NICO Touches the Walls、その仮タイトルから辿る、ニューアルバムの本質!!

NICO Touches the Walls | 2013.04.23

NICO Touches the Wallsのニューアルバム『Shout to the Walls!』は、超濃い内容。アルバムを作るに当たって、表向きにはテーマを決めずに制作したという。だから1曲1曲がそれぞれのテイストで貫かれ、サウンドも歌詞も強い意志をもってリスナーに語りかけてくる。が、しかし、そんなアルバム制作には、実は“裏テーマ”があった。それはバンドの名前にある“Walls=壁”を一つ一つの曲に当てはめて、自分たちを取り巻く壁や、自分たちの中にある壁を歌っていったのだという。
 そんな濃厚アルバムについて、一風変わったインタビューを敢行してみた。レコーディングの際に、正式タイトルが決まるまでの間、曲は“仮タイトル”というもので呼ばれる。『Shout to the Walls!』の全12曲について、すべての仮タイトルを明らかにしてもらって、話を聞いてみた。すると、意外な事実が次々に! 前代未聞、史上初の“全曲仮タイトル”インタビューは、爆笑の連続となったのだった。

M-1.「鼓動」→「独コン7号(仮)」
光村:この仮タイトルは、「独(ひと)りコンパル7号」。略して「独(ひと)コン7号」でしたね。
EMTG:ちなみにその由来は?
光村:俺たちのレコード会社のスタジオ“コンパル”で、半年に一度ぐらいの割合で俺一人で、楽器から何から全部演奏してデモを作る作業をやってるんですよ。ちなみに前のアルバムの「バイシクル」は、「独りコンパル3号」でした。ようするに出来た順でナンバリングされてるだけなんですけど。その「独りコンパルシリーズ」の、7番目にできたのがこの「鼓動」だったんです。
 とにかくこの1年はワーッと曲を作っていて、「独りコンパル」以外にも色々なデモの作り方をしているんですけど、特に今回は最初から「音に関してはノンコンセプトでアルバムを作る」というのがあったんで、みんなそれぞれ新曲を作るだけの期間もあれば、ツアーやライヴを意識して、ライヴの即戦力になるパターンの曲をみんなで作ろうという期間があったり。ちょうどこの曲を作っていた時は、アルバムに関係なく、とにかくシングルっぽい曲を作ろうとしていた期間でした。「鼓動」は前作シングルの「夢1号」のプリプロが終わった直後に、「その続きの核になる曲を作っておこう」という話の中で作っていった曲なんです。
坂倉:このタームで「独コンシリーズ」は♯4?♯8まで出来ていた。この時期の特徴というのは、凄くわかりやすくて、デモの段階からほとんどの曲に歌詞がついていた。それにはびっくりしましたよ。
光村:坂倉とか古(村)クンが作ってくるデモって、日に日に組み上がっていくんですよ。今日はここまで出来た、 明日はここまで、みたいな。それこそ古クンなんて、アルペジオのワンフレーズしか持ってこない日もありますからね、「今日はここまで」って(笑)。俺としては「これをデモと呼ぶのか?」とも思いますけど。「ポケットの中身全部だせよ!!」、みたいな。
古村:カツアゲみたいな(笑)。で、「なんだお前、10円ぐら いしか持っていねぇのかよ!!」って言われるという。
対馬:「10円じゃ、何も買えねぇだろう!!」って(笑)。
古村:「でも俺、今、これしか持ってないんで、勘弁してください」って。
光村:それらに比べれば、俺のはもうキチンとしたデモですよ。歌詞も付いてるし(笑)。

M-2.「夢1号」→「夢1号(仮)」
光村:これは夢の中で出来た1番目の曲だったんで、仮タ イトルはそのまんまです(笑)。 あんな衝撃は、今までない。夢の中でMVまで完成してましたから。これって俺の曲じゃないんじゃないか?ぐらいに最初は思いましたもん。もう、「Yesterday」(Beatles)現象ですよ。
EMTG:あれも最初はポール・マッカートニーの夢の中から出てきたんだっけ?
光村:そうです。民謡の世界ですからね。もう、「夢1号」 に関しては、「俺も遂にポールの領域まできたか!!」と。
EMTG:で、ふたを開けてみたら、ポール牧だった(笑)。
一同:大爆笑。
光村:そうはなってないでしょ(笑)?指パッチンはやってません!

