Have a Nice Day!(ハバナイ)全国ツアーファイナル 恵比寿LIQUIDROOM
Have a Nice Day! | 2018.12.26
Have a Nice Day!が12月12日、全国ツアー「ダンスウイズバビロン2/0/1/8/」の最終公演を恵比寿LIQUIDROOMで開催した。“某テーマパークのパレード”を模したOP映像“ダイブ、禁止です”“モッシュ、危ないから!”“ヤジなんてもってのほか!”という萌え声の影アナ、そして、オーディエンスの怒号と歓声が渦巻くなか、メンバー4人がステージに登場。キラキラのエレクトロビートとともに「わたしを離さないで」が放たれると、モッシュピットでは観客たちが体をぶつけ合いながら盛り上がりまくる。そこにフェスでよく観るロックキッズの姿はない。その代わり(?)、アイドルファンを思わす男性から負けじと飛び跳ねる白人女性まで、多様としかいいようがない人種がフロアを埋めている。このバンドのワンマンを観るのはじつは初めてだったのだが、他のどんな現場とも違う雰囲気が充満している。リリックを映し出す高品質なVJもいい意味でアングラ。
一応説明しておくと、Have a Nice Day!(通称 ハバナイ)はフロントマンの浅見北斗(V/Key)を中心にコーラスをつとめる遊佐春菜(Key)、中村むつお(G)、チャンシマ(Dr)による4ピースバンド。シンセ、打ち込みのドラムを取り入れたサウンドはニューウェイブ、ディスコパンク、エレクトロなどの影響を感じさせ、浅見は歌というよりもラップに近いボーカルを響かせる。しかし、全体的なイメージは決してオシャレテイストではなく(すいません)、モッシュ、ダイブを繰り返しながら爆発的に盛り上がる観客を含め、どこか殺伐とした雰囲気。(個人的には80年代のハードコアパンク、映像でしか見たことないジョイ・ディヴィジョンのライブを思い浮かべました)MCでも「ありがとう」とか「楽しんでね」みたいな言葉は一切なく、浅見の第一声は「おい、東京。しばらく見ないうちにつまんないヤツらになっちまったな。あまりにも静かだから人がいない思った。気配消し過ぎだ、おまえら。気色悪いぞ」。その直後に「まあ、みんなと楽しくやりたいだけだから。優しいだろ」という言葉とともにディスコティックな「are you ready?」でフロアを揺らしまくる。“Hey!Hey!”という合唱も巻き起こるが、やはり親密な空気はなく、“やらかしてやる!”という闇雲なパワーが増幅していく。「ロックンロールの恋人」「ハートに火をつけて」という曲名もそうだが、このバンドの軸にあるのはロック的なアティチュードなのだ。ステージにいる人と客がお互いに中指を立てながら踊りまくるライブを見たのはいつ以来だろう、全員が同じ動きをして楽しく盛り上がる現在のフェスシーンよりも100倍好感が持てる。
ライブ中盤では、このバンドが持つカラフルな音楽性をダイレクトに体感できる場面が続く。心地よい中低音を軸にしたリズム・アンサンブル、極彩色のシンセサウンドとともに“fallin down ぼくらは落ちていく フィナーレを迎える前に殺しておくれよ”というラインーーハバナイのライブのスタンスを端的に示す歌詞だと思う――が突き刺さる「Fallin Down」、バウンシーなビートにとともに観客が飛び跳ね、“オイ!オイ!”という掛け声がモッシュピットに響き渡った「Riot Girl」(遊佐春菜の“Riot Girl!”というコーラスにおける、凛とした鋭さを感じさせる声も素晴らしい)、そして、憂鬱と興奮が同時に押し寄せるようなアッパーチューン「Blue Mirrorball」でライブは最初のピークを迎える。熱狂の度合いを高めるクラウドはもちろんめちゃくちゃ楽しそうなのだが、同時にどこか悲しそうでもある。単に“あー楽しかった”ではなく、“自分たちにはどうしてもこの場所が必要なのだ”という強い思いが感じられるのだ。この切実な感情もまた、ハバナイと観客がリアルにぶつかり合える理由なのかもしれない。
「俺は才能があるから、歌のほうが先に来るんだけど、やっと歌詞の意味がわかってきた」という言葉を挟み、BPMをグッと落とした曲を続けて披露。それまで腕をブンブン振り回し、踊り狂いながら歌っていた浅見は、ステージに背中を向けて、憂いを怯えたメロディとともに“インターネットはきみに愛を伝えるために生まれた/誰もいないディストピアのどこかで呼んでいる”(「ミッドナイトタイムライン」)というフレーズを響かせる。刹那的にブチ上がるハバナイのライブを裏打ちしているのは、この曲に象徴される現代的な孤独なのだろう。ひとりひとりが分断され、知らないうちにヤバい事態が進行し、何をどうしていいかわからないまま、底の見えない孤独へと沈んでいく――このバンドの音楽には、誰もが見て見ないふりをしている現実が確かに反映されていると思う。買いかぶりかもしれないが。
「マーベラス」も強く心に残った。どこか牧歌的でフォーキーな手触りのミドルチューンなのだが、「素晴らしい歌がここにはあって/わたしのこころを困らせたりする」というラインが大合唱される場面はなかなかに感動的。本気ですごいと感じたり、心を思い切り動かされるような出来事(または芸術)なんて、じつはほとんどない。ほとんどすべてのことは“まあ、こんなもんか”なのだが、我々は感じたことがない感動をどうしても求めてしまう。「マーベラス」は、そのこと自体を歌っている楽曲なのだろう。
“ロックンロール!”というコールが会場全体に巻き起こったアンセム「フォーエバーヤング」からライブはクライマックスに突き進む。ラストは「僕らの時代」。映画『チワワちゃん』(原作/岡崎京子 監督・脚本/二宮健)の主題歌として制作されたこの曲は、ハバナイの存在をさらに多くの人に知らしめることになるはずだ。
アンコールはナシ。「またモッシュピットで会いましょう」(浅見)という挨拶、そして「足らねえんだよ!」「もっとやれよ、クソが!」という声が飛び交うなか、ライブは終了した。2019年1月24日には、新宿LOFTで主催企画「NU VOID」(ゲスト/ENTH)を開催。どこまでも切実な表現欲求に貫かれた楽曲とステージ、それを心から求め、必要としているオーディエンス。ロックバンド(と呼ばせてください)のあるべき姿を体現するハバナイはもっともっと多くの音楽ファンに届くべきだと心から思う。
【取材・文:森朋之】
【撮影:katsunori abe】
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リリース情報
セットリスト
ダンスウイズバビロン2/0/1/8/
2018.12.12@恵比寿LQUIDROOM
- 01.わたしを離さないで
- 02.blood on the moshpit
- 03.ファウスト
- 04.are you ready?
- 05.ロックンロールの恋人
- 06.ハートに火をつけて
- 07.Fallin Down
- 08.Riot Girl
- 09.Blue Mirrorball
- 10.ミッドナイトタイムライン
- 11.F/A/C/E
- 12.マーベラス
- 13.フォーエバーヤング
- 14.LOVE SUPREME
- 15.僕らの時代
お知らせ
TORIENA presents WEEKDAY HIGH vol.1
01/16(水)渋谷GLAD
Have a Nice Day! presents NU VOID
01/24(木)新宿LOFT
Zepp Fukuoka×BEA presents F-X2019
03/4(日)Zepp Fukuoka(福岡)
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。