文句なしのソールドアウトで幕を閉じた万感の東名阪クアトロツアー。ファイナル公演を徹底レポート!
Novelbright | 2020.02.28
冒頭の動画インタビューでも使っているのだが、2019年を振り返るに“大躍進”という言葉がこれほどにもぴったりとハマるバンドもそういない。昨年7月から8月にかけて全国5都市にて彼らが敢行した路上ライブツアーの模様がSNSを通じて拡散されるやすさまじい勢いで注目を集め、瞬く間にネクストブレイク候補の筆頭としてその名を連ねるまでになったNovelbright。昨秋に開催された2ndミニアルバム『「EN.」』のリリースツアー「『EN. -アンピリオド-』RELEASE ONEMAN TOUR 2019」は全公演ソールドアウト、さらにそれだけに留まらず、追加公演としてなんと東名阪のCLUB QUATTROでのワンマンツアー「『EN. -アンピリオド-』RELEASE ONEMAN TOUR アンコール編」まで決定、こちらもソールドアウトするという尋常ならざる展開は、おそらく本人たちにとっても想定外ではあっただろう。ただ、想定外なのはそのスピード感のみで、いずれそうなるだろうことを思い描かなかったはずがない。むしろ強くイメージしていたからこそ、捨て身にも近い覚悟でCDやライブチケットの売上と投げ銭だけで生活するという路上ライブツアーに挑むことができたのだと想像する。ならばNovelbrightの驚異的大躍進はけっして奇跡でもラッキーでもなく、5人の揺るがぬ覚悟と信念の結実であること、つまりはバンド自身が手ずから引き寄せた必然だと言えまいか。1月5日には初のタイアップにして書き下ろし曲「ランナーズハイ」を配信リリース、2020年の幕開けを幸先よく迎えたNovelbright。このインタビュー直後に観た彼らのライブ、すなわち「『EN. -アンピリオド-』RELEASE ONEMAN TOUR アンコール編」のファイナルとなった東京・渋谷CLUB QUATTROは、さらなる快進撃を予感させるに十二分なステージだった。
前日までとは打って変わり、急激な寒波に見舞われたこの日。しかし渋谷CLUB QUATTROの場内はひしめき合うオーディエンスの熱で開演前から汗ばむほどに暑い。ざっと見渡すに観客の大半は彼らと同年代か、少し若い世代のようだ。彼らを初めて観る人、あるいはライブ自体が初めてだという人も少なくないのだろう、さざめきにどことなく初々しさが漂っているように感じるのは気のせいか。せり上がる期待のメーターは開演時刻を迎えてフロアが静かに暗転するや、一気に上限を突破した。SEのたおやかな調べに導かれるようにして、ねぎ(Dr)、圭吾(Ba)、沖聡次郎(Gt)、山田海斗(Gt)の順に登場しては、次々に音を重ねてゆくメンバー。最後に現われた竹中雄大(Vo)が台の上に立って、握りしめた両手を誇らしげに突き上げると、たちまち歓声が渦巻く。そのままなだれ込むは「Walking with you」だ。先陣を切って放たれる雄大のハイトーンボイスがいきなりオーディエンスの興奮を押し上げ、楽器隊の太くたくましいアンサンブルは満場のクラップにも調和して熱狂をパワフルに牽引する。のっけからなんと堂々たる佇まいだろう。大阪、名古屋を経験してきたとはいえ、これが初めての渋谷CLUB QUATTROとはにわかに信じがたいくらい、ステージに立っている彼らがしっくりと目に馴染む。初期衝動もたっぷり詰め込んで疾走する「Count on me」では《守るよこの手で 譲れぬこの居場所を》と高らかに誓い、“あなた”と歌いながらフロアをまっすぐに指す雄大。彼の特技であり、世界大会で2度の優勝を果たしたという口笛もアクセントとなって実にエモーショナルだ。「踊っちゃいましょうか」とフロアに呼びかけ、渋谷CLUB QUATTROを激しくシェイクさせた「Shall we dance??」。海斗のギターソロがまた情熱的にオーディエンスを煽る。
どんな困難にも打ち勝って、ともに未来へと進んでいく決意をスケール感たっぷりに伝える「We are calling you」では、オーディエンスとのコール&レスポンスがまるでエールの交換となって、大きく温かな一体感を作り上げたかと思えば、続く「フォーリン・ヴィーナス」でムードはファンキーに一転。ねぎが刻む4つ打ちのビートに圭吾のうねるベースが絡んだ挑発的なリズムアンサンブル、聡次郎と海斗、それぞれの個性が絶妙に融け合ったギターリフはこの上なくグルーヴィーだ。遊び心満載な歌詞を見事に歌いこなす雄大の、バラエティ豊かなボーカリゼーションにも瞠目。ピンクを基調にした妖艶なライティングや、ゆっくりと回って扇情的なミラーボールまでも似合ってしまうのか、このバンドは。たおやかなピアノのインタールードが狂騒をひととき鎮めた直後、一気に感情をほとばしらせるかのごとき「the Eternal oath」のドラマティックな奔流も、何かしら物語を想起させて、ただのインストナンバーでは終わらせない「parade -Я-」も、アグレッシブに展開する「Rain Dancer」の鋭くハードな音像も、自由自在に表現できる技量、何よりその屈託のなさが空恐ろしいとさえ思う。