M-3.「夏の大三角形」→「正月2号(仮)」
光村:これは「正月2号」です。
EMTG:正月に「夏の大三角形」を作ったんだ?
光村:そうです。バレちゃった(笑)。でね、実はこの曲の原曲が出来たのは、正月だったんです。
光村:実際CMの話をいただいて、そのコンセプトでもある夏っぽい感じというのを基に夏っぽく作っていきました。でも、作っていくうちにどんどんブラッシュアップしていって、実は原型で残っているのは、サビの♪夏の大三角形♪と歌っているメロディだけなんです。それ以外、全部変わっちゃった。キーも変わっちゃったし。
古村:ここまで変わったのも珍しいよね。

M-4.「アビダルマ」→「146(仮)」
EMTG:これはもう“アビダルマ”自体が仮タイトルだったんでしょう?  アビダルマって、一体、何語ですか?
光村:仏教用語です。
古村:仮タイトルは「146」だったんです。146は、ただのBPM(1分間の拍数)ですね。
EMTG:146だと音楽的には、わりと速い方だよね。
光村:速いですね。俺たちの中で、ロックするのに気持ち良いテンポ。「自分たちが聴いていて踊れるタイプのロックソングを作ろう!!」って言ってバンドで合わせていて、跳ねるリズムのものを作ってみたのがこれです。
対馬:だからテンポはいろいろと探したよね。
古村:探した、探した。
EMTG:後にラップを入れようと、たくらんでいたとか?
光村:いやいやいや、そこまで策士じゃないですよ(笑)。
坂倉:「アビダルマ」のテンポって何だっけ?って聞かれたら、146っていう。
EMTG:初めにテンポを決めるっていう作り方は、初めてだったの?
光村:そうでもないかな。延々とセッションしていた中で、テンポを決めていって、そこから構成を考えていった感じですからね。そのセッションを録っていたファイル名をBPMにしていたんで、いつしかこう呼ぶようになったっていう。

M-5「ストロベリーガール」→「七拍子(仮)」
EMTG:音楽そのままだ(笑)。最初は普通の8拍子だったの?
古村:そうですね。でもみんなでセッションしていく中で、持ってきたその日のうちに7拍子になった。
光村:最初は弾き語りでみんなに聴かせたよね。
坂倉:そうそう。スタジオに4人で入って、みっちゃん(光村)が弾いて歌ったものに、みんなが乗っていったって感じだったよね。
光村:オリジナルは、忘れないようにiPhoneに入れていたんです。サビのメロディはこのまんまで、Aメロは4拍子でやっていた感じでしたね。実際に7拍子にしたところで、メロディは変わらなかったんですけど、単純に乗りづらくなった。
EMTG:乗りづらいって(笑)。でも、出来上がりはそんなに不自然さはないよね。
古村:それは歌詞が乗ったからっていうのも、関係していると思いますよ。生まれ変わりましたもん、歌詞が乗っ て。
EMTG:じゃあ、これは7拍子が元で面白い歌詞になったの?
光村:もうそのまんま(笑)。仮タイトルが「七拍子」だったんで、7にまつわることを書こうと。結局この曲は1週間、7デイズについての歌詞になった。色々と7に まつわる言葉を考えました。「ラッキーセブン」ってタイトルの曲があったらいいなってずっと思ってたから、最初は野球の歌にしよう、7回裏の一発逆転劇みたいな歌にしようって考えてた。それこそ777(トリプルセブン)の大当たりみたいな歌にしようと思ったり(笑)。 そこからパチンコ屋の女の子に恋をするテーマを作ってみたり。パチンコに興味はないんだけど、そこで働いている女の子を見に行く話にしようと。だけど、自分があまりにもパチンコをやらないだけに、景色が浮かんでこず断念。そこから発想を変えて、パチンコ屋ではなくケーキの女の子に恋をする話にしてみたんです。ケーキ屋だったら俺にも経験があるから。俺、高校の頃、バイトしていた時、コージーコーナーの 「とろけるプリン」にハマったことがあって。最初はプリン目当てだったんですけど、そのうちプリンよりも女の子が気になり出した頃があったんです。そのバイトの女の子がいる時にだけ買いに行く、みたいな(笑)。
EMTG:あはは。このタンバリンは、対馬クンが叩いてるんだよね?
対馬:単純にノリで叩きましたね。実はプリプロの時に一回だけ叩いて、それを採用してます。だから、サビとかはけっこういい加減かもしれない。
光村:でも、それが人間味があっていいと思うんです。コンピュータの打ち込みでは、絶対に出せないニュアンスだし。

