聴き心地、幅、メッセージ、全てが素晴らしいバランスで成立した、UNISON SQUARE GARDENの新作

UNISON SQUARE GARDEN | 2013.02.05

遂に、遂に出た! UNISON SQUARE GARDENの4thアルバム『CIDER ROAD』は、思わずガッツポーズをしてしまうくらいの傑作だ。いや、今までも彼らは、ロックバンドがポップな楽曲の中で、どれだけアイデンティティを炸裂させられるのか?という命題に向き合ってきたと思う。それが今作では、聴き心地の良さも、鋭いメッセージも、楽曲の幅広さも踏まえた上で、全てが素晴らしいバランスで成り立っているのだ。ジャケットは、一見可愛らしい、だけど触れると痛いハリネズミ。何だか、彼らそのもののように見える。まずは手に取って、カラフルな13曲に心を踊らせて欲しい。

EMTG:今作は、相当手応えがあるんじゃないですか?
鈴木貴雄:いつも、できた作品を後から聴くことってなかったんですよ。何かしら、”もっとこうしてればよかった…”とか考えちゃうから。でも、今作は何回聴いたことか!っていう。いちリスナーとして、こういう曲があったら面白いなっていう作品ができたし、”いいバンドが出てきたな、もう4枚もアルバム出してるのか!?”っていう感じです(笑)。
田淵智也:俺も、あんまり作り終えた後は聴かないんですけど、今作はよく聴いてますね。お酒を飲んだ帰り道に歩きながら聴くのに最適です(笑)。全曲号泣しますよ! 作っている最中は、”どうなのかな? 俺だけが凄くいいと思っているのかな?”って心配だったんですけど、いろいろ取材とかを受けるようになったら、自分の思っていたような評価がライターの方から返ってくるので、いい気になっています(笑)。「だから言っただろうに!」っていう。
EMTG:(笑)。理想的な作品が作れた実感があるんですね。
田淵智也:そうですね。”こんなもの出していいのか?”って思うくらい、危険な作品というか、”アルバムってここまで密度を濃くしなきゃいけないのか!?”っていう。もっとバランスよく作ろうとしてきたんですけど、今作は、そんなどころの話じゃなく、”これも入れなきゃ””あれも入れなきゃ”っていう感じになって、贅沢な曲選びをして、それを一つのアルバムにまとめられた達成感で……いい気になってます(笑)。
EMTG:2回目(笑)。いや、いい気になって良いくらいの作品だと思いますよ。それだけ、濃い曲がたくさん生まれてきたっていうことですか?
田淵智也:うん、そうです。こんなに思い通りに曲や詞が書けることって、今までなかったし、この先もあるかどうか……これまでも、スランプとかはなかったけど、”こんな感じだろ”っておざなりにしていた部分はあって…。だけど、それも今作は一切なかったというか。
EMTG:斎藤さんの歌も進化していますよね。「光のどけき春の日に」などのバラードの優しい歌い方は、特にそう感じました。
斎藤宏介:バンドとしても、歌を映えさせる演奏ができるようになってきたし、挑戦し甲斐のある曲もたくさんあって、自分の表現の新しい引き出しが今作で開けられた気がします。「光のどけき春の日に」や「君はともだち」は、なるべく声を張らないように歌ってみたり。「お人好しカメレオン」は、いらない自己主張は削いでいこうとか。そういうのが、今までなかったところかな。どういうふうに歌っていくかっていうところに、僕は一番喜びを感じてバンドをやっているので、やり甲斐があればあるだけ楽しいんですよね。
EMTG:歌だけではなく、各々のプレイヤビリティも今まで以上に光っていると思って。バンド少年をときめかせるフレーズも多いんじゃないですかね?
鈴木貴雄:あんまり意識はしてないなあ……でも、誰も考えていないような場所にスネアを入れたりしたいんですよ。”どっかいい場所ねえかなあ…”って、常に探しながら曲に触れていて。やっぱり、オリジナルでありたいですからね。ライヴでも曲でも、”楽しいな”って思ってもらいたいっていうのが第一ですけど。
EMTG:ドラマーと言えば、縁の下の力持ちのようなイメージですけど、鈴木さんの存在感って、そこに留まらないですよね。
鈴木貴雄:ああ、ユニゾンの楽曲自体が、ローリング・ストーンズみたいに、お酒飲みながら聴くんじゃなく、友達とテーマパークに行く感覚で聴いている人が多いと思うんです。だからこそ、リズムの心地よさより、スピード感や、エンタテインメント性や、僕自身の面白さを育てた方がいいのかなって思っています。
EMTG:そういう各々の個性が尊重されたアレンジは、田淵さんが多くの歌詞に込めてきた“君は君であれ”っていうメッセージとも、自然と繋がっていますよね。今作の歌詞では、今まで以上に際立っている気がしますが。
田淵智也:いつの間にかバンド活動のテーマになっていたというか。今の社会って、没個性を助長しているようにしか思えないし。自分がメッセージを発する立場なら、ちょっとそういう気持ちを混ぜてもいいかなって。あんまねえ、社会派になり過ぎても、単純に音楽として楽しくないから、そうならないように自分の中でバランスをとってはいるんですけどね。
EMTG:その思いは、沸々と高まっていたりします?
田淵智也:それに馴染めない人がかわいそうっていう思いだけですけどね。声の大きい人に従わざるを得なくて、そのうち神経が麻痺して、どう音楽を楽しめば自分のためになったのかっていうことを気付けないまま、一生を終える場合もあると思うんです。でも、音楽って、どう人生に反映するかは、聴いた人が決めなきゃいけないと思うから。
斎藤宏介:僕の場合は歌い手として、みんな同じ歌い方するとつまらねえな、それを聴いて感動している人もつまらねえなとか、そういう感覚はあって。廻りと比べることで失うことがあったらもったいないし、音楽だけじゃなくいろんな面で、自分自身を突き詰めていった方が、世の中面白くなるなって感じています。
EMTG:今作は、ジャケも絶妙なんですよね。ハリネズミって、ユニゾンを象徴する存在のように見えるというか。
鈴木貴雄:針の持つ攻撃性や、群れで生きない、あと自分からは攻撃しない動物っていうところが強いかな。孤独だけど頑張っている生き物をモチーフにしたかったんです。
田淵智也:僕らも、もしかしたらみんながイイと言われている状況に従わざるおえない環境の中でのデビューだったのかもしれないけど、”何かそれ違くないか?”って悩みながら、孤独に進んできたところがあるから。それで売れていなかったらカッコ悪いですけど、反応してくれる人がいるから、だったらこの道を突き進もうじゃないかって思っています。

