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少しずつ着実に前進し、辿り着いた万感のリキッドワンマン。当日の模様をお届け。

the quiet room | 2019.11.08

 the quiet roomが初めてのワンマンツアー「1st One Man Tour 2019 “White”」を開催した。ファイナルは、これも初めてとなる恵比寿LIQUIDROOM公演。この記念すべきライブで彼らは、これまで積み重ねてきた音楽性、少しずつ向上させてきた演奏とステージングを踏まえ、“今のthe quiet room”をまっすぐに表現してみせた。

 「the quiet roomです! よろしくどうぞ!」という菊池遼(Vo/Gt)の声に導かれたオープニングナンバーは「Number」。煌びやかなギターフレーズ、しなやかな推進力をたたえたリズムセクション、そして、なんでもない日常に彩りを与えるような歌詞が広がる。サビ前で「手、上がる?」と菊池が呼びかけると、オーディエンスは一斉に手を上げ、大きな歓声が沸き起こる。続いて「僕だけずっと愛していてほしい」というピュアな思いを響かせるアッパーチューン「Fressy」を挟み、新作『White』の収録曲「かずかぞえ」へ。高速のビートの中で菊池、斉藤弦(Gt)のギターが緻密に絡み合い、それが心地いい解放感へとつながっていく。何度も繰り返される転調、“キメ”の多さも含め、かなり複雑なアレンジなのだが、ライブでは(音源で聴くよりも)ダイナミズムが増し、ロックバンドとしての魅力がストレートに伝わってくる。

 「the quiet roomの覚悟の曲です」と紹介されたナンバー――大切な人との別れを前向きな意志に変えて進む、という決意を歌った「東京」では、サビのコーラスで大合唱が生まれる。茨城から上京し、7年間突っ走ってきた彼ら。その間に経験したこと、そこで生まれた様々な感情を詰め込んだ「東京」がライブアンセムとして浸透していることもまた、the quiet roomが充実した活動を続けてきたことの証左だろう。

 「1stワンマンツアー“White”、ファイナル。恵比寿LIQUIDROOMです。こんなに集まってくれて本当にありがとう。今日は今日しかないので、ここに来てくれた一人ひとりにとって、特別な夜にしたいと思います。最後の最後まで、よろしくお願いします」という菊池の挨拶のあと、the quiet roomが持つ多様な音楽性をたっぷり体感できるシーンが続いた。まず印象的だったのは、やはり「White」に収録されている「Tansy」だった。前田翔平(Ba)の強靭なスラップベースを軸にしたバンド・グルーヴ、エッジの効きまくったギターフレーズ、切なさと葛藤を吐き出すような歌詞。このバンドの攻撃性が凝縮されたナンバーだが、ライブでの爆発力は抜群。以前から「表情豊かに生きる」をテーマに掲げているthe quiet roomのダークな表情が感じられる場面だったと思う。

 菊池がアコースティックギターを持ち、ゲストのキーボーディスト・にしのえみが参加したソウルフルなナンバー「シュガータイム」からはライブの雰囲気が一変、オーガニックな音像がゆったりと広がっていく。特に心に残ったのは、鍵盤と歌で始まった「夜中の電話」。違う人生を進むことになった恋人同士の“夜中の電話”を綴った歌詞は、ひとつひとつのフレーズにしっかりと感情を込めたボーカル、歌を届けることに心を砕いたアンサンブル、メンバー全員の表情豊かな演奏を伴い、大きな感動へと結びついた。ミニアルバム『White』の中で唯一のバラードナンバーはまちがいなく、この日のライブのハイライトのひとつだった。

 さらに、カントリーミュージック風のアレンジ、ほっこりと切ない情感を綴った歌を軸にした「夢で会えたら」を披露し、メンバー全員のMCへ。「今日はワンマンライブということで、たっぷり時間があるので、メンバーの声も聞きたくないですか?」(菊池)と、斉藤、前田を交えてトークを展開する。斉藤が「クアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)で3回ワンマンを重ねて、やっとこさ、the quiet roomのLIQUIDROOM! ここまで来たな、という感じがしちゃいますね。みなさん、いい顔してるわ」と語り掛けると、フロアを埋めた観客から温かい拍手が起きた。さらに前田の「初の東京のライブがいつだったか調べたんですよ」(←今から7年前の2012年5月3日、下北沢ReGだそう)という話のあと、「ここにいる全員で最高の景色を作ろう」という菊池の声を合図に、ライブは終盤に突入。「Locus」「Vertigo」などのアッパー系ナンバーを連発し、オーディエンスの心と身体をしっかりと揺らす。ライブバンドとしての実力が確実に上がっていることが、明確に伝わってくる。 ここで菊池は、改めて観客に向かって語りかける。茨城から出てきたバンドがLIQUIDROOMでワンマンをやること、事務所の人たちが力を貸してくれること、これだけの人が集まってくれることは、当たり前じゃない――その言葉からは、この日の特別なライブに対する強い思いが伝わってきた。

