自分が今思っていることを歌にした楽曲がズラリ。ゆずのニューアルバム
ゆず | 2013.05.01
- EMTG : ツアー最終日に横浜アリーナでNEW ALBUM『LAND』リリースのニュースを聞いて、一体いつ作っていたんだろうと驚きました。
- 北川 : でも“必死で作って出します” という感じではないんですよ。去年、ドーム公演後くらいからポロポロと曲が出来始めて、時間があれば、SAKURA STUDIO に行って断片を作ったりしていて。趣味レコーディングみたいになって、その流れの中で作ったアルバムという。
- 岩沢 : ドーム公演後、わりと早い段階で、曲作りをしていて。シングルも結構貯まっていたので、去年の後半の時点で、あと何曲か作ってまとめたら、アルバムになるんじゃないかってとこまで来ていたんですよ。そのままアルバムを完成させることも出来たんですが、それだと新曲を自分たちの中で消化出来ないまま、ツアーに出ることになりかねない。そんな懸念もあって、ツアーをやりながら、同時進行でアルバム制作をしようと。もしツアー前にアルバムを完成させていたら、もっとまとまりのない、冷静さを欠いたアルバムになっていたかもしれない。ツアー中に曲をかみ砕く時間もあったし、僕ら的にはこの時期に出来るべくして出来た作品だなと。
- EMTG :『LAND』はゆずが新たな段階に突入したことを告げる作品でもあるのではないですか?
- 北川 : もっと肩の力を抜いて、自分が日々感じていることを、つれづれなるままに書きたくなったんですよ。ゆずをやり始めた頃の気持ちに近いというか、自分が今思っていることを歌っていこうと。歌詞だけじゃなくて、曲の形態も自由に作っていました。
- 岩沢 : よりミュージシャン的な方向にシフトして作ったアルバムなんですよ。どの曲をレコーディングしていても、お勉強している感じだった。こういうコード進行、このメロディでハモるとこうなるんだって、新たに知ることがたくさんあった。今回、おもしろかったのはプロデューサー、アレンジャーを固定していないこと。色んな人のエッセンスが入ってきた。こうやったらおもしろそうですねっていうようなキャッチボールがたくさんありました。
- EMTG : ツアー中も作り続けていくのは大変なのでは?
- 北川 : ライブの調整はしつつ、旅をしながら、あの曲はもうちょっとテンポを落とそうかなって考えて作っていくのは楽しかったですね。ベストアルバムとドーム公演の成功が自分の中で大きなピリオドになったし、固定観念にとらわれずに、曲を書いていくという創作過程で、自信も得ることができた。いざフリーで作り始めた時に、自分でも想像してないようなおもしろいものがどんどん出てきたんです。ドラゴンボールで悟空が重い亀の甲羅をしょって修行して、甲羅を外すと高くジャンプ出来るようになったみたいな( 笑)。こんなことも出来るんだ、こんな形も出来るんだって、黙々と作って、ひとりでほくそ笑むという(笑)。昔は自分の発想に技術が追いつかなくてうまくいかないことも多かったんですが、今はスキルが少し追いついたのかなと。
- EMTG : たくさんの人々と一緒に作っていくことは刺激になりましたか?
- 北川 : かなりなっていますね。「REASON」を前山田健一君と、「イロトリドリ」をJIN 君(GReeeeN のプロデューサー) と作ったことも大きかったですね。前山田君からは音楽の可能性の大きさと音楽のおもしろさを改めて教えてもらい、JIN 君からは音楽はウンチクや理屈じゃないんだっていう自分が忘れかけていた感覚を思い出させてもらいました。
- 岩沢 : JIN君のジャッジって、いい意味で適当なところがあって、それがいいんですよ。料理で言うところの目分量。計量カップで計って塩を入れるんじゃなくて、さっと手でつかんで、入れて作った料理が美味しいっていうニュアンス。あのさじ加減は素晴らしいですね。
- 北川 : 今回は彼らから受けた影響、刺激がレコーティングでも爆発してましたね(笑)。僕はフォーク・オルタナティブを目指していて。ひとつの曲の中に色んな場面がありながら、一貫性があって、曲がしっかり届くものを作りたいんですよ。現代における「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」みたいな。当時、ビートルズが自分たちでテープを切り貼りしてやってたことをデジタルの手法を駆使してやっていくという。
- EMTG : この新作の大きな特徴のひとつは東日本大震災以降の初のオリジナル作品ということだと思うのですが、作る上での意識は?
