Beemerの帰る場所にして、新たなる出発点――ともに作り上げた「THE NEST 2020」コーストワンマンを観た!
THE BEAT GARDEN | 2020.03.03
夢を追いかけるということは日々挑戦の連続で、いかにして立ちはだかる壁を突破するのか、常に試され続けることでもあるのかもしれない。成功する保証なんてない。こっぴどく打ちのめされることだって1回や2回じゃない。THE BEAT GARDENが選んだ道のりもきっとそうした類いのものだろう。でこぼこ道や急な坂道、曲がりくねったり大きく遠回りしなければならないことも少なからずあったはず。それでも決して歩みを止めず、まっすぐ前だけを見つめて進んできた。そうして辿り着いたのがこの場所――デビューするずっと前にライブを観に訪れた彼らが「いつかここに立ちたい」と強く願ったステージであり、4thシングル「FLOWER」MV撮影の舞台にもなった東京・新木場STUDIO COASTだ。グループ史上最大キャパシティともなるこの会場で2020年1月26日、ついにTHE BEAT GARDENがワンマンライブ「THE BEAT GARDEN ONE MAN LIVE 『THE NEST 2020』 IN TOKYO ~新木場STUDIO COAST~」を敢行する。またひとつ辿り着いた夢と憧れの地で、4人は何を見せてくれるのか。
念願のSTUDIO COAST、せっかくならば広い会場ならではのライブにしたいという彼らの意気が伝わってくるようで、否が応でも期待は高まる。おそらく今日、初めて生のTHE BEAT GARDENに触れるという観客も少なくないだろう。ワクワクドキドキした場内の空気にほんの少し“そわそわ”が混じるのは、そのためかもしれない。付記すれば、この日は昨年10月の名古屋に続く「THE NEST」公演にして、3ヵ月ぶりのワンマンライブでもある。
開演時刻の17時を回り、BGMがフェードアウトするのと同時に客電も落ちた。暗闇に青く発光するステージ。バックドロップに綴られた「THE BEAT GARDEN」の文字が白く浮かび上がったのも束の間、まばゆいほどの照明と大歓声に迎えられて4人が姿を現した。真っ先にDJブースにつくSATORU。続く3人はステージ前方へと歩み出ると、Uを中心に下手側にはMASATO、上手側にはREIが立ってバシッとポーズを決めた瞬間の堂々とした登場感たるや。見事に均整の取れた、きれいな線対称のフォーメーションにもまんまと目を奪われてしまう。もしも一時停止ボタンが手元にあったなら押してしばらくそのまま眺めていたいほど。だが、当然ながらTHE BEAT GARDENの本領は静止画像にあらず。Uの歌声がオープナーとなって「Alive」の扇情的なビートがほとばしると同時に場の空気が一気に動き出す。静から動へとダイナミックに転じる、この瞬間の昂揚はやはりほかに替えがたく快い。ステージ上の彼らも途端に水を得た魚のごとく、右に左にと目まぐるしくポジションを替えながら絶妙な連携を織り交ぜたパフォーマンスでオーディエンスを釘付けに。太いギターリフを効かせてロックにグルーヴする「Don’t think, feel.」ではフロアを激しく縦に揺らし、さらに「GAME」では先陣を切ってREIが、そしてMASATO、Uと次々にセンターステージへと躍り出て場内の興奮をいきなりピークに到達させる。スタートダッシュはアグレッシブに、が今回のモードらしい。率先してオーディエンスのボルテージを爆上げにかからんとする攻めの姿勢が頼もしい。
「みなさんの熱気が完全にヤバタニエンでございます! ……意味わかんないでしょ? 言ってることが。それぐらい今日はテンションが上がってます。これがTHE BEAT GARDENの2020年初ライブ、今年の幕開けを一緒に楽しんでいってください!」
Uがフレンドリーに呼びかけ、「じゃあ1曲、懐かしい曲を」とタイトルコールすると悲鳴にも近い歓声に溢れ返るフロア。その曲の名は「SHAKE IT OUT」、彼らが2015年にリリースしたインディーズ時代の1stフルアルバム『WILL』の1曲目を飾るアッパーなダンスナンバーだ。腹の底から突き上げにかかるビートと、当時にしてすでにただならぬスケール感を想起させるサウンドスケープは、彼らがその音楽性として掲げていたEDR(エレクトリック・ダンス・ロック)の原点とも言えるだろう。後半に披露されたREIのダンスソロにまた歓喜の声が沸く。続けざまの「Fly Me High」、「新木場! タオルでもなんでもいいから回していきますか!」とMASATOが煽ってなだれ込んだ「JUNGLE GAME」と、なんと3連続で『WILL』の楽曲をパフォーマンス。今やEDRという枠をはるかに超えてひときわ自由に音楽の翼を羽ばたかせているTHE BEAT GARDENだが、それができるのもこれら原点を失っていないから、むしろ今なお鮮やかに彼らの中で息づいているからなのだと再確認させられた気がする。
