藤井フミヤ、久々のオリジナルアルバム。自身の50歳の誕生日に発売。動画コメントも!
藤井フミヤ | 2012.07.11
藤井フミヤ。
その姿。その音楽スタイル。そしてその歌声。どれをとっても、説明不要のアイコンであろう。
デビューは21歳。当時、社会現象までになったチェッカーズのリードボーカルであった。解散後も、藤井フミヤは、ソロとして、F-BLOOD(弟・尚之とのユニット)として歌い続けた。つまり、四半世紀以上、人前で歌ってきたことになる。人生の半分以上を、音楽とともに歩んできたことになる。
そんな彼が、 “これまでで1番、真剣に音楽と向き合って作る”と公言し、2年半以上の月日をかけて完成させたのが、ニューアルバム『Life is Beautiful』である。
約3年ぶりのオリジナルアルバムとして、自身の50回目の誕生日、7月11日に発売となる。9月からは、同タイトルの大規模な全国ツアーもスタートする。
- EMTG:50歳の誕生日にリリースとなったのは、偶然?
- 藤井:まぁ、言っちゃうと、結果論っていう感じ(笑)。
- EMTG:そうですか……(若干、意気消沈)。
- 藤井:はははは(笑)。俺の中ではね……例えば、いろんなことが最初はバラバラな道を歩いて、それぞれ進んでいたはずなのに、同じ日……7月11日に集合しちゃったって印象。本当は、アルバムを去年の年末くらいに出しましょうって話もあったんだけど、去年、震災があったでしょ。それで、俺の気持ちも変わって、完成していた曲の歌詞を書きなおしたりしたんだよね。そういうのもあって、いろんな要素が、ひとつの道に集まっていったっていう感じ。で、50歳になると、次はデビュー30周年に向かうし……って、あれ、いろんなもんが固まってきたな、やっぱり必然性があったのかなって感じに、今はなっているけどね」
- EMTG:震災後に、歌詞を書きなおした理由は?
- 藤井:自分の中で、一度、リセットしたかったんだと思う。やっぱりね……この言葉じゃ、歌えない、この感じじゃ、歌えないっていうのがあったんだよね。なんか、ちょっと違うんじゃないの? って感覚でさ。白紙に戻して書きなおすっていうよりも、元々描いてたものがあって、そのキャンバスの上から、また色を付けてって。で、気が付いたらまったく違う絵になっていた感じ」
- EMTG:なるほど。震災後に、まとめていった曲はありますか? またそこに気持ちの変化は出てると思う?
- 藤井:影響はあると思うよ。すごくあると思う。じっくり聴かせるもの、言葉がきちんと届くものがいいと思ったし。1曲目に入っている「Life is Beautiful」なんかは、そうで。この曲は、アルバムの中で、1番最後に作った曲だったんだよね。でもアルバムの『Life is Beautiful』 ってタイトルは、この曲を書く、半年くらい前に決まっていたんだけど(笑)」
- EMTG:そうなんですか。それは、長い時間かけて、少しずつ楽曲が完成してきた。その中で、アルバムのコンセプトのアイデアが、先に固まってきたから?
- 藤井:それもあると思うし、あとは、ツアータイトルも決めなくちゃいけなかったという(笑)。久々のオリジナルアルバムだし、ツアータイトルとアルバムタイトルは、やっぱり同じにしないといけないなぁと思ったし。
- EMTG:なるほど。そういうタイミングも重なり、アルバムのタイトルを先に決めなければいけなかった。
- 藤井:そうそう。その時、思ったのは“なんか、今回、Lifeって感じなんだよな”ってことで。でも“Life”だけじゃ、なんかなぁ……じゃあ“Life is Beautiful”だってなって。よし、アルバムタイトルは、それにしよう、じゃあ俺「Life is Beautiful」って曲を書くわ、と。それでいちばん最後に書いたんだよね。しかもこの曲のレコーディングは、一口坂スタジオがクローズする最後の日に、そのスタジオでレコーディングされたんだよ。
- EMTG:フミヤさんが、チェッカーズ時代から、よく使われていたレコーディングスタジオですよね?
- 藤井:そうそう。一口坂が終わるっていうんで、結構、早い段階で、ディレクターがスタジオの最後の2日間をおさえたのよ。で、その日、レコーディングするってことは決まってたんだけど、その曲が「Life is Beautiful」になったのは、本当に偶然なんだよね。
- EMTG:んー、偶然が重なった結果とはいえ、やっぱりどこかドラマチックですね。
- 藤井:そうかな? でもなんか、そうかもね。
- EMTG:でも、それがフミヤさんの人生なんだとも思います。ドラマを引き寄せてくる、みたいな。そこで質問なのですが、さっきおっしゃった“Life”って、普通に訳すと“人生”になるじゃないですか。フミヤさんの中では、どう解釈してる言葉なんですか?
- 藤井:人生もそうだけど、もっというと、生きざま、生活って意味もあると思う。なんかね……40歳だと、まだ使えない単語だと思うんだよ。それが、50歳だともう使ってもいいって感覚がある。これはね、ある種、もう本当、いつ死んでもおかしくないと思っているからだと、思うんだよね。
- EMTG:んー、なるほど。それは、病気もしてない、体力もある、現役のミュージシャンであるというのとは、別の意識の中で思っていることですか?
- 藤井:そうそうそう。もっと長く生きよう、生きられると、当たり前のように思っていたのに、やっぱり震災以降、俺たちは、今すぐにでも崩れそうな橋の上にいるんだってことを目の当たりにしたわけでしょ。今の環境だって、安全を考えだしたら、答えがない。自分が気をつければ、健康を維持できる……と思っていたのが、そうもいかなくなったかぁ、みたいなのもあるしね。
- EMTG:この1年の日本全体の変化を、自分の見解で受けとめたとも感じられるのですが……。
- 藤井:そうそう。だからそろそろ“Life”という単語を使ってもいいかなと思ったんだよ。
- EMTG:なるほど。今のお話だけ聞くと、シビアな内容が目立つアルバムになっているかと思うのですが、そうじゃない。それは、曲調とかよりも、ボーカルスタイルにあると思ったんです。しっかり藤井フミヤのポップスとして歌っている。ここは自覚して出しているんですよね?
- 藤井:はい、自覚して出してます(笑)。
- EMTG:ではそこで、年齢の感覚……例えば、10代、20代……というような感覚も、意識してたりします?
- 藤井:ある、あるね。歌う時、この曲の主人公は10代だと思ったら、まず10代の歌い方をする。その次に、20代の歌い方をするんだよね。それで、どっちがいいか考えて、チョイスするんだよね。
- EMTG:その歌い方を具体的に言うと?
- 藤井:10代の歌い方って、素朴さを出すとか、ギリギリ感を出す感じ。例えば、歌う時、俺のキーは、高いところ、ここまで出るよっていうのがあるでしょ。でもそこで歌うと、必死っぽくて、若々しすぎる。この曲は、もっと大人の雰囲気を出したいから、キーを下げたりするんだよね。例えばそれが恋愛の歌で、この恋愛に、そんなに必死になっちゃダメでしょって時は、キーを下げたりするんだよ。そうすると、同じポップスでも、急に大人な恋愛になったりするの。やっぱりどれだけ歌詞も含めて、曲の世界観に合った歌い方ができるかでしょ。そこを表現するために、いろんな方法があるし、試せる事はすべて試して、歌っていく。今回、すごく長い時間かけて、アルバムに向けて曲を作っていったでしょ。これまでと違って時間があったから、歌入れの時には、ほぼ歌詞が出来あがってたんだよね。それもあって、曲に合う歌をいろいろ試す事もできた。決まってからのレコーディングは、すごく早かったけどね。
- EMTG:完成した『Life is Beautiful』を改めて聴いて、今、思う事は?
- 藤井:時間をかけて丁寧に作ったな、と。だから後悔の無いアルバムが出来たんじゃないかな、と。そこは、本当に良かったと思ってるんだよね。
【取材・文:伊藤亜希】
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