『世界体操 東京 2011』のテーマソング『翔』リリース!

ゆず | 2011.11.30

 空が見えてくる歌。もしくは空を見上げたくなる歌。『世界体操 東京 2011』のテーマソングにもなっているゆずのニューシングル「翔」は耳を澄まして聴きたくなるような素晴らしい作品に仕上がった。アコースティックな彼らの世界が展開されていて、シンプルでありながらも、丹念に練り上げられた世界がじわじわと染みこんでくる。原点回帰的な作品という言い方もできるかもしれない。が、この歌声、ハーモニー、ギターの音色の持っている深みは今の彼らだからこそ。ツアーの成果も反映された最新の歌であり、等身大の彼らの思いが詰まった歌、そしてこれは未来に向かって、ともに歩んでいきたくなる歌でもあるだろう。

EMTG:「翔」は『世界体操 東京 2011』世界体操のテーマソングもなっていますが、どんなきっかけから作った曲なのですか?
北川:5か月に渡って回った『2-NI-』のツアーの最終日が沖縄だったんですが、その日を迎えた時に、すでに自分の中で新たな始まりという感覚が芽生えていたんですよ。ツアーをやる中でのたくさんの出会いを通じて感じたこと、今の日本に生きていて感じたことを曲で表現したくなっていました。僕らとファンの方々とを繋ぐ強い絆のような曲、優しくて強い曲ができないかなって。なので、自然に書き始めていくという感じでした。
EMTG:とても密度の濃い曲で、歌詞のワンフレーズ、ワンフレーズがとても深く入ってきました。
北川:詞に関してはシンプルにそぎ落とした言葉で、本当に自分が思ってること、伝えたいことを書いていこうと。その中でもどんどん変化していったんですが、心の赴くままに変えていって、より良くしていこうと思っていました。伝えたいことはたくさんあったんですが、今思っていることの核となる言葉を絞りこむ作業だった気がします。
EMTG:岩沢さんは最初に聴いて、どう思われましたか?
岩沢:いかようにもやりようがある曲だなと思いました。テンポひとつとっても、軽快なテンポでもゆっくりめのテンポでも似合う曲なので、逆に難しいところもあって。歌詞を伝えるにはどういうノリがいいんだろうって考えて、色々試しながら制作していきました。
北川:34歳の男2人が思いを込めて歌える等身大のテンポ感はどこにあるんだろうかって、かなり悩んだ結果、僕らがあまりやったことのないテンポに落ち着いたんですよ。もうちょっと早いか、もうちょっと遅いかというテンポはあったんですが、このぐらいのテンポは意外にない。甘くもしたくないし、きつくもしたくない。ちょうどいい頃合いを探していって、この形になりました。
EMTG:だから今のゆずの等身大の歌として、自然に入ってくるんでしょうね。
北川:すごく高度なことをしているわけではないんですけど、だからこそ、ひとつひとつ丁寧に大切に作っていきました。
EMTG:ギターもいい音ですし、歌の表情もさらにニュアンス豊かです。
岩沢:ギターに関しては、優しさの中に力強さのある音を目指しつつっていう。アコギって難しい楽器で、しゃかりきに力込めて弾いたからと言って、いい音が鳴るわけではないんですよ。実は弦の表面1ミリぐらいをピックでサッと、かするぐらいの音がとても良かったりする。ツアーを経たことで、奏で方の理想もより明確になっていたので、頭の中で鳴ってる理想の音と照らし合わせながら、納得いくまでやらせてもらいました。どこまで弱くできるかの追求。歌に関しては何度も試行錯誤して録り直していたので、本チャンの歌録りの時にはすでに歌い慣れてるという珍しいパターンでした。なので、あまり迷わずにできた。それぐらいプリプロを詰めてやってた印象があります。
EMTG:ツアーをやった成果は今回の制作にも反映しているのではないですか?
岩沢:前半戦を弾き語りで回ったことは大きいですね。ゆずの持ち味を再認識できたし、改めて最小の強さを感じられたんですよ。最近、シングルでアコギだけで始まる曲って意外となかったんですが、これでいいんだって信念を持って作っていけました。