【取材・文:高橋美穂】

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リリース情報

CIDER ROAD(初回盤)

CIDER ROAD(初回盤)

2013年02月06日

トイズファクトリー

1. to the CIDER ROAD
2. ため息 shooting the MOON
3. リニアブルーを聴きながら
4. like coffeeのおまじない
5. お人好しカメレオン
6. 光のどけき春の日に
7. クロスハート1号線(advantage in a long time)
8. セレナーデが止まらない
9. 流星のスコール
10. Miss.サンディ
11. crazy birthday
12. 君はともだち
13. シャンデリア・ワルツ
ディスク:2
1. シャンデリア・ワルツ
2. クロスハート1号線(advantage in a long time)
3. リニアブルーを聴きながら
4. ガリレオのショーケース

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■マイ検索ワード

●斎藤宏介
マカロニ 歌詞

最近弾き語りライヴをよくやっていて、カヴァーを毎回やろうとしていて、Perfumeを弾き語りするために検索しました。検索したのは歌詞ですけど、”ああいうテクノっぽい曲のコード進行ってどうなってるんだろうな?”って。ひも解いていくと、絶妙なことがわかりましたね。ピアノで作っているのかもしれないですけど、ギターでコードを拾うと勉強になることが多いんですよ。

●田淵智也
桐島、部活やめるってよ blu-ray

僕、映画を昨年くらいから観始めたんですよ。その中でも、とんでもない作品に出会ってしまったなって思ったのが『桐島、部活やめるってよ』で。そろそろblu-rayが出るんじゃないかなって思って検索したら、2月に出るようで。俺、アニメ以外の映画のblu-rayを買ったことってないんですけど、初めて買う運びとなりました。

●鈴木貴雄
砥石

包丁の切れ味が悪くなってきたので。あと、髭剃りとかも砥いでます。僕は砥石ですけど、ダイヤモンドシャープナーってやつだったら、安全に砥げるみたいですよ。ちょっと値段は張りますけど。


■ライブ情報

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2013
2013/02/23(土)札幌PENNY LANE 24
2013/02/26(火)三重M’AXA
2013/02/28(木)滋賀U★STONE
2013/03/02(土)広島CLUB QUATTRO
2013/03/03(日)高松オリーブホール
2013/03/08(金)仙台darwin
2013/03/10(日)長野LIVE HOUSE J
2013/03/16(土)福岡DRUM LOGOS
2013/03/17(日)長崎DRUM Be-7
2013/03/19(火)富山SOUL POWER
2013/03/20(祝)甲府CONVICTION
2013/03/23(土)山形ミュージック昭和セッション
2013/03/24(日)青森QUARTER
2013/03/29(金)高知x-pt.
2013/03/30(土)米子AZTiC Laughs
2013/04/06(土)大阪オリックス劇場
2013/04/07(日)名古屋市公会堂
2013/04/10(水)東京NHKホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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