注目のガールズバンド、ねごとの新しい扉が開いた全国ツアー。ファイナル公演をレポート。
ねごと | 2011.10.20
ねごと。メンバー全員、20歳~21歳。4人組のガールズバンドである。昨年の初音源リリース以降、作品を発表する度、そしてライヴを行う度、彼女達は、いつでも注目される存在であった。ボーカル&キーボード、ギター、ベース、ドラムというバンド構成。イノセントさのどこかに毒毛を感じる、童話を彷彿させるような歌詞の世界。力強いメロディーを軸に据えながらも時にトリッキーなアレンジが個性的なサウンド。そして今のバンドの勢いや状態そのままを体現したようなポジティヴな演奏……と、音楽リスナーの視線を集めるオリジナリティーは、実にたくさんあった。
その彼女達が、本年7月にファーストアルバム『exNegoto』をリリース。さらに幾多の夏フェスへの出演を経て、9月1日を皮切りに、全国ツアーをスタートさせた。全部で10本、東名阪公演はワンマンライヴとなった本ツアー「お口ポカーンフェス?!~ex it!抜け殻ツアー~」のチケットは、各地で軒並みソールドアウト。注目度を実績に変え、全国ツアーはファイナルを迎えた。
10月8日。赤坂ブリッツ。「お口ポカーンフェス?! ~ex it! 抜け殻ツアー~ツアーファイナルワンマン公演」は、超満員の観客の大歓声の中、アルバム収録曲である「インストゥルメンタル」で幕をあげた。蒼山幸子(Vo&Key)がピアノを弾きながら、凛とした声を響かせる。頭上からは1本のピンスポット。客席のざわめきが静寂に換わる。澤村小夜子(Dr)のスティックから、カウントが叩きだされる。刹那、4人のバンドサウンドが、一斉に赤坂ブリッツに飛び出して行った。そのサウンドを追うように、ステージ頭上から、何本ものムーヴィングライトが、客席を走る。まるで、彼女達が作りだした、音楽の波線を描いたかのように。幸子の頭上からのピンスポも、そのひとつの光として、暗闇を彩った。ステージが濃いブルーに沈む。一転、産まれたばかりの泡がスプラッシュするような瞬発力あるサビを力強く聴かせた「サイダーの海」、幸子が右手でキーボードを弾きながら、♪ お月さま~ ♪というワンフレーズに合わせて、左手で半円を描いた「彗星シロップ」と続いた後は、この日最初のMC。
「今日と言う日を私たちも本当に楽しみにしてきました。今日はここにいるみんなで、いい夢をみましょう、よろしく!」と、幸子が歯切れのいい言葉を放った。
ライヴは中盤へ。「ランデブー」では、幸子がステージ前に出てきて観客を煽り、終わった後は「走り回って落ちないかと心配したけど、楽しかった!」と興奮気味にひとこと。そして、こうつないだ。
「楽しい曲ばかりやってきましたが、次からは景色が変わる曲をやっていこうと思います」
ここからは、ファーストアルバム『ex Negoto』収録曲を中心に展開。突き抜ける疾走感のそのまた上空を駆け抜けて行くようなサビに圧倒される「季節」、オルタネイティヴ色が濃くダークでサイケな世界感が特徴の「week…end」など、バンドとしての演奏スキルが発揮される曲が続く。「揺れる」「AO」と続いた後、幸子がマイクをとった。「この曲は、今日、ここに来てくれたすべての人が、いい夢を見られるように歌いたいと思います」この言葉を受けて披露されたのが「ふわりのこと」。瑞紀のギタリストとしての面白さが、顕著にわかる1曲。曲中、1番と2番でまったくアプローチが違う。今自分がギターでできることをみっちり詰め込んだことが、その演奏を見ていてよくわかる。ライヴだからこそ目の当たりにできる、ねごとというバンドの可能性に、私の目と耳は、釘づけだった。
ライヴは後半へ向かう。「カロン」では観客が大爆発。一斉に手を振り上げ、大歓声を送る。曲がエンディングへ向かう時に出てくる幸子の♪ ohh――― ahhh―――♪というシャウト。いつもはクリアな声を響かせるこの場面で、彼女は、これまで聞いた事のないような、低音から駆けあがるような歌い方をしてみせた。ステージバックを覆っていた黒い幕がさがり、ホリゾントに映像が映し出され「メルシールー」。夜空、昆虫、星座などをモチーフにしたストーリー性も感じられる映像と、照明がばっちりリンクしていく。最後には、ステージ上にいる4人が“ねごと、という音を奏でる星座”のように見えた。それは、もっと広いところで体験してみたいと思わせる光景であった。
次なるライヴの日程も発表されたこの日のライヴ。個人的に最も印象に残ったのは、蒼山幸子のフロントマンとしての成長である。今回のツアーで、次なるねごとへの扉をノックできたのは、幸子の変化が、ひとつの大きな要因であろう。
フロントマンという自覚が、これからのねごとに、どんな素敵な変化をもたらしていくのか、とても楽しみである。
最後に。この日、幸子が語った言葉の中から、最も印象的だった言葉を紹介しよう。
「ねごとは、アメーバーみたいに、正体不明で、たぶんきまぐれで……。でも聴いてくれる人がいるから、前に進んで行けると思います。これからもアメーバーみたいなねごとを、よろしくお願い致します」
実感と自覚。このふたつの繰り返しが、自分達の次なる扉につながることを、ねごとは、このツアーで、初めて知ったのかもしれない。
ねごとの本領発揮は、きっと、これからだ。
【 取材・文:伊藤亜希 】
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リリース情報
セットリスト
- インストゥルメンタル
- サイダーの海
- 彗星シロップ
- うずまき
- ワンダーワールド
- ランデブー
- ビーサイド
- 季節
- week…end
- 揺れる
- AO
- ふわりのこと
- 七夕
- カロン
- メルシールー
- 透き通る衝動
- ループ
お知らせ
【お口ポカーンフェス!? 番外編 ~サンタさんも抜け殻~】※女性限定ライブ
2011/12/16(金)渋谷WWW
【お口ポカーンフェス!? 番外編 ~サンタさんも抜け殻~】※男性限定ライブ
2011/12/17(土)渋谷WWW
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください