最新作Sound Film Track「あいという」リリース!
plenty | 2011.12.09
最新作は「Sound Film Track」と称されている。これは映像に対して楽曲を制作する「Sound Track」とは逆のコンセプト。楽曲主導で制作された映像作品をCDと一緒にパッケージ化している。組曲である「あいという」と「スローモーションピクチャー」、映像作品が互いにリンクし合いながら、世界観を奥行き深く浮き彫りにしている。ストリングスが盛り込まれた「あいという」、打ち込みを導入した「スローモーションピクチャー」。サウンド面の新境地も注目させられるポイントだ。今作について江沼郁弥(Vo・G)と新田紀彰(B)に語ってもらった。
- EMTG:「愛」の本質とか姿って上手く説明できないし、実体が掴めないじゃないですか。そこにじっくり迫っているのが「あいという」だと感じました。
- 江沼郁弥:何となく自然に「愛」というものを歌おうと思って。それで書いていったら、何もなかったんです。ドーナツの真ん中みたいな感じのものが愛なんじゃないかと思って。
- EMTG:ドーナツの穴って、ドーナツ自体があるから「ドーナツの穴」だけど、ドーナツがなければ形を持たないですもんね。愛もそういうものだと?
- 江沼郁弥:そう思っちゃったんです。その周りには苦しいとか、痛いとかいうものがあって。でも真ん中はない……ないかどうかも分からない。今の僕にはそういう答えしかなかったんです。
- EMTG:愛ってよく使う言葉だけど、冷静に考えると、はっきりした実体がないですよね。
- 江沼郁弥:人によってはあるのかもしれないけど(笑)。愛ってすごく大きい気がするんです。だから言い切れない。いつか言い切れたらいいなとは思うんですけど。
- EMTG:人生経験をもっと積んだら言い切れるものなのかもしれないですけど。
- 江沼郁弥:はい。そうしたら「ずばりあいという」って曲を作ろうかな(笑)。
- EMTG:(笑)愛について描いているけど、いわゆる「ラブソング」ではないですよね。
- 江沼郁弥:そうですね。自分が人に対して思う愛、自分が自分に対して思う愛、そういうのを全部ひっくるめて、いろんな視点で描いているので。男目線だけでもなく、女の人目線も入っていますし。だから曲を聴き終わった時に、「愛って自分にとって何だろう?」って自分に訊ねちゃう。そういう曲になっていたらいいなと思います。「僕もよく分かってないけど、みんなはどう思うかな?」っていう。
- EMTG:「愛ってズバリこれだ!」って言える人は、僕は疑っちゃいますけど。「あなたとわたしがこうして一緒にいることが、まさに愛なのよ!」とか(笑)。
- 江沼郁弥:それが一生続けば愛なのかもしれないけど……その場合は勝っているのは愛じゃなくて責任なのかもしれない(笑)。「ああ言っちゃったしなあ」っていうような。
- EMTG:新田さんはこの曲をどう感じました?
- 新田紀彰:郁弥が愛のことを歌詞に書くとは思っていなかったので、びっくりしたと言うか、違う感じを持ってきたなと思いました。
- EMTG:ファンもそういう印象を持つでしょうね。
- 新田紀彰:そうでしょうね。
- EMTG:「スローモーションピクチャー」は、「あいという」とは別のアプローチから愛のことを描いた曲ですよね?
- 江沼郁弥:今回「あいという」と「スローモーションピクチャー」で組曲って言っているんです。「分からない」って言うのも愛に関する一つの答えだけど、「それすらも幻想だよ」って言われたら楽なんじゃないかなっていう思いもあって「スローモーションピクチャー」を作ったんですけど。「あいという」は《ねがい ねがう》で終わる、願いに近い曲。それに対して「スローモーションピクチャー」は、僕個人の主張の曲。
- 新田紀彰:「スローモーションピクチャー」は、最初はバンドでやろうとしたんですけど、それが変わって、初めての打ち込みになったのも印象深いです。こういう作り方は初めてですからね。
- 江沼郁弥:吉岡もやめたし(今年7月にドラマー・吉岡紘希が脱退)、新しいことをしたいなと思って。「スローモーションピクチャー」は最初は弾き語りだったんですけど。
- EMTG:今回のDVDに入っているあの感じ?