- 北川 : 東日本大震災を抜きにしては語れないアルバムだなと思ってます。今、自分たちは歌ってていいのかとか、音楽が必要なのかとか、自問自答したし、そういう中で色んな人との出会って、やっぱり自分たちには音楽しかないんだって再認識できた。そうしたプロセスが「LOVE & PEACH」、「翔」、「with you」といったシングルにも刻まれているんじゃないかな。自分たちは何が歌いたいんだって、知らず知らずのうちに向き合っている時間が多かったんですよ。いいとか悪いとか、白とか黒とか、簡単に言えないこと、答えを出そうとしても、出ないことがいっぱいあった。今までは答えを出さなきゃって思ってたんだけど、いや答えが出なくても、心に感じていることを歌にしていけばいいんだって。そうした中で出会った人たちの言葉、見た景色から曲が生まれたり。レクイエム的な曲もいくつかあるんですが、そこにも震災の影響が表れていると思います。
- EMTG : 岩沢さんは震災以降、どんな意識で曲作りを?
- 岩沢 : これでいいんだろうかって確認しながら、活動してきた気がするんですよ。シングルを1 枚1 枚出すにあたって、この曲を聴いた人はどう感じるんだろうって考えたし、いつも意識していた。そうやってレコーディングしたり、ライブしたりして、気がついたら、2 年たっていた。それらをひとまとめにしたのがこのアルバムかなって。「2-NI-」を発表したのが2 年前というのも驚異でした。えっ、この間、出したんじゃなかったっけって(笑)。それくらい、遮二無二やっていたんだなと気づかされました。
- EMTG : アルバムタイトル曲の「LAND」はこの新作の核となる曲だと思うのですが、どんな経緯で誕生したのですか?
- 北川 : ドームの後くらいから曲を作り始めていたんですが、「LAND」というテーマで書くぞってことではなくて、自然に作っていったら、こうなった。僕の曲作りはちょっと変わってて、何曲も同時進行で書くんですよ。気分を変えながら作ることで、視点も変わるし、曲同士が呼応しあったりする。「LAND」は呼応を繰り返す中で生まれてきた。今の気持ちがスルッとではなくて、ドロッっと出てきた感じ( 笑)。気持ちの原液みたいなものをそのまま歌にした。
- EMTG : “愛するここが 紛れもない僕らのLAND” という言葉なども強く響いてきました。ハードな現実を受けとめながら、進んでいこうとするタフな意志が伝わってくる曲だなと。
-
北川 : よし頑張るぞっていうのではなくて、行くしかないんだっていう感じですよね。自分の覚悟、決意がそのまま歌になった。色々と意識して考えすぎると、ドロッとしたものが消えちゃう気がしていた。今さらなんですが、ローリングストーンズのキース・リチャーズがすごく好きになって。結成50 周年でライヴ
映像を観る機会が多くて、マディ・ウォーターズのライブにミックとキースが参加して、マディにふられて、キースがギターソロを弾くんですが、超ヘタなんですよ( 笑)。だけどムチャクチャ響いてきた。歌で響いたことはあるし、ギターのテクニックを見せられて驚いたこともあるんですが、コード一発とか、テクニックじゃないリフで響いたのは初めてで、35 にして、ロックの電撃が走るっていう( 笑)。自分の中でギターを始めたのが遅くて、コンプレックスがあった
んですけど、キースに背中を押されました。自分にしかないシャッフル感、フレーズ感を出せたらなって。そういう意識で作っていました。 - EMTG : 岩沢さんは「LAND」については?