「僕らは蜂をモチーフにしてるんだけど、“NEST”というのは“巣”という意味で。みんなが帰ってこれるような、そんなあったかい場所、空間を一緒に作っていけたらなと思ってます。だから家みたいな感覚で、気を遣わずに思いっきり自由に、マナーを守りつつ楽しく過ごしてもらえたら」
MCではライブタイトルに込めた想いをUが丁寧に解説する場面も。その後は自己紹介コーナーに突入、「めっっっっちゃ楽しみにしてました!」と今日に懸ける意気込みをMASATOが口にすれば、REIは満員電車に乗り損ねたエピソードとともに「今年は優しさの中に強さを持って生きていこうと思います」と誓い、SATORUは恒例の“SATORUコール”を浴びて満足げな表情。Uはと言えば、切開した親知らずの治りが遅くてハラハラしたものの、この本番にはばっちり間に合ったことを報告、と4人4様の個性全開でオーディエンスを楽しませる。合間にわちゃわちゃと繰り広げられる微笑ましいやり取りもこのコーナーのお楽しみだろう。かっこつけたり、取り繕ったりするなどの要素はゼロ。彼らが愛情と信頼を込めてBeemerと呼ぶファンの前では4人が4人、とことん素顔でありのままだから、Beemerもまた心からこの場所でくつろげるのだ、“巣”のように。
セットリストには前述のようなインディーズ時代の曲から最新曲まで、彼らの歴史をギュッと凝縮したかのごとき選りすぐりの楽曲が並んでいた。例えばSATORUのスクラッチプレイが炸裂した「Everyday」は最新シングルのカップリング曲。ステージとフロアが同じ振り付けで踊って一体感を倍増させたファンクチューン「サイドディッシュ」に、気持ちをまっすぐに差し出すかのごとくやさしく歌い上げ、聴き手の胸に大切な人への思慕を灯らせたバラード曲「君がいるから」はメジャー1stアルバム『I’m』からのセレクトだ。最新シングル「Snow White Girl」から6thシングル「花火」へという、季節感は真逆ながらTHE BEAT GARDENの2大片想いソングと呼ぶべき楽曲の連投にもほのかな遊び心を感じられて、思わずニヤリとしてしまった。それにしても曲ごとにオーディエンスの心象風景をがらりと変えて、そのたびに世界観に没入させる歌の力、全身全霊の魅せる力に感服せずにいられない。また、新旧を織り交ぜて違和感のない構成も見事の一語に尽きる。この日のためにどれだけのエネルギーを彼らは注ぎ込んできたことだろうか。
「次の曲を歌うとき、いつもは僕らボーカル3人が想いを伝えさせてもらっていたんですけど、今日はSATORUが話したいって言うので……ちょっといいですか」
客席に向かってUがそう切り出すと、マイクを握ったSATORUに全員の視線が注がれた。語られたのは、彼がTHE BEAT GARDENに加入することになった経緯と当時の心模様だ。U、MASATO、REIの3人で前身となるグループを結成したのが2012年、その後、上京した3人を手伝っていたのがUの地元の後輩であるSATORUだったということはすでに知られているとおり。そうしたある日、SATORUはUから「THE BEAT GARDENのDJをやらないか」と誘われたという。悩みに悩んだ末に、最初は「少し考えさせてほしい」と答えを保留したSATORU。3人が本気で大きな夢を追いかけていることを知っているからこそ、そこに自分が入っていいのかと逡巡したからだった。「当時の僕は夢どころか将来どうしたいかも何もなかった」とSATORUが当時を振り返って明かす。「でも輝いている3人を見ていて、この3人と一緒に歩んでいきたいって強く思った」と彼は正式加入を決断したのだ。「今こうやって3人と同じステージに立てているのをすごく感謝してます」と感謝を告げ、「まだまだ何もできなくて、いろいろ大変な想いをさせてるかもしれないんですけど」と前置きをすると「逆にね、まだまだ伸びしろしかないSATORUです!」と結びにはSATORUらしいオチもつけて、メンバーもオーディエンスも大爆笑。しんみりといい話で終わらせないところが実に彼らしい。そうして歌われたのが「エピソード」。THE BEAT GARDENの歩みそのままが綴られた4人の、4人による、4人のための歌がとても真摯に響き渡って、第三者であるはずの我々をも強く温かく揺さぶるのだから、涙腺もあえなく決壊しようというものだ。今、ここに彼らがいること、そのかけがえなさをつくづく思う。
