新体制初音源にして超強力シングルを手に、光のさすほうへ――4人の今に迫る!

WOMCADOLE | 2020.08.04

 昨年、メジャーデビュー作となる2ndフルアルバム『黎明プルメリア』をリリースし、まさにこれからというタイミングで、WOMCADOLEは大きな転換点にぶち当たっていた。なぜ自分たちは音楽をやるのかという根本的な自問をするほど追い詰められていたバンドが、メンバーチェンジを経て、新たな体制でぶちかます新たな一歩が8月5日リリースのニューシングル『ヒカリナキセカイ』だ。当時の心情を赤裸々に叫ぶ表題曲、新ギタリスト・マツムラユウスケのプレイが炸裂している攻撃的ロックンロール「YOU KNOW?」、そしてブルージーでグルーヴィーなサウンドが超新鮮な野心作「doubt」。3曲それぞれ方向性は違うが、どれも今のWOMCADOLEの燃える情熱を証明している。メンバー全員に話を訊いた。

――メンバー脱退にはびっくりしました。
樋口侑希(Vo/Gt):『黎明プルメリア』を出してから、もともとのメンバー含め4人で何度か腹を割った話し合いをしてきたんです。今まではできてなかったんですけど、素直な気持ちを久々にぶつけたというか。
安田吉希(Dr/Cho):ちゃんと1対1でも喋ったし。
樋口:今後のこともしっかり話して、それで結局、WOMCADOLEとして、一緒にはやっていけないなっていう話になったんですけど……そこでしっかり腹を割って喋るっていうことを経て、ユウちゃん(マツムラ)が入って。本当にいい意味でめちゃくちゃ楽しいし、音楽の幅も広がってるし、大きな変化を感じてます。コロナでライブがない時期だったんで、しっかり物事を考えられたっていうか、ひとつひとつにしっかり魂を入れられたっていうか。
――マツムラさんは、どういうきっかけで入ることになったんですか?
安田:僕、大阪の専門学校に通ってて、そのときの同期なんです。授業でセッションみたいなのがあって、そのときに「ヤバいやつおるな」って思ったのが最初で。あんまり自分から声かけないタイプなんですけど、めっちゃいいやんって思って声かけて、そこからいろいろ喋って仲良くなって。でまあ、このタイミングで「ちょっと紹介したいんやけど」って言って。なんか波長合うし、そもそもギターがうまいのはもちろんあるんですけど、ただ速く弾けるからどうとかじゃなくて、ギターの音が歌ってるというか。そこがすごくいいなと思ってたんですよね。
――マツムラさんは誘われてどう思いました?
マツムラユウスケ(Gt/Cho):僕も安田とまったく同じ気持ちだったんですよ。「ドラマーでヤバいやつおんな」っていう。だから一緒にバンドやるなら絶対ドラマーは安田がいいなってそのときからずっと思ってたんです。ウォンカに加入するとは思ってなくて最初びっくりしたんですけど、僕がやりたいこともできるし、全員でスタジオ入ったときに樋口もやりたいと言ってくれたんで。
安田:すごかったですよ、ふたりが最初に一緒に飲んだ夜。号泣しながら肩組んでたもんな。
樋口:なんかすごく泣いたんですよ、俺。助けを呼んでたのかしらんけど(笑)。何度か飲んだりしたことはあっても、あんまり心からの会話をやってこんかったから、しっかり喋ったのはつい最近なんですけど。早かったですよ、涙まで行くのが。
黒野滉大(Ba):人間性もいいんですよ。ユウスケって、なんかイカれてるけど人間的なマナーも心得てるんで。こいつ(樋口)はイカれてるけど人間の心得もない。
樋口:おまえふざけんな(笑)。こいつほんまわびさびないんで。
黒野:わびさび関係ないやろ(笑)。初対面のときから全然気を遣わずに喋れたんで、一緒にやっていくうえですごく楽しそうだなと思いました。音の面でも今までWOMCADOLEがやってこなかったものを持ってきてくれる感じがありますね。
――その新体制の第1弾シングル、どういう方向性で臨んでいったんですか?

