21年目、最初のシングル「Dream Girl」は、久々の王道バラード。
ゴスペラーズ | 2015.09.09
- EMTG:久々のスイートなバラードですね。
- 北山:その昔、僕らが初めてアトランタで「本場ではこうやるんだ!」と感動とともに知ったR&Bコーラスの作り方みたいなものがあるんですね。その引き出しを久々に引っ張り出しました。懐かしい感じもありつつ、ゴスペラーズとしてのひとつの大きな柱=「永遠(とわ)に」柱、を、更新できたんじゃないかなという気がしています。
- EMTG:9月には今年10回目となる「SOUL POWER」があります。ここ数年そこでガッツのある曲のお披露目が続いていましたが。
- 酒井:そうですね。ブラック・ミュージックにはガッツのある曲もあれば、一方で、「これ、いいね~。ここまでやるか、フツー?」と、憧れを持って受け取れるようなベタなウットリ路線というものもある。そういう直球のR&Bラブバラードも、「SOUL POWER」で映える曲という意味でアリだよね、と、提案したわけですよね。
- 安岡:こういう曲調だからこそ、ここまでスイートな日本語を乗せてもサマになるんですよね。アルバム『Soul Serenade』の頃必死で追求していたことを、久々にやれたなと。こういうシングルを今出せるということに、すごく意味も感じてます。きっとこの曲をテイスティングすることで、初めてこういうジャンルがあると知る10代の音楽ファンもいるはず。今後そういった世代とも音楽を分かち合えるようになれたらなと思いますね。
- EMTG:村上さんのファルセットと黒沢さんの地声。特にサビではその表情の違いをとくと味わえるので、競演という感じがあります。
- 黒沢:村上はたぶんファルセットでくるだろうなと思ったので、僕はチェスト・ボイスでいこうと思いました。僕が割り振られた2コーラス目には、「飽きるわけないさ到底 見せてよそのすべて」とか、僕自身も好きだなと思える力強い言葉があったので、そういうトーンが合うと思いましたしね。「俺が俺が」じゃなくて、曲に寄り添えるようになってきたというのは、成長だなと思います。そうそう、今回は作・編曲の平田(祥一郎)さんがボーカル・アレンジメントもやってくれたので、村上と僕との二声ハーモニーも多かったんですよ。普段あまりやらないけど、やってみると甘さも出てよかったですね。お互いの歌唱をトレースしなきゃいけないので、勉強にもなったし。
- EMTG:平田さんは「Love Vertigo」で酒井さんと共作してる方ですよね。
- 酒井:そうです。
- 村上:マーチン(鈴木雅之)さんに僕が提供した「放浪春秋」という曲でも共作させてもらってるし、ゴスペラーズでは「Dreamin’」の編曲も平田さんですね。スイートなバラードって、聴く側にとっては妄想の世界じゃないですか。だから、声に包まれる感じ、世界に浸れる感じというのが重要になってくる。要はたくさんハモるってこと。今回は僕らがあまりやらないベタな字ハモも、平田さんのアイディアでやってみたりもして、あらためて気づいたことは多かったですね。いわゆるゴスペラーズらしいというのかな。そういう意味で次の軸が見えたところもありました。
- EMTG:「らしい」、「っぽい」というところの定型ではありますね。もちろん、いい意味で。
- 村上:拡大再生産はやっぱ大事だなと(笑)。結果的に、アルバムまでいわゆるこの路線でいきましょうということになったんですよ。
- EMTG:オーッ、そうなんですか!
- 村上:メンバーもみんなそのテーマで曲を作り始めてます。さっき安岡が言った『Soul Serenade』の世界ですよね。だいたい「セレナーデ」という言葉自体、シラフで言ったら恥ずかしいわけじゃないですか(笑)。
- EMTG:愛する人の家の窓に向かって歌うわけですもんね(笑)。
- 村上:法にひっかかるみたいな世界(笑)。でも、音楽だけは許されるんですよ。その妄想の世界が。「Dream Girl」という言葉だってベタベタだけど、それがいい。ベタをネタっぽくやるんじゃなくて。
- 酒井:ストレートなベタの復権を目指します。
- 安岡:ベタをシラフでやるっていうのがポップ・ミュージックなわけで。
- 村上:ジャケも含めてね。
- EMTG:安岡さんのクラシックな髪型といい、黒沢さんのスタイリッシュな髪型といい、まさに。黒沢さんは「ちびまる子ちゃん」の・・・。
- 黒沢:花輪くんでしょ(笑)。
- EMTG:はい(笑)。
- 村上:花を持ったのも初めてじゃないかな。
- EMTG:真正面からベタをいくというのは、キャリアに裏打ちされたカッコよさだと思います。「星降る夜のシンフォニー」はよりシンプルなバラードという印象でした。作曲の本山清治さんは、『Soul Serenade』や『FIVE KEYS』でエンジニアとして参加されていたんですね。
- 村上:そうなんです。当時、本山さんは海外を拠点とされてたんですよ。日本だとまだエンジニアとミュージシャンが明確に分かれてるけど、本山さんはアメリカ基準の人。今は日本で活動されていて、今回たまたま僕らの選曲コンペに本山さんの曲が届けらました。
- 黒沢:10年以上たって、またつながれたのがうれしかったですね。
- EMTG:詩にはどういう思いを託しましたか?