なかでも圧巻だったのは中盤戦後半、9曲目「夜空に舞う鷹のように」から14曲目「Heart voice」までのバラードが集中するブロックだ。特に10曲目「ヒカリへ」以降の5曲は昨年のツアー「『EN. -アンピリオド-』RELEASE ONEMAN TOUR 2019」で披露されていたのと同様の流れだが、今回はより一層“聴かせること”に特化した、ある種のすごみを感じさせられた。そもそもロックバンドでありながら勢いやノリだけで押し切るのではなく、歌の一語一句のみならず演奏の一音一打まで余すことなく届けるということは、そう容易ではないはずだ。しかも演者だけでなく聴き手にもかなりの集中力を要することになり、ともすれば中弛みだってしかねない。1曲だけでもシビアにバンドの力量が問われるというのに、1ブロック分をほぼバラードで貫くところに彼らの並ならぬ矜持を垣間見る。結果として、彼らは前回をはるかに上回る演奏と歌で見事に聴かせきった。「みんなが抱えてるストレスとか不安とか全部吹き飛ばす歌を」と宣言し、《失った数だけ思い描いた願いは叶うさ》と一人ひとりが抱えるやるせなさを一緒になって抱きしめ、そして解きほぐした「ヒカリへ」。「また明日」はありふれた毎日を大切な“あなた”とともに過ごせるかけがえなさを、「ふたつの影」はまだ消えない“君”との日々を甘い痛みに変えていつか前を向こうとするささやかな強さを、オーディエンスにしっかりと手渡す。今やたったひとりのオリジナルメンバーとなった雄大のアカペラからスタートした「Photo album」、6年前のバンド結成当初から大切に歌ってきたというこの曲は彼の、Novelbrightというバンドへの想いそのものでもあると思えた。サウンドに深い包容力を感じるのは、その想いを現在の4人が真っ正面から受け止めているからこそだろう。ところで『「EN.」』リリース時の当サイトのインタビューで「歌う時は歌姫になりたい」と嘯いていた雄大だが、全編英語詞の「Heart voice」の慈愛に満ちた朗々とした歌声はまさしく歌姫に匹敵するものではなかったか。
「QUATTROというステージは、僕がバンドを始めてからいちばん近い目標で。バンドとしてやっていくには、やっぱりここが売り切れなきゃいけないっていう登竜門。そんなQUATTROでワンマンができて、しかもソールドアウトして。そうやって求められるバンドになれたこと、幸せな気持ちでいっぱいです」
地元大阪でバンドを結成したはいいけれど、鳴かず飛ばずの時期が長かったこと。ちょうど1年前の今頃、東京と大阪でワンマンライブをしたときはキャパ200人ほどの会場で半分くらいしか埋まらず、とても悔しかったこと。東京には車で何度も足を運び、地道な活動を重ねてきたこと。後半戦突入を前に、これまでの歩みを振り返りながら、雄大はそう噛み締めるように口にした。
「もちろん、まだまだこれから」と兜の緒を締めることも忘れないが、ようやくここまで来れたという万感の想いがありありと滲む。昨年11月、満を持して東京に引っ越してきたという彼ら。ねぎ曰く、上京は「バンドマンやってる全員の夢」。ちなみにねぎは「いまだにスクランブル交差点を渡るときにワクワクする!」らしい。メンバー同士の和気あいあいとしたやり取りも交えつつ、「後半も後半、残り短いです。やっぱり僕らロックバンドなんで、残り数曲、バチコーンってアゲていこうと思うんですが、皆さん、まだまだいけますか? 今日は実はカメラが10台くらい入ってます。Novelbrightのファンはマジでヤバいんだぜってことをカメラに見せてやってください!」と雄大がハッパをかければ、そこからはもう怒涛。新曲「ランナーズハイ」の明るくはじける躍動感はライブにおける新たなキラーチューンの爆誕を確信させる。そして「Revive」「Morning Light」と全速力で畳み掛けたあとには、「普段はこんなこと言わないし、言うつもりもなかったんだけど……」と雄大がスタッフ、メンバー、観客のみんな、マネージャーに向けて感謝を告げる一幕も。さらには「これからは僕がもっともっとみんなに夢を見させられる存在になりたい。今年もまだまだ挑戦していきます!」と5月に初のフルアルバムをリリースすること、そのリリースツアーとして6月に東名阪のZeppにてワンマンライブの開催も発表。「路上ライブから這い上がってきた俺たちがまだまだいけるんだぜってことをこれからも一緒に証明していってください!」と呼びかけて、本編ラストは「拝啓、親愛なる君へ」が飾った。歌詞に綴られた“あなた”はここにいる全員をもれなく指しているのだと、フロアいっぱいに咲いた笑顔と溢れ返る大合唱につくづくと実感する。“醒めない夢”も“胸躍らせる日々”もまだまだ“あなた”とどこまでも、そんな願いが音になり、歌になって響き渡っていると思えた。
「僕がずっと音楽をやってこれたのは根拠のない自信があったからで。根拠のない自信って大事だと思うんですよ。『俺はいける!』って気持ちさえあれば結構、人生なんとかなる。僕らはこれからもそれを人生懸けて証明していきたいな、と。同じ人間なんで『あいつらができるんやったら俺もできるやろ』って俺らの背中を見て、みんなが少しでもエネルギーにしてくれたら」