- 江沼郁弥:はい。でも、打ち込みにしたらすごくマッチしました。
- EMTG:今回って楽曲主導で制作された映像作品のDVDとCDが一つになった「Sound Film Track」というリリースの形ですけど。
- 江沼郁弥:この映像を観たことによって何かが分かるわけではないと思いますけど、「頭の中がこういう風になっているんだな」とかは分かってもらえるんじゃないかと(笑)。
- EMTG:こういうリリースの仕方は斬新です。
- 江沼郁弥:活動が地味だとよく言われるので、何かアクションを起こそうと思ったんですよ(笑)。
- EMTG:吉岡さんが脱退して新体制になったわけですけど、何か新しいものをやっていこうという意識も高まっています?
- 江沼郁弥:いや、新しいことと言うよりも、自分が抱いているバンド像に近づけていっているような感覚ですね。それに伴って成長と言うか、変化はしているんでしょうけど。
- EMTG:そのバンド像って?
- 江沼郁弥:言葉にするのは難しいけど……「あんま露出してないけど、みんな知っている」みたいな(笑)。そういうバンドの形が合っているのかなと思っています。露出するのが嫌なわけではなく、作品を手に取りやすい方法をとるのがアーティストの仕事だと思っているんです。例えば俺らがTVのバラエティにたくさん出て、そこで「あいという」を演奏しても説得力があるとは思えない。そうではない、ちゃんとした手段をとっていかないといけないなと思っています。単に聴く人が増えるのではなく、濃密なコミュニケーションがあった上で輪が広がるのが一番いいと思うので。
- EMTG:plentyのライヴって、まさに濃密なコミュニケーションがあると思います。みんな黙ってじっくり聴き入っているじゃないですか。
- 江沼郁弥:静かだけどみんな冷めているわけではないと感じているので、やりやすいです。手を挙げて盛り上がるライヴも好きですけど、自分達の場合はそこにいて、聴いてくれていればそれでいい。こっちが投げたボールをキャッチしてくれればいい。お客さんはどう思っているのか分からないけど(笑)。でも、ちゃんと曲を聴いてくれている息づかいをステージ上で感じています。
- EMTG:来年のツアーが発表されましたけど、みんな楽しみにしていますよ。
- 江沼郁弥:いろんな場所でライヴをやることが求められているのは嬉しいです。まあ、サービス精神だけでライヴをやるバンドではないですけど(笑)。plentyにはアンコール問題がありますし。
- EMTG:アンコールはやらないですもんね。
- 江沼郁弥:お客さんもアンコールをやらない意味と言うか、やれない意味を分かっているみたいですけど。1曲目から最後の曲まででストーリーができているので、やれないんです。もしアンコールをやるとすれば、最初から決めておいてやります。ストーリーを壊したくないんですよね。
- 新田紀彰:アンコールの拍手とかが起こるのはすごく嬉しいんですけどね(笑)。でも、本編で全部を出し尽くしますので、それをぜひ楽しんで頂ければと思います。
- EMTG:来年のツアーは初めて行く土地もあるんですか?
- 江沼郁弥:京都と長野は初めてですね。
- EMTG:そういえば、前に取材した時に「本場の長崎で『長崎ちゃんぽんリンガーハット』に行きたい!」って言っていましたけど、行きました?
- 江沼郁弥:あっ、ちゃんぽんは行きましたけど、リンガーハットは行っていないや(笑)。
- EMTG:来年のツアーは長崎公演もありますよ。
- 江沼郁弥:次は行こうかな(笑)。
【 取材・文:田中 大 】
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リリース情報
お知らせ
plenty 2012 春 ワンマンツアー
04.08 (日) 東京:日比谷野外大音楽堂
04.21 (土) 大阪:NHK 大阪ホール
04/22 (日) 名古屋:名古屋市公会堂
04.27 (金) 京都:磔磔
04.29 (日) 高松:DIME
04.30 (月・祝) 広島:CLUB QUATTRO
05.03 (木・祝) 福岡:DRUM LOGOS
05.05 (土) 熊本:DRUM Be-9 V1
05.06 (日) 長崎:DRUM Be-7
05.12 (土) 長野:CLUB JUNK BOX
05.13 (日) 仙台:Rensa
05.18 (金) 札幌:PENNYLANE 24
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください