秦 基博、2年ぶりのGREEN MINDは「みんながフラッと遊びに来れるライブに」
秦 基博 | 2014.06.26
アコースティックを基本に置いた秦 基博のライブ“GREEN MIND”は、これまでスペシャル・イベントとして展開されてきたが、今回、初めて全国規模でツアーを敢行。ツアー直前のインタビューで、「今まで“GREEN MIND”は野外でやったりしていて、大都市を回っていない。今回はいろんな場所でやります。僕を入れて4人でツアーするので、サウンドをがっちり固めるというより、音の少ないセッション的な内容になると思います。弾き語りもたっぷりやっちゃおうかな」と秦は語っていた。その終盤の東京公演を観た。
風にはためく布をイメージさせるシンプルなセットの前に、楽器がざっくり置かれている。秦がGREEN MINDのために作ったインストのテーマ曲が流れ、ライブのスタートを告げると、会場は期待を込めた静寂に包まれる。まずは一人で秦がステージに現われた。心地よい緊張感の中、秦が手に取ったアコギから、NHKホールに澄んだ音色が響き出す。オープニングは「サークルズ」。スペースシャワーTV20周年を記念して制作された名バラードだ。ギターと歌と、オーディエンスの耳との間合いを測るように始まった「サークルズ」は、曲の途中で早くも“完成品”としての弾き語りになる。この“詰め”の速さが、秦の特長だ。彼のシンガーとしてのスペックは、驚くほど高い。早くも自分の歌と会場とのチューニングを合わせた秦は、堂々と歌い切ったのだった。
「GREEN MINDへ、ようこそ。外は雨? オアシモトの中、ありがとうございます(笑)」。“お足元の悪い中”をわざと省略して言って、笑わせる。「GREEN MINDは2年ぶり。東京は武道館以来かな?……反論がないってことは、合ってるんですね(笑)。アコースティック・ライブということで、リラックスしながら聴いてもらえたら嬉しいです」。ツアーも終盤に差し掛かって、MCがいつも以上に滑らかだ。
「My Sole,My Soul」をリズミックに歌って、秦は再び口を開く。
「今日は『Signed POP』の曲をやっていこうかなという気持ちがあります。『Signed POP』は(最新アルバムなので)、GREEN MINDではやっていない。でもそればっかりだと、知ってる曲が少ないとか、あの曲はやらないの?という人もいるでしょう。そこはわかっているので、新旧バランスよくやっていきますよ(笑)。次の曲は『Signed POP』から」と、「現実は小説より奇なり」が始まった。
この曲はコードがハンパなく複雑で、アコギ1本で演奏するのは、名手・秦といえども困難なことは間違いない。しかし、それをやってのけるのも、また秦 基博なのだ。“大人のJ-POP”の元祖・南佳孝を思わせる繊細なコードワークを見事に決めて、大きな拍手が巻き起こった。そしてこのブロックの最後は「アイ」。シーンと静まりかえったホールに、思い切りのいい秦の歌とギターが届く。
「今回、何か新しいことをしたいなと思って、ギターを作ろうとオーストラリアに注文しに行ってきました。で、パスポートを取ったんですが、写真の顔が腫れぼったくて。これを10年使うのかと…(笑)」とボヤキながら、新しいギターを手にして、コードを鳴らす。「オーストラリアの音がしますよね?(笑)」。このところ、ステージでのしゃべりにいい味の出てきた秦だが、このツアーでさらに磨きがかかったようだ。会場はどんどんリラックスしていく。
もちろん、それは“いい歌”があってこそのものなのだが、“いい歌”と“楽しいおしゃべり”が好循環を生んで、ステージは軽快に進んでいく。オーストラリアのギターで歌った最新シングル「ダイアローグ・モノローグ」は見事な出来だった。
さらに「自画像」では、自分のギター・フレーズをその場でサンプリングしてループを作り、ビートのあるサウンドで歌って、“弾き語り”だと言うことを忘れさせてくれる。これも『Signed POP』からの曲なのだが、新しいアイデアを加えることで、秦らしいエンターテイメントになっていた。
ここからは新コーナー“みどりの窓口”だ。その日のオーディエンスから質問を募って、答えつつライブを進行させる。GREEN MINDだから、みどりの窓口って……。ま、このダジャレ、許しましょう(笑)。
質問を書いた紙を持ってくるのは、パーカッションの朝倉真司、ベースの鹿島達也、ピアノの皆川真人で、メンバー紹介を兼ねてのやりとりに爆笑が起こる。そんな賑やかなコーナーの後、ギターを置いて皆川のピアノだけをバックに歌った「パラレル」が凄かった。作詞・松本隆、作曲・冨田恵一のこの曲を、秦はシンガーとして請われて歌ったのだが、そんな経緯がはっきり実感できる素晴らしい歌いぶりだった。
