渋谷BOXX（’10年12月／約300人）→渋谷クラブクアトロ（’11年6月／約800人）→日比谷野外音楽堂（’11年10月／約3000人）と、破竹の勢いでスケール・アップを続けているSPYAIR。メジャー1stアルバム『Rockin’the World』を伴った初の東名阪ツアーのチケットもすべて即完、まさに本格的ブレイク寸前の状態にある彼らだが、その魅力の中心はやはりライブ。この夜も5人は、急速に進化しつつあるパフォーマンスを力強く見せつけた。

　凄まじいばかりの歓声を浴びながらメンバーが登場、IKE（Vo）を中心に集まりアイコンタクトを取ったあと、プリミティブなビートが鳴り始める。オープニングはアルバムのタイトルチューン「Rockin’the World」。爆発的なダイナミズムをたたえたバンド・サウンドがいきなり炸裂、オーディエンスが一斉に飛び跳ねまくる。そのまま「ジャパニケーション」「Last Moment」「感情ディスコード」という激熱ロックチューンを立て続けに演奏、フロアを熱狂の渦へと巻き込んでいく。破壊力を増したサウンドにも驚かされたが、もっとも強いインパクトを放っていたのは、やはりIKEのボーカルだった。リスナーの理性を吹っ飛ばすテンション、歌詞のメッセージをダイレクトに届ける表現力を共存させた彼の歌には、抗い難い魅力がある。

「今日、何しに来た？俺らはライブやりに来ました！ライブって自由なもんだから、自由に楽しんでほしいと思う」（IKE）のMCのあとは、さらに色彩豊かな楽曲が披露されていく。ラウドロック直系の「Just One」、ポップな手触りをたたえた「Beautiful」、“そう君がいるなら／Ah無理したって　そこに行くから”という切ないフレーズが広がるラブバラード「I miss you」。アルバム「Rockin’the World」に関するインタビューでUZ（G）は「似たような曲は作りたくない。できるだけ幅を広げていきたんです」という趣旨の発言をしていたが、このバンドの音楽性は本当に奥深い。

　そして3月14日にリリースされるニューシングル「My World」(「機動戦士ガンダムＡＧＥ」アセム編　エンディングテーマ)を演奏する直前、IKEはゆっくりとオーディエンスに語りかける。これまでに何度も壁にぶちあたり、そのたびに「自分は何をするべきか」と考えてきたこと。誰かに気づいてほしくて歌い続けてきたこと。自分の世界のなかで迷ったとき、いつもこの曲に力をもらってきたことーーストリートライブから始まったSPYAIRの軌跡、そこで感じた様々な思いが込めれた「My World」はこのバンドを象徴する楽曲として認知されることになるはずだ。

　メジャーデビュー曲「LIAR」のアコースティック・バージョン、KENTA（Dr）とMOMIKEN（Ba）によるフリーセッション、ENZEL☆（DJ）の「ダンス＆コール＆レスポンス」（タオルをグルグル回したり、観客と「“女性！”　“ハイ！”」とやりとりしたり）などのバラエティに富んだ演出を挟み、ライブはついにクライマックスへと突入。必殺のへビィ・ロック・チューン「INCOMPLETE」ではモッシュが巻き起こり、シングル「サムライハート」（Some Like It Hot!!）では「Hey!!　Hey!!　サムライハート!!」の大合唱が生まれる。本編ラストの「BEAUTIFUL DAYS」におけるポジティブなバイブレーションーーそれもまた、SPYAIRの大きな武器だーーも強く心に残った。

　アンコールでは、1/1に配信限定でリリースされた新曲「MOVIN’ON」も。ラウド・ロックと4つ打ちダンスビートを高いレベルで融合したこの曲は、今後のライブでも大いに活躍しそうだ。2012年におけるさらなる快進撃を予感させる、熱くて強いステージだったと思う。

【取材・文：森朋之】