WANIMA、ロックシーンを激震させる新作と、彼らが歩んできた音楽人生について語る

WANIMA | 2015.11.09

EMTG:そもそも、WANIMAとピザオブデスはどうやって出会ったんですか?
藤原(Dr):ピザのスタッフの一人が自分たちのライブをこっそり何回か観に来てくれて、そこで話しかけてくれたんですよ。そこから「ライブに遊び行っていい?」っていう連絡が何回かあって、ちょうどデモCDのレコ発ツアーを回ってる時だったんですけど、ファイナルの時に「うちから出さない?」って声をかけてもらいました。
EMTG:それはいつ頃の話ですか?
藤原:2年前ぐらいです。
EMTG:そんなに最近!? ピザからの初リリース(『Can Not Behaved!!』)が去年の10月だから、けっこうトントン拍子でリリースが決まっていったんですね。当時はどんな活動をしてたんですか?
松本(Vo/Ba):俺らはバンドをやりたくても出来ない期間がすごく長かったんですよ。俺と光真(西田/Gt)は4歳から一緒で、俺は18で東京に出てきて、光真はそれまでやってた自衛隊を辞めて2年後に東京に出てきてくれたんだよね。
西田:はい。
松本:そこから何十人ものドラマーとスタジオに入って合わせたんですけど、俺らの4歳からのグルーヴになかなか合わなくて。俺らは地元から出てきて後戻りできないっていう気持ちがすごく強かったので、そこの温度差もあってなかなか上手くいかんかったんですけど、藤くん(藤原)が入ってからはやっと音楽活動が出来るようになりました。
EMTG:そこで藤くんがフィットした理由は?
松本:2コ年上で車の運転もしてくれますし、都合のいい先輩だと思ったのと……藤くんもこれまでに10コぐらいバンドを経験してて、もう地元に帰ろうかって考えてた時に、「WANIMAっていうバンドがいるよ」って紹介されたみたいで。しかも、奇跡的に同じ熊本やったっていう。
EMTG:じゃあ、そこからそれまでの遅れを取り戻すかのようにガツガツと。
松本:そうですねぇ!
EMTG:サウンド的にはやっぱりHi-STANDARDからの影響はあるんですか?
松本:光真はハイスタばっかり聴いてました。
EMTG:音からも伝わりますけど、3人が3人ともメロディックパンクどっぷりって感じではないですよね。
西田:俺はメロディックパンクとか青春パンクばかり聴いてました。
松本:俺はレゲエとかヒップホップですね。地元で流行ってて。
EMTG:地元ってことは、餓鬼レンジャーとか?
松本:餓鬼レンは流行ってましたねぇ! 青春パンクも好きでよく聴いてました。あとは、海外のよくわからんレゲエのオムニバスみたいなのを聴いてましたね。
EMTG:アーティスト名もよく分からないけど聴いてた、みたいな?
松本:そうですそうです! 俺と光真が育ったのは、熊本の天草ってところで情報が全然入ってこなくて。
藤原:自分は何でも聴きましたね。歌謡曲も好きですし、メタルも好きですし、でもやっぱりメロディックパンクも好きで。バンドをやりたいと思ったきっかけはHi-STANDARDでしたね。
EMTG:じゃあ、プレイヤーとして影響を受けた人は?
藤原:一番最初にドラムをやりたいと思ったきっかけはX JAPANのYOSHIKIさんです。1ミリも似てないですけど。あとは恒さん(Hi-STANDARD)も大好きですし、SNAIL RAMPの石丸さんも好きですし、いっぱいいますね。でも、メロディックパンクの速いビートを聴いて「かっこいい!」って思ったのは恒さんかもしれないです。
松本:うーん、俺は元々ベースじゃなくてボーカルだけだったので、誰かベースを入れたいぐらいなんですよ。なので、その時その時でみんなのことを格好良いと思ってます(笑)!
西田:俺は健さん(横山)に始まり、高校生の頃はモンパチ(MONGOL800)が好きで、儀間崇さんにすごい憧れてました。「あんなにシンプルなギターなのになんで曲が活きるんだろう?」って。それで、ピザオブデスに入ってから健さんのすごさをより深く知って、そこからはガッツリ健さんです。
EMTG:なるほど。こんなにオリジナリティ溢れる音楽が生まれてくるのがなんでなのかすごく不思議なんですよ。楽曲面で影響を受けてるのはどういう人たちなんですか?
松本:よく聞かれるんですけど、自分たちでも分からないんですよね。ジャンルに拘らずいろいろ聴いてます。
EMTG:じゃあ、「あの人たちがああいう作り方してるから自分たちも」っていうことも特になく。
松本:そうですねぇ。逆に「あの人のあの感じ」っていう曲も作りたいんですよ。それが上手く出来るようにならんと、この先ちょっとキツいかなぁって(笑)。
EMTG:あと、最近のバンドにしては珍しいのが――今日もみなさん着てますけど、ストリートブランドLEFLAH(レフラー)との繋がりで。ストリートファッションとバンドが結びつくケースは90年代から00年代にかけて当たり前のようにありましたよね。LEFLAHとはお客さんが2、3人しかいなかった頃からの付き合いなんだとか。
