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「チャットモンチーの求愛ツアー(ハート)2015」 Zepp Tokyoツアーファイナル

チャットモンチー | 2015.07.15

 チャットモンチー名物の対バン・イベント“求愛ツアー♡2015”のファイナルを観た。
 広島での柳沢慎吾を皮切りに、ハナレグミ、スチャダラパーなど今回も豪華な対バンを行なったが、東京の求愛相手は、なんとGLAY。チャットモンチーが小学校の頃からファンだったいう、文字通り夢の対バンとなった。

 オープニングは、このツアーのシンボルであるクマのアニメーション。 フロアから「かわいい!」のため息がもれる。その声を聞いた感触としては、会場を埋めたオーディエンスは、チャットモンチーとGLAYのファンがほぼ半々くらい。いいイベントになりそうだ。

 アニメを映していたスクリーンが切って落とされると、最初に登場したのはGLAYだった。スクリーンが開ききる前に、「口唇」が始まる。GLAYの単刀直入なスタートに応えて、オーディエンスも瞬時にピークの盛り上がり。その後も「ROCK’N’ROLL SWINDLE」、「誘惑」と畳みかける。初めて対バンするチャットモンチーに対して、敬意と愛情を込めたセットリストに胸がジーンとする。
「ファイナルの相手に選ばれて、嬉しいです。チャットモンチーは妹みたいな存在なので、一緒に楽しめたらなと思います。今日は男が多いね。闘ってる男に捧げます」とTERUが言って、歌い始めたのは「SOUL LOVE」だった。
 中盤でチャットモンチーの「真夜中遊園地」をカバーすると、すべてのオーディエンスが歓喜の声を上げる。JIROナンバーの「SHUTTER SPEEDSのテーマ」でも同様な反応があり、二つのバンドを繋ぎ合わせている鍵がここにあると思った。
 ラストの「HEROES」まで、一気にたたみかけるパフォーマンス。妹みたいなチャットモンチーのファンの前でも、少しの力みもないのがさすがだ。メロディの良さを活かしながらもパワフルな、GLAYらしい演奏が爽やかに感じられた45分間だった。

 インターバルも客席のざわめきは静まらない。GLAYの心を込めた演奏と、これから始まるチャットモンチーに対して、みんなが真っ直ぐな好意を持っている。そんな熱気を受け止めるように、チャットモンチーの地元徳島のテレビ局が制作した情報番組が流されて、会場はますますいい雰囲気になっていく。

 チャットモンチーは4人のサポートメンバーがまずステージに現われた。ニューアルバム『共鳴』に参加した“男陣”の恒岡章(Dr)と下村亮介(Kyd&G)、“乙女団”の世武裕子(Pf)と北野愛子(Dr)だ。
 ドラムの高橋久美子が脱退した後、橋本絵莉子と福岡晃子は二人だけでアルバム『変身』を作り、バンドの方向と音楽をしっかり確かめた。その上で、今回の『共鳴』は制作された。曲によって橋本と福岡に“男陣”や“乙女団”が加わったりする自由度の高い音楽作りは、そのまま彼女たちの自由な音楽の発信を可能にした。それだけに、そんな事情を詳しく知らないGLAYのファンに対しても、最大限の心遣いをしたライブになった。それはもしかするとインタビューを読むよりもチャットモンチーの“今”を知ることができる、一風変わった、しかも素晴らしいライブだった。

 下村がギターで「変身」を弾き始めたのを合図に、4人の演奏が始まる。そこへハンドマイクを持った橋本と福岡が合流。まずは二人のキラキラしたハモ・サウンドを会場にプレゼンテーションする。その後、橋本はギターを、福岡はベースを持つ。男女ツインドラムのビッグビートが、GLAYの後という大舞台にふさわしい響きを轟かせる。歌詞はこの日のためのスペシャル・バージョンになっていて、♪求愛しよう♪、♪共鳴しよう♪、♪GLAY兄さん♪というフレーズをコール&レスポンスする。6人での「きみがその気なら」「シャングリラ」も華やかで、初めてチャットモンチーを観る人にもわかりやすく、ずっと見守ってきた人には新しい魅力を冒頭のたった3曲で伝え切った。