- 岩沢 : ドーム公演が終わって、わりと早い段階で、一度曲を持って集まろうという時点で「LAND」があって、かなり完成していたんですよ。蔦谷好位置君からのアレンジも早い段階で上がってきて、ツアーのリハもやってない段階で、リズム録りだけやった。その後、ツアーに集中しなければいけないので、一旦作業が止まったんですが、その合間をぬってテンポを変えてみようとか試行錯誤しつつ、ツアーを半分以上回ってからまた録り直すっていう。熟成させながら作っていくやり方の良さが出た曲じゃないかと思いますね。
- EMTG : ビートルズ的なサイケデリックな感覚が詰まっていながらも、ゆずの音楽という軸がしっかりあるところも素晴らしいですよね。
- 北川 : 僕はサイケデリックは大好きだったので、もう1 度、自分の好きな音楽に素直にやってみようって。つい好きな女の子のことを考えてしまうような感覚で、気がついたら、この曲のことを考えているという感じ。この半年、ずっとお供でいるという感覚を持ちながら、作っていました。
- EMTG : アコースティク・ギターの存在感もしっかりあります。
- 岩沢 : さほど難しいことをやってないんだけど、すごいことをやっているように聞こえる不思議な曲なんですよ。譜面上はそんなに難しくないのに、なんだこれはというアレンジが施されている。でもひもとくと、ゆずがやってますっていう。
- 北川 : 原型が崩れてないんですよ。最初のデモの段階でほぼ出来ていた。ゆずの弾き語りの曲として成立していたので、装飾に関して、もうなんでも来いって感じ( 笑)。ギミックから入っていくと、ただのサイケデリックの模倣になっちゃうけど、基本、弾き語りサイケデリックなので。
- EMTG : “大気汚染に怯えて暮らす” とか、リアルに響く言葉がたくさん入っていて、踏み込んだ強い歌詞になっています。
- 北川 : 作っていく上で、まよいはまったくなかったですね。とにかく素直に書こうって、肩の力は抜けていました。
- EMTG : 岩沢さんは歌詞に関しては?
- 岩沢 : 「WONDERFUL WORLD」以降、強い言葉には免疫が出来ていましたし、言葉も納得でした。
- EMTG : 歌詞がはっきり届いてくるなと思いました。
- 北川 : 目指すところは音と言葉とが一体となって、強く届くということなんですよ。様々なバリエーションを生み出したり、出し方を変えたりしているけれど、結局、どこまで行ってもゆずの根底は弾き語りなんだと思いますね。
- EMTG : 「砂漠のメリーゴーランド」は60?70 年代のテイストが斬新な曲です。この曲はどんなきっかけから生まれたのですか?
- 北川 : 「LAND」を作った時に、村上 隆さんにジャケットをお願いしようと思って、自分なりにジャケットのデザイン案みたいなものを勝手に作って、それを文におこしたんですよ。その時、砂漠の中で回り続けるメリーゴーランドのビジョンが出てきた。これに物語をつけて、音で表現しよう、アルバムのインタールード的な曲にしようってことで、最初のメロディを作っていきました。
- EMTG : そもそも村上さんにジャケットをお願いしようと思ったのはどうしてなのですか?
- 北川 : 村上さんがカタールで個展をやっていて、出展した作品の写真を見ていて、「LAND」という曲とカタールでのいくつかの作品とがリンクするなと思ったんですよ。
- EMTG : ということは、「砂漠のメリーゴーランド」は「LAND」から派生した曲でもあるわけですね。
- 北川 : そうですね。「砂漠のメリーゴーランド」は最初、ピアノを弾いていて、ワンコーラス作ったんですが、だんだん盛り上がってきて、おおよそ全部作ってしまった。村上さんに渡そうと思っていたジャケット案を歌詞にしていって、さらに新たなパートを作っていくという感じでした。
- EMTG : 岩沢さんの歌声もハーモニーも新鮮でした。
- 岩沢 : ゆずの初期の頃に北川が作ってきた曲に無理矢理ハモっていく感覚に近かったんですよ。ともかくまずハモってみようというノリ。アコギのストロークの感じとか、ライブが見えるというか、演奏している姿が見えてくる曲でもありましたね。
- EMTG : それはどんな姿なんですか?
