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BBHFの“これまで”と“これから”を繋ぐ「mugifumi ONLINE」、その全貌を観た。

BBHF | 2020.06.25

 BBHFによる初の無観客有料配信ライブ「mugifumi ONLINE」。本来6月4日から開催予定だった全国ツアー「mugifumi TOUR」の新型コロナウイルスの影響による延期を受け、そのファイナルが行われるはずだった6月19日、会場となるはずだった札幌のライブハウス・cube gardenで行われたライブは、オンラインならではの試みも織り交ぜながら、BBHFのこれまでとこれからを繋ぐような色合いを帯びたものとなった。

 開演前の画面にはメンバーが物販のセッティングなどをしている会場の様子が映し出され、否が応でも気分が高まっていく。そして開演時間が来るとそれまでロビーにいたカメラがフロアに入っていき、目の前にステージが見えてくる。まるでライブを疑似体験するような粋な演出だ。

 そして、青いライトが落ちる仄暗いステージに尾崎雄貴(Vo/Gt)、DAIKI(Gt)、佐孝仁司(Ba)、尾崎和樹(Dr)のメンバー4人とサポートメンバーの岩井郁人が登場し、「ウクライナ」からライブはスタート。力強いビートとギターリフ、そして尾崎雄貴のエモーショナルな歌声が空間を覆っていく。「ありがとう」という一言を挟み、1stアルバム『Moon Boots』の曲順どおり「ライカ」へ。スケールの大きなロックサウンドが、スクリーンからはみ出るようなパワフルさで伝わってくる。バックのスクリーンには東京在住のためリモート出演となったDAIKIの姿が映されている。たぶん現場だったら「あ、映像だ」と思うのだろうが、こうしてオンラインで観ているとまるでそこにいるような臨場感だ。

 と、ここで一転、ミニマルなループ感とピアノの透き通るような響きが印象的な『Mirror Mirror』のオープニングトラック「Torch」が聞こえてくる。静と動をダイナミックに行き来するアンサンブルが一気に景色を変え、ぐっと奥行きが増したサウンドがBBHFというバンドの音楽性の豊かさを物語る。「こんばんは、今日はよろしくお願いします。BBHFです」という短い挨拶を経て披露されたのは、発売が9/2に決定したニューアルバム『BBHF1 - 南下する青年 -』に収録される新曲「リテイク」。それまで持っていたギターを下ろし、シンセを叩きながら身体を揺らして歌う雄貴。弾むようなデジタルビートとフィルターボイスが浮遊感を演出する、洒脱なポップチューンだ。さらにこちらも『BBHF1』からの「Siva」へ。どこかAOR的な懐かしさを感じさせながらも、リズムパターンや曲構成、重なるウワモノの音作りまで緻密に構築された、彼ららしい知性と博識を感じさせる楽曲になっている。続いてこれまた新曲「僕らの生活」。アーバンでレトロなグルーヴが、曲が進むに従ってエモーショナルに盛り上がっていく。

『Mirror Mirror』と『Family』という2作のEPを経てBBHFがどんな音を届けてくれるのか、ファンは全員気になっているところだろうが、この日演奏された新曲たちからはその片鱗をたしかに窺いうかがい知ることができた。ゆったりとした広がりと、デジタルな緊迫感がせめぎ合うようなそのサウンドは、ふたつのEPの真ん中で鳴っているようでもあり、その両極を丸ごと飲み込んでさらに大きな物語へと合流させるようでもある。もちろん2枚組全17曲というボリュームの作品なので、ここで演奏された3曲だけではまだアルバムの全貌が見えたとはいえないが、“南下する青年”というアルバムを貫くコンセプトの中で、これらの楽曲がどんな「役割」を果たしているのか、期待が高まった。

 さて、その新曲ブロックを終えるとメンバーはステージを降り、フロアに作られたサブステージに移動する。アコースティック編成の楽器が並ぶなか、グリーンバックに合成されて映し出されたのはLAにいる盟友クリス・チュウ(POP ETC)だ。さらにDAIKIも背景に合成され(自然すぎて一瞬気づかなかった)、6人編成で演奏されたのはクリスと雄貴が共作したPOP ETCの楽曲「We’ll Be OK」。クリスがギターとシンセを弾き、その前でBBHFがオーガニックなサウンドを響かせる。海を越えた友情によって実現したオンラインライブならではの演出にコメント欄も大盛り上がりである。さらに次の「真夜中のダンス」では灯りがともるビルを背景に穏やかなメロディが広がっていく。と、これまた一瞬気づかなかったが、いつの間にか合成されたDAIKIがふたりに増えて1人2役でキーボードとギターを弾いている。

