Czecho No Republic「聖なる行進TOUR」Zepp DiverCityをレポート
Czecho No Republic | 2015.10.28
会場に足を踏み入れると、Zepp DiverCityの壁には真っ白な布が無造作にあしらわれていた。この日は、Czecho No Republicが9月9日にリリースしたアルバム『Santa Fe』のリリースツアー「聖なる行進TOUR」のスーパーファイナル。と、当時にバンドの結成5周年を祝う一夜限りのスペシャル公演だ。すでに最近のライブではお馴染みとなった、全員が白で統一した衣装を身に纏い、メンバーが登場した。「よろしくお願いします!チェコ・ノー・リパブリックです!」と、力強く叫んだ武井優心(Vo・B)。ステージに美しい光が溢れ出すと、1曲目は「Oh Yeah!!!!!!!」。その第一声が、《Yeah!!!!!!!》と力強く響いた瞬間、いきなりフロアに金テープが舞った。続けざまに山崎正太郎(Dr)が長身を生かしてパワフルにドラムを叩き、「Amazing Parade」へ。開始早々、一気にフロアを最高のテンションへと誘うダイナミックなパフォーマンスは、これまで何度も見てきたチェコのライブをはるかに上回る、そんな手応えがあった。だが、これは長いライブの序の口。チェコは、この日いくつものハイライトを重ねながら、かつてない感動的な景色を作り上げることになる。
この日のセットリストは『Santa Fe』の楽曲はもちろん、メジャーデビューを飾ったアルバム『NEVERLAND』のリード曲「ネバーランド」をはじめ、武井と並んでチェコの音楽的な柱でもある八木類(Gt・Cho・Syn)が加入後に初めて作った「絵本の庭」や、2011年「絶対に売れると思った」と意気込んで、初めてMVを作ったという当時の押し曲「マサチューセッツ」など、その曲の背景にある特別な意味も丁寧に伝えながら披露された。「今日はふだんはやらない昔の曲もやろうと思うので、どれぐらい盛り下がるか楽しみです(笑)」とは、皮肉屋の武井らしい発言。こんなとき、武井の横で「これこれ」と嗜めるのが、砂川一黄(G)のお約束だが、チェコがいま鳴らすべきサウンドへとアップロードされた懐かしい曲の数々は、そもそも盛り下がるはずがない。特に、ここ数年メジャーフィールドの最前線で闘い続けてきたバンドの著しい成長は、特に過去作にこそ滲み出るものだった。
「『Santa Fe』というアルバムを作るにあたって、テーマは“自由”だった」と、中盤のMC。「いまの音楽シーンで何が流行っているかに関係なく作った。だから自由に踊ってほしい」と、武井がフロアに訴えると、清らかで神聖な響きがフロアが包みこんだ「クワーキーワールド」で、タカハシマイ(Cho・Syn・Per)がリードボーカルをとった。さらに、宇宙空間を漂うようなトリップ系ナンバー「エンドルフィン」では、サビでぐっとBPMを落として高揚感を高め、フロアをじんわりと踊らせていく。かつてチェコを、ロックシーンの重要バンドへと押し上げた「ダイナソー」や「No Way」といったノリやすい曲とは違うベクトルにあるこれらの曲は、誰かと一体感を得るだけではない、もっと自由な音楽の楽しみ方も知ってほしいという、チェコらしい提案でもあったのかもしれない。
そしてライブ終盤。「この5年でいちばんの盛り上がりを見せようぜ!」と、砂川が叫び声を上げると、タイトなリズムが慌ただしく駆け抜けるファストチューン「Festival」から、湧き立つようなイントロで「No Way」へと、ライブはフィナーレへ向けて一気に突き進んだ。和のテイストを感じさせる儚いシンセのフレーズが口火を切った「Firework」では、スクリーンに鮮やかな打ち上げ花火が何発も映し出された。さらにリリース当時からブラスセッションと共に披露されることが多かった「For You」は、この日は5人だけの演奏で披露。ラストは《All right うまくいくさ》《なにも怖くない》と、進むべき道を全肯定してくれるブライトなポップナンバー「オルゴール」 へ。「全員見えてるよ!」(武井)、「後ろのほうまで見えてるぞ」(タカハシ)と、メンバーが見渡したフロアには、頭上から落とされた色とりどりの風船を、ポンポンと弾ませながら、チェコの音楽に身を委ねて、自由に踊り、遊ぶ、たくさんの笑顔があった。
アンコールでは、アコースティックギターを持った武井が山崎とふたりだけでステージに戻ってきて、「新ユニットを組みました」と紹介。フロントマンでありながら、ベーシスト気質の武井は、自分が全面にフィーチャーされる場面をあまり好まない。そのせいか、滅多に弾き語りをやらないが、この日は5周年の特別な日だ。メンバーに背中を押されるかたちで、山崎が叩くカホンに合わせて「Good Bye」を披露した。そこに、八木とタカハシ、砂川が少しずつ加わり、会場が何とも言えない温かい空気で満たされた。
さらに、鳴りやまない拍手に応えたダブルアンコール。「この曲なしでは終われないでしょう」と、最後に残されたのは、バンドをここまで導いてきた大切なナンバー「ダイナソー」だった。「この曲ができたとき、声が多ければ多いほど、完成すると思った。今日やっとこの曲が完成します」と、武井。演奏がはじまると、スクリーンには、チェコのこれまでのアー写が次々と映し出され、バンドの歩みを否応なしに思い起こさせる。結成5年。メンバーも変わった。なかなか認められなかった。だが、いま、チェコのために集まった、2,400人のお客さんを前にして、彼らはこう歌うのだ。《カーニバルが始まるよ さぁもう行かなくちゃ》と。ここから10年、20年、もっと大勢の人を引き連れて、Czecho No Republicは進んでいく。それは出発のファンファーレ。いままででいちばん感動的な「ダイナソー」だった。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:山川哲矢】
リリース情報
セットリスト
『Santa Fe』リリース記念 聖なる行進TOUR
2015.10.17@Zepp DiverCity
- Oh Yeah!!!!!!!
- Amazing Parade
- Empty Your Mind
- Clap Your Hands
- Call Her
- MUSIC
- No Way
- Festival
- Beautiful Days
- Firework
- エンドルフィン
- ネバーランド
- Heart Beat
- 絵本の庭
- イメージ
- マサチューセッツ
- Fun,Fun,Fun,Fun,Fun
- クワーキーワールド
- 魔法
- For You
- オルゴール
- Good Bye
- 幽霊船
- ダイナソー
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。