溢れる光が希望を灯す――andymoriの最新作

andymori | 2012.04.27

 4thアルバム『光』は、リスナーそれぞれの心に温かいエネルギーを届けてくれる1枚だ。音楽を奏でる幸福、聴く喜び、友への想い、自己との対話……様々なテーマを綴りつつ、嘘偽りのない何かを感じた瞬間の無上の心の震えを鳴り響かせている。納得のいくボーカルテイクを録るためにリリースが約2ヶ月延びたことをご存知の方も多いと思うが、妥協の一切ない渾身の曲達は、あなたにとってかけがえのない存在となるはずだ。本作について3人に語ってもらった。

EMTG:清々しい息吹に溢れているアルバムだと思いました。
小山田壮平:暗くなっている世の中の雰囲気もあるし、そういう自分自身もある。それに対して抗うような解放、“光よ、射してこい!”みたいなイメージですかね。そういうのが原型だった気がします。
藤原寛:今までで一番自由で屈託なく音を作っていけたアルバムですね。壮平が弾き語りで持ってきた曲の元のお陰でそうなったというのもあると思いますけど、バンドとしていい感じになってきて。それがすごく雰囲気として出ています。
岡山健二:今までで一番やりたいことがやれていると思います。特定の価値観とかに囚われていないですし。肩の力を楽にして聴けます。“andymoriで俺はこういうことがやりたいな”っていうのは前からやっていましたけど、相当見えてきた感じです。音楽の流れとか、軽快さとかを表現したいとずっと思っていて。それが今回、いたるところに上手く発揮できたなと思っています。
EMTG:僕、「シンガー」がすごく好きなんです。《君が歌ってよ》っていうフレーズが、なんだかグッと来るんです。
小山田壮平:《君が歌ってよ》っていうのは自分たちとのコミュニケーションって部分もあるんですけど、それだけでもなくて。自分が会う人だったり、見る物だとか、景色だとかに輝いていて欲しい、喜んでいて欲しいって気持ちですね。だから誰でも“シンガー”になれる。お笑い芸人だったり、料理を作る人だったり、悩みを聞いてくれる友達だったり、先生だったり。なんでもいいんですけど。そういう繋がり全部のことに対して《君が歌ってよ》なんですけど。
EMTG:つまり歌を歌う人に限定しない、あらゆる繋がりを喩える表現が“シンガー”ってことですか?
小山田壮平:そうです。そういうことです。
EMTG:今のお話からすると「シンガー」と「光」って、すごく通じるものがあるように思えてきました。「光」って曲は、人同士が本心の部分で通じ合った時に感じる煌めきを表現していると解釈しましたので。
小山田壮平:うん、そうですね。「シンガー」は、特にそういうところが強い。核のところを歌っているように思います。
EMTG:「ベースマン」は、アルバムの幕開けを気持ちよく飾っていますね。これって藤原さんのことですか?《3メートル隣で鳴らす》って、まさにステージでの立ち位置の感じだなと。
小山田壮平:ほんとそういう感じですから(笑)。
藤原寛:これを最初に聴いたのは、僕の誕生日。その日はライブだったんですけど、アンコールのサプライズで2人でやってくれたんです。
小山田壮平:札幌のライブだね。
岡山健二:“明日、この曲をやろう”って2人で話していたんですよ(笑)。
EMTG:ということは、藤原さんはベースを弾かず、ただただ驚いて曲を聴いていた?
藤原寛:そうでしたね(笑)。よく分からないままアンコールでいきなり始まったので。
EMTG:最高の誕生日プレゼントじゃないですか。
藤原寛:そうですね。親がめちゃくちゃ喜んでいました(笑)。
EMTG:(笑)「クラブナイト」も、すごく好きです。音楽を浴びる喜びにとことん誘ってくれるので。
岡山健二:4つ打ち独特の気持ちよさもある曲。叩いていても楽しいですよ。
小山田壮平:これは自分たちのレーベルがやっているイベントの歌でもあるんですけど。テキーラとかをお盆で持って、みんなにふるまう。地獄絵図になるんですけど(笑)。そういう夜の歌です。でも、こういう時間があることから発想の転換が起こったり、物の見方が変わったり、気持ちを持ち上げてくれたり。音楽にはそういうものがある。そこに日々助けられています。