- 岩沢 : 結構、しゃかりきになって弾いているんだけど、でもどこかクールという。力強さとせつなさもあって、悲しみだけの曲ではないなって。この曲もアルバム制作の初期からあったんですが、録ったのはツアーの後半で。時間を置いて、自分たちの中で熟成させることによって、完成した曲でもありましたよね。 自分の中でも曲の印象が変わっていったところもあった。
- EMTG : とても悲しい曲ですけど、イマジネイティヴでもありますよね。
- 北川 : この曲も東日本大震災の影響は大きいと思います。色んな話をたくさん聞いて、どうにもならない人の思い、別れもあるし、答えが出ないこともあるなと思いながら、作っていた。僕は今回、ファンタジックな作品にしたいと思っていたんですよ。ファンタジーがいい意味でオブラートになってくれるかなと。 そのまま伝えると、重苦しくなるメッセージも、ファンタジーにすることで昇華されていくんじゃないかと考えました。この曲はものすごく思い入れが強くて、初めてアレンジも全部、自分でやったんですよ。ゆず以外は、誰も入ってこなくていい。自分たちでギターを弾いて歌って、自分でピアノ弾いて、ドラムをサンプリングしていこうと。そうすることで、60?70 年代の香りがありつつも、今の時代を生きている自分たちの感覚が反映されて、古さと新しさが混じった歌になるんじゃないかなって。
- EMTG : メリーゴーランドというモチーフはシンボリックですね。
- 北川 : 今回、メリーゴランドという言葉があちこちに仕掛けのように入っていますね。「LAND」にも入っているし、「LOVE&PEACE」にも入ってる。今回、3 拍子の曲が多いんですけど、メリーゴーランドが回っている感じと、ワルツのもの悲しい曲調とがマッチするかなと。時間軸のファンタジーを表現する上でもワルツとメリーゴーランドがポイントになっています。
- EMTG : 「ゼラニウム」や「灯影」もレクイエム的な作品ですよね。「ゼラニウム」はどんなところから生まれたのですか?
- 北川 : 2011 年10 月に本を出して、東北で握手会をやったんですが、その時に、夫婦でゆずの大ファンだったというた女性が亡くされた旦那さんの写真を持ってきていて、色々と話してくれて。その時にレクイエムを書こうと思ったんですよ。僕自身も身近な人たちとの悲しい別れを経験しているので、震災のことだけでなく、色んな人に届く歌を作りたかった。メロディが出てきたのは12 月のホノルルマラソン当日。朝3 時に起きて、出走準備をしなければいけなかったんですが、寝れずにいたら、今のD メロにあたるところが出てきてしまった。もうちょっとで走らなきゃいけないのに、なんでこのタイミングで出てくるんだよと思いながら、走る前に書き始めた。でも、出来た曲があまりにもパーソナルすぎて、どうしようって思っていたら、プロデューサーがばっさりカットして組み替えるアイディアを出してきた。最初は驚いたんですが、ちゃんと向き合って、その方向で作り始めたら、これはいいなって思い始めたんですよ。パーソナルだったものがもっと広い普遍的な歌になっていった。色んな別れを経験した人たちの心にリンクできるんじゃないかなと思って、言葉とメロディとが一体化して、魂が昇華していくイメージで作りました。
- EMTG : ファルセットのハーモニーも印象的でした。
- 北川 : ゆず史上初のサビ、オール、ファルセットですね。最近、ファルセットが楽しくて。もともとは岩沢君に地声で歌ってもらおうと思っていたんですが、ファルセットのサビってないから、それでやったらどうかという案が出てきた。
- 岩沢 : 最初、仮歌でファルセットが入っていたので、ここを自分が歌うのかなと思っていたら、そこではなくて、下ハモですって。スタンダードに近い曲なんですが、サビのファルセットしかり、構成しかり、普通じゃない響かせ方になっていますよね。
- 北川 : うれしかったのは僕がデモで弾いていたピアノを、アレンジをやってくれた大野君がそのまま生かしてくれたこと。あまりうまくはないんですけど、自分にしか出来ない感じになったかなと。
- EMTG : 「灯影」も歌がじわりじわり入ってくる深みのある曲です。どんなところから生まれた曲なのでしょうか?