- 安岡:『G20』ツアーで振り返るだけ振り返ったので、21年目最初のシングルではその先を見ようとまず思いました。でも、今の僕らには、上を見て、夢に向かって突き進む、というのは当てはまらない。昨日と同じ今日が続いていくことの先に価値がある、ということを書きたいなと思いました。「星空の5人~WE HAVE TO BE A STAR~」では貪欲に空を見上げ、「星屑の街」では一度目の山頂から見えた世界を歌った。星三部作と名づけるなら、今回は、当たり前にそこにある強さを歌っていると言えると思います。漠然と上を見上げている若者たちに、僕らの今の姿を伝えることで、音楽からもらったものを次世代に手渡していけたらなと。
- EMTG:メンバー全員による歌い継ぎなので、それぞれに印象的な部分があります。酒井さんのファルセットはとても新鮮でした。
- 酒井:ファルセットにかぎらないんですが、ここにきてめっちゃ練習してるんですよ。努力が楽しくて。40越えて、まだまだ伸びてます(笑)。昔レッドゾーンだったところをどんどんクリアできてる感覚があるので、歌い方もおのずと変わってきてますね。
- 村上:歌のテクニックにしろ、人間関係にしろ、今さらながらに小っちゃいことの大事さに気づくんですよ。気持ちのモードも持ってるザルの目も違うから、わからなくて落ちてるもの、わかってて落ちちゃってるものは本当にメンバーそれぞれ。でも、掬えるものはいくらでも掬いたいってみんな思ってます。ますます細かいことが大事になってきてますね。逆にいうと、20年でそう言える土台ができたということでもあるんだけど。
- EMTG:そうですね。
- 村上:「星降る夜のシンフォニー」のテーマでもあるように、何度でも紡ぎ直すということです。
- EMTG:歌の職人として音を見つめてきたからこそ、その細部も見えるんでしょうね。
- 村上:ま、でも、職人でありながらも、その紡ぎ方はあくまでもポップスとして太く伝わるものじゃなきゃならないわけですからね。
- EMTG:なるほど。
- 北山:僕自身のことをいえば、「星降る夜のシンフォニー」では、5人で歌い継ぐうえでの自分の役割とかいつまでたってもできないところと、しっかり向き合えましたね。家でいえば、中の人がフツーに暮らせる建てつけというか、見えない部分をどう作るかということを、「Dream Girl」でも「星降る夜のシンフォニー」でもしっかりできたんじゃないかな。どちらも作曲もアレンジも作家さんでしたけど、それをゴスペラーズに引き寄せるお手伝いはできたかなと。
- EMTG:エンディングのコーラスが素敵ですね。
- 北山:あそこは僕か。
- 村上:そう。あそこは完全に自分たちでスタジオで作りました。
- 黒沢:夜の10時くらいからね。
- 村上:ちょっと一発印象的なハモリを入れない? と言って(笑)。
- 黒沢:僕は「星降る夜のシンフォニー」は若ぶって歌いましたね(笑)。歌詞の世界観が晴れやかだから。「大人なりの深みを持った俺の歌を聴いてくれ」みたいな気持ちでいると、たいていひとりよがりで終わるんで、ヒネたことをせず、真っ直ぐ声を鳴らしました。
- EMTG:真っ直ぐな曲ですもんね。
- 黒沢:そう。そこがこの曲を選んだポイントでもあるしね。ま、この20年で自然と味は濃くなってる。できるだけ薄くしようと思っても出るものだと思います。とにかくメロディがきれいだから歌うのが楽しかった。安岡の歌詩もやっぱり落ち着くしね。
- EMTG:『G20』ツアーが終えても、次々と新たな動き出てきてますね。
- 村上:「SOUL POWER」まではとにかく頑張って駆け抜けます。その後はちょっと休んで、スイートなモードでアルバムを目指したいと思ってます。
ゴスペラーズ21年目の最初のシングルは久々の王道バラードだ。EMTG MUSIC編集部はさっそく今回のシングル「Dream Girl」についてお集まり頂いたゴスペラーズのメンバーに話しを聞いてみた。ロマンチックな王道バラード、このスウィート・ソウル・ミュージックに込められた思いとは、いったいどのようなものなのだろう。是非このインタビューを読みながら、じっくりと今回の作品を楽しんでみて欲しい。
【取材・文:藤井美保】
リリース情報
GOKOH feat. オカモトレイジ
発売日: 2019年03月06日
価格: ¥ 250(本体)+税
レーベル: a
収録曲
01.GOKOH feat. オカモトレイジ
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■ライブ情報
SOUL POWER TOKYO SUMMIT 2015
2015/09/12(土)東京国際フォーラム ホールA
2015/09/13(日)東京国際フォーラム ホールA
出演者:ゴスペラーズ、ゴスペラッツ、鈴木雅之、Skoop On Somebody、 Ms. OOJA(9/13のみ)、クリス・ハート(9/12のみ)、GILLE、and more…
SOUL POWER なにわ SUMMIT 2015
2015/09/22(火・祝)グランキューブ大阪
2015/09/23(水・祝)グランキューブ大阪
出演者:ゴスペラーズ、ゴスペラッツ、鈴木雅之、Skoop On Somebody、 Ms. OOJA(9/22のみ)、クリス・ハート(9/23のみ)、GILLE、and more…
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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