樋口:方向性に関しては、特にこれといったイメージを持って作らないんですけど、今現在の樋口侑希を書こうって素直に思って書いたのが「ヒカリナキセカイ」で。これ、たまたまこのタイミングに出るんですけど、コロナの歌ではないんですよ。今年の1月とか2月に作った曲で、その頃はバンド内のモヤモヤだったり、何しても歯がゆかったりしたときに、なんか黒い布っちゅうか闇っちゅうか、影みたいなものに包まれてる気がしていて。それでもやっぱり光を信じようぜって思ったのがきっかけですね。
――結果的に、めちゃくちゃ今にハマる曲になりましたけどね。
樋口:そうですね。俺ももちろん世界がこんなにこんがらがるなんて思ってもみなかったんですけど、今だからこそ「ヒカリナキセカイ」を出すってことにはめちゃくちゃ意味があると思っていて。人がひとりで抱えてるものであろうが、世の中が抱えてる大きなものであろうが、どんな状況であろうが絶対届くなって思える歌を書けたので。
――そうですね。どうやって作っていったんですか?
樋口:これ、ウォンカ史上でも珍しい作り方をしてるんです。もともと安田がリフとAメロのメロディを作っていて、俺に聞かせてくれたんですよ。それをもとに書き出して。
安田:リフとかちょっとしたヒントみたいなものを持って行って、それをきっかけにして作ってくれることはあったんですけど、今回はワンコーラス分ぐらい自分でオケを作って。それがめちゃくちゃ採用されてるという。だから樋口が作ったものに対して他人が関与している割合がいちばん多い曲ですね。僕も作ってるときは「どうしたらいいんやろ、なんかモヤモヤすんな」って思っていて。だからオケを渡すときにも「こういうイメージで作ったねん」って言ったら、樋口も同じことを思ってたって。
――そういう作り方になったのはどうしてだと思います?
安田:たまたま?
樋口:まあ、たまたまって言っちゃえばそうなんすけど、必然じゃないかな――そう思ってたのは、やっぱり俺だけじゃなかったんだなって。バンドに対して、なんか何やっても満足にいかんし、何やってもあんまり気持ち良くない時期っていうのがあったのは俺だけじゃなくて、ふたりも同じ感じだったと思うから。そのなかで必然的に生まれたのが「ヒカリナキセカイ」やと思う。
安田:俺もそのモヤモヤしてるのをなんとか解消したい、アウトプットしたいって思いながら作ってましたからね。たしかにそう言われてみれば必然やな。
樋口:僕も「ヒカリナキセカイ」に救われたというか。初めてぐらいですよ……WOMCADOLEじゃないほかの人がこれを歌ったとしても、本当に救われる気がするのは。
――その、この曲を作った頃のモヤモヤって、具体的に言うとどういうことだったんですか?
樋口:なんて言うんやろ……やっぱ俺は遊びが好きなんです。どんなときも遊びっていう感覚は消したくなくて。ちょっとでも仕事って思ってほしくないってメンバーにも思ってるけど、そういうのがバンドの中で消えた瞬間があったんですよ。なんかサバサバしてたし、淡々としてたし。それが溜まりに溜まって、黒色の煙みたいなのが広がってた感じ。
黒野:なんか必死にもがいても全然進んでない感じやったな。気持ちを切り替えようとしても切り替えられなかった。でも折れるわけにはいかへんし、みたいな。バンド始めてこんな弱音吐いたん初めてかもってくらいの、結構心の中はモヤモヤしてましたね、あの時期は。
安田:僕も弱音モードというか、「なんで俺は音楽やってんねやろ」みたいな。楽しいからバンドやってるはずやのに楽しくない、練習もなんか手応えがない、で、なんかギスギスしてる……俺は何のためにやってるんやろって、一定ラインを越えちゃったときがあって。そのときに樋口に「自分、なんで音楽やってるん?」って尋ねてしまうぐらい、ヤバかったときがありましたね。何を信じたらいいかわからなくなって。
――それが、この曲を吐き出したことで――。
樋口:うん、それで救われましたよ、本当に。高松かどっかの打ち上げで、な?
安田:たしかスタジオの休憩中にワンコーラス樋口に聴かせたんです。そしたら樋口が急に元気になって、「練習しよう!」みたいな(笑)。「急にどうした?」って聞いたら「わからん、二日酔いだからちゃう?」とか言って。それでそのあとの高松のライブ終わりで、またべろんべろんのときに「おまえ、ほんまありがとうな」みたいな。「バンドやってるけどずっとひとりやったような感覚がしててん。けどおまえがこの曲を作ってきてくれて、思ってること言ってくれて、俺はひとりじゃなかったんやって思って救われたわ」って。
