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小南泰葉、全公演ソールドアウトの東名阪ツアーで藁人形を奉納!

小南泰葉 | 2013.03.04

 会場に到着して、すぐにニヤリとしてしまった。
 小南泰葉が2月16日に新宿LOFTで行なったワンマンライブ。新宿LOFTに行ったことのある方はご存知だと思うのだが、LOFTは地下にあるため、地上から階段を降りていく構造になっている。その階段の踊り場のところに当日のプログラムが書かれている掲示板があるのだが、そこに書かれている文字が「鏡文字」──要するに逆さまだ。

 これは決してミスではなく、最新作『121212』のコンセプトでもある今回のツアータイトル「コペルニクス的転回」に乗っ取った演出である。コペルニクス的転回とは、“思想、価値観が180度変わってしまうこと”であり、会場には他にもたくさんの「コペルニクス的転回」があった。モニターに流れていた映像の上下が逆さまになっていたり、トイレの表示マークの色が「男:赤色」「女:青色」になっていたり、スタッフパスの印刷が逆向きだったり……ちなみに、チケットは入場時にちぎられるのが普通だが、逆に新しいものを渡していたそうだ。そんな細かいところまでこだわった演出に、“自分が作る内省的な曲調から勘違いされることが多いけれど、本当はみんなと一緒にバカなことをして笑い合いたい”と、真っすぐな強いまなざしで彼女が話していたことを思い出した。

 ゲストに招かれたTHE NAMPA BOYSが、熱量たっぷりの荒々しいギターロックをフロアに轟かせた後、しばらくすると流れてきたのはアンコールを求める声のSE。これも、普段は最後にやるアンコールからライブをスタートさせるという「コペルニクス的転回」だ。小南がひとりでステージに登場し、“アンコールありがとうございます”という挨拶の後、ピアノの弾き語りで「12月12日」を披露。亡き友人へ捧げたバラードを、ときに消え入りそうに切なく、ときに存在を証明するように力強く歌い上げる。いきなり感情全開でぶつかってきた。客席もじっくりと聴き入っている。一度ステージから捌けて、バンドメンバーを引き連れて戻ってくると「善悪の彼岸」「ルポタージュ精神病棟」と、アップテンポなナンバーで一気に畳み掛け、会場の熱気をグングンと上げて行った。

 また、ライブの中盤では「藁人形奉納の儀」を開催。これは彼女がインディーズ時代からライブ会場で販売していた自作の藁人形1000体をお焚き上げしようというもの。ステージには本物の住職である、天台宗常行寺副住職の友光雅臣氏がステージに迎えられると会場から驚きの声が上がる。ファンから集められた藁人形と、小南が大切にしていた特大サイズ(大きさ約80cm!)の藁人形「ワラミ」を奉納した。“想いの籠った人形を供養するために一番必要なことは、ここに集まった皆さんが人形達の前で最高のライブを楽しむこと”という氏の説法に、会場からは大きな拍手が送られていた。ちなみにこちらの副住職、実はハウス系のDJをしていて、お寺でイベントを行なっているとのこと。驚愕の事実に会場からは再び驚きの声が上がっていた。そして小南は「藁人形売りの少女」を披露。想いを込めて情熱的に歌い上げた。

 イベントごとの多いライブではあったが、印象に残ったのは、やはり小南泰葉の「歌そのもの」である。1曲目の「12月12日」や、キーボードとバイオリンと共に届けられた新曲「やさしい嘘」など、楽曲を装飾する要素が少なければ少ないほど、その迫力や存在感が増していく。そして、「オープニング」という形でラストに弾き語りで披露された新曲「3355411」。
「この数字を携帯電話で打ち込むと“しにたい(=死にたい)”になります。でも、これを2乗すると“いきたい(=生きたい)”になります。コペルニクス的転回、お楽しみください」
 人間の弱さや強さ、人生の虚しさや素晴らしさを、アコースティックギターを力強くかき鳴らして、彼女は歌っていた。人間は移ろいやすい。それはときに残酷なほどに、コロコロと移り変わって行く。善と悪、愛と憎しみ、希望と絶望──誰もがその間を絶えず揺れ動いている。そんな人間の揺れ動く感情をそのまま閉じ込めた、まさに“人間そのもの”が綴られた歌に魅了された夜だった。

 小南泰葉は5月に待望の1stアルバム『キメラ』をリリースする。新曲はもちろん、インディーズ時代から歌い続けている曲なども収録され、これまでの集大成的内容になるとのこと。今からとても楽しみだ。

【取材・文:山口哲生】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 小南泰葉

リリース情報

121212

121212

2012年12月12日

EMIミュージックジャパン

1. 視聴覚教室
2. お蜜会
3. 「善悪の彼岸」
4. 絶望に棲むキダルト達へ
5. 12月12日

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セットリスト

小南泰葉 LIVE TOUR 2013 "コペルニクス的転回" 2013.2.16@新宿LOFT

    OPENING
  • 3355411
  • 1.「善悪の彼岸」
  • 2.ルポルタージュ精神病棟
  • 3.Trash
  • 4.嘘憑きとサルヴァドール
  • 5.絶望に棲むキダルト達へ
  • 6.藁人形売りの少女
  • 7.お蜜会
  • 8.視聴覚教室
  • 9.世界同時多発ラブ仮病捏造バラード不法投棄
  • 10.やさしい嘘
ENCORE
  • 1.12月12日

お知らせ

■ライブ情報

RADIO DRAGON3周年記念 LIVE DRAGON FESTIVAL
2013/03/17(日)Shibuya duo MUSIC EXCHANGE・渋谷O-Crest・渋谷O-Nest

「SANUKI ROCK COLOSSEUM」 ~BUSTA CUP 4th round~
2013/03/20(水)[有料会場] 高松オリーブホール、高松DIME、高松MONSTER、高松SUMUS Cafe、ジャンヌガーデン特設ステージ
[無料会場] 瓦町駅地下広場(天地下ブリスク)、ジャンヌガーデン

東海テレビ主催 「×Music」(クロスミュージック)公開イベント
2013/03/27(水)テレピアホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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