこれからの灼熱の季節を想起させる熱いマイナーチューンや、ある種のハードさが際立つナンバーも盛り込み、緩急のツボを押さえた展開でフロアを沸き立たせるPUSHIM。特にコシの強いリズム隊のグルーヴに乗ってしなやかに踊り歌う「Sorry Mama」は、自分自身も守るべき者を保つ母であると同時に、自分がどんなにダメダメな状態でも受容し叱咤してくれる母に向けてのラブソングであり、特に女性ファンにとっては、身にしみる部分が大きいナンバーだ。この演奏を聴いているときに(もちろん他のレパートリーもだが)既にジャンルがレゲエであるとかどうとか考える人がいるだろうか。しかしやはり同時にPUSHIMの楽曲はサウンドもビートも歌唱もレゲエに裏打ちされているのも間違いない。改めて彼女の歌とメッセージの普遍性の強さを実感した場面だった。
また、個人的に涙腺が崩壊した、彼女にしかできないリスペクトに満ちたトータリティのあるカバーナンバーのブロックが用意されていたのだが、こちらはこれからライブを生で体験する人だけのお楽しみとしてシークレットということにしておきたい。そして、その感動の余韻の只中で、彼女が語りだす。「今年は戦後70年。その後の時代を私たちは生きています。私はいろんな人といたから人と繋がって、笑えて、時には怒られて、それでこうしていられる。そんなときがなくなるのは悲しい、そうならないように今が戦前にならないように」という明確な言葉を発したのだ。そしてまだ正式なリリースは決定していないものの、今回のツアーのために書かれたというライブの要となる「Keep Peace Alive」という心を揺さぶるバラード、いや前向きなエレジーと呼んだほうがいいのかもしれない、その曲をお腹の底から歌い上げてみせたのだ。人が生きようとするとき、過酷な状況に置かれたとき誰に何を言うのか?物語として秀逸な歌詞の世界をこれからライブで体験する人は、全身、全細胞に染み渡らせてほしい。
また、彼女の最新のトライアルである韻シストとの共演もライブで実現したことも、音楽的な見せ場になっていたのは間違いない。タワーレコードの<歌姫×韻シスト>コラボレーション企画の第2弾として、Charaに続き韻シストからの熱烈なラブコールに応え実現したオリジナルナンバー「Don’t Stop」。生音ヒップホップバンドながらスタイリッシュに削ぎ落としたサウンドに乗せて艷やかで軽快なPUSHIMの歌が跳ねる。しかも韻シスト・アレンジでの「FOREVER」までプレイしてくれるというレアな場面も。60年代のシンプルで音の豊かさで聴かせるソウルフレイバーもあり、少しアラバマ・シエイクスを想起させる新鮮さに思わず声を上げてしまったぐらいだ。
ゲストもカバーも必然に満ちたステージを展開したPUSHIM。硬派なテーマを掲げつつも、それがちっとも大げさに思えなかったのは、若い母親と子供たちもいるオーディエンスの層の厚さも理由のひとつかもしれない。彼女の歌がもっとさまざまな場所に届いてほしい、今、心底そう願う。
【取材・文:石角友香】
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リリース情報
15th -THE BEST OF PUSHIM-
2014年06月04日
Ki/oon Music
2. I pray
3. FOREVER -2014ver.-
4. a song dedicated -2014ver.-
5. RAINBOW
6. 夕陽
7. My name is...
8. Strong Woman
9. 誓い feat. MIHIRO ~マイロ~
10. I Wanna Know You
11. Hooray
12. That’s my blues song
13. Rain or Shine
14. HEAT feat. EGO-WRAPPIN’
15. ララバイ feat. キヨサク(MONGOL800)
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お知らせ
PUSHIM LIVE TOUR 2015 “PEACE ALIVE”
2015/06/26(金)大阪府 Zepp Namba
2015/06/28(日)千葉県 柏PALOOZA
2015/07/03(金)埼玉県 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ?3
2015/07/09(木)宮城県 仙台 Rensa
2015/07/11(土)福島県 郡山Hip Shot Japan
2015/07/31(金)富山県 MAIRO
2015/08/02(日)石川県 金沢Eight HALL
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。