THE BACK HORN、10枚目のアルバム『暁のファンファーレ』完成

THE BACK HORN | 2014.04.10

 THE BACK HORNが通算10枚目のアルバム『暁のファンファーレ』を完成させた。震災による様々な葛藤の果てに辿り着き、願いや祈りをたたえた前アルバム『リヴスコール』の開放感は継承されつつ、先行して世に放たれていた「バトルイマ」「シンメトリー」「コワレモノ」などといった、バンドの新たな顔も提示している本作。その中で「生きろ」「戦え」「声をあげろ」と、彼らがこれまでも叫び続けていたメッセージが実に力強く、暖かに伝わる快作となった。『暁のファンファーレ』の制作にあたり、4人はどういうモードで臨んで行ったのか。まずはそこから訊いてみた。

松田晋二:アルバムに向けてイメージを固めたりとかは、特にしなかったです。『リヴスコール』を作った自信とか、達成感を持って曲作りに入っていったところもあるので、イメージを固めない方が強いものが出来るんじゃないかっていうのは、最初の段階にはあったと思います。
岡峰光舟:アルバムとかそういうものではなく、自分にとっての良い曲、新しい一歩になるような曲を、それぞれでひねりだしてみようっていうのもあって。それがうまくいったらTHE BACK HORNの一個のパワーになるんじゃないかなっていうのは思ってました。
EMTG:岡峰さんとしては、今回はどの曲を持っていったんですか?
岡峰光舟:最初に「飛行機雲」を持っていったんですけど、今までは曲を作るときって、ベースの和音がちょっと崩れたものをギターで弾いたら、この響きいいじゃん、みたいな感じで作っていて。でも今回は時間があったから、栄純にアコギをくれって言って……。
菅波栄純:俺と将司が一緒に住んでいたときに、ビクターのディレクターにもらったアコギを、光舟が受け継いだんです。
岡峰光舟:今までギターって本当に感覚で弾いてたけど、この音はこういう名前なんですよってやり始めたところから、「飛行機雲」は出来ていって。本当にシンプルな中で気持ちよく響きつつ、自分の好きなポイントでもあるちょっと切ない感じが出たかなと思います。
EMTG:松田さんとしてはどういうイメージのものを作って行こうと?
松田晋二:僕は歌詞だったんですけど、『リヴスコール』の制作段階から、自分の中でもっと伝わるものを書きたいっていう欲求がすごくあって。それで「ホログラフ」の歌詞は、シンプルな言葉の繋ぎ合わせで、いかようにも世界が広がるようなものを書きたいと思っていて。
EMTG:じゃあ、曲よりも歌詞を先に?
松田晋二:抽象的なイメージがあったんですけど、将司がアコギで作ってきた曲を聴いて、このイメージに合うように歌詞を書いていけば、すごく良くなりそうだなと思って。だから最終的に、別々だったものが合体した感じです。
山田将司:なんか、胸の中にそっと寄り添ってくれるような曲を作りたいと思っていて。そういうイメージで次はこのコードかなって繋いで行って、なんか、囁くように作っていった感じですね。
EMTG:山田さんが他に持ってきた曲というのは?
山田将司:作ったのは「シェイク」「エンドレスイマジン」だけど、「バトルイマ」を作ったときと同じモードでしたね。世の中や自分の中にある当たり前を疑っていくっていう。いろんな情報を単純に鵜呑みにして行くのは、やっぱりおかしいと思って。
EMTG:確かに「疑え」ということがベースにありますけど、どうしてまたこの歌詞に?
山田将司:身内の話なんですけど、震災があってから白血病になってしまって、医者に通っていたんです。医原病ってあるじゃないですか。医療が原因で違う病気が生まれてしまうっていう。それですごく怖いことなんですけど、薬から一回離れさせたんですよ。それで、他の治療方法をいろいろ調べて試していたら、医原病が原因で出来た腫瘍が小さくなっていって。いろいろあるんですよね。身体に良いと言われていたものが本当は良くなかったとか。あと、どういう歴史背景があって、こういうものが日本に来たのかとか。そういうことを知識としてちゃんと知って、自分らの下の世代や、自分に子供が出来たりしたら、そのことをちゃんと伝えて行くべきだなって。そんなことを考えていましたね。
菅波栄純:自分は「シンメトリー」を新しい一歩として持って行ったんですけど、「月光」は光舟が元々作ってきていたカラオケ状態のデモがあって、そのときからこの曲の凛とした雰囲気みたいなものは既にあったから、カッコいいなと思っていて。「月光」っていう曲ってあるよね?
岡峰光舟:ベートーベンね。
菅波栄純:あの曲みたいに深い感じがするなって。それでイメージが沸いて来たからメロディー書いていい?って。そこからでしたね。「ビリーバーズ」は、光舟が思いついたベースのリフを、俺の家でいろんなエフェクターを試して2人で遊んでいたデモがあったんですけど、それを聴き返したら、なんかエレクトロロックっぽくてカッコいいなと思って。
岡峰光舟:サビとか後半の展開は、もうほとんど栄純が作っていて。
菅波栄純:スタジオで考えましたね。今回はスタジオ作業で出来たものが多いです。「ブランクページ」もキッカケはスタジオで出来たし、あとは「幻日」もそうです。
EMTG:「幻日」はアルバムの中でも一番カオスを極めてますね。
菅波栄純:それぞれのパーツはシンプルなのに、なんかカオス感があるんだよなって(笑)。ちょっと不気味ですよね。
EMTG:でも、この混ぜ具合はTHE BACK HORNにしか出せないものだと思いました。
菅波栄純:あぁ、嬉しいです、それ。何が混ざってる感じがします?
EMTG:インドとかのオリエンタルな感じもあるし、タンゴもあるし、聖歌隊みたいなコーラスもあるし、お経みたいなのも……。