アンコールで雄大はそんなふうにも語った。Novelbrightの音楽がたくさんの“あなた”の力になっている理由がちょっとわかった気がする。オーラスは「スタートライン」。今日という日が僕らにとっても、みんなにとっても素敵な何かの始まりになりますように。そう願って5人が全身全霊で放ったこの曲のブライトな希望感といったら! この先、彼らと一緒にどんな景色が見られるのだろうか。なおこの日、アルバムリリース、東名阪Zeppワンマンツアーに加え、3月にはファンクラブ「NOVELCITY」が開設されるといううれしいニュースも告知された。楽しみは増すばかりだ。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:堀内れい子】
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SNSやサブスクでいま話題のバンド・Novelbright。結成、新体制のはじまりから現在に至るまで、そして新作ミニアルバム『「EN.」』に込めた決意を語る全員インタビュー!
リリース情報
「EN.」
2019年09月04日
Emperor Mode
02.the Eternal oath
03.ふたつの影
04.フォーリン・ヴィーナス
05.parade -Я-
06.Rain Dancer
07.Heart voice
08.拝啓、親愛なる君へ
セットリスト
「EN. -アンピリオド-」RELEASE ONEMAN TOUR アンコール編
2020.02.06@渋谷CLUB QUATTRO
- 1.Walking with you
- 2.Count on me
- 3.Shall we dance??
- 4.We are calling you
- 5.フォーリン・ヴィーナス
- 6.the Eternal oath
- 7.parade -Я-
- 8.Rain Dancer
- 9.夜空に舞う鷹のように
- 10.ヒカリヘ
- 11.また明日
- 12.ふたつの影
- 13.Photo album
- 14.Heart voice
- 15.ランナーズハイ
- 16.Revive
- 17.Morning Light
- 18.拝啓、親愛なる君へ 【ENCORE】
- EN1.スタートライン
お知らせ
東名阪Zeppワンマンツアー(仮)
06/16(火)愛知 Zepp Nagoya
06/18(木)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
06/26(金)大阪 Zepp Osaka Bayside
私たちはネイバーさん vol.4名古屋編
04/03(金)愛知 名古屋ブルーノート
マイナビ TOKYO GIRLS COLLECTION by girlswalker
02/29(土)東京 国立代々木競技場第一体育館
Non Stop Rabbit present’s「A.N.N official」
03/09(月)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST
w/ Non Stop Rabbit / ACE COLLECTION
SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020 -MONSTER baSH × I?RADIO 786-
03/21(土)香川 香川県複数会場
HIROSHIMA MUSIC STADIUM-ハルバン’20-
03/22(日)広島 広島市内複数会場
FM802 Live pool
03/24(火)大阪 Zepp Osaka Bayside
w/ flumpool / 緑黄色社会 / KEYTALK
ULTRA TEENS FES 超十代 2020
03/24(火)千葉 幕張メッセ国際展示場6,7ホール
ZIP!春フェス2020
03/26(木)東京 東京ドームシティホール
FM NORTH WAVE & WESS PRESENTS IMPACT! XV supported by アルキタ
04/11(土)北海道 札幌ライブハウス6会場
TGC KUMAMOTO 2020 by TOKYO GIRLS COLLECTION
04/25(土)熊本 グランメッセ熊本
ARABAKI ROCK FEST.20
04/26(日)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
NIIGATA RAINBOW ROCK 2020
05/04(月・祝)新潟 場所未定
OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2020 DAY1
05/16(土)大阪 METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)
百万石音楽祭2020~ミリオンロックフェスティバル~
06/06(土)、07(日)石川 石川県産業展示館1~4号館
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。