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約束の地・大阪城ホールで感無量のメジャーデビュー発表――その一部始終を観た!

Novelbright | 2020.08.20

 まさしくライブタイトルに冠されたとおり、“バンド史上最強の発表”にも相応しい、実に“SPECIAL”なステージだった。Novelbrightが彼らの地元・大阪を代表するアリーナ会場、大阪城ホールにて8月17日に開催した無観客生配信ライブ「バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール~バンド史上最強の発表あります無料です~」。遡ること1ヵ月前の7月11日に彼らが初めて行ったバンドセットによる配信ライブ「バーチャルブライト2020summer~WONDERLAND release ONE MAN SHOW」のなかで、大阪城ホールにて無観客および無料の配信ライブを開催すること、そこでバンド史上もっとも大きな発表があることが告知されたわけだが、その発表の内容について、おそらくその時点でほとんどのファンには大方の見当がついていただろうと想像する。実際、配信開始前のチャット欄(※今回のライブは複数のプラットフォームから約1,000万人に向けて生配信されており、筆者はNovelbrightのYouTube公式アカウントで視聴)にはライブを待ち詫びる声に混じって発表に関する予想も次々に書き込まれ、注目度、期待値の高さを窺わせていた。Novelbrightにとっても、それを見届けようと画面の前に集ったファン一人ひとりにとっても、今日は間違いなく大切な記念日になる。開演時刻が近づくにつれ、ぐんぐん増えるリアルタイムの視聴者数、相次ぐ最新投稿によって流れがどんどん早くなるチャット欄を見つめながら、そう予感した。

 開演の19時を迎えて、切り替わった画面の向こうにはたしかに大阪城ホールならではの大空間が広がっていた。そして場内後方と思しきドアから、ゆっくりとアリーナ席の床を踏みしめて進む5人の姿が。本来ならば椅子が並び、観客で埋め尽くされているはずのアリーナ席、それらが一切ないフロアは目に新鮮で、いつも以上にだだっ広く感じられる。メンバーを待っていたのは、通常、大阪城ホールのライブで設営されるような高さのあるステージではなく、ほぼフラットに近い、ステージというよりはプレイスペースと呼びたいそれだった。これまた通常と異なり、楕円形の場内を横向きに使っているのだろう。スタンド席の赤い座席が背景として実によく目に映える。思うに通常のステージは、本当の意味でここに立つときのために大切に取っておき、今回は無観客の特性を最大限に活かしてライブ空間を作り上げることを目指したのではないだろうか。大阪城ホール全体がまるで彼らのためのステージセットであるかのように設けられたなんとも贅沢な舞台。何よりこのスケール感にまるで呑まれていない、むしろいっそう堂々とした5人の佇まいが頼もしい。

「始めようか、大阪!」

 開口一番、竹中雄大(Vo)が叫ぶと1曲目「ランナーズハイ」の名そのままに息の合った強靭なバンドサウンドがハイテンションに駆け出した。カメラのレンズをまっすぐに捉え、画面越しのオーディエンスをひとり残らず射抜くがごとき雄大の目力と伸びやかで張りのある歌声の、なんという惹きの強さよ。全身をダイナミックに揺らして弦をかき鳴らす沖聡次郎(Gt)、山田海斗(Gt)は対照的にクールなプレイに徹しながらも抑え切れない気概が指先からほとばしるかのようだ。芯の太いベースラインでアンサンブルを牽引する圭吾(Ba)、一心不乱に四肢を駆使してビートを叩き出すねぎ(Dr)のリズム隊がバンドの躍動感をどこまでも増幅させる。ひときわ開放感のある音像で聴き手をいっそう広い世界に連れ出した「Count on me」、艶やかなハイトーンボイスを響かせ<いつもそばにいてくれるあなた>と歌いながらメンバーを一人ひとり指差して、最後に画面の向こうにいる“あなた”へとまっすぐにその手を差し伸ばした雄大の親愛に満ちたジェスチャーがとりわけ印象に残った。続いて「まだまだ楽しんでいきましょう、城ホール」と雄大が呼びかけ、「おはようワールド」に突入。アッパーなダンスビートからワルツへのテンポチェンジも切れ味鋭く、遊び心満載の歌詞に歯切れのいい歌唱もオーディエンスを確実に踊らせにかかるかのよう。気づけばフロント4人は揃ってステージ前方に横1列に並んで前のめりの姿勢、後方を守るねぎもドラムセットから身を乗り出さん勢いで、表情筋までも総動員してスティックを振るっているのだから、観ているこちらがじっとしていられるわけもない。あまりの求心力にうっかり配信ライブであることすら忘れてしまいそうだ。