- 岩沢 : 最初はレクイエムを書くつもりはなくて、ロックでもポップスでもクラシックでもないというものを探しつつ。おもしろい変拍子やヘンな転調が出来ないかなとつらつらと書いていったら、こうなりました。個人的にも色々あり、まわりでも色々あり、レクイエムの方向に向かっていったんですが、自分だけの鎮魂歌みたいなものにはしたくなかったんですよ。そこをゴリ押ししていくのは違うなと。
- EMTG : この曲もかなり時間をかけて作ったのですか?
- 岩沢 : ドーム公演後に着手し始めて、ツアー中も模索し続けて、なかなか自分の中で納得のいくところまで到達出来ず、保留にしていたんですよ。そんな中でもまわりで悲しい出来事があったりして、こういうことではないな、これも違うなって、探し続けて、歌入れの何日か前に、最終的な形に書き直しました。
- EMTG : 納得のいくものになったポイントというと?
- 岩沢 : 結局、悲しいことを乗り越えていこうとか、頑張りましょうという言葉はいらないなって。悲しいですって言えば、それでいいんだというところに到達しました。北川も言ってましたけれど、答えはいらないんじゃないですかって。そういうところに行き着くまでにちょっと時間がかかりました。
- EMTG : 二人がそれぞれ作った曲が同じ方向を向いているという印象も受けました。
- 北川 : 作品で呼応しあっているという感じはありましたね。僕が発した曲に対して、岩沢が曲として返してくる、みたいな。そこには特に言葉はないんですが、音楽を通してのやりとりはあったのかなと。「灯影」も変な展開をしてるところがあるし、僕も変なものを作り始めていたし。そういうところでも呼応し合って いたのかなと思います。
- EMTG : 「Interlude “OHANASHI”」は「LOVE & PEACH」への導入部という感じですか?
- 北川 : そうですね。アルバムに「LOVE & PEACH」を入れようと思ったときに、どの曲の後ろに入れても強烈すぎて浮くので、どうしようって思ってて。思いついたのは、横浜文化体育館でのライブの中で、お猿さんが出てくる演出があったし、MV にも出てくるし、今回のアルバムって、サーカス小屋というシチュエー ションも入っているので、お猿さんのショーという設定でやろうと。それで台本を書きました。
- EMTG : 岩沢さんが演じている猿はニヒルでクールですが。
- 岩沢 : 台本どおり、やらせていただきました( 笑)。アルバムに入れるに当たって、「LOVE & PEACH」もミックスし直しているんですよ。シングル仕様だと、どうしても飛び抜けてしまうので、「LAND」仕様にすることで、ちょっと落ち着いて聴けるミックスになっていますね。
- EMTG : 「また明日」も『LAND』の流れの中で聴くと、“変わり続ける景色” という歌詞もまたさらにニュアンスが広がりますね。
- 岩沢 : 不思議なんですよね。今回はスタンダードなものが浮くという。混ぜていくのは難しかったですね。まとまってはいますが、一筋縄ではいかないものになりました。
- EMTG : 「流れ星キラリ( ゆずバージョン)」も『LAND』という作品の中で見事にハマっています。
- 北川 : もともと人のために作ったわけではなくて、以前やったイベント“音野祭” でみんなで歌えるものってことで作っていて、保留状態になっていた曲なんですよ。そして「REASON」 発売にあたり、声優さんたちが歌うってことで書き足したんですが、ゆずがデモでやっていたものもすごく良かったので、作品としてちゃんと残していきたいなと思ってやりました。
- EMTG : このゆずバージョンも震災以降の今、響く曲だなと思いました。
- 北川 : もともとシンプルなフォーク的な曲だと思うんですが、前山田君のテイストが混ざってくることで、新しい感じになり、驚きました。独特のフレーズ感、音色感、冷たさがあって、エッジがあるんだけど、それがわれわれの温度の高いところと混ざると、いい感じの平熱になって、聴きやすくなっていく。
- EMTG : 岩沢さんはゆずバージョンをやるにあたっては?
