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BUMP OF CHICKEN、約4年ぶりのアリーナツアー初日となる幕張メッセ公演をレポート!

BUMP OF CHICKEN | 2012.04.20

 開演前のSE(ラヴェルの「ボレロ」)が終わり、会場の照明が落とされると同時に“GOLD GLIDER”をモチーフにしたオープニング映像(今年3月に急逝したフランスの漫画家、“メビウス”のペンネームで知られるジャン・ジョロー氏と「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴監督がコラボ制作)が映し出される。大きくて温かい歓声のなかで、まずは升秀夫(Dr)のシャープなビートが響き渡る。さらに増川弘明(G)の鋭いギター、直井由文(Ba)の骨太なベースが加わり、最後に藤原基央(V&G)の歌――透明なピュアネスと爆発的なダイナミズムを共存させた――が広がっていく。ついにBUMP OF CHIKENのアリーナツアーがスタートした。そのことを実感し、会場全体が凄まじい感動で包まれる。

 今年1月31日に終了したライブハウス・ツアー「GOOD GLIDER TOUR」に続く、約4年ぶりのアリーナツアー「GOLD GLIDER TOUR」。ライブ中のMCのなかで直井が「みんな、4年間、何してた? 俺らはほぼずっとレコーディング。ようやくみんなの前で、俺らの演奏を聴いてもらえて本当にうれしいです!」と語っていたが、この日の4人からは終始“この4年の間に築き上げてきた、BUMP OF CHICKENの新しい世界観を表現したい”というモチベーションがまっすぐに伝わってきた。

 たとえば、ライブ前半で披露された「ゼロ」。エキゾチックな叙情性をたたえたメロディ、「広すぎる世界で選んでくれた/聞かせて ただひとつの/その名前を」という切実なメッセージをたたえた歌、奥深い世界観をリアルに描き出すアンサンブルによって、すべてのオーディエンスを強く惹きつけ(僕の目の前にいた女性は、涙をボロボロ流していた)、大きな会場をひとつにしていく。豊かな物語性のなかで、“生”そのものに直接触れているような感覚を与えてくれる彼らの音楽は、ここにきてさらに成熟しつつある。そのことがはっきりと感じられる瞬間だった。

 最新アルバム「COSMONAUT」の収録曲「イノセント」も強く心に残った。「君がどんな人でもいい」「いつか力になれるように 万全を期して/唄は側に」というラインにはおそらく、彼らが音楽に向き合う際のもっとも根源的な動機が示されている。それを生で体感したときの喜びと全身が震えるような感動は、この日のライブにおけるひとつのクライマックスだったと思う。この夜も、何度も何度も心のこもった「ありがとう」「会えてうれしい」という言葉重ねていた彼ら。ここまで真摯にリスナーの側に立とうとしているバンドは、本当に稀だと思う。

 また「カルマ」「天体観測」といった、彼らのキャリアを象徴する楽曲もさらなる進化を遂げていた。生々しいリアリティと神話的なムードを併せ持つ楽曲が、グッと表現力を増したバンド・サウンドによって立体的に描かれ、まったく新しい感動を生み出していたのだ。それが「COSMONAUT」以降の楽曲とナチュラルに混ざり合い、誰も経験したことがないほどの豊かさ、美しさ、切実さを含んだ空間へと結びついていく。これこそが、「GOLD GLIDER TOUR」の本質なのかもしれない――凄まじい集中力に貫かれた4人のパフォーマンスを見ながら、そんなことを思った。

「…何だか最終日な気分になっちゃったね。感無量。“調子悪い人いない?”“ありがとう”“会いたかった”――ほかに何を言えばいいかわからない(笑)」というライブ終盤の藤原のMCからも、“ただただ、みんなの前で歌えるのが嬉しい”という真っ直ぐな思いが感じられた。「GOLD GLIDER TOUR」は、大阪城ホール、名古屋・日本ガイシホール、東京・代々木体育館などを含む、全20公演(約25万人を動員)の規模となる。どんなに大きな会場であっても、オーディエンスひとりひとりに歌を届けようとする彼らのスタンスはきっと変わることがないだろう。このツアーを終えたとき、4人は何を感じ、その先にどんな音楽を生み出していくことになるのか…。それをしっかりと見届けたいと思う。

【取材・文:森 朋之】
【撮影:古渓一道】

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