レビュー

ゲスの極み乙女。 | 2020.06.17

 5月1日に配信リリースされているゲスの極み乙女。のニューアルバム『ストリーミング、CD、レコード』は、タイトル自体に批評性があり、それはもちろんこのバンドの面白さなのだが、本作の魅力はそこではなく、やはり音楽そのものである。その最大の特徴は、華やかなエンターテインメント性とディープな芸術性が絶妙のバランスで共存していることだ。

 サウンドメイクの基準は、現在進行形のR&B、ファンク、ヒップホップなど。おそらくストリーミングで聴かれることを意識しているのだと思うが、これまでの作品に比べるとサウンドの重心が下がり、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)の洗練されたアンサンブルをたっぷりと堪能できる仕上がりに。4つ打ちのビート、ギターのフレーズは少なくなり、このバンドの特徴のひとつだったトリッキーな展開も控えめ。つまり表面的なギミックを極力排除し、リズムのアレンジ、アンサンブルをさらに深化させているのだ。川谷絵音(Vo/Gt)のメロディもこれまで以上にシックで深みがあり、豊かなリスニング体験を得ることができる。本作はゲスの極み乙女。のキャリア史上、もっとも音楽的な作品と言っていいだろう。

 歌詞の面でも変化が見られる。「私以外私じゃないの」(2015年)、「あなたには負けない」(2017年)など、川谷が手がける歌詞はこれまで、リスナーや世間との関係性、社会の風潮に対するカウンターとして、直接的で尖った言葉で編まれることが多かった。しかし本作では、エッジの効いたフレーズをなるべく使わず、リスナーの思考を促すようなリリックが心に残る。たとえば「問いかけはいつもためらうためにある」における<感じない奴は言うな/信じない奴に問うな>というラインもそう。川谷は、言葉を介したコミュニケーションの危うさ、ためらうことの大切さを美しく描き出している。その根底にあるのは、音楽を通して、聴く人の想像力に訴えようとする姿勢だと思う。
6月17日に発売されるパッケージ商品は、“賞味期限付きアルバム”(歌詞、ブックレットが入ったスペシャルパッケージによるバームクーヘン。CDはナシ)、そして、CD+DVD、CD+Blu-rayによるデラックスエディション。リリース形態もかなりヒネリが効いているが、前述したとおり、この作品の魅力はあくまでも音楽。時間をかけ、じっくりと味わいたい充実作である。

【文:森朋之】




ゲスの極み乙女。「人生の針」

お知らせ

【リリース情報】

配信リリース『ストリーミング、CD、レコード』
発売日: 2020年05月01日
レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン
配信リンク: https://gesunokiwamiotome.lnk.to/johPu



01.人生の針
02.私以外も私
03.秘めない私
04.綺麗になってシティーポップを歌おう
05.哀愁感ゾンビ
06.ドグマン
07.問いかけはいつもためらうためにある
08.蜜と遠吠え
09.透明な嵐
10.フランチャイズおばあちゃん
11.キラーボールをもう一度
12.マルカ

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