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ゲスの極み乙女。、Zepp Tokyoで繰り広げた無敵でゲスなパーティー

ゲスの極み乙女。 | 2014.09.28

 ゲスの極み乙女。がバンド史上最大規模の会場Zepp Tokyoで行なったワンマンライブ。それは時代に愛されるバンドだけが持つことのできる、ゲスの極み乙女。の異常なまでの無敵感を肌で感じるライブだった。8月6日にリリースされた最新シングル『猟奇的なキスを私にして / アソビ』のリリース記念で2日間のみ開催された今回のツアー。前日の名古屋も含めてチケットは当然ソールドアウト、開演前から会場は超満員だ。ステージに大きく書かれた“ゲスの極み乙女。”というバンド名を眺めながら開演を待つ。

 暗いステージにメンバーが一人ずつ登場して楽器をスタンバイすると、1曲目は「だけど僕は」。あいさつ代わりにが川谷絵音(Vo&Gt)が「ゼップトーキョー!」と叫ぶと、ちゃんMARI(Key)、休日課長(Ba)、ほな・いこか(Dr)の切れ味鋭い演奏とともに、一気にフロアが跳ね上がった。1曲目から信じられないテンションだ。続けて「市民野郎」。ゲスのサウンドを最も特徴的づける、ちゃんMARIの流麗なピアノを軸にしたディープなロックナンバーで、フロアからも川谷の煽動に応じて雄叫びが響く。さらに休日課長が「ゲスな感情を込めて!ドレスを!脱げ!」と叫んではじまった「ドレスを脱げ」では、サビでラーララーの大合唱が起こり、「ゲスの三角関係」では、三角関係の修羅場を思わせるセリフパートも軽快に飛ばす。ゲス!ゲス!コールが起こり、休日課長のチョッパーが炸裂した「ホワイトワルツ」では、いこかによるゲスの四ヵ条を伝授されたりと、わずか数曲でいくつもの見せ場が乱立。あまりにも濃密で目まぐるしい幕開けだった。

 ちゃんMARIが「コポゥ!」と可愛らしく叫ぶ、お決まりのあいさつからはじまったMCでは、休日課長&いこかのダイエットトークのほか、川谷はMステ出演時の裏話を披露したりして、すっかり場が和む。ゲスの極み乙女。の演奏は、手数の多い高度なプレイで、それをメンバー同士ぴったり合わせる、かなりハイレベルなもの。だから常に緊張感も伴うが、そのせいかこの長いMCの脱力感はライブ序盤のちょうどいい息抜きでもあった。

 そして中盤は「猟奇的なキスを私にして」からはじまった。いこかのカウントを合図に赤と青で染まるステージ。客性からは再び一斉に手があがる。時折ひざを折り曲げながら全身で鍵盤を奏でるちゃんMARI、首でリズムを刻みながら黙々と弦を弾(はじ)く休日課長、柔らかく撓(しな)る手首から激しいドラミングを繰り出すいこか。何かと焦点の当たるボーカル川谷だけでなく、個々のプレイヤーにも人目を惹くスター性がある。それが、ゲスの極み乙女。というバンドの魅力だ。続く「アソビ」では、川谷の高速ラップを皮切りに、3人の演奏が変則的に攻めてくる。その曲で♪パラリラ パラリラ Fu-Fu~と、お客さんが踊りまくる。その後、「スレッドダンス」のアウトロではジャジーなセッションを繰り広げながら、メンバーがステージ袖へと退場。ひとり残ったいこかによる物販紹介コーナーへと移った。

 Sキャラ全開のいこかがツアーグッズを客席に投げ入れたりして、しばしクールダウンした後、「いこかなでしこ」で演奏に戻る。ちゃんMARI&休日課長が♪私の中のなでしこさん~と歌いながら、ステージに再登場。続いて川谷も……と思いきや、なんと川谷が、フロアに乱入!これにはお客さんは大混乱&大興奮。大喜びのお客さんの手荒な歓迎にもみくちゃになりながら、その場所で「jajaumasan」まで2曲を披露した。ゲスの極み乙女。級の人気バンドがZepp Tokyoの客席に降りるなんて、無謀すぎる!