「ついにやってまいりました、『バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール』。今日は僕たちにとってバンドセットで初めての無料配信ライブ、様々なプラットフォームを通じて皆さまにライブをお届けしております。たまたま観てくれてる人もいるかもしれませんので自己紹介させてください。大阪出身の5人組ロックバンド・Novelbrightといいます。よろしくお願いします!」

 序盤3曲を畳み掛けてのMCコーナー、そう元気よく挨拶した雄大だったが、直後「……ちょっと自分のバンド名、噛みそうになりましたね。危なかったです」と苦笑いで正直に告白。Novelbrightを初めて観るオーディエンスを前にしても嘘がない、格好つけないところも彼らしくていい。続けて「無観客の大阪城ホールのワンマンライブは前代未聞なんじゃないですか? もともと予定してたアリーナツアーが(コロナ禍で)キャンセルになったから(無観客生配信ライブを)やってるわけじゃなくて、このためにわざわざ大阪城ホールを借りました」と今回の開催に至った経緯を説明。ある意味、やらなくてもいい無謀な試みかもしれない。けれど今日、ここで配信ライブを行うと彼らが決めたのは、バンド史上最大級の大事な発表はやはり地元の思い入れのある場所でしたいという強い気持ち、加えて大切なファンの前で直接伝えたいという想いがあったからだ。昨年夏にスタートし、一躍脚光を浴びるまでに彼らを押し上げた路上ライブツアー、その卒業公演が行われたのが大阪城公園であり、そこに集まった1,000人以上ものファンと「いつか大阪城ホールワンマンで会おう」と約束したことも大きな要因のひとつに違いない。そうした彼らの心情に呼応し、実現に向けて尽力したスタッフ陣の心意気もまた素敵だ。

「無観客ではありますけど、スタッフの皆さんや関係者の方もおられまして、その方たちの拍手が聞こえるので今日はライブが楽しいですね。画面越しでも、きっとたくさん拍手してくれていると思うので張り切ってまいります!」

 雄大の宣言とともに幕開けた中盤戦、勢いで畳み掛けた序盤とは一転、演奏は聴かせるモードへと切り替わった。一歩を踏み出す勇気とその先に待っている希望を朗々と歌い上げる「君色ノート」の鮮やかさ。世界大会で2度の優勝経験を持つ雄大のたおやかな口笛から始まる「また明日」は、ささやかな幸せこそがかけがえないという真実をミディアムテンポなサウンドと情感豊かな歌声の相乗効果で教えてくれる。このコロナ禍で、ライブという当たり前でいてバンドにとって何より大切なものを奪われてしまった彼らの数ヵ月間と、それでもひたすら前を向きながら自分たちなりのやり方を模索し続け、その結果、無観客とはいえ今こうして演奏と歌声を生で大勢の人に届けられるまでになった喜びとがシンクロして浮かび上がってくるような感覚にも襲われた。歌詞を紐解けばラブソングとも取れるが、今日聴くこの曲、特に<僕ら>というフレーズはNovelbrightと彼らを支えるオーディエンスとの間の深い絆を歌っているとも思えるのだ。最後にアカペラで雄大が歌い上げた<手を取り合うよ>の一節からシームレスになだれ込んだのは「夢花火」。夏という季節特有の叙情感と純然たるラブソングならではのきらめきのグラデーションがみるみる心を潤していく。海斗の奏でるアコースティックギターが歌に寄り添ってしみじみと温かく、けれどエンディングに向かうに連れてバンドサウンドとしてエモーショナルに熱を帯びていく様も、このバンドの音楽的な幅広さを物語っているようで面白い。アウトロに鳴り渡る聡次郎の流麗なギターソロに最後はグッと持っていかれた。

