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SPYAIR、初の武道館ワンマンライブをレポート!

SPYAIR | 2012.12.28

 ついにその日がやってきた。無謀とも思われた挑戦だったが、SPYAIRの5人は周到な準備をしていく過程で、とてもたくましくなった。この成長こそが今回のチャレンジの本当の目的だったのだが、シーンにその名を轟かせるために、SPYAIRはこの一発勝負に勝たなければならない。それを知っているファンは、開演前の武道館にピリリとした熱気を発し始める。と、そのタイミングで会場の照明が消えて、ステージ前面を覆っている大スクリーンに“SPYAIRのヒストリー”が映し出されたのだった。2005年に始まった5人の歴史は、喜びと悔しさと笑顔と緊張に彩られ、まだ少年の面影を残す画面のメンバーに、いちいちどよめきが起こる。この短いフィルムのお陰で、少し硬くなっていたオーディエンスの表情がリラックスしたのだった。

 「0 GAME(ラブゲーム)」がドラムからスタートする。メンバーのシルエットがスクリーンに浮かぶ。間もなくIKE(vo)、UZ(g/pro)、MOMIKEN(b)、KENTA(dr)、ENZEL☆(DJ)の勇姿が見えた。歌い始めたIKEの声が、心なしかかすれているのは、緊張のせいだろう。だが、それを補うようにMOMIKENがステージにしっかり足を踏ん張って、力強いパフォーマンスを見せる。UZはギタリストの勇気を象徴するV字型のギター“フライングV”を抱えて、大きな武道館をゆっくり見渡す。KENTAはグルーヴの中心をかたくなに守る。そしてENZEL☆はDJブースの中で、大声でIKEに合わせて歌っている。サビの前でIKEが「みんなで歌おうぜ!」とアオると、もちろんオーディエンスはすぐに応えて歌い出した。続く「Last Moment」でIKEが♪生涯、君にとって 俺はどんな俺でいれるだろう♪と歌い出すと、この歌詞を待ちかねていたファンが大歓声を上げたのだった。

「ようこそ!」とIKEが口火を切ると、メンバーが次々に一人ずつ「ようこそ!」と挨拶する。IKEがもう一度「ようこそ、SPYAIRのライブへ!」と叫ぶ。KENTAがハイハットでカウントを出して「Rock’n Roll」が始まった。この曲が最初に披露された今年5月の赤坂ブリッツのライブで、SPYAIRは武道館宣言をした。そのときは正直、頼りない演奏だったのだが、正統派のロックブギーが武道館に堂々と響き渡る。2階席からこの光景を見ながら、「僕はこの成長が見たかったのだ」とうなずいた。
 それぞれの前に設置された小さな台に上がって、IKE、UZ、MOMIKENがパフォーマンスする。ENZEL☆はDJブースを飛び出して、ステージの左右に作られた“花道”を走り回る。オーディエンスと同じ目線でSPYAIRを応援するENZEL☆のスタンスは変わっていない。この日を最後に、ENZEL☆は脱退する。

「改めまして、SPYAIRです。ビビるくらい超いい景色だよ。俺ら、武道館やるって決めてから、行ったことなかったから、何回か見学に来た。この前、俺は“1階 東F37番”に座ってました。今日は、そこに誰が座ってるのかな?(笑)みんな、今日は力を貸してくれ。楽しんでいきましょう。そして歌ってくれ!」とIKE。 
 最新シングル「WENDY ?It’s You?」では途中でIKE、UZ、MOMIKENの3人がセンターに集まって演奏したり、飛び跳ねたり。「My World」はリズムが気持ちよくて、このバンドならではのグルーヴが生まれつつあることを実感する。ベース・ソロ、ドラム・ソロが終わった後あたりから、IKEの声がどんどん出て来るようになった。いよいよ無駄な力が抜けてきたのだろう。それは他の3人も同じで、ライブの最中にアーティストが成長していくのを観るのは、嬉しくてとても刺激的だ。
 終盤の「ROCK THIS WAY」では、地元の先輩SEAMOがスペシャル・ゲストで登場してパワフルなラップをキメる。インディーズ時代の「OVER」が懐かしい。そこから「ジャパニケーション」、「Naked」への流れで、武道館は最高の盛り上がりを見せた。そして本編のラスト「Raise Your Hands」は、SPYAIRの本質的な強味である“歌ものバンド”の良さを、鮮烈に印象付けた。