EMTG:人と人が嘘のない根底で共鳴し合う、通じ合った時に感じるものが『光』ってことなのかなと、いろいろな曲を聴きながらイメージしたんですが、その点に関してはどうですか?
小山田壮平:人に限定されるものでもないですかね。瞑想についての「インナージャーニー」だと自分自身ですし。
EMTG:人、物、音楽、自分自身、対象は何であれ、本質的なものに触れた瞬間に感じるものが『光』?
小山田壮平:そうですね。“本質的”って言われたら、そうかなと思います。核というか、グッと上がる感じというか。だからどの曲でもそれくらい心が震えるものを歌っています。
EMTG:音楽って形がないし、見た目に左右されないから、本質的な部分に触れやすい芸術ですよね。だから、いい音楽って、まさに『光』だと言えるんじゃないでしょうか。
小山田壮平:うん。いい音楽は『光』ですね。そう思います。
EMTG:今作はいろんな形の『光』に触れられるアルバムなんだと思います。例えば、「君はダイヤモンドの輝き」は、もう想いが届かないのかもしれない人から感じる『光』の曲として解釈できますね。
小山田壮平:会うことはできる人の歌なんだけど、どこかで諦めじゃないけど、“限定されている輝きなんだ”っていう想いがある歌ですね。“永遠ではないからこそ輝く”っていう。
EMTG:「ひまわり」は素朴なアコースティックテイストのある曲ですけど、岡山さんと小山田さんで、どんなやり取りをして作っていったんですか?
小山田壮平:これは大体できてきた未完成なものがあって。それを健二に歌ってもらおうと思って渡したんです。“あとはやって”って(笑)。
岡山健二:余計なことは考えずに、この曲のイメージをそのまま書こうと思って歌詞を書いていきました(笑)。気づいたらすぐできましたね。「クラブナイト」の後にこの曲が来るのもいいなと思っています。
EMTG:サウンドは「クラブナイト」と対照的ですよね。
岡山健二:一息つけると思います(笑)。
EMTG:「彼女」は独特な存在感がありますね。僕、これを聴いて「ビューティフルセレブリティー」(2ndアルバム『ファンファーレと熱狂』収録曲)に通じるものを感じたんですよ。
藤原寛:ああ、なるほど(笑)。
岡山健二:なんか分かりますね(笑)。
EMTG:さり気なく危険な発想を歌っているところが、通じる作風だなと。
小山田壮平:さりげなく危険な発想(笑)。そうですね。そこをどこまで行けるかっていうのは考えました。“センスを保ちながら、どこまで危険な発想を言えるか?”っていう(笑)。
EMTG:サウンドは柔らかで、すごく洗練されていますし、一途な想いが綴られていますけど、端的に表現するならば妄想を膨らませている歌ですもんね。
藤原寛:白昼夢の歌ですからね(笑)。
小山田壮平:こういうのは、これからもトライしたいです(笑)。内にあるものを外に出す、抉り出すのはいいけど、人から引かれるのは嫌なんですよ。曲を作る上で、そういう想いは常にある気がします。
EMTG:やっぱりこれ、すごく素敵なアルバムですよ。今日、いろいろなお話を聴いて、改めてそう思いました。
小山田壮平:今やっているツアー(“100分間のファンタジー 遊ぼうぜ 踊ろうぜ”ツアー)で、全曲この通りにやっているんですけど、とてもいい感じです。お客さんもいいです。いい人たちが集まってくれているなと感じます。温かいです。

【取材・文:田中大】

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ビデオコメント

リリース情報

光

2012年05月02日

Youth Records

1. ベースマン
2. 光
3. インナージャーニー
4. 君はダイアモンドの輝き
5. 3分間
6. クラブナイト
7. ひまわり
8. ジーニー
9. 愛してやまない音楽を
10. シンガー
11. 彼女

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■ライブ情報

"ROCKS TOKYO 2012"
2012/05/27(日)若洲公園
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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