 そしてそのまま5月27日に配信で急遽リリースされた最新曲「かけあがって」へ。背景に映っているのはこの曲のミュージックビデオが撮影されたのと同じ、雄貴の自宅の屋上だ。外出自粛中の個人的な心情をつぶやくように綴ったこの曲が、バンドで演奏されることで確かな希望となって広がっていく。さりげなく穏やかな曲だが、そこで描き出される光景は間違いなくこの日のライブのハイライトのひとつだった。再びもとのステージに戻り、「最後の曲です」と「涙の階段」へ。生命そのもののようなパワフルなリズムが、感情の大きなうねりとなって耳に飛び込んでくる。その大きさと明るさはクライマックスにふさわしい力強さ。音がやんだ後には強烈な余韻が残った。

 いったんステージをあとにしたメンバーが、すぐにもう一度戻ってくる。本当ならフロアからアンコールの手拍子が鳴っているはずだが、今回はもちろんそうはいかない。「今回お客さんが目の前にいないので、どんな目で観ているのか、どういう環境で観ているのかっていうのが見えないんですけど……歌いながら想像していました」と雄貴。「きっとまたみんなで音楽を楽しめる日が来ると思うので。その第一歩として、こういうライブをやりました。今後もオンラインライブをやりたいと思いますし、実際にツアーも回りたいので、希望を持って待っていてほしいなと思います」。そんな言葉から鳴らされたアンコール1曲目は「黄金」だった。軽快なシャッフルビートに岩井の吹くブルースハープがどこまでも広がる空をイメージさせる1曲だ。そして最後は「なにもしらない」。雄大なリズムに、ぱっと視野が広がるようなシンセやギターのサウンド。痛みも喜びも含んだ愛という感情の姿を描いたこの曲が、まるで新たな始まりを刻むような鮮烈さで響いた。

 終演後、カメラがフロアを出て、エントランスを通り、夜の街へと飛び出していく。それはまるで「ここから始まるのだ」ということを示すBBHFからのメッセージのようでもあった。リアルなライブの単なる代替ではない、オンラインならではの演出を織り交ぜて新しい表現を探りながら、同時にまた会える日に向かって歩き出す――そんな強い意思と生命力を感じさせる、すばらしい配信ライブだった。

【取材・文:小川智宏】

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リリース情報

かけあがって

かけあがって

2020年05月27日

Beacon LABEL

01.かけあがって

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BBHF1 - 南下する青年 -

BBHF1 - 南下する青年 -

2020年09月02日

Beacon LABEL

<上>
01.流氷
02.月の靴
03.Siva
04.N30E17
05.クレヨンミサイル
06.リテイク
07.とけない魔法
08.1988
09.南下する青年

<下>
10.鳥と熊と野兎と魚
11.夕日
12.僕らの生活
13.疲れてく
14.君はさせてくれる
15.フリントストーン
16.YoHoHiHo
17.太陽

<初回限定盤DVD収録内容>
「2019.12.16 BBHF ONE MAN TOUR 2019
“FAM!FAM!FAM!” 恵比寿LIQUIDROOM」ライブ映像
01. Mirror Mirror(Instrumental)
02. リビドー
03. だいすき
04. 友達へ
05. バック
06. Torch
07. Mirror Mirror
08. なにもしらない
09. あこがれ
10. シンプル
11. 涙の階段

セットリスト

mugifumi ONLINE
2020.06.19@札幌cube garden

  1. 01.ウクライナ
  2. 02.ライカ
  3. 03.Torch
  4. 04.リテイク
  5. 05.Siva
  6. 06.僕らの生活
  7. 07.We’ll Be OK
  8. 08.真夜中のダンス
  9. 09.かけあがって
  10. 10.涙の階段
  11. 【ENCORE】
  12. EN1.黄金
  13. EN2.なにもしらない

お知らせ

■配信リンク

「かけあがって」
https://lnk.to/C797Oonl

『BBHF1 - 南下する青年 -』予約・配信リンク
https://lnk.to/737rkz


■ライブ情報

有料配信ライブ”mugifumi ONLINE”
6/28(日)23:59までアーカイブ視聴可能
チケット購入URL:https://eplus.jp/bbhf-st/
※チケット販売は6/28(日)22:00まで

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