独創性の確立とブレない姿勢でEXシアターをソールドアウト。超満員のファイナル公演をレポート!
おいしくるメロンパン | 2019.12.27
おいしくるメロンパンが、12月18日に「flaskレコ発ワンマンツアー2019 ~博士!これ以上はッ…!~」のツアーファイナルを迎えた。
9月にリリースされた4thミニアルバム『flask』を携えて、全国12ヵ所をまわった今回のツアー。ファイナル公演は、ワンマンでは自身最大規模となる東京・EX THEATER ROPPONGIで行われた。過去3枚のミニアルバムで独自の音楽性を確立してきたおいしくるメロンパンだが、今作『flask』は彼らの独創的な世界観をよりじっくり味わえる作品に仕上がっている。誰にも媚びることなく、自分たちが好きな音楽だけを追求し続ける彼らの魅力は、作品を出すごとにますますディープになってきた。それでも今回のツアーは大盛況で、初日もファイナルもしっかりソールドアウト。シーンの中でも孤高の存在になりつつある彼らが、着実に支持層を広げていることを実感したファイナル公演の模様をレポートしたい。
会場に足を踏み入れると、満員状態のフロアにはすでに熱気が漂い、物販のタオルを肩にかけたファンたちが今か今かと開演を待ちわびていた。大きな拍手に迎えられながら3人がステージに登場し、まずは1曲目「紫陽花」でライブがスタート。クリアで鋭いギターの音、自由自在にうねるベースライン、どこまでも正確でタイトに疾走するドラムが気持ち良く絡み合い、おいしくるメロンパンならではのアンサンブルを生み出していく。透き通って伸びやかなナカシマ(Vo/Gt)のボーカルは、時たますごみを見せる瞬間もあって、音源とはまた違う力強さがある。続けて「桜の木の下には」「look at the sea」といった鮮やかな情景が浮かぶナンバーを立て続けに披露。ふと、幼い頃にビー玉の美しさに夢中になった時のことを思い出した。離れて見るとただ透明なだけなのに、覗き込むと不思議な世界が広がっていて、光の角度でいろんな色が見える。おいしくるメロンパンの音楽も深く踏み込んでいくほどに、“水色”だけが彼らのイメージではないと気付かされるのだ。
「今日は絶対にあなたの好きなように楽しんでいってください。なんせ僕らは、あなたの好きな音楽を鳴らしに来たのだから」。そんな峯岸翔雪(Ba)の言葉どおり、観客は手をあげたり手拍子を鳴らしたり、じっとステージを見つめたりとそれぞれが自由にライブを楽しんでいた。清冽なアルペジオの音色で始まった「憧景」、最後の一音までバシッとキメを合わせた「caramel city」を経て、「泡と魔女」からはどんどん演奏の激しさが増していく。3人の熱が一度ピークに達した「シュガーサーフ」では、原駿太郎(Dr)のダイナミックなソロプレイが炸裂し、興奮と感嘆が入り混じる大歓声が飛び交った。曲が終わったあともしばらくざわざわしていたが、そんな空気をぶった切るように笑顔を浮かべた原が「みなさん、こんばんはー?」と元気よく挨拶をすると、ざわめきは温かい笑い声に変わる。テンション高めにライブの意気込みを語る原と、表情を変えないまま「なんか人多いですね」とクールに呟くナカシマ、「俺らが呼んだんだよ」と冷静に突っ込む峯岸。そんな3人それぞれの個性が絶妙なバランスで成り立つMCに、和やかなムードが広がっていった。
おいしくるメロンパンは「ギャップ」や「意外性」をたくさん持っているバンドだ。演奏時のストイックさとMCのゆるさもそうだし、ポップとダークが共存している音楽性もそう。サウンド面では、3ピースというシンプルな編成だとなかなか難易度が高そうな曲展開や複雑なアレンジも少なくない。それはきっと、おいしくるメロンパンが思ったことを歌に乗せるバンドではなく、楽器と言葉を使ってナカシマの中にある景色を描き出すバンドだということに起因している。今作でアレンジの幅が広がったのも単に腕を上げたというよりは、その景色をより高い彩度で3人が共有できるようになったことが大きいのではないか。自分たちが表現したいものにどこまでも忠実な姿勢が、彼らの独創的な世界観に色を付けてきた。そしてこれからもっと研ぎ澄まされていくにつれて、その世界観はさらに色濃く深いものになっていくのだろう。