 それにしてもなんと堂に入った演奏ぶりだろう。1ヵ月前の「バーチャルブライト2020summer~WONDERLAND release ONE MAN SHOW」と比べても明らかに見違えた。1ヵ月前はバンドセットで初めての配信ライブであり、そもそもバンドセットで音を出すこと自体が数ヵ月ぶりとあってだろう、どこかそわそわウキウキとした初々しさが先に立っていた気がするが、今回はスカスカの大阪城ホールを心底楽しめている余裕も含め、すっかり腹の据わった不敵ささえ感じられる。おそらく成す術もなく手放さざるを得なかったバンドマンの魂=ライブを前回の生配信で見事に取り戻せたことは、きっとNovelbrightにとって大きな自信になったのだろう。一方で、もう2度となくすものかと固く心に誓ったはずだ。そのうえでさらなる前進を決めた、揺るぎない覚悟がこの日、画面越しにもひしひしと伝わってきた。前回の配信ライブを改めて立ち返ったバンドの原点とするならば、今回の大阪城ホールははっきりと未来を見据えていっそう高く跳ぶための踏み切り板となるステージ。1曲、また1曲と追いかけるたびに予感が確信へと着々と近づいていく。

「早いもので後半戦、お客さんがいる/いない関係なしに、この大阪城ホール全体を巻き込むようなヤバいライブをお届けしたい。僕たちはなんてったって5人組のロックバンドですから、後半戦は思いっきりロックしていこうと思うんですけど、画面越しの皆さん、拳をぶち上げて、ヤべぇ日を今から作れますか!」

 すさまじい歓声が今にも聴こえてきそうなくらいに本気のアジテーション。そんな雄大に負けじとメンバーのパフォーマンスも輪をかけてアグレッシブに。「Walking with you」から「Morning Light」への流れなど、観る者に息もつかせぬほどのパワフルな展開で、持ち場を大きく離れてプレイしたり、ひとりのメンバーのもとに歩み寄ってはお互いに顔を見合わせてバトルのように演奏し合ったり、そこに別のメンバーも参戦して三つ巴になったり、とにかくいきいきと好き放題に暴れ回る5人の姿に、まさにロックバンドの本領を見せつけられた。きっとそれぞれの画面の前でも大クラップ大会、大シンガロング大会が繰り広げられていたはずだ。どこまでもヒートアップするかに思えた狂騒だが、「時を刻む詩」を前にスッと凪いだ。カチカチと刻まれる時計の針の音、オルゴールを彷彿させるキラキラとした音色、そうして一斉にほとばしる壮大なアンサンブル。全国を路上ライブで飛び回っていた日々の記憶、まもなく結成7年を迎えるバンドのけっして順風満帆ではなかった歴史、どんなときも彼らを信じて支え続けてくれたファンへの信頼、これから新たな未来を歩んでいきたいと願う切なる想いがリアルに胸を打つ。映像が俯瞰のアングルに切り替わり、真っ暗な大阪城ホールのなかに5人のいるステージだけがぽっかりと浮かび上がった一瞬は宝物みたいに綺麗だった。

「ありがとうございます。次でラストになります」

 そう告げて、この日を迎えるまでの胸の内を切々と語り始める雄大。現メンバーが揃って1年半近く、昨年末には思い切って上京し、ようやくこれからだと意気揚々と今年を迎えたにもかかわらず、新型コロナウイルスの蔓延によって瞬く間にすべてのライブが中止になってしまったこと、「大丈夫、きっと打開策がある。俺らならいけるはず」と前向きに考えながらも、思うように動けない状況に苛立ってしまったり、不安で落ち込むこともあったという。それでも家族や友人、ファンのみんながNovelbrightを信じて応援してきてくれたおかげで、今日のライブが実現できたと感謝を口にする彼は今、心からの笑顔を浮かべている。今の5人になるまではメンバーチェンジもあったし、いろいろ悔しい想いもしてきたこと、バンドを辞めようと思ったことはないが、体調を崩してバンドに迷惑をかけてしまうなどマジでキツいと思うことはたくさんあったとも明かし、「でも、みんないいヤツらで。この4人が俺のことをいいボーカルだと思って、ずっと信じてついてきてくれたから、7年も続けることができました」とメンバーを語る口調には誇らしげな熱が帯びる。メンバー一人ひとりの目がみるみる潤んでいくのがわかる。