 アンコールでメンバーが出て来ると、オーディエンスのほぼ全員が両手に黄色の紙花を付けて出迎える。「I want a place」でサビのリードパートをIKEとENZEL☆が歌うと、UZとMOMIKENが追っかけパートを歌う。「サムライハート(Some Like It Hot!!)」は、メンバーもオーディエンスも完全に一体になっての大合唱になった。

「お前ら、あったかいな。マジ、お前ら、大好きだ! 武道館、大変だったけど、夢がひとつかなった。お前らがかなえてくれた。次が5人の最後の曲だよ」とIKEが言うと、客席から「いやだぁ」と声が上がる。ENZEL☆が話し始める。「ダメだ。難しいこと、言えねえ。本当にありがとう。お前ら、最高!」。 「きっと彼はみんなの声援を受けて進んでいく。俺らも進む。ラスト、5人で思い切り歌うからさ、お前らも歌ってくれよ」とIKE。レーザー光線がミラーボールを射ると、「SINGING」が始まる。ENZEL☆の肩に手を回してIKEが歌う。ENZEL☆のリードで、会場が何度も何度もジャンプする。1本のマイクでENZEL☆とUZがコーラスする。その隣で、IKEとMOMIKENがやはり1本マイクで歌っている。最高のラストシーンになった。 

 一人残ったENZEL☆が、マイクをもう一度、手に取った。
「今日をもって脱退します。でもSPYAIRが終わるわけじゃない。武道館は彼らにとって通過点。俺だって、みんなを裏切らないようにステップアップしていきます。(客席を指さしながら)俺、明日からそっちに行く。みんなと同じ位置で応援するだけ……」。
 と、4人がステージに戻ってきて「ENZEL☆、話なげーよ(笑)。これ、俺らからのプレゼント」と言って、バックパックを手渡した。「ENZEL☆の世界一周、みんな見守ってやってね。4人はこの後も止まりません。また遊びに来てよ。ありがとう」。

 さっぱりとした笑顔の別れだった。SPYAIRは、今回のビッグチャレンジでバンドの底力を上げた。それと時を同じくして起こった脱退劇は、その成長に影を落とすものではない。では、ENZEL☆はSPYAIRに何を残したのか。それは、自分の成長をバンドの成長に重ねて楽しむことだった。そう、明日からは、オーディエンスのみんなが、ENZEL☆になる番だ!

【取材・文:平山雄一】
【撮影:Tsukasa Miyoshi】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SPYAIR

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リリース情報

WENDY~It’s You~(初回生産限定盤)

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2012年11月21日

SMAR

ディスク:1
1. WENDY ~It’s You~
2. Blowing
ディスク:2
1. WENDY ~It’s You~ (Music Video)

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セットリスト

SPYAIR LIVE at 武道館 2012
2012.12.18@日本武道館

  1. 0GAME
  2. Last Moment
  3. Rock’n Roll
  4. WENDY ~It’s You~
  5. LIAR
  6. STRONG
  7. U & I
  8. MY World
  9. Little Summer
  10. My Friend
  11. BEAUTIFUL DAYS
  12. Crazy
  13. Break Myself
  14. ROCK THIS WAY
  15. OVER
  16. ジャパニケーション
  17. Naked
  18. Raise Your Hands
  19. ENCORE
    1. I want a place
    2. サムライハート(Some Like It Hot!!)
    3. SINGING

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