過去と現在、そして未来が感じられた、ねごとの全国ツアー、ファイナルライヴをレポート
ねごと | 2012.05.29
5月上旬、東名阪を回った、ねごとの全国ツアー「お口ポカーン?! ワンマンツアー?フラットな気分でもいいよ?」。そのファイナル・ライヴが、SHIBUYA-AXで行われた。
満員の会場が暗くなる。ステージには、三角錐のオブジェ。ダンサブルなSEの音量があがる。4つ打ちのリズムに合わせて、映像が投影され、目まぐるしく変わる。照明とリンクしたスタイリッシュな映像の合間に挟み込まれるのは、イラスト化された様々なモチーフ。おさげ、バクなど、キッチュなテイストもある。クールだけど、どこかやっぱりプリティーでキッチュ。ねごとが持っている“バランス観”に直結する演出だ。大歓声の中、メンバーの4人が登場。ドラムスの小夜子は、最前列とタッチしてから、ドラムセットの前にスタンバイ。全員の準備が整うと、ベースの佑に白い光が集まった。渋いベースラインが、うねりながらフレーズを刻む。ドラムスの小夜子が、スティックを細かく動かしリズムを加えていく。イントロに、飛び跳ねる観客。ギターの瑞紀とボーカル&キーボードの幸子が、イントロに合わせてクラップ。そのクラップは、すぐに観客全員のクラップになり、 “Oi! Oi!”という歓声へと変化した。「ループ」。ねごとというバンドの激しさの象徴、初期からの代表曲のひとつ、ファンにも根強い人気のあるこの曲で、ライヴはスタートした。オルタネィティヴな曲調を、次の曲のイントロが受け取る。テンションのメーターをそのままに、ビートが駆け抜ける。「サイダーの海」。爽快なメロディが、目の前で、パチパチとはじけているようだ。ステージ上のメンバー、気合<十分。それが演奏から伝わって来るオープニングだった。
最初のMCで、メンバー紹介。小夜子、佑、瑞紀と順番に挨拶した後、幸子がマイクをとった。
「今日、来てくれたみなさん、ありがとうございます。胸がいっぱいで、いろんな気持ちが渦巻いているけど、お互いエナジーをバンッてできたら、嬉しいです」
カラフルなムービングライトが会場を染め「季節」へ。間奏では、小夜子のリズムに合わせて、拍手が起こった。三角錐のオブジェに水泡が映り、クールに「ビーサイド」。続くディープなミディアム・チューン「week...end」で、映像は一転、真っ赤なマグマがうごめく。途中、低音で歌う幸子が、ゾッとするくらいに鋭い視線を客席になげかける。迫力あるサビでは、映像のマグマが燃えあがり、視覚でもサウンドを表現した。ダイナミックな演奏とシュールな歌詞、幸子のボーカル、そして照明や映像の視覚効果。どんぴしゃにはまっている。混沌としたイメージの中で、浮かんだのが、この言葉――“刹那の向こうにある狂気”。ねごとのライヴで、狂気という言葉が浮かんだのは、この日が初めてだった。
「やー、燃えてます」と、演出を受けての幸子のコメント。会場から笑いが起こる。そして幸子は、何とも言えない笑顔で、こう続けた。
「すごい景色が見えてます……。本当に、ありがとうごさいます」
ライヴは、序盤で一気にあげたムードを、グル―ヴィーでコケティッシュなナンバー「Tonight」などで少し緩め、楽しませていく流れに。そんな中、サイケデリックな「うずまき」でメリハリをつけたり、初期のオリジナル曲「AO」と披露したりと、ねごとの楽曲バリエーションを堪能できた中盤。ステージ上のメンバーも、少しリラックスしてきたのか、こんなシーンが飛び出した。
「今世紀最大のお口ポカーンタイムです」と小夜子。大阪、名古屋での同タイムでの様子に触れた後、「客席のウェーヴが観たい」と、幸子にステージ端から端へ走ってと無茶ぶり。この無茶ぶりに応え、走る幸子。幸子を追って、客席の左から右、右から左と、ウェーブが起こった。その景色にご満悦の小夜子が、再び暴走?「あったまったところで“We will Rock You”やろうか」と、いきなり「We will?」のイントロを叩き始めた。若干、ポカーンとしながらも、合わせて演奏するメンバー。一段落すると幸子が言った。「本当に、お口ポカーンだったね」。