バンド3人が加わって、ライブは加速する。ポップな秦に焦点を当てた「Girl」でオーディエンスは解放され、「キミ、メグル、ボク」では4人がポーズをフリーズさせてみせ、大歓声が上がる。かっちりとしたアレンジではないので、歌も楽器もいい意味でラフ。そのラフさから、いつもの秦とは違う熱が伝わってくる。
盛り上がったところで、秦が今回のGREEN MINDのために書き下ろした「五月の天の河」。「遠距離恋愛の歌なんですけど、遠くから逢いに来て2時間一緒にいて帰って行くっていうのが、どこかで“GREEN MIND”に通じてる。今年、2年ぶりにGREEN MINDツアーをやるので、アコースティックなライブで響くことを念頭に作りました」と秦はインタビューで語っていたが、ステージの背後には天の河をイメージした照明が浮かび上り、秦のオーディエンスに対する思いを確実に伝えていた。
「GREEN MINDは昨年、お休みしたこともあって、ここから原点回帰して、みんながフラッと遊びに来てくれるようなライブにしていきます。繊細な音をクリアに届けられるNHKホールで、みんなに会えたのは嬉しい」と締めくくって、最後は「言ノ葉」を歌った。
アンコールでは、8月に公開されるドラえもんシリーズ初の3Dアニメ映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌「ひまわりの約束」を披露。「ドラえもんとのび太のことを思いながら作りました。突然やってきたドラえもんは、いつも当たり前にいるようでいて、いついなくなるのかわからない。僕らの日常でも、そういう存在ってあると思う」というコメントが、秦らしくてグッときた。
「ひまわりの約束」を一人で歌った後、メンバーを招き入れて、秦は「グッバイ・アイザック」の力強いイントロを掻き鳴らす。GREEN MINDが、秦の音楽の表現スタイルとして完全に確立したことを告げる、ツアー最終盤のライブだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:笹原清明】
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リリース情報
セットリスト
HATA MOTOHIRO presents an acoustic live in 2014“GREEN MIND”
- 0. ~Theme of GREEN MIND~
- サークルズ
- My Sole, My Soul
- 現実は小説より奇なり
- アイ
- ダイアローグ・モノローグ
- 自画像
- プール
- 君のいた部屋
- パラレル
- SEA
- Honey Trap
- Girl
- スプリングハズカム
- キミ、メグル、ボク
- 五月の天の河
- 鱗(うろこ)
- 言ノ葉
- ひまわりの約束
- グッバイ・アイザック
- 1/365
- ~Theme of GREEN MIND~
お知らせ
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2014/06/24(火)Zepp Diver City Tokyo
フジファブリック2マンツアー フジフレンドパーク 2014
2014/06/28(土)Zepp DiverCity Tokyo
Augusta Camp 2014
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2014/08/09(土)万博記念公園自然文化園「もみじ川芝生広場」
レキシツアー もう一度遺跡について考えてみよう~大きなハニワの下で~
2014/08/20(水)日本武道館
※ゲスト出演
J-WAVE LIVE 2000+14
2014/08/30(土)国立代々木競技場第一体育館
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2014/09/13(土)~14(日)恵比寿ザ・ガーデンホール
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2014/10/10(金)大阪城ホール
「Great Studio Live at BUDOKAN」~バラスーシな奴らがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!~
2014/11/04(火)日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。