ねごと、生身のバンドサウンドで成長を見せた最新「お口ポカーン」シリーズ
ねごと | 2014.05.20
3月に発売されたミニアルバム『“Z”OOM』のインタビューで、メンバーの沙田瑞紀(G・Cho)は、ねごとについてこう語った。
「ねごとのバンドっぽさって、まとまりがあるんだけど、いろんな楽器の色が飛び交う感じ。みんなでガーッて音を鳴らしている部分が、普通はバンドっぽさなのかもしれないけど、そういう中で1人1人が見える」
ねごとが、このミニアルバムのリリース記念ライヴを開催。このライヴは全部で3日間。『ねごとpresents「お口ポカーン!!“Z”OOM in ~~」』というタイトルでシリーズ化され、それぞれが“X day”“Y day”“Z day”と銘打たれている。5月1日と2日、Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて、その“X day”“Y day”が行われた。
5月2日、金曜日。『ねごとpresents「お口ポカーン!!“Z”OOM in Y day」』。この日のライヴは、前述した瑞紀の言葉を体現したライヴだった。4人全員が、楽曲、演奏スキル、パフォーマンス、MC、アイディア、キャラクター……と、自分たちのスペックをフルに使い “今のねごと”を伝えようとしていた。その迫力は、ねごとのサウンドが3Dになったような。そう感じるくらい、はっきりとした輪郭があった。
客入れのSEは、ファンタジー映画を彷彿させるインスト。元々は映画館だった会場に合わせた演出か。いつもよりも強く予感を感じたのは、この演出がねごとのイメージとばっちりはまっていたからだろう。ライヴ前から、彼女たちと一緒にトリップする気満々の観客は、4人がステージに姿を表すと、歓声を上げながら立ち上がった。
1曲目のイントロ。リズムに合わせ、白光のライトが明滅する。サウンドとライトが、闇と光を交互に刻んでいく。光に合わせ、観客とメンバーがクラップする。インパクトのあるオープニングを飾ったのは「シンクロマニカ」だった。
最新ミニアルバム収録のロックチューン「Dreamin’」を披露した後、この日、最初のMC。蒼山幸子(Vo・Key)がマイクをとった。
「こんばんは、ねごとです。初の2daysワンマンの2日目です」と挨拶した後、最新ミニアルバムのタイトルにひっかけ、最後はこんな言葉で観客を煽った。
「今日はここにいるみんなに“ズームイン(ZOOM IN)”していこうと思います」
ステージの中央にキーボード。そのキーボードを弾きながら歌っていた幸子が、ハンドマイクでステージ前方に歩み出てくる。「ワンダーワールド」でのファルセット。凛とした強さが会場に響く。続いてファンキーなリズムをバックに早口言葉のようなセリフが飛び出す「M.Y.D.」へ。ねごと特有の遊び心が炸裂するミディアム・チューンだ。途中のセリフに、幸子がアドリブを加え「渋谷! Mt.RAINIER HALLー!」と叫ぶと、観客はすかさず歓声でレスポンスした。
澤村小夜子(Dr・Cho)によるメンバー紹介。毎回、独特の視点から繰り出される言葉の数々に、会場が笑いに包まれるこのコーナーは、ねごとのライヴのちょっとした名物。この日も、名物と呼ぶにふさわしい内容で展開。最後に紹介されたのは幸子。1人カラオケに行ったら、他の部屋から「ループ」が聴こえてきた、嬉しい、抱きしめたいと思ったというエピソードを語った。そして、自分たちは愛情表現があまり得意ではない、みんなに気持ちを伝えるのも下手くそだと前置きした後、こう締めくくった。
「でも恥ずかしがらないで、みんなと一緒に盛り上がっていければと思ってます。次の曲、踊ってください」
「真夜中のアンセム」「メルシールー」と、憂いと情熱が共存したアップチューンで、空間をフライトさせていく。独特の疾走感が、浮遊感につながるこれらの曲は、ライヴで抜群のトリップ感を発揮するナンバーだ。これまでは、前衛的なライティングや演出が、トリップの後押しをしていたが、この日の会場では、それらの演出はとてもシンプルだった。しかしねごとは、この“いつもの後押し”がなくても、自分たちのサウンドと身体だけで、見事に観客をトリップさせてみせた。目をつぶり、揺ら揺らゆれている観客の姿が、その証拠だろう。
ねごとは、例え追い風がなくても、自分たちで風が起こせることを、ちゃんと証明して見せたのだ。
この日の「メルシールー」は、本当にゾクゾクして、最後にはゾっとした。それぐらい彼女たちの熱がこもっていて、鬼気迫るものがあった。
ライヴは後半へ。ファンからリクエストを募り、その結果からセットリストを決めたというコーナーでは、カップリングの「ながいまばたき」や「フレンズ」を聴かせた。「久々なんで思い出すのが大変だった」という小夜子の言葉に、他のメンバーも頷く。さらに“ねごとにカバーしてほしい曲”のリクエストの中から「チェリー」(スピッツのカバー)を。幸子の「大好きなのでリスペクトの気持ちをこめてやらせていただきました」という言葉に、客席から拍手が起こった。
ラストスパート。「カロン」。サビ前に、瑞紀が吼えるようなアクションを見せる。サビでは、祐がリズムに合わせ、観客と一緒にジャンプを繰り返す。首を振りながらリズムを刻む小夜子。そのまっすぐな髪の毛が、宙を切るように激しく右に左に揺れる。幸子の左手が、鍵盤を踏み台にし、舞い上がるように弧を描く。何度も何度も鮮やかに。「迷宮ラブレター」「ループ」と、新旧の楽曲を織り交ぜながら、会場のテンションを一気に上昇させていくその様に、ねごとの真価を見たように思う。
アンコールも含め、全19曲。アンコールをしないことを公言してきたねごとが、少し前からアンコールをやるようになったのは、彼女たちの意識が変わった、最も顕著な例だと思うが、その意識の変化が、しっかりとバンド・サウンドに表れてきたのが、この日のライヴだった。どの曲もサウンド・スケールが明らかに違っていた。新曲は作品を越えていたし、旧曲はこれまでのライヴを越えていた。 ねごとがねごとを越えた、そんな1日だった。
『ねごとpresents「お口ポカーン!!“Z”OOM in ~~」』シリーズのラストとなる『ねごとpresents「お口ポカーン!!“Z”OOM in Z day」』は、7月20日、六本木 EX THEATER ROPPONGIで行われる。
「7月20日までもっともっとパワーアップして新しい曲も作って、みんなの前に戻ってこようと思うので、これからも一緒にいい夢を見ましょう」(5月2日、幸子のMCより)
【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:H.and.A/HAJIME KAMIIISAKA】
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リリース情報
セットリスト
「お口ポカーン!! “Z”OOM in Yday」
2014.5.2@ Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- シンクロマニカ
- Re:myend!
- Dreamin’
- 彗星シロップ
- ワンダーワールド
- M.Y.D.
- 風惹かれ
- 真夜中のアンセム
- メルシールー
- week...end
- ふわりのこと
- ながいまばたき
- フレンズ
- チェリー
- カロン
- 迷宮ラブレター
- ループ
- 勲章
- sharp ♯
お知らせ
ねごと presents「お口ポカーン!!“Z”OOM in Z day」
2014/07/20(日)東京 六本木 EX THEATER ROPPONGI
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。