M-6.「紅い爪」→「三茶1号(仮)」
EMTG:これはそうとう恥ずかしい仮タイトルがついていたんじゃないの?
対馬:うーん......「三茶1号」でした。
光村:期待に応えられなくてすみません。
古村:てか、三茶では1曲しか出来てないから、2号、3 号はない。
光村:三茶のスタジオで、ライヴのリハの途中で ふっと俺が作ってきたやつをみんなで合わせたんです。それに対馬が歌詞を書いて。
EMTG:で、こんな歌詞が乗るとは思ってなかった?
光村:なかったです。まさかって感じで。俺が書いていたら、こんな繊細な女心は描けなかったろうと。
対馬:初めて歌詞を書こうと思った時から、このネタはあったんです。実は途中から猫にになったけど。
EMTG:えーっ、猫の歌なの?(笑)
光村:歌っている時には、ややこしくなるんで、猫は忘れて歌いました(笑)。

M-7.「チェインリアクション」→「リトミック体操第一(仮)」
光村:前回の「ALGORHYTMIQUE(アルゴリト ミック)」というツアーが決まった頃に作った曲なので、この仮タイトルになりました。ライヴ即戦力のロックチューンなんだけど、ちょっとリトミック体操的なリズムもあって、幾何学的なテーマでみんなで作っていったんです。坂倉と古くんが二人で、家でデモを作ってきたのがこの曲でした。
EMTG:ちなみにこのBPMは。
坂倉:僕、BPMを忘れないように携帯に入れてるんですけど、この曲は170ですね。
EMTG:かなり速い。
古村:ちなみにこれは第二、第三もあるんですけど、まだ作っている最中で。
坂倉:やっぱりリトミック体操っていうぐらいなんで、ラジオ体操みたいに第二、第三も作らなきゃならんだろうと(笑)。

M-8.「ランナー」→「ランナー(仮)」
光村:これは僕が中学三年の時に作った曲で、タイトルもそのまんまでした。
EMTG:中三だと、仮タイトルをつけるなんて必要もないだろうし。
光村:ないです(笑)。それどころか、中学の頃はタイトルから曲を書いてたし。それこそリリースプランから考えてましたからね。
EMTG:リリースプランって?
光村:アルバムまでの道のりや、「今回のアルバムは2枚組にして…」、みたいなことを考えてる中学生でした(笑)。曲も出来てないのに、タイトルを先に考えて、そこから浮かんでくるものをメロディや歌詞にしていたんです。
古村:結果がもう出来ているんだ。
対馬:結果から曲を作ってるんだ、すげえ!!
光村:小学校のころは、CDレンタル屋に行くと、タイトル未定だったものに、タイトルがつく時があったんです。スピッツのアルバムとかが待ち遠しくて、そこから曲をよく想像してましたね。タイトルがついた瞬間に一気にワクワクして妄想が膨らんでいくというか。そこから段々とジャケットが発表になって、その一連のワクワクを、曲を作っている自分も体感しながら書きたかったんです。「ランナー」もその類でした。これをNICOでやることになって、タイトル表記を英語にしようかは迷いましたね。歌詞に中三の時の青臭さが残ってたんで、下手に英語でかっこつけるのはよくないなと思って、そのまんまカタカナにしました。
EMTG:ちなみにタイトルから作るって、メンバーにとっては意外だった?
古村:でも、今思えば、NICOを始めた時の「そのTAXI,160km/h」もタイトルからだったなって思い出した。あのときも曲はなかったけど、タイトルだけはありましたからね(笑)。
光村:音よりも先に出会うのって、タイトルじゃないですか。だから、そのタイトルのインパクトや、タイトルから ワクワクするようなものっていうのは必然的に感覚として重視してます。

M-9.「アルペジオ」→「古村2号(仮)」
古村:そのまんまです。アルバムに向けて曲を作っていて、僕の作った2番 目の曲ということで。
EMTG:この仮タイトルが今まででいちばん面白くないかもしれない。
一同:大爆笑。
古村:だって、そのままなんだもん。
光村:シンプルさは同じだけど、「夢1号」とは対照的だな。
古村:この仮タイトルから何も浮かんできませんよね、これじゃ。
EMTG:あははは、却下。

M-10.「(who)」→「(who)(仮)」
光村:これはインストだし、仮タイトルは特に無かったです。マスタリングの前日に、「Mr.ECHO」の前に何かイントロダクションをつけたいと入れただけなんで。ピンときて、作って 即アルバムに入れたという。で、アルバムの最後の最後に、このタイトルを付けました。

M-11.「Mr.ECHO」→「独りコンパル6号(仮)」
EMTG:これの仮タイトルは、「やまびこさん」だったっけ?
光村:それは歌詞を書く上での仮タイトル。これがようやく出てきた「独りコンパル6号」です。
EMTG:で、「やまびこ」さんになって、それを英訳したら。
光村:正式タイトルの「Mr.ECHO」になったと。
EMTG:そう考えると、「独りコンパルシリーズ」は打率が高かったんだね。
光村:NICOチームでは非常に評判が高いです。
古村:まるでNICOの“金庫”みたいだ。
坂倉:あはっ、現金なヤツだな(笑)。