 「待ち遠しい日、特別な日が終わってしまっても、これから先の生活が少しでも笑顔で溢れますようにという気持ちを込めた曲です」という菊池の言葉とともに演奏された本編最後の曲は「パレードは終わりさ」。楽しい時間や、楽しみにしていたことが終わったとしても、前向きに明るく進んでいきたいという思いが込めれらた「パレードは終わりさ」の多幸感は、現在の彼らのモードをもっとも端的に示していた。

 アンコールは「話をしよう」から。さらに「Humming Life」「Happy End」と前向きな気分に溢れた楽曲を披露し、ライブはエンディングを迎えた。ミニアルバム「White」に関するインタビュー(http://music.emtg.jp/special/201906136577db181)で菊池は、「“ゼロからのスタート”とか“新しいキャンバス”ではなくて、今までやってきたことを踏まえて、新しい歴史を縫っていくというイメージ」と語っていたが、この作品に込めた思いをリアルに感じられる、充実したステージだったと思う。

 12月からは「“White” Encore Tour」(全9公演)の開催も決定。しっかりと地に足を着けながらも、決して現状に満足することなく、常に“今よりも少し上”を目指して活動を続けているthe quiet room。その真摯で誠実な姿勢こそが彼らの魅力であり、オーディエンスに「ずっとこのバンドと歩いていきたい」という思いを抱かせる理由なのだ。この先、the quiet roomが見せてくれる光景を多くの音楽ファンと共有したいと、心から願う。

【取材・文:森朋之】
【撮影:中山優司】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル the quiet room

リリース情報

White

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2019年06月26日

mini muff records

01.パレードは終わりさ
02.かずかぞえ
03.Tansy
04.夜中の電話
05.話をしよう

セットリスト

1st One Man Tour 2019 “White”
2019.9.21@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.Number
  2. 02.Fressy
  3. 03.かずかぞえ
  4. 04.東京
  5. 05.Landscape
  6. 06.Tansy
  7. 07.アイロニー
  8. 08.Drops
  9. 09.シュガータイム
  10. 10.夜中の電話
  11. 11.夢で会えたら
  12. 12.Locus
  13. 13.Vertigo
  14. 14.Instant Girl
  15. 15.パレードは終わりさ
【ENCORE】
  1. 01.話をしよう
  2. 02.Humming Life
  3. 03.Happy End

お知らせ

■ライブ情報

“White” Encore Tour
2019/12/13(金) [静岡]UMBER
2020/01/11(土) [宮城]仙台enn 2nd
2020/01/24(金) [香川]高松TOONICE
2020/01/25(土) [広島]CAVE-BE
2020/01/31(金) [北海道]札幌COLONY
2020/02/08(土) [福岡]Queblick
2020/02/09(日) [東京]渋谷WWW X
2020/02/23(日) [愛知]名古屋APOLLO BASE
2020/02/24(月・祝) [大阪]梅田Shangri-La
※全公演GUESTあり



MAN WITH A MISSION presents
“Remember Me TOUR 2019”

11/13(水) [滋賀]U☆STONE
11/15(金) [富山]クロスランドおやべ

the shes gone「MORE TOUR 2019」
11/23(土・祝) [新潟]CLUB RIVERST
12/21(土) [東京]渋谷TSUTAYA O-WEST

夜の本気ダンス
「AUTUMN JACK OF SEA TOUR」

11/24(日) [福島]郡山HIP SHOT JAPAN

渡會将士 ONIWARA TOUR
11/30(土) [愛知]名古屋E.L.L.

JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2019 WINTER
12/8(土) [東京]渋谷ライブハウス8会場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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