<バンドねごと>を多分に感じさせてた初のワンマン
ねごと | 2010.12.15
「Hello! “Z”」release~お口ポカーンツアーファイナル“あなたの夢をひとりじめ”~
2010/12/4@代官山UNIT
ねごとのライブを初めて観た方の多くは、彼女たちの音楽性が可愛いらしくて、ポップで、不思議なだけじゃないことに驚くのではないだろうか?かくいう僕もそのひとり。最初に観た時は、その年齢やルックス、あまりアーティスト然としていないたたずまいの割には、かなりディープだったり、ロック的だったり、ある程度の技巧さに驚かされた。そう、彼女たちのステージは、作品で見せた歌世界を大事にしつつも、良い意味でのロック性をキチンとそこに加味している。けっして「けいおん!」の類いではないのだ(笑)。そして、それを更に確信させてくれたのが、この『「Hello! “Z”」release~お口ポカーンツアー』のファイナル。彼女たち初のワンマンライブであった。
残念ながらボーカル&キーボードの蒼山の体調不良もあり、完璧とまでは至らなかったが、逆にそれをキチンと他のメンバーがカバーし、フォローする、<バンドねごと>を多分に感じさせてくれる貴重なライブでもあったこの日。彼女たちに夢見心地にさせてもらおうというオーディエンスで会場はいっぱいであった。
まずはSEに乗り、一列に並んで4人が登場。センターにて横に手を繋ぎ、まずは会場に一礼し、各自のフォーメーションにつく。
ボーカル&キーボードの蒼山によるピアノの音色と共に1曲目の「インストゥルメンタル」が始まる。その蒼山のピアノに、他の3人のバンド・サウンドが加わり、スケール感と情景感たっぷりのねごとワールドが広がっていく。曲が終わると、蒼山が「こんばんわ、ねごとです」と一言。続いて、ブログレ感と疾走感が合わさった「透き通る衝動」にイン。サビのストレートさには場内も呼応。フロアの前方の密度もグッと上がる。ベースの藤咲もその小さい身体ごと振り回すように、得意のアクションを交えて、ドライヴィング感たっぷりにベースを弾く。そして、「彗星シロップ」ではドラムの澤村が裏打ちのビートを叩き出し、会場に躍動感と曲に合わせての手拍子が生まれる。途中「いかないで」と歌われるフレーズも切なく、沙田の白いジャズマスターからのギターソロも炸裂する。
間髪置かずライヴは続く。続いては「ビーサイド」だ。澤村がダイナミックなビートを叩き出し、沙田のコーラス/ハーモニーも歌に加わり、楽曲に景色感を増大させる。途中からは怒涛のノイジ―なギターカッティングと、澤村のフロアタムによる重いグル―ヴが会場にカオスを巻き起こす。この辺りは彼女たちの面目躍如。ポップでキャッチーなロック・バンドだけではないと前述させてもらった由縁だ。
ここでMC。「みなさんこんにちは。今日はよろしくお願いします」と蒼山。その声は、かなり枯れ気味だ。せっかくの檜舞台なのに痛々しい。そしてメンバーが自己紹介をするも、ベースの藤咲は既に感無量でちょっぴり泣き出す。続いての沙田もしゃべろうとするが、嬉しすぎて泣き出しそう。となるとやはり、こんな時は天然キャラの澤村の出番だ。「好きな言葉は自由行動」と言うだけあり、のっけから“KYなど無関係”とばかりに独壇場に会場を惹き込む(笑)。蒼山の番では、まずはお客さんに感謝の意、そして高校の頃に応募した最初のオーディション時から今までをざっと振り返る。
ライヴに戻る。続いてはダンサブルなビートとポップなサウンドに乗せられ放たれた「ランデブー」。柔らかくドリーミーで、ちょっとハイトーン気味の蒼山のボーカルに沙田のコーラスが加わり、蒼山の歌をフォロー、加えて楽曲にふくよかさを生んだ「ワンダーワールド」。そして、本邦初公開の新曲が披露される。声のフォローをするかのように、歌に込めた思いをジェスチャー交じりで歌う蒼山。タイトなビートに不思議な歌詞。それでいて中央部からグイグイと会場を惹き込むように、ロックバンド的様相を見せる楽曲だ。「この曲を機に今後は耳触りのよい、みんなで歌える曲もいいな」とは同曲を終えた直後の沙田の弁。期待してるゼ!
ここでMC。澤村がメンバー一人ひとりに感想をムチャぶりする(笑)。そして、以前からのワンマンの夢だったという、会場全体にて「カエルの歌」の輪唱が行われる大成功を見せた会場の美しい輪唱にはメンバーも感激してくれたようだ。
その雰囲気をガラリと変えるように、彼女たちのアナザーサイドがここからは展開される。まずは「NO」でディープな世界へと惹き込めば、続いての「フラワー」では、サイケで怪しい雰囲気を場内に作り出す。そして、「カラン」では、会場の雰囲気も急変。前のめりなドラミングにダウンピッキングのベースがグイグイと絡み、サビではミラーボールも回り出し、ラストに向け増していく上昇感が会場をここではないどこかへと連れ出す。
メンバーがはけ、ステージ後方のスクリーンに、「2011年春に1stシングルがリリースされること」「対決ライヴが3月より行われること」がアナウンスされ、その一つひとつが挙がる度に会場も驚喜する。
再びお馴染みのパジャマ姿でステージに登場した彼女たち。まずは蒼山より、この日に声が出なかったことへのお詫びが入る。そして、藤咲のベースから始まった「ループ」では、会場を幻想の彼方へと誘い、サビでは澤村のダンサブルで躍動的なビートが会場に一体感を生む。「いい夢をみなさんが見れるように、今日帰ったらでんぐりがえしをします」とは蒼山。いやいや、君はそれより今はまずその喉を治そうよ(笑)。そして、ギターから始まり、ダイナミックなドラムが絡みラストの「夕日」が始まる。ステージも楽曲に合わせてオレンジ色に染まり、沙田のギターソロも雄大に会場に広がっていく。徐々に至福感に包まれていく会場。みんなの顔が夢見心地にウットリと包まれる。ありがとう、ねごと! ホント、今日はいい夢が見れそうだ。
【取材 ・ 文 : 池田スカオ和宏】
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リリース情報
セットリスト
- インストゥルメンタル
- 透き通る衝動
- 彗星シロップ
- ビーサイド
- ランデブー
- ワンダーワールド
- 新曲
- NO
- フラワー
- カロン
- ループ
- 夕日