ハバナイ!のワンマンにほとばしる熱量――その一部始終を目撃した!
Have a Nice Day! | 2019.10.18
SEが流れるなか、楽器隊の中村むつお(Gt)、遊佐春菜(Key)、チャンシマ(Dr)が登場。待ちわびていた観客の間から上がった咆哮のような歓声がものすごい。浅見北斗(Vo)が現れて腕を回して煽ると、新宿LOFTのフロアはますます激しく沸き立った。「今夜も俺たちのパーティーを始めよう!」という言葉を合図に「ファウスト」がスタート。爆発的な昂揚感を誘うのに、涙腺も刺激するシンセサイザーの音像、艶めかしいギターの音色、ダンス衝動を果てしなく加速するビートが迸るように鳴り響き、その中心に立ちながら歌い始めた浅見の姿が、とても雄々しかった。ハンドマイクでステップを踏みながら歌声を響かせて、時折、フロアに対して横向きになって輝かせるワイルドなシルエットが、不思議とロマンチック。骨太な野趣を漂わせるサウンドでありつつ、ドリーミーなメロディにも満ちているHave a Nice Day!(ハバナイ!)の音楽は、リスナーの喜怒哀楽を全部放出させて、尊い恍惚へと転じるような力を帯びている。一斉に飛び跳ねながら興奮を露わにした観客によって揺らいだフロアの風景は、アグレッシブでありつつも、眩しいくらいに美しかった。
「一応、人間の顔したやつがいっぱいいる。今日は歌舞伎町だからね。もうちょっと気合入ったやつがいるかと思ったけど。俺たちはエイベックスからメジャーデビューするんだよ。メジャーに魂を売りさばいてくるからさあ、せいぜい高く買ってくれよ!」という浅見のMCに対して、罵声のような様々な声がフロアから返された。傍から見たら険悪なムードなのだと誤解する人もいるのかもしれないが、交わされている心は、とても温かいことがおのずとわかる。そして、曲がスタートするとフロアから湧き起こるシンガロングは、ハバナイ!の音楽が観客の一人ひとりにとって、かけがえのない心の支えとなっていることをハッキリと示していた。このレポートを書きながら当日のことを思い出すと、「ロックンロールの恋人」や「愛こそすべて」などを大合唱していた観客の声も頭の中で蘇る。
PCを自ら操作して音出しをしつつ、バンドメンバーと様々な曲を披露した浅見。しかし、どういうわけなのか操作ミスを連発していたのは、この日のライブで観ることのできた、なかなか貴重な光景だったと言えよう。間違って流れてしまった音をすぐに止めて、観客に八つ当たりのような言葉を投げかけていた彼の姿は、ハバナイ!のライブをいつにも増してアットホームなものにしていた。とはいえ、曲がスタートすると、フロアのムードは一気にピリリと引き締まる。「2018年、東京で生まれたこの曲をこの街で歌えるのは、俺にとって、とてもいいこと。きっとそれぞれの孤独がぶつかり合い、この街で生きたり死んだりしてる。その証を誰かに見せたい、聴かせたい。そんな想いがひとつの歌になった」という言葉が添えられてスタートした「僕らの時代」は、シンガロングしながら身体を揺らす観客の間に大きな感動がさざ波のように広がっていくのを感じた。各々の人生の中にある様々な切なさ、ほろ苦さ、やるせなさを重ねながら受け止められていたのだと思う。
「ゾンビパーティ」を皮切りに突入した後半戦も、会場全体を圧倒的なエネルギーで包み込んでいた。“ディスコパンク”などと称されているハバナイ!の音楽が放つ印象は、多くの人が想像するディスコミュージックやパンクとは大きく異なるだろう。シンセサイザーの濃度が高いサウンドからエレクトロやテクノ的な印象を抱く人も当然いるだろうし、リスナーのアドレナリンをとことん絞り上げるビートからダブステップやグライムの香りを感じ取る人もいるはずだ。しかし、実際にライブの現場で体感できるものは、ハードコアパンク、ポストパンク、ガレージロック、ニューウェーブなどのロック、ロックンロールのものに近い。いや、むしろロック、ロックンロールそのものだと言い切っていいのかもしれない。このようなニュアンスを帯びているハバナイ!を何かに喩えるための存在としてNew Order、その前身バンドのJoy Divisionが頻繁に挙げられるのも、そのことによるのだと思う。とにかく、このライブでの彼らも、猛烈に熱くて生々しいエネルギーを我々に体感させてくれた。