松本:そうです、そうです。光真が自衛隊を辞めて東京に出てくる前から俺はLEFLAHが好きで、その頃からLEFLAHにはよくしてもらってました。藤くんが入る前からスタッフの人たちがライブを観に来てくれてて、ライブの次の日に俺がLEFLAHに行ってダメ出ししてもらうっていうが何ヶ月も続いて、今でも指導してもらってます。LEFLAHもまだ5年ぐらいのブランドで、有名なアーティストとか俳優さんを使ってポンと宣伝することもできたと思うんですけど、俺とか光真みたいな駆け出しの野良犬を雑誌に出させてくれて。周りからも「なんであんな無名なバンドを出すんですか? 遠回りですよ?」みたいなことも言われてたと思うんですけど、それでも俺らをフックアップしてくれたんですよ。最近、お客さんもLEFLAHを着始めてるので、俺らが天狗になってダメになるとLEFLAHにも迷惑かけるので、頑張らないとなって思います。
EMTG:WANIMAがストリートカルチャーとの繋がりを強くすることによって、一時期ダサい音楽として扱われるようになってしまったメロディックパンクの見え方もまた変わってくると思うんですよね。
松本:90年代の短パン+Tシャツっていうスタイルも好きなんですけど、今の時代やけんできることがあるんじゃないかなって気がしてるんですよね。ライブハウスにもっとかわいいお姉ちゃんが来てもいいんじゃないかって。
EMTG:今回のアルバム『Are You Coming?』でWANIMAを知る人が爆発的に増えると思いますが、バンドとしては最初からこの作品ぐらいまでは見越して動いてたんですよね? これで第一章の区切りがつくのかなと。
松本:いや、実はまだけっこう先までの予定があるので、まだなのかなって気がしますね(笑)。
藤原:第一章はまだ続きますね(笑)。今回のアルバムは『Can Not Behaved!!』のツアー中に録り始めてたんですよ。だから、満を持して出す作品ではあるんですけど、実は結構前に出来上がってて。もちろん今回のレコ発ツアーも大事なんですけど、もう次のことを見据えて動き出してる状態です。
EMTG:じゃあ、今の3人はもうこの作品のレベルにはいないと。
松本:一旦ここに戻ってきて、曲の練習をしてる感じです(笑)。
EMTG:そんなに(笑)! ところで、このアルバム、完璧だと思うんですよ。
松本:わ、嬉しいです!
藤原:ありがとうございます!
EMTG:曲ってどういう感じで作るんですか?
藤原:スタジオに入って、誰かが鳴らした音に誰かが反応して、「今の良い!」ってやつを携帯で録音して、それを3人で聴いて。
EMTG:歌メロは?
松本:俺が適当に歌ってます。イメージを膨らませて「これだ!」って気持ちいい感じのやつをその場で。だから、案外早いですね。でも、歌詞は死ぬほど悩みます。
EMTG:最近、フェスが流行るようになってから、ジャンルを問わずいろんなアーティストがフェス映えするような曲を作ってると思うんですけど、そういった世間の流れも意識してます?
松本:まあ、フェスに出るようになって意識するようにはなりましたけど、この流れもすぐに変わるんだろうなって。「これは流行りだな」ってジャッジするポイントは3人とも似てると思いますね。
EMTG:じゃあ、いつの時代に聴いても変わらないものをやりたいと。
松本:そうですね。歌詞は臭くならないようにっていうのをテーマにしてます。上からじゃなくて、聴く人と近い温度の歌詞を書きたいですね。
EMTG:たしかにリアルな内容ですよね。
松本:そうですね。俺たちはカッコつけようとしてもつかないので。
EMTG:個人的に、今作で一番印象に残るのが「Japanese Pride」なんですよ。
松本:わあ! いいですねぇ! すごいうれしいです! これまでエロと真面目な歌はあったんですけど、こういうタイプの曲は歌ってきてなかったのでやりたかったんですよ。90年代の懐かしい感じを伝えたくて。
EMTG:これ、一回目のサビに入る前にワンクッション入れて高揚感を煽るじゃないですか。バンドとしては珍しいアイデアだと思うんですけど、ああいうのも自然と浮かんでくるんですか?
松本:そうですね。本当はDJのスクラッチを入れたかったんですけど、自分の口で言えるやないかということで、自分で言っちゃいました。
EMTG:小室哲哉の曲も高揚感を煽るために駆け上がるようなフレーズをサビ前に入れるんですけど、それと同じですね。
松本:あの人はすごいですよ! 天才ですよ! あの人がムショに入った時の…。
藤原:やめなさい!
一同:(笑)
EMTG:で、曲はもちろんのこと歌詞も最高で。
松本:リスペクトも込めてHi-STANDARDの名前をいれました! ウス!
EMTG:<今は立派な君のパパも/1度は聴いてたんだHi-STANDARD>っていうこのワンフレーズが革命的だなと。「ハイスタに影響を受けている」と何故かどのバンドも言わない時代が90年代後半から00年代前半にあり、そんな中でHAWAIIAN6が「俺たちはハイスタの影響を受けてます」と公言したことがあの頃はすごいことで。だけどWANIMAは“パパが聴いてた”とまで言ってしまった。これって今の時代を見事に言い表してますよね。何でもないことのように見えるけど、実はなかなかできないことだと思います。こういうフレーズを入れようと思ったのは?