北川:歌詞に関しても、ツアー中に肌で感じたことは大きかったですね。待ってくれている人の存在こそが、ゆずをやる原動力になってるんだって再確認できた。なので、特定の誰かに向けてではなくて、聴いてくれる人すべてに届けられるものを作りたいなって。
EMTG:勇気を持って書いた歌詞、踏み込んだ歌詞という印象も受けました。
北川:最初、自分の中でもこれを言い切っていいんだろうかって迷う部分もあったんですが、たくさんの出会いが僕の背中を押してくれました。色々なタイトルが付けられる曲だったんですが、曲名は毛筆で書いてもらいたいな、漢字1文字でふさわしい言葉がないかなって探している時に“翔”という言葉が浮かんできた。金澤翔子ちゃんという書道家がいるんですが、彼女に書いてもらえないかなと思って、彼女が個展をやっている時に、会いに行ったんですよ。彼女は身体に障害をもっているためお母さんと二人三脚でずっとやっていて、その道のりの中では大変なこともたくさんあったと思うんですが乗り越えた先には素晴らしい作品がある。親子の絆の素晴らしさも感じたし、親子の中に真実を見たという実感があって、これは自分達と多くのファンの皆さんとの絆にも繋がるんじゃないかなと思って、そこからは迷いなく書いていきました。
EMTG:アレンジにはツアーを一緒に回った斎藤有太さんも参加していますが、これは?
北川:ツアーをやりながら、有太さんのアレンジ力は素晴らしいなって感じていたし、今回の曲はツアー中に思ったことが詰まっているので、是非一緒にやりたいなと思って、「お時間があれば」ってお願いしました。サウンドの持っているぬくもりは有太さんの持ち前の優しさ、包容力みたいなものが出てきたってことなんじゃないかなと。レコーディング・セッションみたいな感じもあって、作り込んで固めていくのではなくて、スタジオにミュージシャンが集まってから、その場で細かいニュアンスを決めたことも結構ありました。
岩沢:ツアーの延長のようなレコーディングというか。ツアーは沖縄で終わったんですけど、その後また一緒に音を鳴らしたいねって。旧友との再会というか、アットホームな感じで、ライブ感と人間味とを大事にして演奏していきました。ライブでどうやってやろうかっていうことも常に頭にありつつ、ダビングをしていくという。
北川:コーラスも楽しかったです。ツアーのリハーサルでもみんなでコーラスの練習をする場面がたくさんあって、みんなで声を出しながら演奏するのっていいなと思っていたので、そのことが反映したんだと思います。
EMTG:Dメロのハーモニーもとても新鮮でした。
北川:Dメロはメチャ難しくて、結構変な和音にもなってるんですけど、合間をみつけて入っていって、重なったときに、“うわーっ、すごい!”って(笑)。あのコーラスワークは有太さんの今回のキモになってる気がします。
EMTG:ハーモニカもいい味を出してます。
岩沢:久々に吹きました。ここんとこ出番がなかったんですけど。ハーモニカをいろいろと所望されまして(笑)。歌との兼ね合いを考えて吹いてました。言葉を受けてというか、パスを受けての自分のプレイだと思うんで、歌の世界を生かして、次の歌に繋げていくという。イメージはタイトルどおり、飛翔する感じ。多分、デビュー当時は吹けなかったハーモニカだと思います。
EMTG:『世界体操 東京 2011』のテーマソングということは意識しましたか?
北川:『世界体操 東京 2011』のプロデューサーの方が以前からゆずのコンサートに頻繁に来てくださっていて。前からゆずと何か一緒にやりたいと言って頂いていて、今回やっと実現したんですが、最初からほとんど規制もなく、「今のゆずがやりたいことをやってください」って。なので、タイアップはあまり意識せずに作っていきました。ただ、僕らはツアーをやったり、作品を作ったりする中で、多くの人に支えられているわけだし、多くの人との絆が作品作りの原動力になっていたりする。そこはスポーツの世界にも共通するんじゃないかなって。普遍性のあるテーマなので、特に意識しなくても、体操の選手にもサラリーマンの方にも主婦の方にも繋がっていける曲なんじゃないかなって思っていました。