演奏の合間には、ゴクゴクと水を喉に流し込んでいた浅見。鷲掴みにした2リットルのペットボトルの中身が、かなり少なくなってきたところで、ライブは終盤に差し掛かっていた。11月26日の新宿LOFT公演から始まるツアーが、約4ヵ月間にわたって東京都内のみ10ヶ所を巡るものであることに関して、“東京”というものが大きなモチーフ、テーマ、こだわりになっているハバナイ!として、ぜひやっておきたいものであった旨を説明した浅見。「モッシュなんて起きねえよって言われたけどモッシュは起きたし、シンガロングもできた。自分たちの曲でシンガロングするようなパーティーをやりたいと思って。それで、やっとそういうふうにできるようになったから。4ヵ月間、走り抜けるから」と意気込みを語っていた。
「わたしを離さないで」「Smells Like Teenage Riot」「LOVE SUPREME」によって、再び観客のダンス、シンガロングで満たされた新宿LOFT。この3曲で終演を迎えるのかと思われたが……「ええと、『LOVE SUPREME』終わりは達成感が薄い(笑)。なんだろな?めっちゃいい曲なのに、達成感だけが薄い。やっぱり強力なシンガロングとオープンマインドだね。ヘイトフルな世界に住んでると、頭おかしくなるよ。そういう場所からできるだけ離れたほうがいいと思う」という浅見の言葉を経て、「マーベラス」がラストを飾った。演奏が止まり、《素晴らしい歌がここにはあって/わたしのココロを困らせたりする》――観客の歌声だけが響き渡る瞬間も交えつつ、ドラマチックに高鳴っていったこの曲は、先ほどのMCから言葉を借りるならば「シンガロングとオープンマインド」に満ちた、押し寄せるディストピアの悪意を寄せ付けない空間を作り上げていた。
「またいつか別のモッシュピットで会おうぜ。ありがとう!」という言葉を残してステージをあとにした浅見とバンドメンバーたち。汗まみれで拍手しながら彼らを見送った人々の間に漂っていたムードは、とても清々しくて爽やかであった。
【撮影:貯金、Takanori Tsukiji、堀川多貴雄(PineSnap)】
リリース情報
DYSTOPIA ROMANECE 4.0
2019年11月06日
avex trax/ASOBiZM
02.Night Rainbow
03.Smells Like Teenage Riot feat.フルカワミキ
04.僕らの時代
05.愛こそすべて
06.ミッドナイトタイムライン ver.4.0
07.Kill All Internet
08.ファウスト ver.4.0
09.LOVE SUPREME ver.4.0
10.エスケイプ
11.フォーエバーヤング ver.4.0
リリース情報
FOREVER YOUNG(フォーエバーヤング ver.4.0)【7インチ・DLコード付き】
2019年11月06日
avex trax/ASOBiZM
Side B:Faust YODATARO Into Dusk Remix
リリース情報
FAUST(ファウスト ver.4.0)【7インチ・DLコード付き】
2019年11月06日
avex trax/ASOBiZM
Side B:FOREVER YOUNG Sugiurumn Remix
セットリスト
Smells Like Teenage Riot Tour
2019.9.17@新宿LOFT
- 01.ファウスト
- 02.Falling Down
- 03.Blood on the mosh pit
- 04.ロックンロールの恋人
- 05.秘密警察
- 06.Riot Girl
- 07.愛こそすべて
- 08.僕らの時代
- 09.ゾンビパーティ
- 10.Are you ready
- 11.フォーエバーヤング
- 12.ミッドナイトタイムライン
- 13.パーティが終わる
- 14.わたしを離さないで
- 15.Smells Like Teenage Riot
- 16.LOVE SUPREME
- 01.マーベラス
お知らせ
NEO TOKYO OLYMPIA!!!
2019/11/26(火) 新宿LOFT
2019/12/04(水) 下北沢SHELTER
2019/12/12(木) 下北沢BASEMENTBAR
2019/12/23(月) 代官山UNIT
2020/01/11(土) 新大久保アースダム
2020/01/17(金) 吉祥寺WARP
2020/01/31(金) 秋葉原GOODMAN
2020/02/07(金) 新代田FEVER
2020/02/16(日) 渋谷TSUTAYA O-nest
2020/02/27(木) 恵比寿LIQUIDROOM ※ワンマン
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。