松本:そういう時代なのかなと。最近、日本が海外にヤラれてる感がすごいあったので、日本人の良さがあるんだよっていうことを言いたかったのと、時代を作ったHi-STANDARDにリスペクトを込めました。あとは、健さんにニヤッとしてほしいなって(笑)。
EMTG:いつの時代にも通用するものではなくて、その時代に合った歌詞を書きたいと。
松本:そうですねぇ。架空な感じで歌ってる曲も好きなんですけど、WANIMAにそれは違うなって思ってて。さっきも言いましたけど、WANIMAはカッコつけようとしてもカッコつかないので、お客さんと近い距離で普通のことを歌っていきたいんですよね。
EMTG:曲は普遍的なものを書きたいと思ってるのに、歌詞になると真逆なんですね。“iPhone”って言葉も出てくるし。こういう言葉が何年も経つと古臭くなるかもしれないということに恐れはないんですか?
松本:ああ、そっか。“ポケベル”とかねぇ……懐かしさを感じるんじゃないですか?
EMTG:歌詞の面でも“いつの時代にも通用する歌を”とは思わない? それよりも、今が大事?
松本:もちろん、「一生残れ!」って思ってる曲もありますけど、わりと「今」ですね。
EMTG:2人は健太くん(松本)の歌詞についてどう思いますか?
西田:臭くないですよね。共感できます。
EMTG:臭くないっていうのはポイント?
西田:カッコつけてないし、照れくさくなるようなことも一切ない。あとはエロに対しても、何に対しても本気っていうのがいいですね。
藤原:本当にしっかり向き合わないとこういう歌詞は出てこないんじゃないかと思います。漢字の使い方ひとつとってもしっかり考えてるし。もう何も言うことはないです。
松本:そう言うわりに、俺が歌詞で悩んで深夜にLINEしても2人とも既読スルーですからね。それなのに取り分が3等分ってどういう…。
藤原:やめなさい! それは裏で聞くから!
EMTG:まあ、3等分するのはいいことですよ(笑)。あと、WANIMAが他のパンクバンドと違うなと思ったのはリズム感。それは健太くんがヒップホップやレゲエを聴いてきてる影響もありますよね。
松本:あるんだと思います!
EMTG:“あるんだと思います”レベル?
松本:俺、バカなんですよね! 感覚的にはいろんなアーティストのいろんな良いところが入ってると思うんですけど、それを「あの人のああいうところを取ってみよう」っていう風にできないんですよ。それができるぐらい賢くなったら、ダメになるかすごくぶっ飛ぶかのどっちかだと思うんですけど。そういう風に全部感覚でやっちゃうのが危ないなと最近思ってます。
EMTG:うーん、ここまで話を聞いて改めて思いましたけど、WANIMAはインタビュアー泣かせのシンプルさですね。
松本:言葉に出来ないんです。うーん、でもとにかく早く聴いて欲しいですね!
藤原:いろんな人に!
EMTG:個人的にはこの作品に反応できないなら、ロックとかパンク聴くの止めたらいいんじゃないかと思います。
藤原:あはは!
松本:タイミングもいいですよね。ラウド系が落ち着いてきた今のこの時代にっていう。これが2、3年前だったらそんなでもなかっただろうなって気もするんですよ。
EMTG:でも、これから大変だと思いますよ?
松本:そうですよ! ライブの会場が大きくなってきて。
藤原:その分、責任も出てきますし。
松本:会場をただ埋めればいいっていうのはその辺のバンドと同じなので、そこで何が出来るのか、何を残せるのか、何を伝えられるのかっていうところまで考えていかないといけないなと。最近はすごい大人になってきた気がします(笑)。
藤原:いろんな人と話をする上で、人間力って大事だなって思います。
松本:あとは人と人との繋がり。健さんもピザオブデスもずっとそれを大事にして続けてきてると思うので。
EMTG:これから世間の評価も一気に加速すると思います。
松本:もう待ったなしですよ!
EMTG:その勢いに勝てるのかどうか。
松本:そうですね。でも、ちゃんと音楽と向き合ってきたしバンドをやれない期間がすごく長かったから、あの時の気持ちを忘れなかったら、ひとつひとつの繋がりを忘れずに天狗にならなかったら、大丈夫だと思います。周りにはすごい人たちが揃ってるので、あとは俺ら次第ですね!
EMTG:ツアーファイナルはZepp DiverCityなんですね!
松本:先行抽選の応募がすごい来てますよ! 本当はみんなに自慢したいんですけど、まだまだ俺らは結果残せてないんで、結果を残してから豪遊しますよ。
藤原:結局、天狗になるんか!
一同:(笑)
EMTG:今、3人が思う「結果」ってなんですか?
松本:回りにいる身近な人たちを認めさせたいですね。まだまだなんで。
EMTG:周りの人なんてとっくに認めてくれてるんじゃないですか?
松本:いやいや!
藤原:「おまえら、まだまだやれんだろ」と。
松本:LEFLAHとかピザオブデスの人たちはいろんなものを観てきてるので。
藤原:そう簡単には頷いてはくれないですよ。それがありがたいです。
松本:これから人としてどう成長するかですね!
EMTG:やれそうですか?
松本:やれます! 俺たちが変われば周りも変わると思うんで!