EMTG:2曲目の「ムラサキ色」も名曲です。歌とギターも素晴らしくて、まさにこれぞ、ゆずの世界という曲ですが、やはり今じゃなきゃ、この味は出ないですよね。
岩沢:一見弾き語りのシンプルな曲なんですけど、変な転調をしていたりするんですよ。でもそういう作りになっていることを悟らせないように、テクニックを使っているという。
EMTG:この曲を聴いていると、夕方の光景が目に浮かんできます。
岩沢:そこはとても注意を払いました。僕と同じ光景じゃなくていいんですけど、絵を想像しながら聴いてくれたらいいなって。こだわったのはボーカルのリバーヴ感とアコギの音。これで大丈夫なのかっていうくらいの弱々しさを大切にしました。「翔」は弱さの中の強さみたいなものがあるんですけど、それとは逆に、力強く弾いているのに、弱々しいイメージが感じ取れる曲にしたかった。楽器がシンプルな分だけ、音のニュアンスにはかなりこだわりました。
EMTG:「翔」も「ムラサキ色」も人との繋がりのかけがえのなさが描かれているという点では共通するところもありそうですね。
北川:「翔」がまずあって、「翔」に似合う作品が「ムラサキ色」だなって思ったんですよ。「翔」は羽ばたく歌なんですけど、時にはもがいたり、悩んだりして、それでも羽ばたこうとうするところを歌いたくて。見下ろす歌じゃなくて、見上げる歌という。今回のシングルはそこは合致しているんじゃないかと思います。
EMTG:“一国沿い”というフレーズもありますが、これは国道1号線ということですよね。実際に見た景色にインスパイアされて作ったんですか?
岩沢:東京と横浜を行ったり来たりすることがあって、普段は高速道路を使って一瞬で帰るんですけど、レコーディング終わりに下道で帰ってみようかなって思う時があって、その日のできあがりの音を何度もループしながら聴いて信号で止まったりている時に、アイディアが思い浮かぶこともあって。そういう時間つぶしは結構好きなので、そんな瞬間から生まれてきたということですね。
EMTG:「ムラサキ色」というタイトル表記にしたのは?
岩沢:漢字にしちゃうと高貴過ぎちゃうので、もっとチープな「ムラサキ色」でよかったというか。その感じがカタカナにすることで出るのかなって。
EMTG:歌とギターの音がとてもいいですが、どんなところにこだわりましたか?
北川:最初に岩沢くんがなぞっていたアコースティックギターがすごく良くて、それをもっといい感じにすることがなかなかできなくて、もがいたりもしたんですけど、やっていくうちにつかめてきて、無駄な力が入っていないのに、すごくいい音でなって、抑揚もちゃんとついてきた。ただ弱いとかただ優しいとかではなくて、強さの中に弱さがあり、弱さの中に強さがあるというところを表現できるようになってきたのかなと。
EMTG:つい耳を澄まして聴きたくなる曲でもあります。
岩沢:オーバーダビングしなかったのはこの世界を壊したくなかったから。重ねることで豪華にすることはできたんですが、この感じを保ちたかった。アコギと歌だけという編成にこだわりました。あと気をつけたのは世界観と強弱。しゃかりきに歌っているというものにはしたくなかった。歌ってる人の顔の表情が見えるといいなと。
北川:この曲は「翔」とは逆にそんなに歌い込んでなかったんですけど、すっと入っていけましたね。自然に聴ける歌だと思うんですが、歌う方も変な色気を出さずに、すっと入ってすっと終えていくみたいな。ムラサキ色の空を見る時って、考えているのか考えていないのか、わからないような独特の黄昏感があるのかなって勝手に思いながら歌っていました。
EMTG:一連の『2-NI-』の活動がそのまま繋がって、その先に今回のこのシングルがあるという印象も受けました。
岩沢:立ち止まってない感じはありますよね。『2-NI-』というアルバムがあって、“2-NI- × FUTARI”があって、“YUZU ARENA TOUR 2011 2-NI-”があって、東北公演もあって、ずっと『2-NI-』の世界を追求してきたんですが、そこからまた一歩、新しいところへ向かって行く予感を感じさせるシングルになったんじゃないかと思います。
