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静かな熱狂が会場を包み込むTHE NOVEMBERS、ツアーファイナル!

THE NOVEMBERS | 2014.07.24

 THE NOVEMBERSが順調に上昇を続けている。その上昇はUK PROJECT在籍時の後期から始まり、昨年10月に自主レー ベル“MERZ”を立ち上げて以降、加速した。音源もライブも回を追うごとに鋭さを増す。今回の六本木EX THEATERでの3マン・イベントでも集中したライブを披露して、いよいよこの時期のピークを迎えたと言っていいパフォーマンスとなった。

 最初に登場したのはART-SCHOOLだった。BGMが途切れると、バンドの轟音が鳴り響く。その中をドラムがハイハットでカウントを出すと、いきなり整理されたリズムが刻まれ始める。中盤には初期の名曲「シャーロット」でEX THEATERを完全にART-SCHOOLの世界に染め上げた後、「今日は呼んでくれてありがとう。この後、西麻布でコニシキと呑もうかと思って」と、木下理樹は謎のMCで会場を煙に巻く。新曲「YOU」を演奏して、相変わらずの鋭利なサウンドを聴かせてくれた。

 続いて登場したのは、ストレイテナー。安定した活動の中から、次々と美メロを生み出してきた。この日、光ったのはニューシングル「Super Magical Illusion」。洋楽的な部分と、端整なJ-ROCKの二重構造を持つこの曲は、ライブで想像以上のエネルギーを発揮して、この夏いちばんのアンセムになりそうな予感を漂わせた。ホリエアツシは「ART-SCHOOLもTHE NOVEMBERSも、音楽に純粋に向かい合うバンド。その2バンドに次の曲を捧げます」と言って、「イノセント」を歌ったのだった。

 さて、いよいよTHE NOVEMBERSの出番だ。小林祐介は最初に「ART-SCHOOLとストレイテナーに、もう一度拍手を!」と言って、演奏が始まった。 長身長髪の男が4人。ステージの見かけはストイックだが、出てくる音はとても豊穣だ。特にこの日は、吉木諒祐のドラムの音がいい。超低音の効いたキックドラムと、乾いて薄いスネアの音の対比が見事。ベーシックなサウンドが決まっているから、高松浩史のベースもケンゴマツモトのギターもしっかりと聴こえてくる。
 オープニング・ナンバーの「彼岸で散る青」ではまだ全開ではなかった小林のボーカルだが、2曲目「Flower of life」になるともう喉はベストに近い状態になる。続く「Reunion with Marr」で、前の2バンドの余韻は完全に取り払われて、THE NOVEMBERSワールドがEX THEATERに出現する。オーディエンスは微動だにせず、4人の演奏に聴き入る。“静かな熱狂”とでも言えばいいのか。THE NOVEMBERSのライブ独特の雰囲気が会場を満たす。
 初めて観る人にはわかりにくいかもしれないが、この“静かな熱狂”はTHE NOVEMBERSの美意識から来ている。「それぞれが自分の好きなやり方で幸せになればいい」と願うバンドだからこそ、みんなで同じタイミングで盛り上がったり、モッシュしたりというスタイルとは反対の“熱狂”があるのだ。
 70年代の反骨精神、80年代の自由なニューウェイヴ、90年代のグラマラスなJ-ROCKを21世紀に再構築するTHE NOVEMBERSらしい音楽が展開される。力強い4つ打ちリズムの「永遠の複製」あたりからもう一段階熱が上がって、「dnim」で唯一無二の境地にたどり着く。まず小林がエイドリアン・ブリューばりの変則ギター・ソロを取ると、ケンゴマツモトがフロアにひざまずいて音で応じる。お互いを触発し合うパフォーマンスが、いつの間にかオーディエンスを日常から離陸させ、気付けばみんな、THE NOVEMBERSと 共に遥か高みを飛行している。 ピークが訪れたのは「dogma」だった。押し殺したような声で歌う小林の対極で暴れ回る高松のベースに凄みがある。2人に挟まれたケンゴが、ギターで痙攣してみせる。10拍子を重々しく刻む吉木のドラムが、そのすべてを支える。全員、恐ろしいほどの集中力を終盤までキープし続けているのも驚異だ。そしてオーディエンスは、“シーンとしながら”盛り上がっている。

「今日は来てくれて、ありがとう。5月にリリースした『今日も生きたね』のツアーは、今日が最終日です。ART-SCHOOLとストレイテナーがいなかったら、今日の僕はいないっていうくらい大好きなバンド。高松くんと『東京に行ったら、ART-SCHOOLとストレイテナーの2マン見れるのかな(笑)』とか話してたことがあったから、今日はすごく嬉しいです」と小林は満足そうな笑顔で言って、ラストソングの「今日も生きたね」が始まった。
 ギリギリまで上がったテンションのまま、この穏やかなバラッドに身を委ねる至福。《子供がトンボの羽をむしる それもひとつの純粋だよ》というリリックが、自然と耳に流れ込んでくる。およそ美しいメロディに似合わない言葉のはずなのに、ありのままに聴こえてくる奇跡。羊水のように温かいサウンドに包まれて、静かな熱狂は終わった。

 今、これほど独自の美意識を掲げて、完成度の高いライブ・パフォーマンスを展開するバンドはいない。名前は知られるようになったが、実際に彼らのライブを観た人はまだそれほど多くないとすれば、“今、体験すべきバンド”のナンバーワンにあげたい。耽美ではあるが、閉鎖的でないロックバンドは、国内・国外を問わず本当に希少だからだ。

 アンコールではツアーに関わったすべての人に感謝を捧げて、「Misstopia」。この初期の佳曲が、まるでTHE NOVEMBERSの今を予言していたかのように響く見事なファイナルだった。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE NOVEMBERS

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リリース情報

今日も生きたね

今日も生きたね

2014年05月14日

MERZ

1. 今日も生きたね
2. ブルックリン最終出口

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セットリスト

TOUR - The World Will Listen -
2014.7.11@EX THEATER ROPPONGI


THE NOVEMBERS
  1. 彼岸で散る青
  2. Flower of life
  3. Reunion with Marr
  4. ブルックリン最終出口
  5. ウユニの恋人
  6. philia
  7. 永遠の複製
  8. dnim
  9. 鉄の夢
  10. dogma
  11. Wire (Fahrenheit 154)
  12. 今日も生きたね
Encore
  1. Misstopia

お知らせ

■ライブ情報

One-Man Tour
2014/10/17(金)名古屋CLUB QUATTRO
2014/10/19(日)心斎橋JANUS
2014/11/07(金)札幌COLONY
2014/11/14(金)福岡DRUM-BE1
2014/11/15(土)広島CAVE-BE
2014/11/24(月・祝)仙台 enn 2nd
2014/11/25(火)新潟 CLUB RIVERST
2014/11/28(金)新木場 STUDIO COAST

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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