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大都会東京を舞台に投影されたディストピアの世界――東京のみで10公演を行った「NEO TOKYO OLYMPIA!!!」ツアーファイナル!

Have a Nice Day! | 2020.04.24

 来場者にはマスク着用が義務付けられ、入場時には消毒ジェルで手を殺菌。ライブハウスとは思えない光景だが、もちろんすべて現実、まさにディストピアである。

 Have a Nice Day!の全国ツアー「Have a Nice Day! NEO TOKYO OLYMPIA!! TOUR」のファイナル公演。最新アルバム『DYSTOPIA ROMANCE 4.0』を引っ提げ、昨年11月からスタートしたこのツアーは、Vampillia、TENDOUJI、DE DE MOUSEといった多彩なゲストとともに繰り広げられ、最終日は唯一のワンマンライブ。全国各地でライブが中止となり始めていた2020年2月27日に行われたこのライブは、ハバナイにとってはもちろん、20年代の東京の音楽シーンを語るうえで不可欠なステージだったと思う。いや、ホントに。

 The Chemical Brothers、New Orderなどが流れる会場に少しずつ観客が集まってくる。この日のライブは“可能な規模縮小をして開催すること”がアナウンスされていて、当日券の販売はなく、希望者へのチケット払い戻し対応も実施。それでも「ハバナイを観たい! モッシュピットで踊りたい!」というクラウドが集結し、開演前から静かな熱気に溢れている。20時を少し過ぎた頃、ついにライブがスタート。メンバーの中村むつお(Gt)、遊佐春菜(Key)、チャンシマ(Dr)、そして浅見北斗(Vo)がステージに現れ、「ファウスト」を放つと同時にフロア全体がモッシュピットに変貌。さらに「フォーエバーヤング」「Smells Like Teenage Riot」とアルバム『DYSTOPIA ROMANCE 4.0』収録曲が続き、オーディエンスは思い切り飛び跳ね、身体をぶつけ合いながら踊りまくる。いずれも以前からライブ・アンセムとして浸透している楽曲だが、アルバム制作のタイミングで再録されたこともあり、アレンジ、サウンドメイクとも大きく進化していた。アグレッシブな低音を軸にしたトラック、80’sニューウェイブ直系のシンセ、オルタナとガレージを行き来するギターサウンドが融合した音楽性は、まさに唯一無二だ。

 「本日はコロナウイルスが蔓延するなか、来ていただいてありがとう。挨拶は抜きにして、とっとと曲をやるか。あのクソみたいなYouTuberどもを××××してやろうと思って書いた曲をやろうかな」という浅見のMCから、「Kill All Internet」へ。《Kill all YouTubers!》というサビのフレーズが大合唱され、鋭利にして煌びやかなギターが絡むこの曲を聴いていると、The Smithの「Panic」を思い出す。パニックになっているロンドンを舞台に、“くだらない曲をかけるDJを吊るせ”と歌う「Panic」、そして虚実の見分けがつかないままエンタメの中心になっているインターネットをテーマにした「Kill All Internet」は深いところでつながっているのだと思う。
 その直後に披露された「666」「BLUE MIRROR BALL」は、ライブ前半においてもっともインパクトを受けたナンバーだった。world’s end girlfriendのアレンジによる「666」はヘビ-かつエッジ―なギターを軸にしたロックチューン。そして「たまにはダークサイドの曲を。暗いものもなかにも訴えかけるものがあるから」という浅見の言葉に導かれた「BLUE MIRROR BALL」は初期New Orderを想起させる憂いを帯びたダンスナンバー。共通しているのは、ハバナイの世界観の軸とも言えるディストピアの感覚だ。現実がこれ以上ないほどのディストピアに陥ったことで、この2曲の破壊力は明らかに向上。フロアに訴えかけるパワーも強烈で、観客のテンションをさらに引き上げていく(すでに半裸の客もいた)。

 ハバナイを代表するアンセムのひとつ「Riot Girl」、00年代初めからアンダーグラウンドシーンで活動を続けるLimited Express (has gone?)のYUKARIの超アグレッシブなボーカルをフィーチャーした狂乱のパーティチューン「ゾンビパーティ」からライブは後半へ。この日、最もデカいシンガロングが渦巻いた「愛こそすべて」――殺伐とした空気が蔓延した東京を舞台にしたロマンティックなラブソングだ――「インターネットが愛を伝えるために作られたはずがない。でも、そう信じることが大事」というMCとともに披露された「ミッドナイトタイムライン」と濃密なメッセージを含んだ曲が続く。「現在のどうしようもない時代における救いとは何か? ポップミュージックはそれを担えるのか?」みたいな大げさなことをつい考えてしまう。