「これから先、もっともっとしんどいことがあると思います。けちょんけちょんにされることもあると思います。だけど一緒の釜の飯食って、一緒に同じホテルで寝泊まりして、一緒に車を壊しながら全国を旅したこの仲間だったらどんな困難も乗り越えられる。この先、どんな困難が立ち塞がったとしても、俺たちは一生この5人でNovelbrightを続けていきたい! だからこそ俺たちが進んでいくために、決めました。ここまで連れてきてくれてありがとう!」
そうして、このあと21時に配信リリースされる新曲「Sunny drop」をもってユニバーサルミュージック ユニバーサルシグマからメジャーデビューすることが雄大の口から発表された。さらに「Sunny drop」が「コカ・コーラ ゼロシュガー」のCMソングに起用されたこと、そして来年、2021年7月11日にここ大阪城ホールでワンマンライブを開催するという最高にうれしい告知も。メジャーデビューは予想どおりでも、ここまでビッグなニュースが目白押しになるとはきっと誰も想像していなかっただろう。この瞬間、日本中のあちこちで歓喜の声が渦巻いたであろうことはチャット欄を覗くまでもなく、想像に難くない。
最高潮に昂揚したムードのなか、ラストを飾ったのは「拝啓、親愛なる君へ」だった。<そんな時にあなたと出逢えた><眩しい日々をくれてありがとう><今度は私があなたへ贈る幸せを>ーー歌の一節一節が残らず心に刺さってくる。今日の日のための楽曲なのではないかと思ってしまうほどだ。

「メジャーデビューしても、俺らのスタンス、信念は何も変わりません。これからも一緒に明るい未来を夢みて歩んでいってください!」
エンディングにそう雄大が叫ぶと、全員がねぎのもとに集まって演奏を締める。涙の痕跡はすでになく、5人の表情はとても晴れやかだった。思えばこれがインディーズ最後のライブ、彼らにもファンにも絶対に忘れることのできないステージになったことは間違いないだろう。

 終演直後の21時、YouTubeでは「Sunny drop」のMVがプレミア公開された。爽やかなオープンエアでの演奏シーンに加え、現在ドラマや映画で最も注目されている若手実力派俳優の神尾楓珠と、モデルで仮面ライダー女優としても活躍する井桁弘恵の出演がさっそく話題を呼んだことは、当サイトのニュースですでに報じられているとおりで、さらにMV公開後にはファンクラブ限定のアンコール配信も行われた。日々支えてくれている会員のみんなに真っ先にメジャーデビューして最初の演奏を届けたいとの想いで行われたこのアンコール配信、ファンのことをいちばんに考える実に彼ららしいアイデアではないか。おそらくマネージャーのスマートフォンで撮影されているのだろう、先ほどまでのハイクオリティな画質・音質とは打って変わったむしろインディーズ感満載の映像だが、それがメジャーデビューしても変わらない彼らを伝えてくれるようでうれしい。「これからもいろんなことがあると思いますけども、僕たちにとっても応援してくれている皆さんにとっても、今日という日が何かの素敵な始まりになってほしい。僕たちもメジャーデビューして1発目、幸先のいいスタートを切りたいという想いで歌います」と披露されたのは「スタートライン」だ。インディーズの<オワリ>からメジャーデビューという新たな<ハジマリ>、その一部始終をこんなふうに見届けられるなんて、そうめったにあることじゃない。本当になんと“SPECIAL”な一夜だろう。これからのNovelbright、ますます目が離せない。

【取材・文:本間夕子】
【撮影:堀内れい子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Novelbright

リリース情報

Major Debut Digital Song「Sunny drop」

Major Debut Digital Song「Sunny drop」

2020年08月17日

ユニバーサルシグマ

01.Sunny drop

セットリスト

バーチャルブライトSPECIAL at 大阪城ホール~バンド史上最強の発表あります無料です~
2020.08.17@大阪城ホール

  1. 01.ランナーズハイ
  2. 02.Count on me
  3. 03.おはようワールド
  4. 04.君色ノート
  5. 05.また明日
  6. 06.夢花火
  7. 07.Walking with you
  8. 08.Morning Light
  9. 09.時を刻む詩
  10. 10.拝啓、親愛なる君へ
  11. 【FC限定アンコール配信】
  12. スタートライン

お知らせ

■配信リンク

各サブスク・セットリストプレイリスト
https://Novelbright.lnk.to/Virtualbright_0817

「Sunny drop」
https://Novelbright.lnk.to/Sunnydrop



■ライブ情報

大阪城公園で交わした約束「2年以内にあっちで会いましょう」を実現するワンマンat大阪城ホール
2021/07/11(日)大阪 大阪城ホール


「モンバス!オンライン」
2020/08/22(土)、08/23(日)
※Novelbrightは08/23(日)19:00~21:00にオンエア予定。

「FM802 Live pool ON LINE!!」
2020/08/25(火)大阪 Zepp Osaka Baysideより生配信
w/ flumpool / 緑黄色社会 / KEYTALK

「a-nation online 2020」
2020/08/29(土)

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