チャラン・ポ・ランタン、“やりたい放題”の新作「貴方の国のメリーゴーランド」
チャラン・ポ・ランタン | 2015.07.01
- EMTG: アコーディオンってかなり珍しい楽器だけど、どうして始めたの?
- 小春:7才のときにお母さんに連れていってもらった“シルク・ドゥ・ソレイユ”で、初めて“サーカスのアコ―ディオン弾き”を観て、楽器が伸び縮みしてるのが面白かったんだよね。それでお母さんに「アコーディオンが欲しい」って言ったら、「サンタさんにお願いしてみたら」って言われて。その年のクリスマスにサンタさんにお願いしたら、プレゼントしてくれたの。「サンタ、すげ~!」って思った。
- EMTG: 空中ブランコが好きになってたら、サンタさんは少し困ったかも(笑)。
- 小春:そうかも(笑)。でもその後のサンタさんは、身体の成長に合わせて毎年少しづつ大きなアコーディオンをプレゼントしてくれたから、やっぱり大変だったんじゃないかな。
- EMTG: ももちゃんも、一緒にサーカスを見に行ったの?
- もも:はい。でも2才だったので、アコーディオンは怖い夢の中に出てきましたね。少し大きくなってから私も小春さんの真似してアコーディオンをやったけど、飽きっぽいので続かなかったです。
- 小春:私はジプシー音楽が好きだったんで、高1からインストバンドを組んで、高2くらいで将来を考えるようになった。その頃はもう、「自分にはアコーディオンしかない」って思ってた。それで、東京都の“ヘブンアーティスト”の試験を受けて合格したの。
- EMTG: それって、ストリート・ミュージシャンの許可みたいなもの?
- 小春:ストリート・ミュージシャンではなくて、“大道芸”の資格です。ストリートの人たちって、そこでワンマンのチラシを配ったり、“宣伝活動”をするわけでしょ。でも私は、毎日、同じ場所でアコーディオンを弾いて、お金をもらって、その日暮らしができればいいと思ってたの。私は10才のときから、大道芸人になりたかった。家も持たないで、大道芸で生活したかった。でも、学校の三者面談でそれを言ったら、先生に心配されたけど(笑)。
- EMTG: それは心配されるだろ(笑)。
- 小春:通りすがりの人からかなりお金もらってたよ。もしかしたらその頃の方が、今よりお金持ちだったかもしれない(笑)。
- EMTG: やるなあ(笑)。その頃、 ももさんは?
- もも:その頃は小春さんと部屋は一緒でも、お互いに全然話さなかったです。小春さんが高3で、私は中1だったから、話がまったく合わないし、何を話したらいいかもわからなかった。それと、私が寝てる時間に小春さんが帰ってきて、小春さんが寝てるときに私は学校に行ってたから、時間も全然合わなかったです。テニス部だったし。
- EMTG: その頃の年齢差は、大きいもんね。
- 小春:そうだね。21才になったとき、ライブハウスの人から誘われて出るようになって、間もなくワンマンもできるようになった。その時期にいろんなバンドを観て思ったのは、「ボーカルはわがまま」っていうことだった。
- EMTG: あははは、確かに!
- 小春:自分たちのワンマン・ライブでゲスト・ボーカルを入れようかと思ってたの。でも、わがままな人は嫌だし。何も色の付いていない人を探そうと思ったら、自分の部屋に暇な女がいた(笑)。しかも、お母さんから「ももはカラオケに行ってるみたいよ」って、有力情報があって。
- EMTG: どんなのを歌ってたの?
- もも:ドリカムとか絢香とか。(松浦)あややが好きだったです。
- EMTG: じゃ、わけのわからない音楽をやってるお姉さん(笑)に誘われて、困ったでしょ?
- もも:その頃、小春さんとはまったく話してないし、いちばん離れてた時期だったんです。久々の会話が「曲を書いたから、よろしく!」っていう“雑な誘い”だった。
- EMTG:それは乱暴だな(笑)。
- 小春:しかも、チラシには“ゲストボーカル・もも”って書いちゃってた。
- EMTG: あははは、超乱暴!! 大丈夫だった?
- もも:練習して、そのワンマンはなんとかやりました。
- 小春:いい感じだったので、その2カ月後には、バンドじゃなくて二人のユニットでやっていこうって決めたよ。
- EMTG: 超超乱暴モノ! レパートリーは?
- 小春:ロシア民謡とか、昭和の歌謡曲とか、シャンソンとか。
- EMTG: ももさんがカラオケで歌っていたのとは、全然違う音楽じゃん(笑)。そういうのを歌うのは平気だったの?
- もも:それが不思議なもので、二人の部屋にはコンポが一台しかなかったので、小春さんがかけるものを私もずっと聴いてたから、勝手に沁みついてたんですね。違和感はなかったです。
- EMTG: ももさんがいくつのとき?