伸びやかな希望をたたえた「SOMEDAY」から本編ラストの「Sky Drive」まで全力で駆け抜けて、ステージをあとにした彼らだったが、まさか仮装で再登場するとはだれが想像しただろうか。いや、正直なところ予感はあった。なぜなら3ヵ月前の名古屋公演でも仮装していたことはライブレポートなどで報じられていたからだ。だが、これほどの衝撃をもたらすものだとは。高校時代、ラグビー部に所属していたキャリアを活かしてだろう、ラグビーワールドカップ日本代表キャプテンを務めたリーチ・マイケルに扮したU。REIは名画『モナリザの微笑』を額縁ごと体現し、SATORUは巨大目玉焼きに。なかでも度肝を抜いたのは、自称・トリマサトプスなる恐竜のエアコスチューム姿でやってきたMASATOだ。とにかく巨大で見るからに視界が狭すぎるため、スタッフの介添え付きというのがまた可笑しい。そうして披露されたのは8thシングルのカップリング曲「ヒューマン」、2ndアルバム『メッセージ』収録の「ダンシング・マン」に次ぐ、おバカソング第二弾だ。SATORUの目玉焼きは、なるほどこの歌詞にちなんだものだったのか。ちなみに各々の仮装はステージ袖にスタンバイするまでお互い内緒にしているのだそう。真剣におバカに興じる彼らの姿にオーディエンスが盛り上がらないはずがない。最高のアンコールではないか。
「こんなにたくさんのBeemerが集まってくれて……やっぱりうれしいね、ワンマンライブは」
熱狂も醒めやらぬなか、着替えて戻ってきたUが噛み締めるようにフロアに語りかけ、さらに言葉を続けた。
「実は今日、ソールドアウトできなかったんです。すごく悔しくて、でも、だからこそ絶対忘れないし、今日集まってくれたみんなのことも絶対忘れません。この先、もっと大きいステージに立てたときに今日いてくれたみんな、一人ひとりがそこにいてほしいと思ってるし、こんなにゆっくり歩んでる自分たちの傍を離れないでいてくれて本当に感謝してます。これからもずっと傍にいてください」
嘘のない、凛とした言葉だった。その悔しさはもしかしたら口にしなくてもよかったのかもしれない。満員御礼には及ばなくとも、フロアは十分埋め尽くされていたし、新木場STUDIO COASTの大きなステージがとてもよく似合っていた。だから、そうした言葉を聞かされないほうがBeemerもハッピーに終われたかもしれない。けれど大切な人たちを前に彼らは本当の気持ちを伝えた。きっと受け止めてくれると信じたからだ。それは決して甘えじゃない。そうすることで自分たちを奮い立たせ、いい意味で追い込もうとしているのだ、そう思った。彼らが目指す夢の道のりはまだまだはるか遠くに伸びていて、この先を進むためにも今日という日をなんともないふりをしたまま通り過ぎるわけにはいかない。「こんなにゆっくり歩んでる自分たち」だからこそ一歩さえも疎かにしたくない。そんな強固な意志が滲み出ていた。
大きな拍手が鳴り渡るなか、Beemerへの感謝とこれからも、の想いを託して歌われた「みんなへ」が沁みる。そうして「ありがとう新木場! いつか絶対埋めような!」の約束とともに迎えたオーラス、曲はやはり「Never End」だった。THE BEAT GARDENのメジャーデビューを飾ったこの曲は、常に彼らをスタートラインに立たせる。この曲が鳴る限り、THE BEAT GARDENはどこまでも前進し続けられるだろう。夢に真摯に突き進む4人の決意と覚悟を改めて見せつけられた「THE NEST 2020」。まだまだ道半ばだが、たしかに俊足ではない彼らだからこそ、我々も4人と同じ速度で歩いていけるのではないか。彼らもきっと置き去りになどしない。いつか一緒に見られる光景を心に描きながら、また一歩、さらに一歩。2020年はどこまで辿り着けるのか、俄然楽しみになってきた。
【撮影:Yuto Fukada】
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リリース情報
Snow White Girl
2019年12月04日
ユニバーサルシグマ
02.エピソード
03.Everyday
04.Snow White Girl(Instrumental)
05.エピソード(Instrumental)
06.Everyday(Instrumental)
セットリスト
ONE MAN LIVE
「THE NEST 2020」IN TOKYO
2020.01.26@新木場STUDIO COAST
- 01.Alive
- 02.Don’t think, feel.
- 03.GAME
- 04.SHAKE IT OUT
- 05.Fly Me High
- 06.JUNGLE GAME
- 07.Everyday
- 08.サイドディッシュ
- 09.君がいるから
- 10.そんな日々が続いていくこと
- 11.Snow White Girl
- 12.花火
- 13.エピソード
- 14.SOMEDAY
- 15.本当の声で
- 16.ぬくもり
- 17.Satisfaction
- 18.Sky Drive
- EN1.ヒューマン
- EN2.みんなへ
- EN3.Never End