ねごと初となったホールツアーのファイナル、TOKYO DOME CITY HALLの模様をレポート!!
ねごと | 2013.01.08
その曲は、この日、最後に紹介された。「来てくれて本当にありがとう」という感謝の後に、言葉を紡いだのはボーカル&キーボードの蒼山幸子。
「未来がどうなるかは、誰にもわからない。でも予感を信じることが大事だと思います。未来への予感をみんなに歌いたい、今、いちばん心を込めて、みんなに歌いたい曲です。来年(2013年)全国ツアーやって、高い壁を壊して帰ってくるから! 最後の曲、聴いてください」
ステージ上の4人が、大きく息を吸い込み、呼吸を合わせている。4人の体から放たれたのは「たしかなうた」。2013年1月23日にリリースされるニューシングル。ストレートなロックバラードだ。バンドのアレンジも至ってシンプル。メロディーで真っ向勝負してきたそのスタンスに、4人の強い意志と、その意志に負けないメロディーとダイナミックなサビが印象に残る力強い1曲である。
微動せず、聴き入る観客。静寂というレスポンスが、名曲の証拠だろう。このラスト前に披露されたアップチューンの数々。特に、観客がバウンドした「カロン」からトリッキーな「nameless」、客席から大合唱が起こった「ループ」、そして爽快なスピード・チューン「sharp ♯」という一連の流れから、無理なくムードチェンジし、鮮やかなコントラストを見せた。曲調はもちろん、メンバー達のアクションや表情、ライティング、演出、そしてステージ側だけではなく観客の反応も、すべてがパッキリと別の色を描いていた。
目の前には、数分前とはまったく異なった光景があった。ねごとのバンドとしての幅、そしてノリシロが感じられた、ねごとの未来を予感させた瞬間だった。
2012年11月から2013年2月にかけ、4か月連続リリースでシーンを賑わせているねごとが、2012年12月に初の東名阪ホールツアー「お口ポカーン!!~SEED with groove~」を行った。このツアーのファイナルライブが、12月16日、TOKYO DOME CITY HALLで開催された。
オープニングを飾ったのは「インストゥルメンタル」。元々インストのオリジナル曲だったものに、歌詞とメロディーをつけた、彼女たちのセンシティブな魅力が表現された、ディープなバラード曲である。紗幕が降りたままのステージ。青く沈むステージ。幸子だけにスポットライト。ドラムの澤村小夜子のカウント。ステージバックから、ライトが白光する。4人のシルエットが、はっきりと浮かび上がった。後半。ライトは青から赤に鮮やかに世界を変えた。続く「greatwall」では、リーダー&ベースの藤咲佑がステージ前方に飛び出し、自らのクラップで客席をあおる。佑に合わせ、総立ちの観客から手拍子が起こった。会場のテンションを笑顔で受け取った佑がマイクを取る。これまでの彼女たちのライヴにはなかった光景だ。「名古屋、大阪と続いてきた熱を絶やさないように、みんなと一緒に素敵な夜を作っていきたいと思いますので、よろしくお願いします」と挨拶。その後は、観客の反応も交えたトークを展開した。「drop」では、幸子が「♪指輪なくしても約束は消えない♪」という歌詞を歌いながら、指輪を外し、小指で軽く指切りげんまんをするような仕草を見せ、曲の世界を視覚でも表現した。ギターの沙田瑞紀のレクチャー(これも初の光景!)で、メンバーと客席でコール&レスポンスが繰り広げられた「Tonight」などを挟み、ライヴは中盤へ。メンバー全員、ステージ中央に集まり、瑞紀はアコギ、小夜子がキーボードを担当し、「ジングルベル」などクリスマスソングを披露。誰もが知る楽曲を、ねごと流にアレンジし、ばっちりハモッていたあたりに、ガールズバンドの強みもしっかりと魅力にしている様が垣間見られた。一旦、ステージを後にする4人。エレクトロ&スペーシー、ねごとの魅力のひとつである浮遊感と広がりを、別のアプローチからサウンドにしたようなSEが響く。ぴたりと止まる、小宇宙の時間。静寂の次の刹那、空間を切り裂いたのは、この曲だった。「メルシールー」。コスチュームを着替えた4人。激しいアクションが、曲の熱量をどんどんあげていく。衣装チェンジでポニーテールで登場した瑞紀。髪を結んでいたシュシュは、楽曲がスタートして間もなく、彼女のヘッドバンキングとともに、ステージのどこかに飛んでいった。
中盤のクリスマスソングコーナーで見せた、フレンドリーさ。言葉は悪いが、ちょっとゆるくて、でも何を話し出すかわからないスリリングなムードも、ねごとの側面だ。そこを中盤のクリスマスソングを軸に、無理なく前面に出していたのがライヴの前半だとするならば、衣装チェンジ以降の後半は、ねごとのソリッドさやディープさ、トリッキーさが、多彩なパターンで炸裂した内容だったと思う。