- もも:高1になったばっかりの時期です。小春さんがどんどん仕事を取ってきたので、高1の夏休みは2日間しか休めなかった。全然、遊べなかったです。
- EMTG: すごいデビューだね(笑)。
- 小春:二人は一緒にユニットをやって、話すようになったし、仲良くなったっていう(笑)。 ももさんは人前で歌ったことがなかったから、少し作ったね。目が泳いじゃうからサングラスをかけさせて、ショートヘアだったからウィッグを付けさせて、手持ち無沙汰だったからブタのぬいぐるみを持たせて。
- EMTG: 作り込んだね(笑)。でも 最近は、ももさんのパフォーマンスがオーディエンスにすごくアピールしてると思う。
- 小春:そうなの(笑)。
- もも:ありがとうございます(笑)。
- EMTG: そして今回の「貴方の国のメリーゴーランド」は?
- 小春:私たちの所属事務所のSMAが映画を自社制作することになって、私たちのワンマンを見に来てくれた監督から、第1弾の『飛べないコトリとメリーゴーランド』の主題歌のお話があったの。私は映画のエンドロールで、物語に合わない歌が流れるのがすごく嫌いで。自分たちがやるんだったら、絶対に合うものを作りたかったの。
- EMTG: 速い2ビートで始まって、途中でワルツになって、すごくきれいなメロディが出てきたり、テンポが変わったり、やりたい放題だね(笑)。
- 小春:主人公が現実と妄想の世界を行ったり来たりする映画なの。それに沿った音楽にしようと思ったら、6分半になっちゃった。でもこれって、物語を伝えるシャンソンやミュージカルではよく使われる方法なんだよ。
- もも:私もストーリー仕立ての歌を歌うのが好きです。
- 小春:自分たちの持っている引き出しを詰め込んだので、この曲を聴いてもらえれば、チャラン・ポ・ランタンの音楽がわかると思うな。
- EMTG: なるほど、チャラン・ポ・ランタンは欲張りってことね(笑)。
- 小春:やっぱり欲張りかなぁ(笑)。
- EMTG: ファッションに対するこだわりは?
- もも:衣装は全部、お母さん(本業はイラストレータ・デザイナー)の手作りです。子供の頃から、私たちの洋服はお母さんが作ってくれていて、今回、初めて帽子も作ってくれました。
- 小春:今までは私がヘッドドレスを作ってたんだけど、今回はお母さんの手作り帽。
- もも:私がシルクハットで、小春さんがマーチング帽。
- EMTG: お母さんはまるで“第3のメンバー”みたいだね。
- 小春:“第3のメンバー”っていうより、何かあったとき、お母さんがふとつぶやくことにすごく影響されてる。ももさんのカラオケ情報もそうだったし、もしかしたらワザと言って操ってるのかも(笑)。
- もも:そうかもね(笑)。
- EMTG: 確かに、お母さんが鍵を握っているのかも(笑)。次のインタビューはお母さんも呼ぼう!
- 小春:それ、面白いかも(笑)。
- EMTG: 最後に、ライブは?
- 小春:夏フェスと、9月のツアーは、7人全員が女性のバンドでやるよ。ようやく全国にバンドで行けるようになったね。今、ちょうどいい感じに仕上がってるので、ぜひ見に来てね。
- もも:たぶんバンド・スタイルの方が、チャラン・ポ・ランタンの音楽と面白さがよく伝わると思います。
- EMTG: 楽しみしてま~す! ありがとう。
音楽もファッションも、超ユニークな姉妹ユニット“チャラン・ポ・ランタン”。姉の小春(Accordion/昭和生まれ)が奏でるアコーディオンは、ジプシー系の本格派。くるりのレコーディングに呼ばれたり、 その実力は折り紙つきだ。ストリート・ミュージシャンの原型である“大道芸人”としてパフォーマンスを鍛えた小春のアコーディオンに誘われて歌い出した妹のもも(vo/平成生まれ)は、 今やオーディエンスを圧倒するボーカリストとして急成長中。EMTG MUSIC“Coming Up Artist 2015”に選出された期待の二人だ。
2nd“たらふく”シングル「貴方の国のメリーゴーランド」(4曲入り)でも、次から次へと展開するシアトリカルな音楽は健在で、時代も国籍もシャッフルしながら独自の美意識で突き進む。海外では“オルタナティブ・シャンソン”と呼ばれているのも納得の仕上がりだ。
未知のジャンルを爆走する二人に、インタビューしてみた。
【取材・文:平山雄一】
リリース情報
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緑黄色社会
発売日: 2018年03月14日
価格: ¥ 2,500(本体)+税
レーベル: HERE, PLAY POP
収録曲
01. Re
02. 始まりの歌
03. 大人ごっこ ※2月8日先行配信
04. キラキラ
05. Alice
06. 君が望む世界
07. 恋って
08. regret
09. 真夜中ドライブ
10. またね
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ビデオコメント
リリース情報
お知らせ
チャラン・ポ・ランタンと愉快なカンカンバルカン ツアー2015“チャラン穂 秋の大収穫祭”
2015/09/03(木)名古屋CLUB QUATTRO
2015/09/05(土)梅田Shangri-La
2015/09/06(日)梅田Shangri-La
2015/09/15(火)恵比寿LIQUIDROOM
2015/09/16(水)恵比寿LIQUIDROOM
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。