ハロが迎えた変化の季節――新たなる決定打『ANATOMIES』インタビュー

Halo at 四畳半 | 2020.01.29

 表現で人々の期待に応えながら、成長してゆくということ。アーティストにとって、「変化」とは大切な目的そのものでもあるし、リスクを伴うものでもある。強烈な作家性を発揮しながら作品を生み出し、ライブを繰り広げてきたHalo at 四畳半は、2018年にメジャーデビューして、大きな環境の変化の中で1年あまりを駆け抜けてきた。そして1月29日、2作目となるフルアルバム『ANATOMIES』が届けられる。これこそが2020年代のHalo at 四畳半の視界だという、大胆な変化とディープな歌の世界観が刻み付けられた傑作である。この大きな変化の季節とは、どういうものだったのか。メンバー4人に訊いた。

EMTG:昨年秋の2マンツアーのファイナル(地元・千葉県佐倉市での公演)でメジャーデビュー1周年を迎えたときに、メジャーで活動することの意気込みや覚悟について、あらためて語っていたのが印象的でした。
渡井翔汰(Vo/Gt):はい。インディーズの頃には見えなかった世界が見えたというか。メジャーに来たんだなという実感についてわかりやすいところで言うと、今作ではタイアップ楽曲(「ナラク」「花飾りのうた」)をやらせていただけたことがあって。昔から、観た映画や読んだ本の主題歌を勝手に作る、ということをやってたんですよ。それが念願叶って、しっかり依頼を受けて制作するという機会が増えたりして。そういういろいろな出会いがあって、Halo at 四畳半の音楽が4人だけのものではなくなった、という実感がありました。もちろん責任感も増えたんですけど、それ以上に心強くなったというか。Halo at 四畳半にもっと自信を持てるようになった1年間でしたね。
Halo at 四畳半 "ナラク" (Official Music Video)
片山僚(Dr/Cho):状況がいろいろ変わったり、今回は制作方法も変化していくなかで、ドラムに対する考え方や音楽について、自分自身に問いかけることが多かったです。そのなかで模索しながら、自分の音楽の核みたいなものを削り出しつつ、『ANATOMIES』を制作することができました。それは自信にも繋がるし、今後音楽をやっていくうえでも大きな糧になっていくと思います。自分のなりたいドラマー像が、ちょっとずつ見えてきたりして。
白井將人(Ba):メジャーでは、やっぱり関わる人が増えたということが変化の実感としてあって。いろんな人と話をするなかで、自分の人生観も変わっていきました。それこそ、好きな音楽もどんどん変わっていくし、「今日のライブ良かったな」という感覚も変わっていくし、人間として実り多い1年だったのかな、というふうに思ってます。9月、10月の2ヵ月がレコーディング期間だったんですけど、もう疲れすぎて、ベースをすべて録り終えたときの開放感が、受験を終えたあとみたいな(笑)。すごく集中していたんだなって、終わってから気づきました。
齋木孝平(Gt/Cho):長かったし、濃く短いようにも感じられた1年間で。以前は「メジャーデビューして、ハロ変わったな」って思われるのが嫌だったんですけど、どう考えても『Swanflight』を出してから変わってるなって思って。今では「メジャーデビューして、ハロ変わったよ」っていい意味で言えるような、そういう1年だったと思います。歳も重ねていくし、関わる人も増えていくなかで、悩みや葛藤は昔からあったんですけど、改めてしっかり向き合うようになりましたね。
EMTG:そういう濃密な1年を経てからの『ANATOMIES』なんですが、渡井さんのディープで彩り豊かな歌の世界とガッチリ渡り合う、リッチな曲調の広がりとサウンドに驚かされました。音楽性の豊かさが飛躍的に向上していると思います。
渡井:音楽についても、また26、7歳のひとりの人間としても、思い悩むことが増えてきて。今作では特に、その葛藤が曲に滲み出ていると思います。書きたい思いがどんどん溢れてきたし、それと同時に、リスナーとしての幅が広がっていて、いろんな音楽のエッセンスに刺激を受けながら、曲を書こうとする意欲を持って制作に入ることができました。大変ではあったんですけど、自分が今いちばんかっこいいと思える音楽、そして自分が今リアルに感じている思いを、そのまま詰め込むことができたと思います。
EMTG:渡井さんの作曲が10曲ありますが、作詞も含めて短期間で作ることができたんですか。
渡井:制作期間自体、長くはなかったんですけど、今回は初めての試みとして、「ハロの曲選会議をしよう」という話になったんですよ。チームの中で、1ヵ月の間に僕と齋木がそれぞれ10曲書いてみる、という課題を出されたんです。ふたりとも10曲は書けなかったんですけど(笑)、それでも1ヵ月で書いた量としてはお互い過去最高の数の曲を挙げることができて。ギュッと濃密な制作ができましたね。
片山:そんなふうに、曲が挙がってくる過程にも変化があって刺激を受けたんですけど、それ以上に音楽性の幅が広がって、今までに無かったような曲調が増えてきたので、ドラマーとしても力が試されました。アレンジや録音に関して、今まで気にしなかったことを気にしなければならなかったりとか、まあ大変ではあったんですけど、実り多い制作でしたね。もちろんいいアルバムではあるんですけど、プラス、楽曲たちに勉強させてもらったというか。
白井:今までの自分のベーシストとしての引き出しでは、足りなくなる部分があったんです。だから勉強というか、今まで聴いてこなかったアーティストの作品を聴いたりとか。本当に、自分が試される制作でしたし、録音の時間以上に、前準備に時間を割かなければならない濃密な曲が多かったので、予定が何もない時間はなくなって、制作に向けて全部時間を使おう、という気持ちになりました。ベーシストとして一歩階段を登れたような気もするし、2、3ヵ月前のことなのにもっとできるような気持ちもありつつ。自分にとって、新しいきっかけになった1枚という手応えがありますね。
EMTG:白井さんにとって、これは新しいし大変だったぞ、という曲を挙げるとするなら、どれになりますか。