この大胆なライヴの流れも、ねごとの新境地だったと言えるのではあるまいか。そして、この大胆なコントラストもこの日のライヴの面白さだったし、それをしっかりとひとつのライヴとして成立させたのは、ねごとのライヴバンドとしての成長に他ならない。
これまで、彼女たちのライヴには、毎回のタイトルにもあるように“お口ポカーン!!”とさせられる場面が多々あった。しかしそれは、前述した要素で言えば “フレンドリーな部分”においての方が多かったように思う。
しかしこの日は、そうじゃなかった。
ライヴ全体のコントラスト、前半と後半の違い、その切り替えの鮮やかさに、気がついたら、口が開いていたのである。ポカーンというより、呆然だな、あれは。
そしてこの日、私が最も呆然としたのは、最後の「たしかなうた」だった。この日、会場にいた、ほとんどの人が初めて耳にする新曲を最後に披露した彼女たち。まずはその度胸に、大きな拍手を送りたい。「たしかなうた」は、新曲だと感じさせないほど、圧倒的な説得力とキャッチ―さを持って、がっちりとこの日のライヴを締め括った。このラストは、楽曲の強さ、演奏、パフォーマンスで、しっかりと観客に曲を届けることができた証だと思ったし、ねごとの底力だと改めて思った。
ねごと。デビュー以降、メンバーそれぞれが葛藤をかかえながらも、それでも走り続けてきた軌跡が、タフな精神と実力を育み、今、バンドの未来をひきよせる。
2013年春には、メンバー全員が大学を卒業する。同年2月6日には、4か月連続リリースの最後を飾るセカンドアルバム『5』がリリースされ、その直後から、全国ライヴハウスツアー、そして5月には東名阪のワンマンツアーが決定している。
ねごとの未来が、すぐ、そこまで来ている。
さあ、一緒に。
予感を信じて、次のねごとも、見つけよう。
きっと、今以上の鮮やかさで、ねごとは、待っている。
【取材・文:伊藤亜希】
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リリース情報
セットリスト
お口ポカーン!! ~SEED with groove~
2012.12.16@TOKYO DOME CITY HALL
- インストゥルメンタル
- greatwall
- drop
- Lightdentity
- 季節
- tonight
- ワンダーワールド
- ながいまばたき
- ジングルベル
- we wish a marry X’mas~SE
- メルシールー
- 街
- week...end
- AO
- NO
- カロン
- nameless
- ループ
- sharp ♯
- たしかなうた
お知らせ
DEAD POP FESTiVAL 2013
2013/1/11(金)SHIBUYA O-EAST
閃光ライオット感謝祭 第二弾
2013/2/10(日)shibuya duo MUSIC EXCHANGE
お口ポカーン!! 卒業旅行は全国ツアー
〜GREEN and motion〜
2013/2/15(金)千葉LOOK
2013/2/16(土)水戸LIGHTHOUSE
2013/2/17(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-02
2013/2/23(土)神戸 太陽と虎
2013/2/24(日)京都磔磔
2013/2/28(木)浜松窓枠
2013/3/02(土)岡山IMAGE
2013/3/03(日)出雲APOLLO
2013/3/09(土)鹿児島SR-HALL
2013/3/10(日)熊本Django
2013/3/23(土)高知X-Pt.
2013/3/24(日)高松DIME
2013/3/30(土)仙台MA.CA.NA
2013/3/31(日)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2013/4/06(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2013/4/07(日)郡山CLUB #9
2013/4/13(土)福岡BEAT STATION
2013/4/14(日)広島CLUB QUATTRO
2013/4/19(金)富山SOUL POWER
2013/4/20(土)金沢van van V4
2013/4/21(日)長野LIVEHOUSE J
2013/4/29(月)札幌PENNYLANE 24
2013/5/18(土)沖縄桜坂セントラル
お口ポカーン!! 東名阪ワンマンツアー
〜spark of FLOWER〜
2013/5/04(土)なんばHatch
2013/5/06(月)名古屋CLUB DIAMOND HALL
2013/5/11(土)ZEPP TOKYO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。