「ようけ、残ってくれててよかった」と福岡。
「ありがと~」と橋本。
「最高でしょ、今日の夜」と福岡。
「起きとるのに、夢みたい」と橋本。
 夢のような対バンを素直に喜ぶ二人の気持ちが、フロアに溢れ出す。間違いなく、今年いちばんの対バンだ。

 目まぐるしくバンドセットを入れ替えるのに、とても自然にチャットモンチーの音楽が楽しめる。「ぜんぶカン」でキャップをかぶった二人は「YOYO」と遊び心満載。次の「最後の果実」は、“チャットモンチー版80年代アイドル”リスペクト曲で、橋本はピンクのワンピースにカクテルハット風のつば広帽子のコスプレ姿で歌う。さすがにGLAYファンの一部には唐突だったようで、歌った後で説明する二人が面白い。

 アンコールでは6人に加えて、チャットモンチーのTシャツを着たTERUが登場して、「俺たちも憧れの対バンだった」と挨拶すると、福岡が「ヤバい、ヤバい。私たち、GLAYさんをカバーするんだけど、演奏できなくなる。あ、本人がいるからカバーじゃないか!」と舞い上がる。「タイトル、一緒に言ってもらっていいですか?」と3人一緒に「グロリアス!」と叫んだのだった。
 完コピ演奏をバックに橋本が歌い始めると、会場から「かわいい!」という声が上がる。演奏が完コピだけに、条件反射的にTERUの声をイメージしていた僕も、膝の力ががっくり脱ける。「いい曲だぁ、いい声だぁ」と、思わずつぶやいてしまった。それはチャットモンチーが心からGLAYを愛していることと、音楽が受け継がれていく楽しさから生まれた言葉だった。さらにはGLAYの曲を、Hi-STANDARDのドラマー恒岡や、くるりに参加していた世武が演奏しているという重層的な意味合いもあった。

「この対バン、見れて幸せ!」とつくづく感じた一夜だった。

【取材・文:平山 雄一】
【撮影:古渓一道】

tag一覧 ライブ バンド チャットモンチー GLAY

リリース情報

共鳴(初回生産限定盤)[CD+DVD]

共鳴(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2015年05月13日

Ki/oon Music

[CD]
01. きみがその気なら
02. こころとあたま
03. ぜんぶカン
04. 隣の女
05. 毒の花
06. 私が証
07. 楽園天国
08. 最後の果実
09. 例えば、
10. いたちごっこ
11. ときめき
12. ドライブ

[DVD]
Music Video
01.こころとあたま/02.いたちごっこ/03.ときめき/04.隣の女

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セットリスト

チャットモンチーの求愛ツアー♡2015
2015.7.1@Zepp Tokyo


GLAY
  1. 口唇
  2. ROCK’N’ROLL SWINDLE
  3. 誘惑
  4. SOUL LOVE
  5. HOWEVER
  6. 真夜中遊園地(チャットモンチー Cover)
  7. 百花繚乱
  8. 微熱Ⓐgirlサマー
  9. 彼女の“Modern…”
  10. SHUTTER SPEEDSのテーマ
  11. HEROES
チャットモンチー
  1. 変身
  2. きみがその気なら
  3. シャングリラ
  4. こころとあたま
  5. いたちごっこ
  6. 東京ハチミツオーケストラ
  7. 私が証
  8. ぜんぶカン
  9. 最後の果実
  10. ときめき
  11. 隣の女
  12. Last Love Letter
  13. 例えば、
アンコール
  1. グロリアス(GLAY Cover)
  2. ドライブ

お知らせ

■ライブ情報

チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~
2016/02/27(土)アスティとくしま
2016/02/28(日)アスティとくしま

秋のワンマン公演 男女6人6ヶ所巡り
※ワンマン公演、男陣&乙女団Mixでのツアーとなります
2015/10/2(金)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2015/10/3(土)神戸 SLOPE
2015/10/6(火)高知 X-pt.
2015/10/7(水)徳島 club GRINDHOUSE
2015/10/23(金)盛岡club change wave
2015/10/30(金)金沢EIGHT HALL

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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