――それはもう、本音ですよね。
樋口:はい、そうっすね。
――樋口くんは今までも吐き出す系の曲は書いているけど、それは基本的に自分と向き合って書いたものじゃないですか。そうじゃなくて、安田くんがオケを作ってきた、メンバーがそれを表現してくれたというのが大きかったんでしょうね。
樋口:いや、ほんまにそうっす。おかげで今はもう「ヒカリ“アル”セカイ」ですね、完璧に(笑)。ライブができてないから、そこに関してはめちゃくちゃ溜まってるもんあるけど、現状の心構えとか気持ち的な意味で言うと、素直にこの4人になってうれしかった。軽くなったんですよ、いい意味で。それを乗り越えられたのは、確実にユウちゃんという存在のおかげです。
――彼の存在が光だったんだ。
樋口:光でしたね。いきなりパーンって光った。
――マツムラくんはどうでしたか、レコーディングは。
マツムラ:楽しかったですね。外から見てたWOMCADOLEでは気づかない部分とかもいっぱいあったし。メンバーのそういうところも見えて面白かった。
――「ヒカリナキセカイ」の歌詞を見たときはどう思いました?
マツムラ:そうだな……でも樋口はやっぱりいいなって。
全員:ははははは!
マツムラ:浅いな、今の(笑)。でもほんまにそうなんですよね。
――そして、そのマツムラユウスケのギターが炸裂しているのが「YOU KNOW?」ですが。
樋口:これ「ヒカリナキセカイ」ができる前に出来てた曲で。アベフトシみたいやもんな、このギター(笑)。
――わかる。これはもう「やったれ」って感じだったんですか?
マツムラ:そうですね。やっても喜んでくれるばかりなんで「やるだけやったれ」って感じで。
安田:やればやるほど喜ぶからな。
――この曲聴いたときに、本当に生まれ変わったんだなあって思いました。
樋口:すごいでしょ。
――マツムラくんが入って、バンドとして息を吹き返したという感じが。
樋口:めちゃくちゃしますよね。俺の部屋って音出せるんですよ、スタジオみたいになってて。そこでよくセッションするんですけど、こないだ気づいたら朝の4時ぐらいまでやってて。隣が母屋で、あとからおじいちゃんにバチ怒られたんですけど(笑)。でもそれぐらい止まらんの、やりだすと。
――ここまでバンド続けてきて、今そういう感じになれるって最高じゃないですか。
樋口:もう中学生みたい。
――なるほどね。この歌詞はどういう気持ちで書いたんですか?
樋口:これは、俺の隠れたヤンキー魂がね、卍(まんじ)の部分が出てきてしまって(笑)。卍成分を持った、どこかに潜んでる樋口侑希のいち部分ですね。
――たしかに「ヒカリナキセカイ」の自分とは違いますよね。これって逆ギレみたいなところもあるのかな。
樋口:うん、そういうことでしょうね。俺、喧嘩あんませんし、言いたいけど言えねえっていうやつがおったんですよ、俺の中に。それを吐き出したのが「YOU KNOW?」やと思いますね。ドラム缶みたいな音してません? ドラム。
安田:柄の悪さを意識しましたんで。勢い100、アクセルベタ踏みみたいなイメージでやってます。フレーズ的にもノリ的にも。
――荒っぽい曲はウォンカにもたくさんありますけど、ここまでの剥き出し感はあんまりなかったような気もする。
樋口:そうですね。ガレージロックみたいな曲は結構あるんですけど、ここまで、なんていうか、ナイフ持ってますよみたいな感じの曲?
安田:ピストルじゃない、鉄砲じゃない。
樋口:まあ<ピストルを握れ>って言ってもうてるけど(笑)。これは心のピストルやから。しかもこれ、レコーディングは一発でギターを抱えながら歌ったんです。そういう勢いも表現したくて。テンポ気にせんでええやん、俺らの鼓動でいいやんっていう感じで、ラフにやんちゃに演奏できた。
――本当にこれはWOMCADOLEの始まりだなと思いましたね。そして3曲目の「doubt」はがらっと趣向を変えた曲で。
樋口:これはずっとやりたかったことなんですよ。僕、すごい好きなんですよね、こういうのが。
――今までやらなかったのはどうしてなんですか?
