レビュー
小南泰葉 | 2012.09.25
今年5月に『嘘憑キズム』でメジャーデビューをした小南泰葉。10代の頃から音楽活動をしていたものの、挫折。引き蘢りを経験。その後、活動を再開させたという経緯をもつ彼女。人間の心に潜む闇を親しみやすいメロディーに乗せた楽曲をはじめ、自作の藁人形1000体をライヴ会場で販売するなど、独特な世界観で注目を集めているシンガーソングライターだ。そんな彼女が9月26日に1stシングル「Trash」をリリース。この曲は、アニメ映画「アシュラ」の主題歌として書き下ろしたもので、内容が過激すぎたため発売禁止になったという幻のコミックを映画化したという作品だ。本作の主題歌について「絶対に誰にも譲りたくないと思っていた」と語る、小南の並々ならぬ想いが込められた楽曲となった。
そんな「Trash」は、悲しみを帯びたドラマティックなミディアムナンバー。影と向かい合いながらも真っすぐに生きることを歌った曲だ。とはいえ、それは決して光を目指して行こうというものではなく、影を受け入れているようでもある。<君が光であればあるほど 僕は黒になろう>。物事は全て表裏一体。光も影も素晴らしい。そんな複雑に入り組んだ人間の感情や運命を、力強く堂々と歌い上げた人間讃歌だ。また、昭和の名曲をロックチューンへと大胆にアレンジ、同映画にも起用されている「希望」と、インディーズ時代から歌っていたアコースティックナンバー「NAME」を収録している。
全3曲、凛とした彼女の歌声が印象的。そこからは、自分の想いを多くの人に届けたいという、シンガーソングライターとしての根源欲求が活き活きと溢れ出ていることを感じることが出来て、小南泰葉の世界がこれからどう世の中に響いていくのか楽しみになった。
【文:山口哲生】