クリープハイプ、ニューシングル「愛の点滅」スペシャルレビュー

クリープハイプ | 2015.05.05

5月5日リリースのクリープハイプのニューシングル「愛の点滅」。彼らの活動をずっと観察してきた音楽評論家・平山雄一氏が、新作収録曲を分析したスペシャルレビュー!!


1「愛の点滅」
信号の青と赤を題材に、尾崎らしい恋愛観を描いてみせる。これまでも“すれ違う恋人たちの気持ち”を、さまざまな手法で描いてきたが、そのアイデアの泉は枯れることを知らないかのようだ。今回のツアーでは、「愛の点滅」を発売日前から歌っている。「今から新しいシングルを歌います。こ こにライブをしに来れたのも嬉しいけど、新曲を聴いてもらえるのもすごく嬉しい。初めての曲を一生懸命聴いてくれるみんなの姿を見るのが好きなんですよ」とライブ中のMCで言って演奏を始めるとき、メンバーたちは必ず笑顔になるのだった。

2「クリープ」
素直で明るいポップ・ナンバー。♪君が幸せになるように♪というストレートな言い方が、どちらかと言えば皮肉が多いクリープハイプの歌に慣れた耳にやさしく響く。このところ、尾崎はよく「”逆プロモーション“は、もう終わり」と発言する。「社会の窓」をはじめとして、世間やリスナーに噛みつく姿勢の歌や言葉を投げかけてきたが、その時期を通過して本来のメッセージを真っ直ぐに発信していこうということなのだろう。この 「クリープ」という曲は、その前のクッションのような役割を果たすことになる。♪馬鹿でもわかるあんな声で 真実の愛を歌いたい♪と尾崎はファンに正面から語りかけている。

3「すぐに」
今や小川幸慈は、男の子のファンやバンド・シーンのミュージシャンたちから、注目のギタリストだ。彼の奏でるイントロのフレーズや、歌のバックで弾く短いメロディは、クリープハイプの大きな魅力になっている。愛用のフェンダー・ジャズマスターは、乾いた音色の中に少しだけ哀愁を含む。小川はその特徴的なサウンドで、尾崎の作るメインのメロディにマッチする“もう一つのメロディ”を作り出すのが上手い。この「すぐに」も、オクターブ奏法を駆使したイントロが印象的。さらには、堂々たるギター・ソロを、曲中で披露している。

4「赤の前」
「愛の点滅」で“赤”と“青”は交通信号のサインとして意味を持っていたが、この歌の“赤”は少し違うようだ。世界のオンとオフを切り替えるスイッチとしての“赤いボタン”は、クリープハイプがバンド活動を続ける理由のある部分を暗示している。「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」のように、クリープハイプには“これが最後かもしれない”という危機感がいつも寄り添っている。この歌は長谷川カオナシが作詞し、尾崎が作曲している。かつてこのコンビの作品には「ATアイリッド」があった。二人の相性は抜群で、今後、共作が増える予感がする。

5「空色申告」
今回のツアー では、長谷川カオナシの存在感が増している。アグレッシブな歌のブロック、じっくり聴かせる歌のブロック、盛り上がる歌のブロックなど、セットリストはいくつかに分かれているが、そうした“ギアチェンジ”の場面で長谷川が歌う曲が効果的に使われている。この「空色申告」も、長谷川の作詞作曲した新曲としてアンコールで歌われている。四国・松山でのライブでは、「伊予弁のエッセンスを入れつつお送りします」と言って歌詞に“松山弁”を取り入れて、コミカルな曲調をさらに膨らませて楽しいパフォーマンスになっていた。

6「目覚まし時計」
今回のツアーではアンコールの1曲目に歌われている大切なナンバー。ツアーの暮らしぶりとも受け取れる内容の歌詞は、そろそろお別れの時が迫ったアンコールにピッタリくる。4thシングル「寝癖」の収録曲で、長谷川がリードボーカルを取り、サビでは尾崎が高音パートのハーモニーを付けるのだが、その独特のコーラス・サウンドはクリープハイプの音楽の魅力として定着 していくことだろう。8分の6拍子の軽快なリズムと、少しもの悲しいハーモニーが、いかにも目覚まし時計の陽気でちょっと意地悪なキャラ クターをいきいきと描き出している。

7「ヒッカキキズ」
インディーズ時代の2ndミニアルバム『When I was young,I’d listen to the radio』(廃盤)収録のロッカバラード。ツアー初日の市川市文化会館でのライブ・テイクで、尾崎の噛みつくような歌が心に刺さる。あえてこの曲を今回のツアーのセットリストに入れ、しかもライブ音 源をリリースするのは、当然、この曲に対する尾崎の強い思い入れがあるからだ。心のササクレやヒッカキキズをずっと歌ってきたクリープハイプの原点のひとつと言っていいこの曲は、♪兄弟みたいで少し淋しかった♪と歌う。そのせいか、あるライブでは終わった後、男性ファンから「尾崎、愛してる!」と声がかかった。そして、尾崎はその言葉を見事に無視したのだった。

8「喋る」
尾崎が責任編集した雑誌“SHABEL”に付いていたスペシャルCDの収録曲。“SHABEL” は、尾崎が興味を持つ写真家と対談したり、ミュージシャンたちと曲を共作したりしていて、充実の内容。少年時代からずっと、尾崎自身が雑誌から新しい情報や刺激を受けてきたことを、多くの人たちに還元したいという考えの元に制作された。これもツアー初日のライブ音源で、自分の最新作品をすぐにファンに聴いてもらいたいという尾崎らしい発想がここにある。自分とリスナーとの距離感をテーマにした“お喋り”のような歌で、少し跳ねているビートをしっかり支える小泉拓のドラムに注目したい。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 シングル 男性ボーカル クリープハイプ

リリース情報

Hello Sleepwalker『シンセカイ』

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発売日: 2017年02月15日

価格: ¥ 2,130(本体)+税

レーベル: A-Sketch

収録曲

1. 新世界
2. Sleep Tight
3. Rollin’
4. YAH YAH YAH
5. Sundown
6. DNAの階段
7. 日食

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お知らせ

■ライブ情報

一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 後編
2015/05/07 (木) 東京:NHKホール
2015/05/08 (金) 東京:NHKホール
2015/05/10(日) 長野:ホクト文化ホール・中ホール

一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 総集編 ~東京の中心で○○○を叫ぶ~
2015/05/16(土) 日比谷野外大音楽堂

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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