樋口:やれなかったというか、前の状況ではやりたくないっていうのもあったかもしれない。けど今は素直に「やったろ」って思えた。うちの近所にセッションバーがあるんです。そういうところでおっちゃんとかがセッションしてるのを観て、めっちゃかっこいいやんって思って作ったんですけど、最初たどたどしかったな、アレンジ考えてるときは。でも煮詰めれば煮詰めるほどいいもんが出てきたから。もちろんユウちゃんのおかげやったりするし、今の俺らだからこそできたんだと思う。
安田:でもめちゃくちゃ難しかったですね。プリ・プリプロというか仮・仮録りくらいの段階では真面目に叩き過ぎていて。それで樋口が「ちょっとウイスキー飲んだらええんちゃう」って、紙コップ半分ぐらいのウイスキーをばーっと飲んでベロベロになりながら録ったりしたんですけど。そういう肩の力の抜き具合みたいな。
マツムラ:僕は「doubt」がいちばん好きなんですよ。自分でいちばん得意だと思ってるタイプの曲で、悩むところは少なかったですね。
黒野:俺はこういう曲全然聴いてこなかったんで、フレーズ作るのはめちゃくちゃ苦戦しましたね。いつもプリプロで使ってるスタジオの店長さんに効果的なゴーストノートの入れ方とかいろいろ教えてもらって。いちばん苦労したかな、3曲の中で。
樋口:黒野めっちゃ頑張りましたよ、本当に。ベースめちゃくちゃ良くないですか?
――うん。いいグルーヴですよね。
黒野:幅がめっちゃ広がりましたね、この曲やって。引き出し増えた気がする。今も新曲作ってるんですけど、「doubt」でやったことが反映できてたりしますし。
――だから本気の遊びっていう感じですよね。
樋口:そう、本気の遊びですね。マジでやれてよかった、「doubt」。ダウトやったことあります?
――何回かは。
樋口:この曲、切り取ったのは好きな子とダウトやってたときの場面なんですけど――。
安田:そんなことしてたの?
樋口:でも本当はトランプゲームじゃないんよ、これ。俺は君に騙されてるような気がするっていう歌なんですよ。トランプでもダウトやってるけど、本当のダウトの勝負は俺らの表情なんですよ。ちょっとクサいですか、これ? 大丈夫?(笑)。
――大丈夫、続けて。
樋口:やっぱね、ほっぺの赤とか、表情の色ってすぐわかるじゃないですか。気持ちの表れというか。そういうのを見るのがずっと個人的に好きなので。人間自身のその表情の騙し合いというか、それが楽しくて書きました。結局最後に<俺の負けなんだ/「See You Again」>って言いますけど、本当に敗北した感じがあって。なんか見透かされてたんですよ。気持ちが丸見えになって、俺負けたなと思って。
――え、実話?
樋口:実話です。本当の実話です。はい、すみません。
安田:ははははは。なんで謝るん?
――じゃあアルバムの「ミッドナイトブルー」みたいに、ちょっと恥ずかしい感じもあるんだ。
樋口:恥ずかしいですけど、いいですよね。初い(ういい)。やっぱりリアルなもので書きたいから。
――わかりました。3曲それぞれに新しいWOMCADOLEがいて。
樋口:うん。この3曲がこのタイミングで出来たことが本当に大きい。可能性を感じてもらえたら、次も楽しみにしていただけると思うんで。俺らもわくわくしてます。
安田:本当に遊びみたいな感じで作れてるし、言いたいこともバンバン投げ合えてるんで。好きなことを好きな分やるだけやしっていう空気感になってるので、間違いなくいいものが出来ていると思います。そう思いますよね、樋口くん?
樋口:はい、そうですね。

【取材・文:小川智宏】

tag一覧 シングル 男性ボーカル WOMCADOLE

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リリース情報

ヒカリナキセカイ

ヒカリナキセカイ

2020年08月05日

UNIVERSAL MUSIC

01.ヒカリナキセカイ
02.YOU KNOW?
03.doubt

<初回限定盤DVD収録内容>
「一煮立チ“密着無観客演奏会”」
・新曲3曲のスタジオライブ映像
・制作風景やメンバーの深層まで迫るインタビューを含むドキュメンタリー映像

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