菅波栄純:そうなんですよね(笑)。あと、サビで雰囲気が変わって、ちょっと疾走感哀愁パンクみたいになるし。だからなんか、オペラのみたいに場面が変わるなって。「幻日」って、太陽の横にもう一個太陽が見えるっていう気象用語らしいんだけど、歌詞はそういう夢と現実がゴチャゴチャになる感じっていうか。将司も言ってたけど、現実世界でも本当と嘘は自分で見極めるしかないっていうのを重ね合わせて。
EMTG:かなり幅のある作品になったと思うんですが。
松田晋二:でもなんか、実はそこまで幅を感じていないんですよ。自分たちが考えるTHE BACK HORNの幅は、曲調も世界観ももっと広くあるんですけど、でも今回の13曲っていうのは、まさに「暁のファンファーレ」としか言いようのない幅の中で、見事に収まってるなと思って。
EMTG:タイトルの「暁のファンファーレ」は最後に?
松田晋二:そうです。みんなでアイデアを出し合って行く中で、「ファンファーレ」っていうイメージがするっていうのを自分が言って。その中で光とか、生命感のあるものとか、いろんなワードを出していく中で、しっくり来たのがこのタイトルです。曲だけじゃなくて、みんなでタイトルを育てて行ったような感覚もありますね。
山田将司:「ファンファーレ」って始まりの合図でもあるし、呼吸してる感じっていうか、生きている証みたいなものがある感じもして。「暁」は朝日が昇る前の暗い時間帯なんだけど、いつかは光が差し込むから、暗い時間だけどみんなで生きて行きたいっていう。
菅波栄純:マツが最終的に「暁のファンファーレ」って言ったときに、俺も同じイメージをしてたんですよ。「暁のファンファーレ」かなぁって。こういうこと言うと、後出しジャンケンしてるみたいな感じだけど。
松田晋二:俺はそう思ったけどね。あぁ、コイツ合わせにきたなって。
岡峰光舟:それ言うなら俺も思ってたからね? 「暁のファンファーレ」だなって。
松田晋二:なんで最初に言った俺が負けみたいな感じになってんの?(笑)
EMTG:ははははは(笑)。
松田晋二:でもなんか……これ言っちゃおうかな……。
EMTG:なんですか?
松田晋二:本当は…………いや、言わない方がいいか(笑)。
EMTG:いやいや!(笑) 気になっちゃいますよ、そこまで言われると。
松田晋二:『リヴスコール』の最後に「ミュージック」っていう曲があるんですけど、出来たときに、自分の中で別のタイトルがあって。それが「暁のコンパス」っていうタイトルだったんですよ。
菅波栄純:言ってたね。
松田晋二:俺の中では「暁のコンパス」って最高のイメージだったんですよ。道標があって、それを自分で選んで行くっていう。それで、「ミュージック」で進んでいたんだけど、「暁のコンパス」にタイトルを変えたいんだよねって言ったら、みんなに「全然ピンと来ない」って言われて(笑)。
菅波栄純:あの曲に関しては「ミュージック」だと思ったから。
松田晋二:だから、その頃から共通してそういう願いというか、想いがあったのかもしれないんですけど。
EMTG:『リヴスコール』のモードが続いてきていると。
松田晋二:そうですね。モチベーションとか気持ち的にはそうだと思うし。
EMTG:その中でも、新しいものを出していく挑戦は、絶対に続けていかなければいけないと。
松田晋二:新しいものを出すっていうのは、栄純が最初の段階から言っていたんですよ。一人一人のパワーを結集してこそバンドであって、曲もそうやって作って行くものだっていうのを力説していて。
菅波栄純:『リヴスコール』を作っているときは無我夢中だったんだけど、あそこから始まって、生まれてきているエネルギーみたいなものを、各々もう一回捕まえ直す必要が絶対あると思ったんです。それは、これからのTHE BACK HORNのために。俺は、『リヴスコール』でバンドの新しい一節がスタートしたと思っていたんだけど、何が始まっているのかは自分では分からなかったし、その答えを自分ひとりで出せると思っていなくて。だから、4人それぞれが深く考えたり、ときに感覚的に思ったものから出てきたものを熟成させつつ、『リヴスコール』のシーズンで手に入れたエネルギーで、『暁のファンファーレ』は作れるんじゃないかなって思っていたんです。『リヴスコール』との繋がりもあるんだけど、確かに一歩踏み出しているものになるはずだっていうイメージを、ちょっとだけしていて。結果的にそのとき想像していたものより、すごく豊かな音楽が出来たなと思って感動しました。
岡峰光舟:『リヴスコール』のツアーが終わった後も、なにかが続いている感覚があったんですよ。その中で、曲作りのために各々一ヶ月ぐらい自分の中で出てくるもの、新しいもの感じるものを作ってこようって栄純が言ったときは、なんか、成長しようって言っているように聞こえて。
山田将司:俺も光舟と同じ感じです。成長しようっていうこともそうだし、それはひとりひとりを信頼していることでもあるのかなって。各々の曲を作るスキルがあがってきたから、そこで幅も出つつ、THE BACK HORNらしさもしっかりあるアルバムになったので、良かったですね、すごく。
EMTG:あそこから始まっていて、決して何かが終わっているわけではないと。
松田晋二:そうですね。『リヴスコール』のときは使命感というか、残すべきだっていう想いから出来たもので、それはバンドとして本当に大事だったものだったと思うんですけど。でも、俺達が音楽に想いを閉じ込めるのはもちろんなんだけど、音楽の可能性というか──聴いた人達の中で、その音楽がどうやって広がって行くのか? それが、この「暁のファンファーレ」にあるような気がしてますね。それは聴いている人まかせっていうことではなく、この音楽を聴いてくれた人、このアルバムを必要としてくれる人の中で、ファンファーレが鳴って欲しいっていう。そういうことも思ってます。