 「Fallin Down」で思い切りブチ上げ、「『Fallin Down』がライブで機能し始めたのは最近。やっぱりライブでやってるうちにこちらが思いもよらない……」と浅見が話していても客はまったく聞かず、好き勝手にしゃべっている。ほかのバンドではあり得ない光景だが、ハバナイの場合はこれが通常。さらに「エスケイプ」では浅見が冒頭の歌詞を忘れ、容赦ないブーイングが飛ぶ。ステージとフロアの一体感などという生易しいものではなく、好き勝手に思いと言葉を交わし合うことで生まれる解放感もまた、このバンドの魅力だ。
 さらに《終わらない 巨大なパーティが/僕らを運んでゆく》というキラーフレーズが響いた「僕らの時代」、圧倒的な多幸感に包まれた「LOVE SUPREME」で観客の心と身体をがっつり揺らしたあと、ドラマーのチャンシマがこの日のライブをもってバンドから抜けることを改めて話し、彼が在籍していたマリリンモンローズの楽曲「東京都」をカバー。東京という街の怖さ、ヤバさ、僅かな希望をリリカルに描いたこの曲は、ハバナイの音楽性ともたしかにつながっていた。

 光輝くシンセサウンド、しなやかな4つ打ちビートでフロアの熱狂をピークへと導いた「わたしを離さないで」で本編は終了。アンコールの1曲目は、浅見とチャンシマの2MCによる初期のヒップホップナンバー「みんなどこ行く?」。「泣くかもしれないと思ったけど、泣かないですね」(チャンシマ)、「まあ、そんなもんだよな(笑)。こうやって別れて、また東京のどこかで会おうぜ」(浅見)というやりとりも印象的だった。さらに「Are You Ready?(suck my dick)」「フォーエバーヤング」を続けて放ち、ツアーファイナルはエンディングを迎えた。

 様々な情報、憶測、疑心暗鬼が混ざり合った2020年2月27日の東京で、Have a Nice Day!のライブを体験できたことは本当に貴重だったし、大げさではなく、この先ずっと記憶に残ると思う。誰も体験したことない現状において“ライブをやる/やらない”はそれぞれの判断に任せるしかないし、その是非を問うつもりはまったくないが、ハバナイは自らの意志でこの日のライブを開催し、本気で素晴らしいステージを見せてくれた。そのことだけはきちんと記しておきたい。

【取材・文:森朋之】
【photo by katsunori_abe】

tag一覧 J-POP ライブ Have a Nice Day!

リリース情報

DYSTOPIA ROMANECE 4.0

DYSTOPIA ROMANECE 4.0

2019年11月06日

avex trax/ASOBiZM

01.わたしを離さないで
02.Night Rainbow
03.Smells Like Teenage Riot feat.フルカワミキ
04.僕らの時代
05.愛こそすべて
06.ミッドナイトタイムライン ver.4.0
07.Kill All Internet
08.ファウスト ver.4.0
09.LOVE SUPREME ver.4.0
10.エスケイプ
11.フォーエバーヤング ver.4.0

セットリスト

NEO TOKYO OLYMPIA!!! TOUR FINAL
2020.02.27@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.ファウスト
  2. 02.フォーエバーヤング
  3. 03.Smells Like Teenage Riot
  4. 04.Kill All Internet
  5. 05.666
  6. 06.BLUE MIRROR BALL
  7. 07.Riot Girl
  8. 08.ゾンビパーティ with Limited Express (has gone?)・YUKARI
  9. 09.愛こそすべて
  10. 10.ミッドナイトタイムライン
  11. 11.F / A / C / E
  12. 12.Fallin Down
  13. 13.エスケイプ
  14. 14.僕らの時代
  15. 15.Night Rainbow
  16. 16.LOVE SUPREME
  17. 17.東京都
  18. 18.わたしを離さないで
【ENCORE】
  1. EN1.みんなどこ行く?
  2. EN2.Are You Ready?(suck my dick)
  3. EN3.フォーエバーヤング

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