- 岩沢 : 差別化をどうするかっていうのは意識しましたね。D メロがあったりするのがゆずバージョンなんですが。レディースとメンズの分け方というか。僕のお気に入りポイントは前山田君がこだわった最後の鐘の音が七つなるところですね( 笑)。
- EMTG : アルバムラストの「ムーンライト・パレード」も『LAND』に通じるサイケデリックなテイストが詰まった曲です。
- 北川 : この曲も村上さんとのやりとりがきっかけで生まれた曲ですね。アルバムのアートワークを依頼する段階で、『LAND』を聴いてもらった時に、村上さんから「ゆずの曲で初めて刺さった」って言われたんですよ。それまでの村上さんと僕らのコラボレーションって、互いに違うからこそ、おもしろい表現が出来たと思うんですが、村上さんの僕らとが初めて完全にリンクしたのが今回の『LAND』だと思っていて。村上さんから上がってきたアートワークが世界基準というか、すさまじいもので、すごい感動して、そこから新たな作品のイメージが湧いてきました。その時期に僕がインフルエンザになって、大阪でのライブでシャウトしたら、ノドが壊れかけて、しばらく歌を歌えない状態になり。いつもデモを作る時は弾き語りで作るんですが、歌えないから、頭の中でイメージを膨らませて、この展開、次はこの展開っていうのを頭の中に4 カ所くらい点在させて、それぞれモチーフを研ぎ澄ませて、あとから接合していく手法で制作しました。ケガの功名じゃないですけど、ぶっ倒れて熱でトリップしていたから、こういう曲が出来たのかなと。
- EMTG : 混沌としたパワーが渦巻いていて、イマジネイティヴでマジカルですよね。
- 北川 : おもしろいことやりたいという情熱をギュッと凝縮した感じになりましたね。「FURUSATO』で一緒に仕事をした森本千絵さんの展覧会があって、見に行った時に、「村上さんからもらったものを曲で返したくて、その曲のイメージ、幽体離脱してそのままパレードに行っちゃうような感じというのはあるんだけど、具体的な歌詞のイメージが湧かない。どう思いますか?」って聞いたら、「言葉を書こうとしなくてもいいんじゃないですか。北川さんは絵で見える人だから、絵を浮かべたら」って。あっ、なるほどって思って、自分の中でパレードに行くストーリーを映像化して、その映像をスケッチする感じで絵を言葉で表現していった。作っていて、頭の中がスパークする、みたいな感覚はありました。
- EMTG : 岩沢さんは「ムーンライト・パレード』については?
- 岩沢 : ある日突然、「「ムーンライト・パレード』のレコーディングをやります」って言われて、なんじゃ、こりゃあ!って(笑)。構成も普通ではないので、曲の全貌を理解するのにちょっと時間をいただきつつ、蔦谷君とも相談しつつ、やっていきました。レコーディング自体はすんなりと行ったんですが、アザーボイス、アザーノイズにはかなり時間をかけましたね。これは蔦谷好位置節が炸裂というか。タイトルのごとく、パレードだし、色んな要素が詰まっている曲になりました。
- EMTG : D メロのハーモニーはたくさんのキャラクターが出てきます。
- 北川 : あのキャラクター、僕が3 人くらいやってて、岩沢が1 人やっています。そのキャラにもそれぞれ、田中さんとか水森さんとか、名前を付けてやってました( 笑)。蔦谷君ってちょっとやそっとじゃ、うならないんですけど、最初にデモを聴かせた時に、超うなって。「これはいい!」って言ってくれて、かつてないくらいに、レスポンスも早かった。蔦谷君との新しい形が作れましたね。
- EMTG : アルバムタイトルは『LAND』という曲名と同名の「LAND」ですが、そもそもこの単語はどこから?