M-12.「damaged goods? 紫煙 鎮魂歌?」→「レニー(仮)」
EMTG:この曲のギターは、かなりジミー・ペイジっぽい。で、ドラムはAC/DCみたい。
光村:色々な取材を受けていく中で、みなさんが。ツェッペリンだったり、そう言って下さるんですけど、俺のイメージとしてはレニー・クラヴィッツだったんです。レ二・クラの去年の来日公演の時に、実際のライヴをはじめて見て、アルバムから受けていたイメージが変わったんです。ライヴは思いっきりハイファイなハードロックで驚いたんです。そのイメージで楽曲を仕上げたかったんです。それで、ロックバンドはタフな音を作るんだったら、実際にはその倍以上タフじゃないとダメなんだなと思って。ロックバンドの生き様を俺たちも体現したいという願いを、仮タイトルに込めてみました。

*番外編 アルバムの仮タイトル*
EMTG:ちなみにこのアルバムの仮タイトルはあったの?
光村:猛烈にダサかったんで言いたくないですけど、もう一つ候補がありました。
EMTG:白状しなさいっ!
光村:『Rock’N Wall』。とにかく今回は「Wall」を使いたくて。だけど、これはあまりにもダサい。響きがダサい(笑)。
EMTG:デザイン上、Rock’n RollとRock’n Wallって、2文字違い!
光村:色々な人に「今回のアルバム『Rock’n Wall』 最高でした!!」と言われているところを想像すると、凄くサムくて(笑)。
EMTG:さっきのタイトル未定の話から、この『Rock’n Wall』が発表になった時のことを想像すると...やはりこ のタイトルにしなくて良かったってことだよ。
一同:大爆笑。
光村:救われました(笑)。

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

Shout to the Walls!(初回盤)

Shout to the Walls!(初回盤)

2013年04月24日

キューンミュージック

ディスク:1
1. 鼓動
2. 夢1号
3. 夏の大三角形
4. アビダルマ
5. ストロベリーガール
6. 紅い爪
7. チェインリアクション
8. ランナー
9. アルペジオ
10. (who)
11. Mr.ECHO
12. damaged goods~紫煙鎮魂歌~
ディスク:2
1. Mr.ECHO
2. April
3. 夢1号

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和食屋に行ったら、たまたま出されて、"なんだこれは?"と。梅干を日本酒で煮詰めたものらしく、醤油が出回る前に日本で使われていた古来の調味 料らしかったんです。それが凄くおいしくて。あまりにおいしくて、家でも簡単に作れるとのことだったんで、調べて試しに作ってみました。

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歌詞を書き出してから、知らない言葉を色々と調べ出したんです。誰かが言ってた言葉で、自分が知らない言葉が出てきたら、それを調べるって感じで。最近も、「溜飲を下げる」を調べて。"恨みなど晴らす"って意味らしいんですけど。「溜飲を晴らす」って言葉も、合わせて発見したりと、調べるのが面白いなと。

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あかね

学生時代から凄く気になっていた場所なんですよ。そこを調べました。当時、見ると学生がたまってはいるんですけど、ほとんどシャッターが閉まっていて。
で、調べてみたら。非営利な交流スペースのようで。ボランティア制で運営されているなんか不思議なスペースとのことでした。


■ライブ情報

「ShouttotheWalls!」リリース記念スペシャルライブ
2013/04/24(水)LIQUIDROOMebisu

「FM802SPECIALLIVEREQUESTAGE11」
2013/04/29(月)大阪城ホール

newbalance presents
NICOTouchestheWallsTOUR2013
"ShouttotheWalls!"

2013/05/16(木)静岡市民文化会館中ホール
2013/05/18(土)福岡サンパレスホテル&ホール
2013/05/19(日)広島アステールプラザ 大ホール
2013/05/25(土)オリックス劇場
2013/05/26(日)オリックス劇場
2013/06/02(日)札幌市教育文化会館 大ホール
2013/06/07(金)市川市文化会館 大ホール
2013/06/09(日)新潟県民会館 大ホール
2013/06/21(金)仙台市民会館 大ホール
2013/06/30(日)愛知県芸術劇場 大ホール
2013/07/10(水)NHKホール
2013/07/11(木)NHKホール

Amuse35thAnniversaryBBQinつま恋~僕らのビートを喰らえコラ!~
2013/07/13(土)静岡県・つま恋

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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