ライブも中盤が過ぎ、ここで披露されたキラーチューン「色水」から「水葬」を繋ぐアレンジは思わずぞくぞくするほど幻想的で、まるでゆっくり水の中に沈んでいくような感覚にさせられた。そんなふうに曲中や曲間のいろんなところにライブならではのアレンジが散りばめられていて、観客を一瞬たりとも飽きさせない。これもまた、おいしくるメロンパンのライブの大きな魅力のひとつだ。そして、間違いなくこの日のハイライトだった「candle tower」は、息を止めるようにして見入ってしまうほどのヒリヒリとした緊張感があった。耳をつんざく轟音の渦に、胸をグッと締め付けるナカシマの絶叫。そんな突き抜けて尖ったパフォーマンスのあとだったからこそ、ナカシマの「僕たちはこれからもずっとブレることなく、好き勝手に、やりたいように音楽をやっていくつもりです」という言葉に強い意志が宿っていると感じた。
ラストは「走馬灯」と「epilogue」という対になっている2曲を披露。『flask』の中では1曲目に収録されている「epilogue」を最後に演奏したことで、彼らの新たなストーリーがまたここから始まる予感を漂わせつつ、本編は終演した。しかしすぐにアンコールを求める手拍子が鳴り響き、メンバーが再びステージに登場。そして、2020年2月24日(月・祝)にアコースティックワンマンライブの開催が決定したことが発表された。同ライブの会場となるのは、国の重要文化財に指定されている自由学園 明日館 講堂。クラシカルな建物で独特な雰囲気があり、おいしくるメロンパンの楽曲とも相性が良さそうだ。「まだ楽しいことも考えてるんで、待っててください」と峯岸がファンに向けて呼びかけると、会場は歓声と拍手に包まれた。アンコールは自主制作盤に収録されていた懐かしいナンバー「夕立と魚」を披露。まるで夢を見ていたかのような不思議な余韻と、今後の活動への期待感をたっぷり残し、ツアーファイナルは幕を閉じた。
【取材・文:渡邉満理奈】
リリース情報
flask
2019年09月25日
RO JAPAN RECORDS
02.憧景
03.水仙
04.candle tower
05.走馬灯
セットリスト
flaskレコ発ワンマンツアー2019
~博士!これ以上はッ…!~
2019.12.18@EX THEATER ROPPONGI
- 01.紫陽花
- 02.桜の木の下には
- 03.look at the sea
- 04.5月の呪い
- 05.憧景
- 06.caramel city
- 07.泡と魔女
- 08.命日
- 09.シュガーサーフ
- 10.砂と少女
- 11.nazca
- 12.水仙
- 13.色水
- 14.水葬
- 15.candle tower
- 16.あの秋とスクールデイズ
- 17.dry flower
- 18.走馬灯
- 19.epilogue
- 01.夕立と魚
お知らせ
アコースティックワンマンライブ
「おいしくるメロンパン アコースティックレジェンド」
2020/02/24(月・祝) 東京 自由学園 明日館 講堂
(※昼夜2公演)
FM802 30PARTY FM802 ROCK FESTIVAL
RADIO CRAZY 2019
2019/12/27(金) 大阪 インテックス大阪
COUNTDOWN JAPAN 19/20
2019/12/31(火) 千葉 幕張メッセ国際展示場1?11ホール、イベントホール
The Songbards
「CHOOSE LIFE Release Tour」
2020/01/23(木) 兵庫 神戸VARIT.
w) The Songbards/KOTORI
「VS NEXT GENERATION」
2020/01/25(土) 熊本 B.9 V2
愛しておくれ「地獄からの救出ツアー2020」
2020/02/22(土) 千葉 LOOK
w) 愛しておくれ +1バンド
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。