EMTG:同時発売でライブDVD『LIVE FILMS 2-NI-』もリリースされますが、映像化するにあたって、こだわったのはどんなことですか?
北川:震災の影響で、“2-NI- × FUTARI”から“YUZU ARENA TOUR 2011 2-NI-”に繋がっていく流れになったので、“2-NI- × FUTARI”を映像作品として残すというのもありだったんですが、ライブって僕たちにとってはひとつの夢だと思うので、最初に描いた自分たちの夢でもある“YUZU ARENA TOUR 2011 2-NI-”を作品として収めたいという思いがあって、この形にしました。シューティングライブは初めてだったんですけど、通常では撮れないアングル、カメラワーク、最新の技術も駆使して、今までのビデオとは違う映像作品としての良さを追求した部分もあるので、かなり見応えのある作品になったんじゃないかと思います。
岩沢:これまでにもLIVE FILMSをたくさん出させていただいていますけど、今回はドキュメント性が強い作品というか、スタッフ、メンバーと一緒にやりきってきた軌跡が記録された作品でもあるんですよ。みんなでやりとげたぞっていう卒業アルバムみたいな。なので、余すところなく、観ていただければ。
EMTG:ディスク2もThe feversの演奏が入っていたり、東北ツアーのドキュメントが入っていたりと、盛りだくさんですね。
岩沢:The feversはちょっと毛色が違うので、同じディスクにいれると浮くかなって(笑)。
北川:東北ツアーに関しては、僕らがそういう活動してる時に、多くの方が見守ってくれていたので、東北での自分たちの活動の報告にもなるかなって。色々な意味で思い出深い作品になりました。
EMTG:シングルのリリースが11月30日ということで、2012年もすぐにやってきそうです。今後の展開についての抱負を教えてください。
岩沢:今回、こういうシングルを作ることができて、また次が楽しみになっています。また楽曲制作に入ると思うんですが、来年は15周年の節目の年でもあるし、いいスタートを切れたらと思ってます。
北川:皆さんに感謝の気持ちを込めて、15周年に何か楽しいことができないかなって、今色々考えているので、どうか楽しみにしていて下さいね!!

リリース情報

翔

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発売日: 2011年11月30日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: トイズファクトリー

収録曲

ディスク:1
1. 翔
2. ムラサキ色
ディスク:2
1. 雨と泪
2. 贈る詩
3. 手紙
4. からっぽ
5. 友達の唄
6. 少年
7. 栄光の架橋

リリース情報

LIVE FILMS 2 -NI-

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LIVE FILMS 2 -NI-

発売日: 2011年11月30日

価格: ¥ 4,762(本体)+税

レーベル: トイズファクトリー

収録曲

ディスク:1
1. 蜃気楼
2. 逢いたい
3. LOVE & PEACH
4. 夏色
5. 陽はまた昇る
6. 虹
7. Overture 2-NI-
8. HAMO
9. 夢の地図
10. Hey和
11. 慈愛への旅路
12. マイライフ
13. 1か8
14. 代官山リフレイン
15. 友達の唄
16. 影法師~背中
17. 桜会
18. from
19. 彼方
ディスク:2
1. チューリップ (The fevers Live) - The fevers
2. 第九のベンさん (The fevers Live) - The fevers

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