白井:たくさんあるんですけど、特に疲れるのは「レプリカ」ですね(笑)。スラップでずっと反復し続けるというのが、ちょっとでも集中力が切れると目立ってしまうんです。
EMTG:うん、ミニマルだからこその人力の難しさですよね。片山さんにも訊いてみましょうか、ドラマーとしてはどうですか。
片山:ドラマーとしては「Ghost Apple」ですかね。跳ね方やニュアンスが難しいです。昨日、白井とふたりでスタジオに入って新曲を練習したりしてたんですけど、もうシビア過ぎて「ダメだ、休憩しよう!」って(笑)。
EMTG:その2曲は、特に新しさがわかりやすいですよね。齋木さんは新作の手応え、どうですか。
齋木:曲の音楽性が幅広いし、深く潜れてると思って。わりと暗いゾーンとかもあるんですけど、なのにカラフルだなと思います。「Ghost Apple」とかは、ハロの曲の中でも単調なほうなんですけど、そういう曲ができるのは、いろんな音の使い方が上手くなったからだと思います。自分が作曲した「百鬼夜行」と「疾走」に関しては、このアルバムの中では速い曲調で、メンバーが大変そうだな、って思いました(笑)。
EMTG:ミニアルバム『from NOVEL LAND』でもそうでしたけど、齋木さんの曲がロックなアタック感を担っていますよね。
白井:制作の終盤に出来た曲が「イノセント・プレイ」と「疾走」の2曲だったんですけど、この2曲がないとアルバムが崩壊してたというか(笑)。サウンド面も入り組んでいて、内省的なアルバムになってたと思います。この2曲のおかげでアルバムの色が一気に変わって、開けましたね。
Halo at 四畳半 "イノセント・プレイ" (Official Music Video)
EMTG:渡井さん、メンバーを苦しめたと噂の「レプリカ」については、どうですか。
渡井:はい(笑)。世に出ている楽曲と似たレプリカしか作れない、という葛藤を歌った曲なんですけど、めちゃくちゃやってやろうと思って。僕としては、曲選会議を通ると思ってなかったんですよ。アコギのリフで始まったのにバラードみたいに静かになって、サビを歌い上げたと思ったら2番で急に激しいサウンドになったりするし。「めちゃくちゃだね」って言われて終わると思ってたんですけど、意外と好評で(笑)。
EMTG:これはすごい曲ですよね。あと、アレンジ面で言えば終盤の「ヘヴン」の夢見心地なサウンドなども素晴らしいです。
渡井:「ヘヴン」に関しては僕のこだわりが強くて、イントロの裏で鳴っているシンセの音も、デモの音をそのまま使ってもらっていて。僕の中ではひとつ発明した気分だったんですけど、ストリングスを逆再生してトレモロをかけたりして作りました。
白井:ふたりがほぼフル尺のデモを作ってきてくれたので、大変だったと思うんですけど、「レプリカ」のアレンジとか、「百鬼夜行」の転調とか、自分では思いつかないアレンジができたし、バラエティ豊かなアルバムになったと思います。
片山:ふたりのデモのおかげでイメージが掴みやすかったですし、新しい展開も提示しやすかったですね。
EMTG:なるほど。曲調やサウンドの彩り、そして解像度も一気に増した、素晴らしいアルバムだと思います。新作ツアーに向けての意気込みは、どうでしょうか。
渡井:めちゃくちゃシンプルに楽しみにしているツアーで、『ANATOMIES』を作った段階でHalo at 四畳半が新しいステージに行ったという感覚もあるんですけど、それをライブハウスで鳴らしたときにどう鳴ってくれるんだろう、という楽しみもあって。僕ら自身もだし、お客さんにもそういうところを楽しみに観にきてほしいな、という気持ちです。今回、すごく自由に作ったんですよね。今はこういうモードだからギターロックをやらない、ということではなくて。そういう思いを、ライブを通して伝えていきたいです。
齋木:カラフルだし、新しいHalo at 四畳半が全面に出たアルバムなので、セットリストが大変なことになるだろうなと思うんですけど、そのぶん、昔の曲と一緒にセットリストに入ったときに、昔の曲も輝かせてくれるだろうし、新曲も違う一面を見せてくれると思います。お客さんにも、今までと違った思いをライブで味わってもらえると思うとワクワクしますね。

【取材・文:小池宏和】



Halo at 四畳半 "蘇生" (Official Music Video)

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リリース情報

ANATOMIES

ANATOMIES

2020年01月29日

日本コロムビア

01.イノセント・プレイ
02.ナラク
03.クレイドル
04.Ghost Apple
05.百鬼夜行
06.レプリカ
07.月と獣
08.疾走
09.アンチ・グラヴィティーズ
10.花飾りのうた
11.ヘヴン
12.蘇生

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Halo at 四畳半 ワンマンツアー2020 “無垢なる祈りの宿し方"
2/22(土)北海道 札幌cube garden
2/29(土)香川 高松DIME
3/7(土)広島 SECOND CRUTCH
3/8(日)福岡 BEAT STATION
3/14(土)宮城 仙台MACANA
3/15(日)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
3/22(日)大阪 BIGCAT
3/29(日)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
4/25(土)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
I ROCKS 2020 stand by LACCO TOWER
4/11(土)群馬 群馬音楽センター

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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