【取材・文:山口哲生】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル THE BACK HORN

関連記事

ビデオコメント

リリース情報

暁のファンファーレ(初回限定盤) [CD+DVD]

暁のファンファーレ(初回限定盤) [CD+DVD]

2014年04月09日

ビクターエンタテインメント

ディスク:1
1. 月光
2. ビリーバーズ
3. シェイク
4. バトルイマ
5. ブランクページ
6. 飛行機雲
7. サナギ
8. コワレモノ
9. エンドレスイマジン
10. 幻日
11. タソカゲ
12. シンメトリー
13. ホログラフ

ディスク:2
1. バトルイマ (Music Video)
2. 暁のファンファーレ (Making Video)

このアルバムを購入

お知らせ

■ライブ情報

KYO-MEIワンマンツアー
~暁のファンファーレ~

2014/05/01(木)東京都 恵比寿LIQUIDROOM
2014/05/03(土)静岡県 清水SOUND SHOWER ark
2014/05/05(月)滋賀県 滋賀U★STONE
2014/05/06(火)兵庫県 神戸VARIT.
2014/05/10(土)茨城県 水戸LIGHT HOUSE
2014/05/11(日)栃木県 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
2014/05/15(木)香川県 高松DIME
2014/05/17(土)高知県 高知X-pt.
2014/05/18(日)愛媛県 松山サロンキティ
2014/05/22(木)岡山県 岡山ペパーランド
2014/05/24(土)広島県 広島クラブクアトロ
2014/05/25(日)島根県 松江AZTiC canova
2014/05/30(金)宮城県 仙台Rensa
2014/06/01(日)北海道 サッポロファクトリーホール
2014/06/03(火)福島県 南相馬BACK BEAT
2014/06/07(土)新潟県 新潟LOTS
2014/06/08(日)長野県 松本Sound Hall a.C.
2014/06/10(火)山梨県 甲府CONVICTION
2014/06/17(火)石川県 金沢エイトホール
2014/06/19(木)愛知県 Zepp Nagoya
2014/06/20(金)大阪府 なんばHatch
2014/06/25(水)大分県 大分DRUM Be-0
2014/06/27(金)鹿児島県 鹿児島キャパルボホール
2014/06/29(日)福岡県 Zepp Fukuoka
2014/07/01(火)長崎県 長崎DRUM Be-7
2014/07/04(金)岩手県 盛岡Club Change WAVE
2014/07/06(日)福島県 郡山Hip Shot Japan
2014/07/10(木)東京都 Zepp Tokyo

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る