 10月にニューアルバム『魅力がすごいよ』の発売をアナウンスした後は、そこに収録される新曲「crying martch」を早速聴かせてくれた。これぞゲスのサウンドと一発で分かるちゃんMARIのキーボードに、珍しくシンプルなビートを用いたゲス新機軸の広がりのあるロックナンバー。続けて、夏のツアーでも披露されていた「デジタルモグラ」を挟むと(こちらも新作アルバムに収録)、「ユレルカレル」では、青に柔らかく照らす光のもと、川谷と女性陣による美しいコーラスを聴かせた。

 「Zepp Tokyo、そろそろ“キラーボール”を踊りませんか?」の声を合図に、再びフロアが巨大な生き物のようにうねる。とはいえ、ゲスの場合、ヴォーカル川谷が時折ハンドマイクで客席を煽る以外に、いわゆる過剰な“煽り”はなし。メンバー全員の演奏技術と楽曲の完成度だけで、自然と踊らずにはいられない状況へと追い込まれる。そして会場の盛り上がりが頂点に達した「song3」から、ラストの「餅ガール」では、ダンサーが登場して、Zepp Tokyoはこれ以上ない興奮のなか本編が幕を閉じた。

 そんなダンサーの起用について、「急遽来てもらったから、あんなに決め決めなフリがつくとは思わなかった(笑)」とネタ明かしで始まったアンコール。川谷はこの日Zepp Tokyoでライブをできた感慨を語る。「結成して2年4ヵ月、最初のライブは下北沢ERAでした。去年の5月初めてのフェスでお客さんは20人だった。“ゲスの極み乙女。”っていうバンド名に支配されたこともあった。でも今日はここに集まってくれて嬉しいです。ありがとう!」。そうやってお客さんと気持ちを共有したあと、問答無用のキラーチューン「パラレルスペック」では、ちゃんMARIのピアノの疾走感と、まるで打楽器みたいに打ち鳴らす川谷のギターとが絡む。ゲス4人の痛快な演奏シーンもそろそろ見納めだ。ラストナンバー「ノーマルアタマ」では、気がつくと普段はストイックな姿勢を貫くいこかも激しく髪を振り乱していた。そして最後は、「せーの!」、ジャーン!で締めくくり、2時間のライブは終了した。

 この日、そこに集まったお客さん全てを味方につけたゲスの極み乙女。。その存在は圧倒的に異端なロックバンドでありながら、ライブハウスシーンのみならず、お茶の間にまで浸透しつつある。彼らにとってZepp Tokyoの会場はすでに小さくすら感じた。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:橋本塁】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ゲスの極み乙女。

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リリース情報

魅力がすごいよ(初回限定魅力的なプライス盤 )

魅力がすごいよ(初回限定魅力的なプライス盤 )

2014年10月29日

ワーナーミュージック・ジャパン

01.ラスカ
02.デジタルモグラ
03.crying march
04.星降る夜に花束を
05.列車クラシックさん
06.猟奇的なキスを私にして
07.サリーマリー
08.ruins
09.アソビ
10.光を忘れた
11.bye-bye 999

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セットリスト

ゲスなパーティ ~東京編~
2014.9.17@Zepp Tokyo

  1. だけど僕は
  2. 市民野郎
  3. ドレスを脱げ
  4. ゲスな三角関係
  5. ホワイトワルツ
  6. ハツミ
  7. ぶらっくパレード
  8. 猟奇的なキスを私にして
  9. アソビ
  10. スレッドダンス
  11. いこかなでしこ
  12. jajaumasan
  13. crying march
  14. デジタルモグラ
  15. ユレルカレル
  16. キラーボール
  17. song3
  18. 餅ガール
Encore
  1. パラレルスペック
  2. ノーマルアタマ

お知らせ

■ライブ情報

全国ワンマンツアー“ゲスな魅力?”
2014/11/03(月・祝)新潟LOTS
2014/11/05(水)仙台 Rensa
2014/11/08(土)札幌Sound lab mole
2014/11/11(火)長崎DRUM Be-7
2014/11/13(木)鹿児島CAPARVO HALL
2014/11/14(金)福岡DRUM LOGOS
2014/11/16(日)広島CLUB QUATTRO
2014/11/17(月)広島CLUB QUATTRO
2014/11/22(土)名古屋CLUB QUATTRO
2014/11/23(日)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2014/11/25(火)高松オリーブホール
2014/11/29(土)赤坂BLITZ
2014/12/03(水)Zepp Sappro(追加公演)
2014/12/07(日)豊洲PIT
2014/12/09(火)名古屋DIAMOND HALL
2014/12/11(木)大阪・味園ユニバース
2014/12/13(土)金沢EIGHT HALL
2014/12/14(日)松本Sound Hall a.C

“ゲスな魅力?” ~番外編~
2014/12/20(土)沖縄 音市場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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