- 北川 : 自分でもよくわからないんですが、「LAND」という曲を作ってて、ラーンド!って叫んだんですよ。で、これしかないかなって。『LAND』っていう言葉で気に入ってるのは、日本は島国なんで、この日本という島国でどういう風に生きていくかというメッセージにもとれるし、同時に、ディズニーランドとかテーマパークのファンタジックな感じとのダブルミーニングにもなっていて、ちょうどいい言葉だなと思って。
- EMTG : 岩沢さんは『LAND』というアルバムタイトルについては?
- 岩沢 : 北川から“これは『LAND』でしょ!” っていう確信にも近い提案があったので、それをそのまま受け取りました。
- 北川 : 「LAND』という曲を作った時からこれがアルバムタイトルになったらおもしろいなと思っていました。
- EMTG : 『LAND』を作って、新たに発見したことはありましたか?
- 北川 : 震災以降、やることが絞り込まれてきた気がしますよね。何もかも出来るわけじゃないし、自分たちに出来ることは音楽だなって。
- 岩沢 : 今回、熟成させた曲が多かったんですが、自分たちの中でしっかり入っていると、より色んな対応の仕方が出来るんだなということは感じました。
- EMTG : 『LAND』を携えて、ツアー“GO LAND” も始まります。
- 岩沢 : 今、話し合っている段階なので、まだ決定してないんですが、これまでにはないものになると思います。この強烈なアルバム・ジャケットからどんなツアーになるか、想像していただけたら。
- 北川 : この『LAND』で、今までたどり着いたものを超えたなという思いがあって。また新たな挑戦というか、違う表現の仕方になるのかなと思っています。今、新しいことをやろうとして、もがいている最中ですけど、不思議と不安はなくて。ゆずならば、大衆性とメッセージとの融合が出来るんだろう、今までに見たことがないものが出来るだろうって予感してます。
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リリース情報
LAND
2013年05月01日
トイズファクトリー
2. LAND 【 石けん洗浄成分のボディウォッシュMellsavon CMソング】
3. イロトリドリ 【2013「ユーキャン」CMソング】
4. 砂漠のメリーゴーランド
5. with you 【日本生命CMソング第2弾】
6. ゼラニウム
7. Interlude“OHANASHI"
8. LOVE & PEACH 【「お台場合衆国2011?ぼくらがNIPPON応援団! ?」テーマソング】
9. 流れ星キラリ(ゆずバージョン) 【テレビアニメ『HUNTER×HUNTER』エンディングテーマ】
10. また明日 【TBS系ドラマ『浪花少年探偵団』主題歌】
11. 翔 【フジテレビ『世界体操 東京2011』番組テーマソング/ ニッポン放送「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」テーマソング】
12. 灯影
13. ムーンライトパレード
このアルバムを購入
お知らせ
YUZU ARENA TOUR 2013 GO LAND
2013/6/15(土) 北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2013/6/22(土) 和歌山ビッグホエール
2013/6/23(日) 和歌山ビッグホエール
2013/6/29(土) 別府ビーコンプラザ コンベンションホール
2013/6/30(日) 別府ビーコンプラザ コンベンションホール
2013/7/6(土) さいたまスーパーアリーナ
2013/7/7(日) さいたまスーパーアリーナ
2013/7/14(日)国立代々木競技場第一体育館
2013/7/15(月祝)国立代々木競技場第一体育館
2013/7/20(土)横浜アリーナ
2013/7/21(日)横浜アリーナ
2013/8/3(土) 長野ビッグハット
2013/8/10(土) 広島グリーンアリーナ
2013/8/11(日) 広島グリーンアリーナ
2013/8/17(土) 静岡エコパアリーナ
2013/8/21(水)愛知 日本ガイシホール
2013/8/22(木) 愛知 日本ガイシホール
2013/8/25(日) 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2013/8/31(土) 宮城・セキスイハイム スーパーアリーナ
2013/9/3(火) 大阪城ホール
2013/9/4(水) 大阪城ホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。