王道なギターロックナンバー「short hair」リリース!!
Base Ball Bear | 2011.08.31
今年でバンド結成10周年を迎えるBase Ball Bearの13枚目のシングル「short hair」は、バンド史上最もシンプルで、最も王道なギターロック・ナンバーになった。どこか捻くれたバンドサウンドが持ち味だった彼らが、なぜ今、こんなにもオーソドックスなギターロックに向かったのか。バンドのフロントマン小出祐介(ギター&ボーカル)に、ニューシングル「short hair」に込めた思いを語ってもらった。
- EMTG:「short hair」はBase Ball Bearのシングルとしては13枚目の作品なんですが、その中でも一番といって良いほどシンプルでストレートなギターロック・ナンバーになっています。こういう曲ができたきっかけは、何かあるのでしょうか?
- 小出祐介:前のシングルの「yoakemae」がかなりトリッキーというか、バンドとしてもかなり新鮮な曲だったんですけど、今回は「yoakemae」と真反対の曲を作りたいと思っていたんです。今年がバンド結成10周年なので、ある意味、王道なものをやりたいという気持ちもあって。今まで僕らはギターロックと呼ばれる音楽をずっとやってきましたけど、こういう良い意味でも悪い意味でもオーソドックスなギターロックの曲って、ギターロックが好き過ぎるゆえにやれなかったところもあって。
- EMTG:好きだからこそ、やれないというのは?
- 小出祐介:僕らが2002年ぐらいに下北沢GARAGEでライブを始めた頃って、いわゆる「下北系ギターロック」といわれる音楽が盛り上がっていて。元々、僕らはギターポップとギターロックの中間みたいなところをずっとやっていたんですけど、そういうシーンから影響を受けたところも少なからずあると思っているんです。でも、僕らが当時、流行っていたような王道というかオーソドックスなギターロックに傾倒してしまったら、明らかにシーンに埋没するなと思っていて、そこから飛び抜けるためにも、他のバンドと同じことをやっていたらダメだって考えるようになったんです。かなり天の邪鬼な発想でギターロックをやるっていう。
- EMTG:でもそれは、ギターロックのシーンを否定したいわけじゃなくて。
- 小出祐介:そう。そのシーンに対する愛ゆえにというか、愛し過ぎてて憎いというか(笑)。ギターロックという看板であり十字架を背負ってやるからには、ギターロックの枠だったり柵だったりをどんどん拡げていこうと。そういう気持ちで今日に至ってるんです。
- EMTG:だからむしろ、「short hair」みたいなスタンダードでオーソドックスなギターロックには、これまでは抵抗があったわけですね。
- 小出祐介:はい。それに、やる必要もないと思っていたんです、バンドのキャラクター上。でも、前回のシングルの「yoakemae」が、言わばものすごい変化球だったと思うんです。だから今回は、どストレートの球を投げようと。今まではカーブをストレートとしていたわけで。初めてストレートをストレートとして投げるっていう感覚です。
- EMTG:なるほど。そういう意味では、バンド結成10周年を迎えた今だからこそできた曲ともいえそうですね。
- 小出祐介:そうですね。「short hair」は、良くも悪くもオーソドックスなフォーマットの曲なので、それを「あえて」やるには、まず自分たちがどういうバンドなのか蓄積がないとできないな、と。その「あえて」に至る蓄積を積み上げる期間が必要だったのかもしれないですね。こういう曲をやるには、自分の中で一つ“勝てる”カードがないとやれないな、と思ってたし。
- EMTG:特にその“勝てる”要素が現れている部分というのはどういうところでしょうか?
- 小出祐介:ど頭のコードですね。あそこでジャーンと鳴った瞬間に、「いける」と思いました。普段、湯浅(ギター)はシンセみたいなギターを弾いてますけど、今回はシンプルなギターというか、イントロのリフがあって、アルペジオみたいなのがあるだけっていう。そんなこと、今まで一度もさせたことないですからね(笑)。
- EMTG:あははは。確かにね。
- 小出祐介:で、俺もずっとコードを弾いているだけっていう。ドラムもベースも普通の8ビートだし。こんな普通の曲、一回もやったことない(笑)!
- EMTG:そういうと面白みのない曲に聞こえますけど(笑)、淡くて切なくて、すごく良い曲だと思います。歌い方もすごく柔らかくて、優しい歌い方をしていますよね。
- 小出祐介:こういう歌い方あんまりしたことないですよね。自然とこうなっていったんですけど。
- EMTG:それは曲の雰囲気を重視してということ?
- 小出祐介:曲のコード感に歌を寄り添わせたいと思っていたので、自然とこういう発声になっていきましたね。溶かすような感じというか。これまでバキッと歌うことを意識していたのですが、「short hair」はさりげない歌という感じ。
- EMTG:シンプルでオーソドックスだからこそ、サウンドを作っていく上でいろいろバンドメンバーと話し合うこともあったと思うんですけど。
- 小出祐介:いや、今までに比べたら、全然バンドで話すことはないですよ。
- EMTG:そうなんですか?
- 小出祐介:うん。「yoakemae」はギミックの嵐だったから、「これをこうしてああして」とか「ここで音抜いて」とか、そればっかりだったんですけど。そういう意味では、バンドっぽくないものをバンドでやりきるっていうのが「yoakemae」だったんですけど、「short hair」はもう完全にバンドの曲で。だから曲を作ってる時も、アレンジやってる時も早かったですね。「じゃあ、ドラム始まりで!」みたいな(笑)。
- EMTG:そのまんまですね(笑)。
- 小出祐介:そうそう。「最初は歌とギターとドラムだけで、1ブロックを歌いきったらブレイクで全体ドーンね」みたいな(笑)。「ジャカジャカジャッ、ジャー」とか、全部の説明が擬音(笑)。
- EMTG:ははははは。でも、そうやってできた「short hair」については、自分たち自身も新境地を感じるところがあったと思うんですけど。
- 小出祐介:Base Ball Bearとしても今までありそうでなかった曲だし、ライブでもすごくやりやすい曲ですね。うちらはとにかく四つ打ちの曲が多いし、派手な曲が多いので、演奏していて忙しいんですよ(笑)。
- EMTG:なるほど(笑)。今年はバンド結成10周年ということもあり、期待も注目も大きいんですけど、リスナーにはどういう風に楽しんで欲しいですか?
- 小出祐介:今回のシングルの「short hair」も前回の「yoakemae」も、言わばアルバムありきのシングルなんです。シングルでこれだけバラバラに振り切れたものをやり、その先にアルバムがあるっていう。この曲が伏線であり、前振りにもなっているんです。だからこの「short hair」の先にあるものを楽しみにしていてもらいたいですね。
【 取材・文:大山貴弘 】
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