この言葉に会場は大爆笑であった。
後半への幕開けを告げたのは「カロン」。間奏での瑞紀のギターが、いつもよりソリッドに切りこんできた。「彗星シロップ」「メルシールー」と、立て続けにライヴのキラ―・チューンを畳みかける。幸子が叫ぶ。
「ねごとは、まだまだ闇の中です。それでもまだ見てみたい光がある。それでも半歩前に進みたい。そう思って作りました。全力でやります!“sharp ♯”!」
ステージのバックを覆っていた黒い幕が左右に開き、バック一面にスクリーンが登場。この大きなスクリーンと映像が投影された三角錐、そして照明が、コラボレートするように演出を展開。三角錐は、片面ずつ明滅しているようでクール。対して、バックのスクリーンには、♪ ライラライ? ♪の歌詞がおどり、ダイナミックで楽しげ。スピード感あるサウンドは、カラフルで、万華鏡のようだ。どこかクールな雰囲気だけど、内面は意志が強くホット。アグレッシブな演奏で存在感を発揮するけど、普段はふわりとしていて、ゆるゆる。オルタナ&ディープな曲をやったかと思えば、牧歌のようにウォームなバラードや、ガールズバンドならではのコーラスが映えるポップチューンを聴かせる。そんな、ねごとの魅力……じつは多面的な彼女たちの魅力が、SHIBUYA-AXという空間全部を使って、表現されていく。圧巻だった。
この夏に発売されるニュー・シングル「Re:myend!」も披露されたこの日のライヴは、ねごとの過去と現在、そして未来が感じられるものだった。
過去を感じたのは、全18曲のセットリスト。ライヴ全体の流れに、ねごとがこの数年、ライヴで培ってきたライヴバンドとしての成長が感じられたし、この日の流れは、今後、彼女達のひとつのベーシックなライヴスタイルになるのではと感じられるほど王道感があった。
今を感じたのは、新曲「Re:myend!」。この夏公開される映画アニメ「放課後ミッドナイタ―ズ」の主題歌ということもあり、映画の内容をイメージしたようなコミカル&ホラーなティストがインパクト大。めまぐるしく構成が変わるパワーチューンだ。4人で曲を作り、演奏するのが楽しくてしようがない、そう思わせる1曲。
そして未来を感じたのは、全体の演出のスケール感。SHIBUYA-AXという会場規模を考えると、正直、スケールでかすぎじゃないか……と思う内容だった。しかしそのスケールが、ねごとには、不思議と似合っていた。ほんと、不思議なバンドだな。
この日感じたこの不思議さの理由について、私はこんなことを考える。あの不思議さが、ねごとというバンドのスケール感にリンクしていますように。
未来のねごとが、ずっと不思議でありますように。
【取材・文 :伊藤亜希】
【photo by 上飯坂一】
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セットリスト
- ループ
- サイダーの海
- 季節
- ビーサイド
- week...end
- Tonight
- ワンダーワールド
- うずまき
- AO
- インストゥルメンタル
- drop
- ふわりのこと
- カロン
- 彗星シロップ
- メルシールー
- sharp♯
- Re:myend!
- 透き通る衝動
お知らせ
SAKAE SP-RING
2012/06/02(土)名古屋CLUB QUATTRO
UNDER THE INFLUENCE「後藤まりこ×ねごと」
2012/06/07(木)恵比寿LIQUIDROOM
【西葛祭EVERYONE SMILES WITH POWER OF MUSIC】
2012/06/10(日)東京スクールオブミュージック専門学校 LS1ホール
在日ファンクpresents「宇宙大決戦」渋谷区ツアー
2012/07/22(日)渋谷 O-EAST
【FM802 MEET THE WORLD BEAT 2012】
2012/07/29(日)万博記念公園自然文化園「もみじ川芝生広場」
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。