【取材・文:阿刀 "DA" 大志】

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リリース情報

ROB THE FRONTIER

ROB THE FRONTIER

発売日: 2019年10月16日

価格: ¥ 1,227(本体)+税

レーベル: Sony Music Records

収録曲

01.ROB THE FRONTIER
02.Touch off (2019.6.6 at Okinawa MUSIC TOWN OTO-ICHIBA)
03.O choir (2019.6.6 at Okinawa MUSIC TOWN OTO-ICHIBA)
04.ConneQt (2019.6.6 at Okinawa MUSIC TOWN OTO-ICHIBA)
05.ROB THE FRONTIER (instrumental)

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ビデオコメント

リリース情報

Are You Coming ?

Are You Coming ?

2015年11月04日

PIZZA OF DEATH RECORDS

1.ここから
2.夏の面影
3.いつもの流れ
4.Japanese Pride
5.SLOW
6.TRACE
7.1CHANCE
8.リベンジ
9.いいから
10.Hey yo…
11.エル
12.THANX
13.また逢える日まで

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お知らせ

■ライブ情報

『Are You Coming ? Tour』
2015/11/21(土)渋谷 TSUTAYA O-WEST
2015/11/26(木)神戸 太陽と虎
2015/11/27(金)京都 MUSE
2015/11/29(日)岡山 YEBISU YA PRO
2015/12/02(水) 高崎 club FLEEZ
2015/12/03(木) 郡山 HIP SHOT
2015/12/05(土) 弘前 Mag-Net
2015/12/06(日) 秋田 Club SWINDLE
2015/12/08(火) 盛岡 Club Change WAVE
2015/12/09(水) 仙台 CLUB JUNK BOX
2015/12/10(木)新潟 LOTS
2015/12/12(土)富山 SOUL POWER
2015/12/13(日)福井 CHOP
2015/12/15(火)横浜 F.A.D YOKOHAMA
2016/01/15(金) 浜松 窓枠
2016/01/16(土) 静岡 UMBER
2016/01/29(金)長野 LIVE HOUSE J
2016/01/31(日) 金沢 EIGHTHALL
2016/02/04(木)山口・周南 RISING HALL
2016/02/05(金)広島 CLUB QUATTRO
2016/02/07(日)大阪 Namba Hatch
2016/020/9(火)福岡 DRUM Be-1
2016/02/11(木) 鹿児島 Caparvo Hall
2016/02/12(金) 宮崎 SR BOX
2016/02/14(日) 熊本 DRUM B.9 V1
2016/02/16(火) 長崎 DRUM Be-7
2016/02/17(水) 大分 DRUM Be-0
2016/02/19(金) 松山 WstudioRED
2016/02/21(日) 名古屋 DIAMOND HALL
2016/02/27(土) 東京 Zepp DiverCity

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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